スキル【疲れ知らず】を会得した俺は、人々を救う。

２話 四章 冒険者ランク取得試験 (前編)

３

　「たとえ、そうだとしても目の前の誰かが困っているのに、知らない振りなんて出来ねぇよ！」
　「ヒルフェ君。………」
　とリキッドは呟き、真剣に聞いている。やや両目を涙で滲ませて涙ぐみだし、じっと此方を向きながら、独り言を呟きだした。
「そうかい。…そうかい。…強い子だね、君は。」
　「あ？…どうした？」
　そんな彼の様子に、俺は首を傾げながら、訝しむ視線を向ける。
　すると次の瞬間に、リキッドが席から立ち上がると此方に腕を広げながら近づいて来て、続け様に力一杯に抱き締めてきた。
　「は？…」
　と俺は訳が判らず、されるがままの状態となる。もはや抵抗する間もなかった。
　その状態のまま、一拍の間が過ぎる。
　やがてリキッドは、ぽつぽつと話をしだした。
　「…私は出来る事なら、君には何の柵もなく生きてほしいと願ってた。…沢山の苦労したのだから、のんびりと過ごしながら、美味しい物を食べて、好きな事だけしてほしいと思っている。…」
　「じいちゃん？…」
　「決して君を蔑ろにしていた訳じゃないんだ。…ただ、ヒナちゃん達の事は、貴族社会のいざこざに関わる事だから、…話をするにしても長くなる。…この後には、ランク試験もあるから、会場に移動しながら詳しく話すよ。…」
　「………。」
　彼の言葉を俺は聞くと、無言のまま頷き、素直に指示に従うのだった。