～前世の知識を持つ少女、サーラの料理譚～

２話 野菜のパン粥

５

　そうして流れに乗じて、村の住人達も次々と、玄関を潜り抜けていく。
　「さぁ、私も帰って準備しないと。…サーラちゃん、その赤ん坊と一緒に後で家に来なさいな。」
　とケリーも言い残すと、後に続いて玄関を目指して歩きだす。
　彼女の去り際の姿を、サーラは見送っていたが、
　「じゃあ、組合長さん。…さすがに僕も今日は早退けさせてもらうよ。」
　「そうですね、ロンドさん。…では、スタッフの誰かに伝えに行ってもらいます。」
　「よろしくお願いいたします。…じゃあ、サーラ。…帰ろうか。」
　「あ、は～い。」
　とロンドに促されてしまい、急いで後を追いかけていき、建物から出ていった。

　※※※

　暫しの後、ーー
　夕日が沈みだし、辺りは茜色に染まる頃となる。
　表通りを行き交う村人達が、各々の仕事や用事を済ませて急ぎ家路につこうとする姿があった。
　その様子を自宅の窓越しに、サーラは眺めながら赤子をあやしていた。やがて時間を見計らい頃合いとなると、ーー
　そのままの状態で一階に赴き、居間のキッチンの棚や床下の氷室から、残った幾つかの食材を纏めて布に包んで出かける準備を終えた。
　「サーラ、…出かける準備は出来たかい？」
　すると、ちょうどロンドもやってきて、質問する。
　サーラも、振り向き様に答えた。
　「うん、終わったよ。」
　「じゃあ、そろそろ一緒に行こうか。」とロンドも呟き、すぐに準備を整える。