～前世の知識を持つ少女、サーラの料理譚～

２話 ２章 特性サンドイッチ

５

　市場の中は、大にぎわいである。
　まず露店の商人達が客引きを競い合いをしていた。各々が大声で目玉商品の特徴を述べては、手招きをして人を呼び寄せる。
　その前を通行人、ーー仕立ての良い服の紳士、恰幅の良い商人、買い物籠を持つ婦人、おやつを買い食いする子供達など、が行き交い、様々な反応を示していた。
　また買い物客の一人が、唐突に店の前で立ち止まると、品定めをしては注文をする。
　はたまた商人らしき男が、何度も値切り交渉を繰り返していたりする。
　彼方此方から、街の人々の声が飛び交っていた。
　「ウキャーーーーーー！！！♥️♥️♥️」
　そんな中で、サーラは一際に大きな声で、嬉しい悲鳴を上げており、露店の品々を吟味しては別の店に行って同じ行動を繰り返す。
　彼女に胸元に抱かれたアリサが、不思議そうに眺めている。
　また周囲の人々も、もの珍しげな視線を向けてくる。
　「おう、元気な嬢ちゃんだな。…」
　さらには近くの露店から、店主の男が声をかけてきた。
　ついでに店先からも、熱した油の匂いが漂うと共に、ジュワワッと、小気味良い音が鳴り響いていた。どうやら揚げ物を提供する店のようである。
　「わお、美味しそう！」
　と、サーラは歓喜しながら、目を引かれて寄っていきだす。まじまじと調理行程を観察している。
　ようやくロンドが追い付くと、サーラの体を掴んで引き寄せ、店主の男に頭をさげて何度も誤りだす。