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幕話3~街道での出来事

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 だが、その時に馬車道の後方から、別の豪華な馬車が凄い速さで迫ってきていた。
 若い商人は咄嗟に気がつき、慌てて手綱を操作して馬車を路肩に移動させ停車させた。
 その直後に、豪華な馬車は追い越してしまい、あっという間に遠くへ離れていく。全く速度が変わらないようだった。豪華な馬車の後方では、白い鳥の紋章が描かれた深紅の旗が激しく靡いているのだった。
 その様子を若い商人は確認し、声を張り上げて文句を言う。
 「馬鹿やろう!!…危ないだろうが、何処に目をつけてやがる!!」
 「ふん!!」
 しかし、すぐに中年の商人が拳骨を浴びせてきて、
 「痛ってぇ!?…何すんですか?」
 「馬鹿はお前だ!…あの旗を見ろよ、あの紋章は此処等の領主様が使う奴だぞ!…今の領主は侯爵様だ!…それも王家の側近の中で最も有力者だぞ!!」
 「えぇ!!?」
 「下手に今の言葉を聞かれでもしたら、不敬罪で俺達の首が跳ねられても文句を言えんぞ!」
 と叱責している。
 若い商人は顔色を青しながら、肩を震わせて怯えだした。
 中年の商人も呆れて、小さくため息を吐く。
 そのまま二人は姿勢を直して前方を確認すると、豪華な馬車が向かって行った方角を眺めだす。
 「…あの馬車、あんなに急いで何処に行くんですかね?」
 「この先に向かうんなら、幾つかある小さな村か、山を超えて内陸部に向かうんだろう。」
 「もしかして、あの娘のいる村だったりとか?…ちょっと心配ですよね。」
 「さぁ、知るかよ。…よっぽど大事な用事なんだろう。…俺達には関係ない。」
 「そ、そうっすよね。…」
 「…もう、いいから走れよ。」
 と中年の商人は話を締めくくると、指示をだした。
 すぐさま馬が緩やかに動きだし、再び馬車は揺れながら前に進んでいく。
 しかし、商人達は先程と比べて、そわそわと落ち着かない様子をしていたのだった。
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