～前世の知識を持つ少女、サーラの料理譚～

４話 野菜のポトフ

８

　ほぼ同時に、他の大人達は溜め息を吐いており、渋々と納得した様子となる。
　それから村長は、
　「それで話が纏まったなら、ワシ等は何も言うまい。…とりあえずは、お主も村の一員として歓迎はするぞい。」
　とだけ言い残すと、そそくさと踵を返して出入り口へと向かっていく。
　それを合図に、他の者達も各々の行動に移っていく。
　「…なら。…俺の方でもハンター連中に、声かけとくぜ。…もしかしたら、探し人の痕跡が山の何処かで見つかるかもしれないからな。」
　「じゃあ、…あたしも村の女性陣にも伝えておくわ。」
　と親方とケリーも声をかけた後に、帰り支度を行い、後に続いて去ったのだった。
　アニタも席を立ちつつ、出入口へと向き直り、離れていく後ろ姿へと静かに一礼していた。やがて姿勢を戻すと、親子の方へと向き直っていた。
　「まぁ、とりあえず。…もう僕らも帰ろうか。」
　「うん。…お父ちゃん。」
　「じゃあ、アニタさんも付いてきてよ。」
　とロンドが声を掛けながら、席を立って歩き出す。
　すぐにサーラも荷物を纏めると、後を追いかけていき、横並びに揃って施設の扉から外に出ていき、家路を急いでいく。
　アニタも親子の後を、ゆっくりと付いていくのだった。