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三章 山での攻防 前編

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 「あぁ、ヒルフェ君。…ごめんよ、私が不甲斐ないばかりに、危険な目に。……」
 後ろから、リキッドの弱々しい声をが聞こえてくる。
 昨日みたいに肩を落として項垂れている姿を、容易に想像が出来てしまう。
 俺は前を向いたまま立ち止まると、
 「過剰に心配し過ぎだ。…俺が勝負を受けると言ってしまったのも悪い。…ちゃんと無傷で帰ってくるから、心配するな。…」
 と、一言だけ言い残して、再び進みだした。
 今度こそ、冒険者達と合流する。
 「ヒルフェくぅぅん。…元気づけてくれて、ありがとう。」
 離れた場所から、またリキッドが泣いている声がする。若干だが悲しげな感じはなく、感動で咽び泣いているみたいである。
 それに俺も胸を撫で下ろして、ホッと一息を吐いた。ただ、ーー
 「ん?……」
 と、自分が何をしたのかが理解出来なかった。訳が解らずに思考を巡らせるも、
 ー俺は何故、リキッドに声をかけた?
 ー俺は何故、リキッドの様子を見て安堵した?
 と考えれば考える程に、頭の中で思考が堂々巡りしてしまい、心の中に混乱が渦巻いていった。全く答えが出ないままだ。
 「おい、早くしてくれ!」
 とバンダナ男が呼び掛けてきた。
 仕方なく、俺は頭を振って考えを払拭し、冒険者達の輪に加わり移動しだした。
 しかし、それでも俺は山へと向かう道すがら、歩いたまま延々と唸っていたのだった。

 ※※※
 
 そして、ふと気がつけば場所が変わっていた。
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