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第二話 ラスト・ラフ
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『男は”ホワイトナイト”を自称し、無許可で市民の避難誘導・救助活動を行っているとのことです。活動拠点は主に黒老町とみられ、警察はこれを迷惑行為とし──』
朝食を食べ終えてニュースを見ていると、後ろから階段を降りる音が聞こえてくる。
振り返ると妹のレイが酷く眠そうな顔で、俺が座っているソファまでやって来た。
「おはよう、レイ。まあもうすぐ昼だけどな」
「おはよー……。あれ、テレビに映ってるこの人だれ?新しいヒーロー?」
「いや、無許可でやってるみたいだから自警団だな。邪魔されたら警察も殴ったりしてるらしい」
「うわあ、手荒だね」
この国ではヒーローと呼ばれるのに明確な試験はない。
だから国から災害救助の許可証を貰って活動をしたり、ヒーローの元で働いたり弟子入りしたり、とにかく正式に実績を積んで政府や市民から信頼を得ることで初めてヒーローと呼ばれる。
それをせずにコスチュームを着て暴れているのはただのコスプレ人間だ。
まあ中には最初から許可をとるつもりがなく、勝手にヒーロー活動をする人もいて、そういった人たちは自警団と呼ばれる。公式ではないが。
「それで、どうせ見に行くんでしょ」
「そうだな。黒老町なら確か4日後にどっかの野良ヴィランが事件を起こす予定を立ててる筈だから、仕事休み取って見に行ってくる」
「分かった、じゃあその日はみんなで焼肉王子に行ってくるね」
「良いじゃないか。最近のハニー達は頑張り過ぎだから、一日くらいサボっても大丈夫だろ。楽しんできな」
「……冗談だよ。特に黒川さんはウィルに懐いてるし、ちゃんとウィルも居る時に行こう」
「懐いてるってほどかな。でもありがとう、レイ」
『続いては、今もっとも注目されている大人気ヒーロー、ルミナスの特集です──』
────────。
「はいこれ、許可証ね。戦闘区域には近づかないで、なるべく一人で行動しないように」
「ありがとうございます」
黒老町の役場で災害救助の許可証を貰い、首にぶら下げる。
もちろんおいそれと貰えるものではない。特に俺のような立場でも手に入るのは単純にコネだ。
後は誰か都合のいい人が居たら行動を共にしたいところだが──。
「おや!君はもしかして救助活動に向かうのかい!」
「ん、俺?」
「そう、そこの君だ!」
活発な声で話しかけられる。声の主は20代前半くらいに見える好青年だ。
「オレの名前はルミナス!もちろんヒーロー名だ!市民にとって希望の光になれるようにって意味さ!カッコいいだろ!」
「ああ、そういえばテレビで見たことがあるような」
「いやー照れるね!アレはあちらさんがどうしてもっていうから仕方なく承諾したんだけど!」
ルミナスは手を頭の後ろに当てながら、はっはっはと大声で笑う。だが表情は真顔で、正直言って少し怖い。
「あの、先輩。オレも自己紹介いいっすか?」
「ああもちろん!こっちは後輩のライトピラー!将来有望なヒーローの卵さ!」
「ま、まだまだ新米ですけど、よろしくお願いします」
後ろから少し控えめに若者が姿を見せる。
というか勝手に話が共に行動する方向で進んでいる気がする。別に良いけど。
「よろしく。俺はウィルだ、きみの言う通りこれから救助活動に向かうつもりだよ」
「そうか!ウィルくん、最近この辺の地域には自警団という非公認のヒーロー活動をしている人が居る!君の安全のためにも、よければ我々と行動しないか?」
「そうなのか、それは怖いね。俺からも同行をお願いしていいかな」
「決まりだね!」
こうして俺は、ヒーローとその卵の3人で行動を共にすることになった。
────────。
「もう大丈夫だよ!ほーら笑って、ニッコリ笑顔!」
「先輩、全然笑顔になってないっす」
