スキル【疲れ知らず】を会得した俺は、人々を救う。

あおいろ

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間章 密会

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 しかし、彼の言葉は受け入れられず、ーー
 尚もフォン支部長は嬉々として、己の要望を語り続けている。
 「この際じゃ、身辺は綺麗にする。…仮に失敗しても、ランクを剥奪して追い出すつもりじゃ。…」
 「…それはノイマンがあんまりです。…私には、出来ません。…犯罪の片棒なんて担げません。」
 とテッドは説得を諦めて、キッパリと断る。
 これが悪手だった。
 フォン支部長は怒りの表情を露にすると、
 「やれやれ。…お前さんには目をかけてやったのに、頼みごとも聞けんか。」
 と、呟いていた。
 完全に、脅しともとれる言い回しである。
 「…た、確かに。…私は家庭の事情から貴方に無理を言って、冒険者にしてもらいましたけど、別の話でしょう。…脅されたって、やりませんよ。」
 テッドは後退りながら、必死に拒否する。
 「もう既にやると決定した事じゃ、必ずやってもらうからの。…それでも嫌なら、それ相応の態度に出るしかないからな。」
 それをフォン支部長は怒気を含む声色で、一蹴してしまう。
 彼の言葉は本気だと、テッドは思い、気圧されてしまう。もはや萎縮して言葉が出なくなった。
 やがてフォン支部長は歩きだして、話を終わりにしようとしていた。さらに、ーー
 「他の者って、毳毳しい女と、自己中心的なバンダナ男に、頼りなさげな少年じゃ。…適任とは考えられん。…もし、お前の働きが上手く行ければ、今後のギルドでも融通を効かせるから、兎にも角にもやるんじゃ。」
 と、テッドの真横を去る際に呟いていた。
 ほぼ一方的な命令である。
 「し、しかし、……。」
 暫くしてテッドは、食い下がろうとする。すぐに後ろを振り返る。
 だがフォン支部長は、さっさ離れている。
 もう彼は、追いかける勇気はなかった。最終的に「あ、あぁ。……」と呟くだけで、愕然としてしまい、地面に膝を付いて呆然となる。
 そんな中でも、フォン支部長はランク昇降格試験の開始を、高らかに宣言したのである。
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