～前世の知識を持つ少女、サーラの料理譚～

間章 驚愕な話

８

　その様子にサーディンとエピカは、視線を合わせた。互いに不思議そうに首を傾げたものの、すぐに再び向き直って話を再開しようとする。
　「それでですね、リリャーさん。…」
　「えっと、…。」
　「はいはい、…ちょっと待ちなさいなね。」
　しかし途中で、ばあ様が双方の間に入って制止をし、
　「え？…いや、…ですが、…」
　「いいから。…皆、…ちょっと此方に来なさいね。」
　と、部屋から出るように促していく。
　扉越しにいるサーラとアニタも、慌てて離れていき、控え室にある食器棚の影に身を隠した。
　次の瞬間には扉が開き、大人達が退室してくる。
　同時に、ばあ様が「ケリーさん、ちょっとリリャーさんに、ご飯を持って来て頂戴」と指示をだした。
　すぐにエピカも、ばあ様に問いかける。
　「あの、どうしたんですか？…彼女、様子が変ですけど、…。」
　「ううむ。…」とばあ様も苦々しい表情で、説明をしだした。
　「どうも精神的にも、弱っているみたいさね。…返事も上の空だし、あれじゃあ、難しい話も頭に入らないよ。」
　「左様ですね。…ですが、このままにしておけませんし、…。」
　「村長婦人、…なんとか治療してさしあげる事は？」
　「あたしゃ、ちゃんとした医者じゃないよ。…こればっかりは、専門医に診察してもらうしかない。…それに治療しても一朝一夕で治らんよ、少なくとも何ヵ月と続けないと。」
　「ならば、街に連れていくしかないのう。」
　「それしかないですかね、村長さん。」　
　「馬鹿だね、アンタ。…今は体力も落ちているんだ。…此処から街までの長旅で無理はさせられないよ。」
　「そうですよね。」
　彼女の説明に、サーディンとエピカは腕を組みながら、悩み唸ってしまう。