～前世の知識を持つ少女、サーラの料理譚～

２話 ３章 玉葱ソースの鹿肉ハンバーグ

９

　それから食堂内は慌ただしい雰囲気となる。
　屋敷の使用人達が集まり、料理の準備に取りかかっていた。ブランモンが指示された内容を伝えており、他のメイド達が調理器具や大量の食材を運び入れてきた。
　その数々の品々が、長テーブルの上にずらりと並んでいく。
　「いやぁ、固い肉がどうなるのか、楽しみだ。…私は食べるのが趣味みたいなもんでね。」
　と、マーチスは語りながら、村人達の隣の座席に腰かけて寛いでいる。
　対して村長達が代表して話を聞き、相槌を打ちつつ、使用人達の様子を眺めていた。
　「は、はぁ。…それは楽しそうで。…ワシらも今は食べる事だけが楽しみですわ。」
　「おや？…準備出来たようだね。」
　そこへブランモンが長テーブルの反対側、ーー村人達の真正面に立つと、
　「それでは早速、調理を始めさせて頂きます。」
　と言いながら、調理器具を手に取って作業を開始しようとする。だが、何度も周りを見回しながら慌てふためいている。
　「えっと、まずは。……あれ？…どれだ？」
　「まず、お肉。…後は、」
　と、すかさずサーラが助言していた。その都度、目の前のブランモンの動きを見つつ、的確に指示を飛ばしていた。
　それをブランモンは聞いて、対応しながら、ようやく調理が開始されたのだった。