逃げ遅れた市民の避難誘導、ケガをした市民の応急手当、そしてメンタルのケア。
ヒーロー歴が5年というだけあって、どれをとってもルミナスは流石の手腕だった。
「それにしてもウィルくんは手慣れてるね!ひょっとして将来はヒーロー志望かい?」
「いや、そんな大層なことは目指してないよ。ただ仲のいい友達の故郷だからってだけさ」
「立派じゃないか!ヒーローになりたかったらいつでもオレに言ってくれ、二番弟子にしてあげるよ!一番はライトピラーくんだけどね!」
「光栄っすね」
適当な嘘ではぐらかす。今のところの印象はただの根明って感じがするが。
一通りの救助を終え、ルミナスが次の指揮をとる。
「よし、この区域はこれで全部だね!次の場所に──」
「……先輩?どうしたんすか」
「君たちはオレの後ろに!前に出ちゃダメだよ!」
ルミナスが俺たちを何かから庇うように前に出る。彼の背中越しに前を覗くと人影が見えた。
フード付きの白いマントコートに大柄な体格。顔は覆面で見えない。そして、背中に背負っているのは剣だろうか。あの姿は……。
「君はホワイトナイトだね?最近ニュースになっているよ」
「誰だ、お前は」
「オレの名前はルミナス!もちろんヒーロー名だ!市民にとって希望の──」
「ヒーローなら口を動かす前に行動で示せ」
まるで関心がないかのように吐き捨てて立ち去ろうとする。それをルミナスが引き留めた。
「待ってくれよ!君は無許可で活動している、ヒーローとして見過ごすわけにはいかない!」
「……ならどうする?私の邪魔をするなら力づくで──」
「邪魔なんてしないさ!一緒に行動しよう!それなら君は合法で活動できる、俺も活動を再開できる、一石二鳥さ!」
「……私は私のやり方でやる。付いてくるなら勝手にしろ」
「うん、話の分かる人で助かった!ふたりとも、行くよ!」
二人の話し合いの結果、共に行動する方向で決定したようだ。
だがそれにライトピラーは少し不安そうな顔をする。
「本気ですか!?」
「俺は構いませんが」
「ウィルさんまで!」
「まあいざという時は守ってくださいよ」
相手はただの変なおっさんっぽいけど。
するとルミナスが何やら円陣を組もうとしていた。
「よーし、これから我々は4人のチームとなって……って、待ちたまえ!ホワイトナイトくん!」
「馴れ合いをする気はない」
「こういうのは団結力がだね──」
ホワイトナイトを先頭に、他のふたりが続いていく。
さて、見極めさせてもらおうじゃないか。
────────。
「一人で歩けるか?よし。あそこに消防吏員が見えるだろう、あの人の指示に従って──」
4人で行動を始めてから、活動はよりスムーズになった。
単純な力仕事はもちろんのこと、ホワイトナイトはケガ人に対する処置も適切だった。
彼がどれほど活動してきたのかは知らないが、一朝一夕で身に着くものではないだろう。
「ホワイトナイトくんのおかげでこの区域もずいぶんスムーズに避難が進められてるね!」
「さっさと次に行くぞ」
「君もちゃんと申請すればすぐにヒーローになれるだろうに」
「そんな時間があれば人を助ける」
「おい、お前さっきから聞いてれば先輩に失礼じゃないか?」
「……なに?」
ライトピラーが食って掛かり、ホワイトナイトは彼を睨んで応じる。
「まあまあ、ライトピラーくん。落ち着いて」
「でもこいつが救助活動出来るのは先輩がいるお陰なのに!なのにずっと偉そうな態度じゃないですか!」
「私はお前たちが居なくても活動できる。先輩が居ないと何もできないお前と違ってな」
「……っ!」
「ダメだよ、ライトピラーくん」
明らかに苛立ってる彼をルミナスが制止する。
不意に、空からゴロゴロと音が鳴り響く。気付けば分厚い雲が空を覆っていた。これは一雨降りそうだ。
視線を空から地上へ戻すと、ホワイトナイトが俺の方を向いていた。
「お前もヒーローを目指しているのか?」
「俺?あいにくヒーローって柄じゃないね」
「賢明な判断だ。政府や市民に媚を売るやつらにはなるもんじゃない」
