スキル【疲れ知らず】を会得した俺は、人々を救う。

２話 四章 冒険者ランク取得試験 (前編)

８

　そして丁度良く同じ頃に、馬車の揺れが停車していた。
　目的の場所に辿り着いたようである。
　「着いたな。」
　と、リキッドが真っ先にワゴンから降りていき、ーー
　やや遅れてダフネも、後に続いていく。
　最後に俺も扉を潜って、外に出て行くと、目の前の景色を凝視してしまう。
　此処は海辺の砂浜だ。
　【ビーギニング】の街のすぐ側にある場所だ。昨日に目撃して、辿り着けなかった場所で、間違いない。
　青く透き通った海は、何処までも広がっている。
　美しい白い砂浜は、遥か先の崖近くの岩場まで続いている。
　その途中、ーー砂浜の中間辺りには、人だかりが出来ているようだ。
　ふとリキッドとダフネが前を歩いていき、先へと進んでいく。
　俺も急いで後を追いかけて、側まで近づいていく。歩く度に砂浜からは、さくさくと心地よい音が鳴る。
　するとダフネが前を向いたままの状態で、此方に話しかけてきた。
　「ヒルフェ様、彼方がランク試験の会場です。…もう開始時間が差し迫っているので、ヒナとキリエは先に会場におり、アルフォンスや他のギルドの従業員達と一緒にいます。私や旦那様達は試験を取り仕切る側なので、試験中に何かない時以外は、普段の様に関わる事はないでしょう。……ただ先程の話を聞いて尚、貴方が何をするかは知りません。…ですけど、もし出来るなら二人をお願いします。」
　「…わかったよ。…俺で出来る限りの事はしてやるさ。…それにしても、あの二人には随分と、お前も甘いな。」
　と、俺は頷きながら了承しつつ、最後は小さな声で皮肉げに言った。
　「…そうですね。…キリエの叔母としては、何とかしてあげたいとは思いますよ。」
　「ん？……………………叔母？」
　「えぇ。…あの娘は、私の愚兄の末娘なんですよ。…つまり私にとっては、姪です。…ただ、私も十代の頃に実家から家出して、冒険者をやっていたので、後から知ったんですがね。」
　すると、ダフネも淡々と答えを返してきた。
　あまりにも聞き捨てならない台詞である。
　「はぁぁ！？」
　それを俺は聞いた途端に、驚いて声をだしてしまっていた。あまりにも予想外な話に、街に来てから最も大きな声をあげていたのだった。