～前世の知識を持つ少女、サーラの料理譚～

２話 ２章 特性サンドイッチ

７

　その後に、村長夫妻が遅れて合流してきた。
　そのまま全員で、市場の露店を巡っていく。辺りを見渡せば、露店の商人達が各々の料理を調理しているところだ。鉄板で油の跳ねる音や食材の焼ける音が聞こえており、さらには香辛料の香りが漂ってきていた。
　やがて場所は移り変わり、少し開けた空間に辿り着く。所々には椅子とテーブルが複数個も並べられており、飲食できるスペースが用意されている。
　そこに空いている二席が、近くに連なって置いてあった。それぞれの席に、親子と村長夫妻は座りだす。
　大人達は、ようやく腰を落ち着けると、安堵した様に息を吐いている。
　対してサーラは、未だに小海老の揚げ物を食べていて、パリパリの食感や濃い塩の味を楽しんでいる。
　アニタも同じく、小さく千切た海老を口に加えながら、しゃぶる様に食べていた。
　それと同時に、村長夫妻が周囲を見渡しながら、会話をしだす。
　「それにしても、随分と繁盛しているようだね。」
　「…じゃが、…やはり観光客向けだからか。…調理された物は、油や塩気の多い物ばかりじゃな。…ワシ等の様な年寄りには、少し胃に重たそうだ。…」
　「そうさね。…あたしも、ガッツリした料理とか好きだったけど、もう若い頃の様には食べられないからね。」
　「あぁ、折角の旅行だから、旨いものが食いたいな。…」
　「しかし、こう。…さっぱりした物とかないもんかね。」
　「ん～。……」
　とサーラは、話に耳をそばだてながら、少し思考を巡らせだし、やがて何かを思い付いたようだ。さらには露店の商品を注意深く値踏みする様に眺めていくと、当たりをつけた店に勢いよく駆け出していった。