～前世の知識を持つ少女、サーラの料理譚～

４話 野菜のポトフ

３

　だがアニタは気にも止めずに、話しを続けていく。
　彼女曰く、当時のリリャーは身重の体で、出産も間近に迫った状態で日々を過ごしていた。ただし父親は同居しておらず、相手の都合で出産までは別々に暮らしているらしかった。
　そんな現状を聞いて、アニタは憂いた。それからリリャーの家に転がり込んで、寝食を共にしていき、料理以外の家事を手伝っていたらしい。
　二人で暮らした日々は、それなりに楽しかったと断言していた。
　だが、ある日に事件は起きた。
　アニタはハンターの仕事で、暫く街を留守にしていたが、ー
　その間にリリャーが産気づき、急いで医者に運ばれて子供を産んでいた。
　それからアニタは、【ネオマルフィア】へ戻って来て、全ての知らせを聞いて、慌てて医者に向かったのだった。
　しかし何故か、リリャーの姿が忽然と消えてしまっていたらしい。自宅に戻ってみても同じであり、家具や家の物が置き去りにされたまま、もぬけの殻だった。……とアニタは話を締めくくっていた。