「お前……!」
「まあまあ、ふたりとも落ち着いて」
ルミナスがなだめているが、険悪な雰囲気が続く。
正式な手段でヒーローになろうとしている男と、自分の力で正義を執行している男。まさに水と油だ。
「誰かーーー!助けてくれーーー!」
「!!!」
叫び声が聞こえると同時にルミナスとホワイトナイトが即座に向かう。遅れて俺とライトピラーも後を追いかけた。
「……これは」
「助けてくれ!弟が!ボクの弟なんだ!」
燃え上がり、倒壊した家。その側に居たのは子供の兄弟。
兄の方は軽い切り傷で済んでいるが、弟の方はひどい火傷だ。煙を吸ってしまったのか、意識も朦朧としている。
「すぐに助ける」
「オレも手伝います!」
「待て、ライトピラーくん!君はお兄さんの方を手当しろ!」
「え、でも先輩!」
「その子はもうダメだ!見れば分かるだろう!」
「……え?」
ライトピラーが目を丸くする。ホワイトナイトは気にせず手当を始めた。
「せ、先輩?何言ってるんすか」
「君もだ、ホワイトナイトくん!その手当が無駄だということくらい分かるだろう!」
ルミナスの言葉を無視して、彼は手当を続けている。
「おい、無駄だってどういうことだよ!弟はまだ生きてるだろ!」
「聞くんだ、少年。君はまだ若い、きっと辛い日々が続くだろう。だがいつか、それを乗り越えられる日が必ず来る」
「だから!弟が死ぬみたいなことを言うなよ!」
子供がルミナスに食って掛かる。
しかし彼はそれを軽くあしらった。
「そうですよ先輩、まだ死ぬと決まったわけじゃ──」
「君もヒーローを目指すなら覚悟を決めろ。すべての命が助けられるわけじゃない。そして今こうしている間にも、助けを求めてる声があるんだ。我々はそれに応じなければならない!」
「……そんな」
立ち尽くすライトピラー。彼は行動できないと判断したのか、ルミナスが俺の方を向く。
「ウィルくん、お兄さんの方を頼んでいいかい?手当と、それから避難所まで付き添いを」
「ふざけんな!ボクは弟から離れないぞ!」
「君のためなんだ!辛いのは分かるが──」
「お前なんかに分かるもんか!」
「ルミナス、耳を貸せ」
このままでは埒が明かない。
彼を手招きして、耳元で小声で話しかける。
「今は無理やり引きはがす方が危険だ。この子は俺が責任をもって守る、それでいいか?」
「……はぁ。分かった、君の判断に任せる」
しぶしぶといった様子で承諾される。
「行くぞ、ライトピラーくん。オレ達は次の区域に向かおう」
「でも……」
「しっかりしろ!まったく、なぜ誰も最善の行動を取らないのか……」
ライトピラーの手を無理やり引っ張り、ルミナスが立ち去っていく。
俺は子供の兄の手当を始めた。
「沁みるが我慢しろ」
「痛っ!……ねえ、弟は大丈夫だよね?助かるよね?」
「……まずはきみが助かることを考えるんだ」
子供は不安そうな顔から変化しない。あいにく俺にはこの子を笑顔にできる手段を持ち合わせていない。
だから俺はヒーローなんて柄じゃない。
手当を終え、弟の元に向かう。
「ホワイトナイト、そっちはどうだ」
「……」
どうやら処置は終わったようだった。だが彼は顔を俯いて動かさない。
「にい……ちゃん」
「りつ!」
弟がか細い声を発し、兄がすぐ側に駆け寄る。
「あつい……あついよ……」
「大丈夫だ、りつ!兄ちゃんが居るからな!ここに居るからな!」
「兄ちゃん……」
弟の目が閉じていく。
雨が降って来た。
「おい、目を開けろって。りつ、聞こえてるか?なあって!」
「あつい……」
「いやだ、いやだいやだ!」
土砂降りだ。
雨の音以外、何も聞こえない。
ホワイトナイトが、ふたりの子供を雨から守っていた。
────────。
「ホワイトナイトくんじゃないか。あの兄弟は助けられたかい」
「先輩、そんな言い方……」
兄弟を避難所に送り届けた後、俺たちの前に現れたのはルミナスとライトピラーだった。とはいえ、ライトピラーの方はかなり気まずそうにしているが。
