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幕話2 三日前の山の異変

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 深夜、ーー。
 分厚い雲の晴れ間から、満月の光が差し込んで辺りを照らす。
 既に日付が変わる時刻だった。村の家々には灯りが消えており、住人達は殆どが就寝している。
 表通りも閑散としていて、ただしんと静まりかえっている。冷たい夜風だけが吹き行くだけである。
 だが、しばらくして黒い何かが、道を横切ったようだった。
 それは人間の女性だ。フード付きの外套を纏い、自身の正体を伏せているようだ。だが、フードの隙間からは、長い茶色の髪や色白の整った顔を覗かせている。また小柄で華奢な体格だが、かろうじて成人のようだと解り、ふくよかな胸が服越しにもハッキリと主張して、動く度に上下に揺れている。
 さらに女の胸の辺りには、小さな赤ん坊が布にくるまれ、両手で大事に抱き抱えられていた。たまに蠢いており、小さな泣き声も微かに聞こえてくる。
 すると女は周囲の家屋を見渡す。その内の一軒に当たりを付けたら、おもむろに納屋へと向かって行って扉に手をかけると、ゆっくりと何の抵抗もなく開かれた。
 「あうぅ…。」
 「あぁ、泣かない。…泣かないで。」
 ほぼ同時に、赤ん坊が激しく泣き出していた。
 すかさず女も必死にあやす。やがて静かになると、赤ん坊を納屋の床の空いたスペースへと寝かしてから、踵を返して走り出した。去り際に「待っててね。」と、か細い声で呟いたようだったが、誰にも聞かれる事なく霧散してしまった。
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