ある島国の軍人は異世界へ

太郎

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第十九話 仕事を探します

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─カルロ公国 ガゼルト街─


この国で仕事を探す──さて、どうしたものでしょうか。

スズムラは考え込む。
──職業斡旋所や、ギルド支部のような場所があれば良いのですが、どうやらそのような場所は無いようです。
この国の皆さんは、どうやって職を得ているのでしょうか。
近くの雑貨店を見て回っていると、店内に紙の束が沢山置いてある場所を見つけました。
その紙は大きさはどれも同じですが、書かれている内容が、全部違うようですね。
その沢山の紙は、私が今まさに探している求人の紙でした。

──道路清掃、店の窓拭き、飲食店の店員、農作業の助手、公道の整備。
中には期限の切れている求人紙も混ざっていますね。

───軍の兵士募集というのもありますね。
16歳以上で健康である事とあります。

「………」

他にも色々とあります。
───ふむ、有望なのは商会の護衛でしょう。
商会とはいわば会社であり、お金を沢山持った方々が大勢おられます。
つまり権力に繋がる可能性もある訳です。

護衛任務の中で一番報酬の良い場所は……グルトリン商会ですね。
一ヶ月の報酬は金貨4枚と銀貨35枚。別途実績報酬有り、とあります。
資格は全て空欄になっており、備考欄に『適正審査を確認した上で採用』、となっています。

しかし。
商会は裏で何をしているか、分からない部分があります。
なんらかの犯罪の片棒を担がされて、この国で認められる所か、犯罪者になる可能性もあります。
というのも、この国へ至るまでに様々な「商品」を拝見する機会がありました。
その中には人も含まれていたのです。
私の任務に支障が出る可能性がありますので、これは止めておきましょう。

──他は……
目に留まったのは、迷宮探索の助手。
仕事内容はガゼルト街近くにある、アルナス迷宮内部の魔獣討伐、財宝の発掘とあります。
資格…生き延びられる自信がある事。

報酬は───『時価』とだけ書いてあります。どういう意味なのでしょうか。



††††††††††††††††††††††††††††††††



迷宮探索の助手を募集しているという、ボルツェさんという方を訪ねて、街の北の方へ来ました。
かなり古びた建物が立ち並ぶ所です。
目的の建物に表札はありませんが、おそらくここで合っているでしょう。
その建物はレンガ造りの小さな小屋で、屋根が深緑色に塗ってあります。かなり以前に塗られたようで、所々塗装が剥げています。

ドアをノックすると、中から男性が出て来ました。年齢は50歳前後という所でしょう。

「あん?おめぇ……泥棒……じゃねぇな」

見た瞬間に分かる、彼……ボルツェさんから放たれる鍛えられたオーラ。

「初めまして。迷宮探索の求人の紙を見て窺ったのですが、今お時間よろしいでしょうか?」

「……おっ、助手希望者か!?」

ボルツェさんの目の色が変わりました。

「ええ、私の名前はスズムラ・ジロウと申します。是非、迷宮の助手として雇っていただけませんか?」

「こりゃ助かるぜ。誰も来やしねぇから、諦めようかと思っていたんだ」

ボルツェさんが手を差し出して来ましたので、それを握り返します。

「俺の名前は…ボルツェだ。よろしく頼むぜ」

「ありがとうございます。ちなみに、報酬の方ですが、『時価』とありましたが、あれはどういう意味でしょうか?」

「ああ、あの迷宮には『ダイヤウルフ』が出るんだ。討伐すれば『ダイヤ』ゲットだぜ。全部おめぇにくれてやるよ」

「ダイヤですか、あの宝石の……」

「ああ、大物なら軽く金貨100枚にはなるぜ」

「それは凄い。精一杯頑張らせて頂きます」

「そうか。───んで、いつから探索に行ける?早ければ早い方が良いんだが」

何やら、かなりお急ぎのご様子です。

「私の連れも同伴させたいのですが、よろしいですか?」

「構わねぇぜ。もちろん死んでも手当ては無いぞ?」

「ありがとうございます。とりあえず三日後の夕方ごろ、またこちらを伺ってお答えしてもよろしいですか?」

まだ寝泊りする場所すら、確保できたか分からない状態です。
まずは生活基盤を確保する必要があります。

「わかった。できるだけ早く頼むぜ」

「わかりました」

まずは中央通りの、噴水広場へ行きます。
そこで"隻腕姫"と相談して、今後を決める事としましょう。




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