ルミナスは何事もなかったかのような表情で言葉を続ける。
「だから言っただろう、もう助からないと。そんなことは君も分かっていた筈だ。君が無駄にした時間で、オレ達が何人の命を救ったと思う?」
ホワイトナイトが拳を強く握りしめたのが見えた。
「現実が受け入れられなかった?それとも、人の死に立ち会うのは初めてだったのかな?良かったじゃないか、それなら今回はいい経験になっただろう」
「貴様ァ!」
声を荒げながらホワイトナイトがルミナスの顔面を殴り飛ばす。そのまま胸ぐらをつかみ詰め寄った。
「子供が死んでいるのに、よくもそんなことを言えるな!それでもヒーローか!」
「そうさ、オレこそがヒーローだ!君じゃなくて、ね!」
「ぐあっ!」
ルミナスが頭突きをし、ホワイトナイトが怯む。そのまま立て続けに体当たりをブチかました。
「君はヒーローが何たるかを分かっていない!多くの命を助けるために、命を見捨てる決断をしなければならない時がある!それが出来ないのは、君の考えが甘いからだ!」
「助けを求めている子供の声を聞かない者の、どこがヒーローだというんだ!」
再びホワイトナイトが殴りかかる。ルミナスも今度は避けて反撃に出るが、彼もそれに応じる。激しい攻防戦が始まった。
「おー、あのおっさんやるねえ。ただのコスプレ男じゃないんだ」
「感心してる場合じゃないですよ!早く止めなきゃ!」
「いや、俺たちが下手に介入したらケガじゃ済まないぞ。それよりも避難した人たちが巻き込まれないように誘導しよう。俺はこっちを担当するから、ライトピラーくんは向こうを頼む」
「わ、分かりました!」
若干パニックになっているのか、指示をするとライトピラーはあっさり素直に従って行動する。
都合がいい。俺は二人の戦いを見物させてもらうとしよう。
視線を戻すと、ルミナスがホワイトナイトの胸を肘で打ったところだった。
「がはっ!」
「はぁ、はぁ、はぁ……。ずいぶん鍛えてるんだね、でもその思考じゃヒーローにはなれない。時には必要な犠牲ってものがあるということを、認められないならさ」
「必要な犠牲という言葉は、ヒーローが使うものではない……」
「……まるで夢想家だね。君みたいなやつには付き合ってられない、なあ!」
ルミナスが殴り飛ばし、ホワイトナイトの身体が地面に倒れる。
「ごほ……っ、貴様のようなやつは、ヒーローではない……」
「まだ立ち上がるの?君ってホントにタフだね」
「貴様とはもう、話したくもない」
「奇遇だね、オレもだよ」
ホワイトナイトが背中の剣を取り出す。
その瞬間にルミナスが距離を詰め、腕を狙って蹴り上げた。
剣が宙を舞い、俺の近くの岩に突き刺さる。
「武器を使うタイプの相手は、こうやってすぐに無力化するのが──」
「ぬおおおおあああああ!」
「おわっ!?」
渾身の体当たりをして、ホワイトナイトがルミナスの上に馬乗りになった。
そのまま拳を振りかざし、ルミナスの顔面に打ち付ける。
「がっ!」
何度も何度も。
「ぐっ!ぎゃっ!」
何度も何度も。
「ぐあ……っ!」
ホワイトナイトが攻撃の手を止める。よく見ると、彼の太ももに光のトゲのようなものが突き刺さっている。
あれがルミナスの能力か。
「調子に乗るなよ、このクソ野郎が……!」
「ふぅー、ふぅー……」
「こんなことをして許されると思ってるのか?オレは政府公認のヒーローだぞ!そしてそのオレに手を上げた君はただの犯罪者、ヴィランだ!」
彼はルミナスの言葉を無視して自身に突き刺さった光のトゲを抜き、そのトゲを振り上げる。
そしてそれをルミナスに目掛けて──。
「おい待て、待て!本気か!?イカれてるのか!?」
「うおおおおおおおおお!」
「ひっ!」
ルミナスが両手で目を覆う。
「ごふ……っ!」
「……!?」
ホワイトナイトが吹き飛び、岩に叩きつけられた。
俺が蹴り飛ばしたからだ。
「……」
「な、なんだ、なにがおきた?」
「……」
「ウ、ウィルくんか?た、助かったよ。あのイカれ野郎、マジでふざけやが──」
「助かったと思うか?」
