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3話 蜂蜜の猪ステーキ
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その部屋は、入ってすぐ側に簡単なキッチンがある。釜戸が四つと水場があるだけだが、村で一般的な設備よりも大きい。また近くにも、質素ながらテーブルも設置されていた。
そのテーブルでは、幾人かの女性スタッフと村の御婦人達が揃い踏みしていた。数多くの調理道具や、大量の野菜を用意しており、各々が料理する準備を進めている。
さらには、最も妙齢の女性が大きな肉を切り分けて、部屋の中にいる人々へと配分している。手にしているのは、先程の仕留めた猪の肉である。赤く色ついた肉は綺麗に解体や血抜きと鞣し作業がされて、余すことなく使用できるようになっているようだ。
「あいよ、これらはサーラちゃんの分だよ。」
「はい!…は~い!!」
とサーラも混じわりつつ、真っ先に肉を受け取るや否や、人一倍に部屋の中を動き回っては、同じ様に準備をしていた。抜き手も見せない動きで最も手際が良い。
ふと彼女の作業するテーブルの側では、添えられた椅子の座面には大きめな籠が置かれており、中では赤子が寝かされているようだった。
すぐさま村長は気がつくと、隣の椅子へ寄っていき、ゆっくりと腰かける。
その様子にサーラも気がつき、話しかけてきた。
「あら、村長さん。…いらっしゃい。」
「…邪魔するわい。…ワシの事は気にせんでな。」
と村長はぶっきらぼうに言い、鼻を鳴らすと、すぐに明後日の方を向いてしまう。だが時折、何度も横目で伺いながら、赤子やサーラを見ているようだった。
サーラは不思議に思いながらも、気を取り直して調理に移っていく。
そのテーブルでは、幾人かの女性スタッフと村の御婦人達が揃い踏みしていた。数多くの調理道具や、大量の野菜を用意しており、各々が料理する準備を進めている。
さらには、最も妙齢の女性が大きな肉を切り分けて、部屋の中にいる人々へと配分している。手にしているのは、先程の仕留めた猪の肉である。赤く色ついた肉は綺麗に解体や血抜きと鞣し作業がされて、余すことなく使用できるようになっているようだ。
「あいよ、これらはサーラちゃんの分だよ。」
「はい!…は~い!!」
とサーラも混じわりつつ、真っ先に肉を受け取るや否や、人一倍に部屋の中を動き回っては、同じ様に準備をしていた。抜き手も見せない動きで最も手際が良い。
ふと彼女の作業するテーブルの側では、添えられた椅子の座面には大きめな籠が置かれており、中では赤子が寝かされているようだった。
すぐさま村長は気がつくと、隣の椅子へ寄っていき、ゆっくりと腰かける。
その様子にサーラも気がつき、話しかけてきた。
「あら、村長さん。…いらっしゃい。」
「…邪魔するわい。…ワシの事は気にせんでな。」
と村長はぶっきらぼうに言い、鼻を鳴らすと、すぐに明後日の方を向いてしまう。だが時折、何度も横目で伺いながら、赤子やサーラを見ているようだった。
サーラは不思議に思いながらも、気を取り直して調理に移っていく。
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