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間章 驚愕な話
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リリャーも、ゆっくりと答えている。
「形は四角かったです。…味付けも強くないのは覚えています。甘酸っぱさが優しい感じでした。…でも、作り方は知りません。」
「えぇ?…料理を習ってたんじゃないの?」
「…あの人にとっても、アップルパイは特別な思い入れがあるようでした。…もっと私が料理上手になったら教えてくれるって言ってたんです。…でも、結局は教えてもらえませんでした。」
「なんで?」
「その人、…病で身体を悪くして、人知れずに半年前に亡くなりました。」
「それだと…作れないよ。困ったねぇ。…」
とケリーは話を聞き、困った表情で呟いた。
「ごめん、なさい。…………」
とリリャーも、最後には謝ってしまう。
次第に、部屋の中には気まずい空気が漂い出す。
「でもさ、用意するよ。…リリャー、任せといて。」
しかし、アニタは、二つ返事で了承してしまう。
それに対して、ばあ様が慌てて止めに入った。アニタの手を引いて、ベッドから離れると否定する。
「…待ちな!…勝手に、安請け合いするんじゃないよ。」
「いや、…ですけど!」
それでもアニタは、食い下がらない。
しかし、ばあ様も説得を続ける。
「…この娘の求めている味の料理が出来るの?…こんな貧相な村で、材料も少ないのに、一から用意するのも時間が掛かるよ。…もし違うのを用意したら期待を裏切ってしまうよ!」
「う、…それは。」
「…気持ちはわかるよ。…そんな事が出来たら奇跡だよ。…暫く頭を冷やしてきな。」
「ほら、あたしが付いて行くから、向こうに行くよ。」
「……はい、……。」
やがてアニタは諭され、肩を落とす。
すかさずケリーが隣に来て、彼女を伴ないながら部屋を退室して行った。
「形は四角かったです。…味付けも強くないのは覚えています。甘酸っぱさが優しい感じでした。…でも、作り方は知りません。」
「えぇ?…料理を習ってたんじゃないの?」
「…あの人にとっても、アップルパイは特別な思い入れがあるようでした。…もっと私が料理上手になったら教えてくれるって言ってたんです。…でも、結局は教えてもらえませんでした。」
「なんで?」
「その人、…病で身体を悪くして、人知れずに半年前に亡くなりました。」
「それだと…作れないよ。困ったねぇ。…」
とケリーは話を聞き、困った表情で呟いた。
「ごめん、なさい。…………」
とリリャーも、最後には謝ってしまう。
次第に、部屋の中には気まずい空気が漂い出す。
「でもさ、用意するよ。…リリャー、任せといて。」
しかし、アニタは、二つ返事で了承してしまう。
それに対して、ばあ様が慌てて止めに入った。アニタの手を引いて、ベッドから離れると否定する。
「…待ちな!…勝手に、安請け合いするんじゃないよ。」
「いや、…ですけど!」
それでもアニタは、食い下がらない。
しかし、ばあ様も説得を続ける。
「…この娘の求めている味の料理が出来るの?…こんな貧相な村で、材料も少ないのに、一から用意するのも時間が掛かるよ。…もし違うのを用意したら期待を裏切ってしまうよ!」
「う、…それは。」
「…気持ちはわかるよ。…そんな事が出来たら奇跡だよ。…暫く頭を冷やしてきな。」
「ほら、あたしが付いて行くから、向こうに行くよ。」
「……はい、……。」
やがてアニタは諭され、肩を落とす。
すかさずケリーが隣に来て、彼女を伴ないながら部屋を退室して行った。
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