「は……?」
ルミナスの首を、剣で叩き切る。
それは勢いよく吹き飛び、転がっていった。
「……ひいっ!?」
「あ、ライトピラーくん。戻ってたんだね。ごめんごめん、そっちに汚いもの飛ばしちゃって」
「う、うわああああああ!?」
彼は悲鳴を上げながら、すごい速さで走り去ってしまう。
「あらら、悪いことしちゃったかなあ」
「……お前、ヴィランだったのか」
声が聞こえた方向を見れば、岩に寄り掛かりながらホワイトナイトがこちらを見ていた。
「わ、すごい。まだ意識あるんだ。あとヴィランじゃなくて悪の組織。ほら見て、このイヤリング」
「騙したな……」
「良いやつの振りが出来ない悪いやつは居ないんだぜ?」
力なく地面に座り込んでいるホワイトナイトの側に寄り、救急箱を置く。
俺を掴もうとしてきたので軽くあしらう。
「意識あるなら、手当は自分でしてね。どうせ心得てるでしょ」
「……何のつもりだ」
「俺は快楽殺人犯じゃないからね、無差別に殺したりはしない」
「何にせよお前は人殺し、私の敵だ……」
「じゃあ戦うかい?俺は元気いっぱいだから構わないけど」
「……」
俺の言葉を無視して手当を始めたので、彼に戦う意思はないと判断する。
「あ、この剣勝手に借りといてなんだけど貰っていい?ハニー達……仲間の中に、こういうの好きな子がいてさ」
「好きにしろ、人殺し」
「サンキュー。んじゃ、用はそれだけ。お大事に」
「おい、ウィルといったか」
「そうだよ、なに?」
背中を向けようとしたところを彼に呼び止められる。
気付けばいつの間にか、雨は止んでいた。
「お前の顔は覚えた。必ず捕まえる」
「……今のきみに出来るのは、気に食わないやつを殺すことだけだ。さっき未遂に終わったようにね」
「人殺しが説教か」
「きみがそう思うならそうなんじゃない、俺にはどうでもいいことだけど」
手当を終えた彼は両手を放り出して、岩に寄り掛かっている。死にはしないだろう。
「私は間違っているとでも?」
「知らないよ、その答えはきみの中にあるんだから」
「……」
「不服そうだね。じゃあヒントを上げよう。俺は悪いことをしている、だが間違ったことをしているとは思ってない」
「どういう意味だ」
「今日会ったばかりのきみにそこまで教える義理はないね」
ホワイトナイトの表情は覆面で見えない。ただ黙ってこっちを向いている。
「それじゃ今度こそ帰るわ。ばいばい」
「……」
雲が割れる。夕日が彼を照らしていた。
<了>
朝食を食べ終えてニュースを見ていると、後ろから階段を降りる音が聞こえてくる。
振り返ると妹のレイが酷く眠そうな顔で、俺が座っているソファまでやって来た。
「おはよう、レイ。まあもうすぐ昼だけどな」
「おはよー……。あれ、テレビに映ってるこの人だれ?新しいヒーロー?」
「いや、無許可でやってるみたいだから自警団だな。邪魔されたら警察も殴ったりしてるらしい」
「うわあ、手荒だね」
この国ではヒーローと呼ばれるのに明確な試験はない。
だから国から災害救助の許可証を貰って活動をしたり、ヒーローの元で働いたり弟子入りしたり、とにかく正式に実績を積んで政府や市民から信頼を得ることで初めてヒーローと呼ばれる。
それをせずにコスチュームを着て暴れているのはただのコスプレ人間だ。
まあ中には最初から許可をとるつもりがなく、勝手にヒーロー活動をする人もいて、そういった人たちは自警団と呼ばれる。公式ではないが。
「それで、どうせ見に行くんでしょ」
「そうだな。黒老町なら確か4日後にどっかの野良ヴィランが事件を起こす予定を立ててる筈だから、仕事休み取って見に行ってくる」
「分かった、じゃあその日はみんなで焼肉王子に行ってくるね」
「良いじゃないか。最近のハニー達は頑張り過ぎだから、一日くらいサボっても大丈夫だろ。楽しんできな」
「……冗談だよ。特に黒川さんはウィルに懐いてるし、ちゃんとウィルも居る時に行こう」
「懐いてるってほどかな。でもありがとう、レイ」
