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三章 山での攻防 後編
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「あの?…ヒルフェさん?」
と気弱な少年の呼ぶ声がする。
俺も我に返り、頭がハッキリとする。さらに、
「あぁ、そうか。…だから試験の前にノイマンに突っかかって。…自分らしくもなくリキッドの、いやじいさんの事を気にしたのか。」
と囁く声で呟きながら、一人で納得していた。今は全身の毛穴が開き、感情が高ぶって身震いしており、力で手の震えが押さえられなかった。
「えっと、」
隣で気弱な少年が戸惑っているようだ。
すぐに俺は目が合わせると、
「行ってくる。…お前は此処に居ろ。」
とだけ言い残して、全速力で駆け出した。
真っ直ぐに前へと突き進み、だんだん走る速度を上げていく。
目の前にはボアがいた。再びテッドに向かって突進していく。
ノイマンも立ち上がろうとしているも、助けには間に合わない。
もうボアは間近にまで迫ってきていた。
しかし、それより先に俺は地面を蹴って飛び出し、勢いのまま飛び蹴りを放つ。見事に魔物の目に命中した。
するとボアの身体がよろめくと、進行方向がズレていく。
そのままボアは、テッドやノイマンの真横を通過した。最終的に近場の樹木にぶつかると、痛みに身悶えながら、地面をのたうち回っていた。
その様子にテッドとノイマンは、両目を見開いて驚いていた。
俺は着地する。彼等の目の前に降り立つと、
「おぉ、体重かけて思いっきり行ったら、軌道がズレたな。」
と呟きながら、利き手の右腕を前後に動かし、拳を開いては閉じてみる。素手でも急所を狙えば、ある程度は戦えそうだと、確信してほくそ笑んでいる。
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