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2話 一章 始まりの街【ビーギニング】と、二人の少女
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「ねぇ、ヒルフェ君。…ちゃんと聞いてるのかい?」
と、此方を呼ぶ声がしてきた。
俺は明後日の方を向きながら、横目で正面の座席の方を確認する。
正面の座席にはーーリキッドがいる。白髪に整った顔立ちをしており、ガッシリした身体をした人で、向かいの座席に腰かけながら話しかけてきていた。因みに俺の祖父である。だが実感はない。生まれてから十五年近く存在を知らなかったのだ。
ある事情から、俺は五歳から、宿場町の鉱山で奴隷として十年も働いていた。
それを彼によって解放されたのである。
出会ってまだ幾日しか経っておらず、未だに距離感を推し測っている。
そんな彼は笑いながら、自身の思い出の話を聞かせてくる。
「あぁ、聞いてるよ。」
と俺は同じ体勢で、適当に相槌を打つ様に返事をした。
「そうかい。…でね、あれは五年程前の事なんだけど、………。」
「あー、そうなんだ。」
「で、これが実はねぇ。…」
とリキッドは、さらに別の内容の話を続けていく。ただし、もう既に聞いた話だ。もう何度も何度も同じ話を繰り返している。
彼自身は舞い上がった様子で、気がつかず、喋り続けているようだ。
俺も最初の内は聞いていた。いい加減に辟易してしまっている。しかし、リキッドの嬉しそうに喋っている姿に、辞めさせられず、ただただ視線を泳がせながら退屈を紛らわすだけだ。
と、此方を呼ぶ声がしてきた。
俺は明後日の方を向きながら、横目で正面の座席の方を確認する。
正面の座席にはーーリキッドがいる。白髪に整った顔立ちをしており、ガッシリした身体をした人で、向かいの座席に腰かけながら話しかけてきていた。因みに俺の祖父である。だが実感はない。生まれてから十五年近く存在を知らなかったのだ。
ある事情から、俺は五歳から、宿場町の鉱山で奴隷として十年も働いていた。
それを彼によって解放されたのである。
出会ってまだ幾日しか経っておらず、未だに距離感を推し測っている。
そんな彼は笑いながら、自身の思い出の話を聞かせてくる。
「あぁ、聞いてるよ。」
と俺は同じ体勢で、適当に相槌を打つ様に返事をした。
「そうかい。…でね、あれは五年程前の事なんだけど、………。」
「あー、そうなんだ。」
「で、これが実はねぇ。…」
とリキッドは、さらに別の内容の話を続けていく。ただし、もう既に聞いた話だ。もう何度も何度も同じ話を繰り返している。
彼自身は舞い上がった様子で、気がつかず、喋り続けているようだ。
俺も最初の内は聞いていた。いい加減に辟易してしまっている。しかし、リキッドの嬉しそうに喋っている姿に、辞めさせられず、ただただ視線を泳がせながら退屈を紛らわすだけだ。
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