～前世の知識を持つ少女、サーラの料理譚～

２話 幕話 領主の屋敷、新たな出会い。

５

　やがて、サーラは廊下の奥まで差し掛かり、突き当たりの曲がり角を左に曲がろうとしていた。
　「バウ！バウ！」
　すると次の瞬間に曲がり角の先から、白い何かが目の前に現れた。
　犬だ、とサーラは驚き、戸惑う様子を露にする。さらには、まじまじと目を見開いて観察しだした。
　それは大きな白い犬で、モコモコの毛並みをしており、水色の首輪を身につけている。対面するや否や、ずっと吠え続けている。
　「ぎゃあぁ！！…クッキー様？！…」
　「バウ！バウ！！」
　「ひぃぃ！？…何で？！…あたいに、ばっかり吠えるのさぁ！！」
　すると小柄なメイド、ーートーニャは、狼狽えながら悲鳴をあげた。おまけに手にした荷物を落とし、真っ先にサーラの腕を掴みながら、背後に廻って身を隠してしまう
　「え？…なんで、盾にするのじゃ？」と、サーラも思わず言いながら、二度身していた。自然とアリサを抱き抱える手に力が入る。
　「もう、クッキー。…何をしているんですの？」
　さらに、その時に犬の背後から、また別の人の声が聞こえてくる。可愛らしい声だ。
　再びサーラが前に振り返り、視線を向ける。
　そこには、美少女がいた。金髪縦ロールの髪やブラウンの瞳が特徴的で、シュッとした輪郭の顔立ちをしていた。さらには、パッと見てもサーラよりも頭一つ分は背が高く、華奢な体格をしており、真っ赤なドレスを身につけている。
　「なんですの？…あなたは、見ない顔ですわね。」
　と、彼女が質問しながら、訝しげな視線を向ける。明らかに嫌悪感を剥き出している。