208 / 402
2話 四章 冒険者ランク取得試験 (前編)
6
しおりを挟む
「…今回の件は、…ヒナちゃんの実家のいざこざが原因なんだ。…名前はエーデルヴァイスと言い、随分と昔に隣国との長い争いで数々の武勲を挙げた大貴族なんだ。…今や王族に次ぐ程の絶大な権力を有している。…しかし、数十年前から少々と厄介な問題を抱えていてねぇ。」
「厄介な問題?…なんだ、それは?」
と俺は言いつつ、食事をしながら話に聞き入っていく。
「…簡単に言えば、跡目争いなんだよ。…その家には私の姉上が嫁いだと説明しただろう。…実は、その後の時期を境に、なかなか子宝に恵まれない事が続き、血筋が途絶えそうなんだ。…もう今や正当な跡取りはヒナちゃんしかおらず、彼等は家系の存続に躍起になっているんだ。」
「そんなに、重要なのかよ。」
「あぁ、貴族とは自分の家系の繁栄の為に、何よりも血筋を重んじるんだ。…どんな事をしても繋げる為に手段を選ばない。…たとえ引き継ぐ当人のヒナちゃんの意思は関係ない。…望まない相手でも、家の存続の為に優先させるんだ。…あの家は貴族としてあろうとする方が重要みたいなんだよ。」
「…なんだよ、それ。」
「…現に今もヒナちゃんが此処にいるのは、エーデルヴァイス家での内部争いが激化したからだ。…避難の名目で十歳から中央学園に入学し、四年後に卒業した後も安全と経験をつける為に、今はギルドに預けているんだよ。…」
そう言ってリキッドは話を区切ると、姿勢を直しながら一息つく。
俺も食べ物を飲み込むと、考えを巡らせた。全く想像すら及ばない世界の話である。しかし、自ずと虫酸が走る様な気持ちが溢れて、嫌悪すらしてしまい、思わず「随分と、勝手な話だな。」と悪態をついた。
「えぇ、全くです。」
すると今度は、ダフネも呟くと頷いて肯定している。さらに続けて、話に加わるとリキッドの代わりに喋りだした。
「厄介な問題?…なんだ、それは?」
と俺は言いつつ、食事をしながら話に聞き入っていく。
「…簡単に言えば、跡目争いなんだよ。…その家には私の姉上が嫁いだと説明しただろう。…実は、その後の時期を境に、なかなか子宝に恵まれない事が続き、血筋が途絶えそうなんだ。…もう今や正当な跡取りはヒナちゃんしかおらず、彼等は家系の存続に躍起になっているんだ。」
「そんなに、重要なのかよ。」
「あぁ、貴族とは自分の家系の繁栄の為に、何よりも血筋を重んじるんだ。…どんな事をしても繋げる為に手段を選ばない。…たとえ引き継ぐ当人のヒナちゃんの意思は関係ない。…望まない相手でも、家の存続の為に優先させるんだ。…あの家は貴族としてあろうとする方が重要みたいなんだよ。」
「…なんだよ、それ。」
「…現に今もヒナちゃんが此処にいるのは、エーデルヴァイス家での内部争いが激化したからだ。…避難の名目で十歳から中央学園に入学し、四年後に卒業した後も安全と経験をつける為に、今はギルドに預けているんだよ。…」
そう言ってリキッドは話を区切ると、姿勢を直しながら一息つく。
俺も食べ物を飲み込むと、考えを巡らせた。全く想像すら及ばない世界の話である。しかし、自ずと虫酸が走る様な気持ちが溢れて、嫌悪すらしてしまい、思わず「随分と、勝手な話だな。」と悪態をついた。
「えぇ、全くです。」
すると今度は、ダフネも呟くと頷いて肯定している。さらに続けて、話に加わるとリキッドの代わりに喋りだした。
2
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる