~前世の知識を持つ少女、サーラの料理譚~

あおいろ

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2話 一章 オムパスタ

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 朝、ーー。
 既に日は高く昇っており、青い空は澄み渡って晴れ晴れとしている。遥か遠く南の方角には、分厚い雲が見上げる程に高く、膨らんだ様に聳えている。
 今日は、じっとりとした陽気だ。辺りの空気はやや湿気が帯び、肌に纏わり付いてくる程だ。
 もうすぐ暑い季節がくる前触れである。
 ここは北の山の麓にある小さな村。
 その外れの一角には、最も築年数が古い民家がある。
 その庭先には人集りが出来ていた。殆どが村の老婆達で、全員が揃って同じ場所を見ている。
 そこには少女と幼児がいた。
 二人は戯れながら、ーー幼児を少女が支える様にして、
 「あんよが、じょうず。…あんよが、じょうず。」
 「…う~、う~。…あ~。」
 と、前へ歩いており、ゆっくりと老婆達の側までやってきた。
 幼児は辿々しい足取りである。
 そんな二人の様子に、老婆達は心からときめいていた。誰もが満面の笑みを浮かべ、黄色い声援を送る。
 さらに老婆一人は、幼児の前で待ち構えると、胸に抱き止めていた。
 すぐに皆が揃って褒め称えだす。
 「よちよち。…頑張ったわね。」
 「…子供の成長は、早いわね。…つい半年前に来たばかりだったのに。」
 「もう掴まり立ちして、よちよち歩きしちゃって。」
 「偉いでちゅね~。」
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