～前世の知識を持つ少女、サーラの料理譚～

間章 驚愕な話

６

　「そういえば、…貴女が背負っている赤ちゃんって、……もしかして？」
　「えっと、その。…」
　サーラは視線を反らし、有耶無耶に誤魔化そうとする。しかし、しどろもどろな様子に相手も、なんとなく察したようだ。
　「はい、その娘の背負っているのが、リリャーさんの子供です。…うちの村で、その娘が殆ど付きっきりで世話をしていたのですじゃ。」
　と村長が代わりに事実を告げる声が聞こえてきた。
　「…そうだったのですか。」
　「…まぁ！」
　それに、サーディンとエピカは納得した様に頷く。さらには、ー
　「そう。…迷惑かけちゃったわね。」
　「うぅん。…迷惑なんかじゃ、ない。…」
　「でも、育児は大変だったでしょう？…夜泣きとか毎晩だったんじゃないの？」
　「この子、そんなに夜泣きしなかったわ。…ご飯だって、…ちゃんと食べて、…」
　「…まだ若いのに頑張ってたのね。…」
　と、エピカが代表して、称賛の言葉を送ってくる。しかし同時に赤ん坊の方へ悲しげな視線を向けている。
　サーディンも同じ様に見ていた。まるで同情しているようだと感じた。
　サーラは黙っていたが、不満げな表情を浮かべ、やがて口を開いて言葉を発そうとしたものの、先にエピカが移動してしまい、何も言えなかった。
　「…先に、リリャーさんに会えますか？」「まずは、彼女と話をしたいのですが…。」
　「…今は寝ているよ。…起きてくるかはわからないけど。」
　「それに今夜は、もう遅いので。明日にしませんか？…泊まれる空き家もあるので、そちらをお使いくださいな。」
　「では、そうさせて貰います。」「お世話になります。」
　「では、案内しますね。」
　「あの、出来れば明日の早い時間帯のうちに彼女と話させてください。」
　「わかりました。…様子を見てからですがね。」
　そのまま大人達は、話を纏めていき、やがて解散していく。周りの村人達も、次第に後を追いかけるように、流れて行った。
　後には、サーラと赤ん坊と、まだ不機嫌なアニタが残っていた。