~前世の知識を持つ少女、サーラの料理譚~

あおいろ

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7話 思い出のアップルパイ

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 「誰かー、これを氷室に入れてください!」
 と、サーラの声が辺りに響き渡る。
 そのまま彼女は、周りを見渡す。
 「はい、はい。…あたしが持ってってあげるわ。」
 すると、村の老婆の一人が立ち上がり、
 「一時間したら、また持ってきて。」
 「はい、はい。」
 とボウルを受け取ると、ハンター支部の施設内に入っていく。
 それと入れ代わる様に、施設の中から人影が現れる。
 ばあ様と村長だ。ゆっくりと歩いて、外に出てきた。
 やや遅れてリリャーも、村のご婦人達に支えられながら、ゆっくりとした足取りで作業台の近くまで、歩いてくる。
 すかさずジョーが背もたれ付きの椅子を持ってきて、台の側の地面に置いた。
 「ありがとうございます。」とリリャーは礼を述べながら、椅子に着席する。ふと不意にサーラの方に視線が向いており、赤ん坊の所在を目で追っているようだ。
 対してサーラも気がつくと、背中の赤ん坊を背負い直して、顔の表情が見える様に姿勢を傾けていく。ついでに赤ん坊の頭も撫でてあげた。
 すると赤ん坊の髪にも、小麦粉が付いてしまったようだった。
 「あ、粉。」
 とリリャーはつぶやく。
 ようやくサーラも聞いた途端に、慌てて赤ん坊の髪の粉を落としていた。
 そんな様子にリリャーは、思わず口元に笑みを浮かべている。
 「ほら、今日はあんたの好きな料理を作ってくれるんだとさ。…近くで見学しているといいよ。」と、ばあ様は言いながら、促している。
 リリャーも、恐る恐ると頷いていた。
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