『続いては、今もっとも注目されている大人気ヒーロー、ルミナスの特集です──』
────────。
「はいこれ、許可証ね。戦闘区域には近づかないで、なるべく一人で行動しないように」
「ありがとうございます」
黒老町の役場で災害救助の許可証を貰い、首にぶら下げる。
もちろんおいそれと貰えるものではない。特に俺のような立場でも手に入るのは単純にコネだ。
後は誰か都合のいい人が居たら行動を共にしたいところだが──。
「おや!君はもしかして救助活動に向かうのかい!」
「ん、俺?」
「そう、そこの君だ!」
活発な声で話しかけられる。声の主は20代前半くらいに見える好青年だ。
「オレの名前はルミナス!もちろんヒーロー名だ!市民にとって希望の光になれるようにって意味さ!カッコいいだろ!」
「ああ、そういえばテレビで見たことがあるような」
「いやー照れるね!アレはあちらさんがどうしてもっていうから仕方なく承諾したんだけど!」
ルミナスは手を頭の後ろに当てながら、はっはっはと大声で笑う。だが表情は真顔で、正直言って少し怖い。
「あの、先輩。オレも自己紹介いいっすか?」
「ああもちろん!こっちは後輩のライトピラー!将来有望なヒーローの卵さ!」
「ま、まだまだ新米ですけど、よろしくお願いします」
後ろから少し控えめに若者が姿を見せる。
というか勝手に話が共に行動する方向で進んでいる気がする。別に良いけど。
「よろしく。俺はウィルだ、きみの言う通りこれから救助活動に向かうつもりだよ」
「そうか!ウィルくん、最近この辺の地域には自警団という非公認のヒーロー活動をしている人が居る!君の安全のためにも、よければ我々と行動しないか?」
「そうなのか、それは怖いね。俺からも同行をお願いしていいかな」
「決まりだね!」
こうして俺は、ヒーローとその卵の3人で行動を共にすることになった。
────────。
「もう大丈夫だよ!ほーら笑って、ニッコリ笑顔!」
「先輩、全然笑顔になってないっす」
逃げ遅れた市民の避難誘導、ケガをした市民の応急手当、そしてメンタルのケア。
ヒーロー歴が5年というだけあって、どれをとってもルミナスは流石の手腕だった。
「それにしてもウィルくんは手慣れてるね!ひょっとして将来はヒーロー志望かい?」
「いや、そんな大層なことは目指してないよ。ただ仲のいい友達の故郷だからってだけさ」
「立派じゃないか!ヒーローになりたかったらいつでもオレに言ってくれ、二番弟子にしてあげるよ!一番はライトピラーくんだけどね!」
「光栄っすね」
適当な嘘ではぐらかす。今のところの印象はただの根明って感じがするが。
一通りの救助を終え、ルミナスが次の指揮をとる。
「よし、この区域はこれで全部だね!次の場所に──」
「……先輩?どうしたんすか」
「君たちはオレの後ろに!前に出ちゃダメだよ!」
ルミナスが俺たちを何かから庇うように前に出る。彼の背中越しに前を覗くと人影が見えた。
フード付きの白いマントコートに大柄な体格。顔は覆面で見えない。そして、背中に背負っているのは剣だろうか。あの姿は……。
「君はホワイトナイトだね?最近ニュースになっているよ」
「誰だ、お前は」
「オレの名前はルミナス!もちろんヒーロー名だ!市民にとって希望の──」
「ヒーローなら口を動かす前に行動で示せ」
まるで関心がないかのように吐き捨てて立ち去ろうとする。それをルミナスが引き留めた。
「待ってくれよ!君は無許可で活動している、ヒーローとして見過ごすわけにはいかない!」
「……ならどうする?私の邪魔をするなら力づくで──」
「邪魔なんてしないさ!一緒に行動しよう!それなら君は合法で活動できる、俺も活動を再開できる、一石二鳥さ!」
「……私は私のやり方でやる。付いてくるなら勝手にしろ」
「うん、話の分かる人で助かった!ふたりとも、行くよ!」
二人の話し合いの結果、共に行動する方向で決定したようだ。
だがそれにライトピラーは少し不安そうな顔をする。
「本気ですか!?」
「俺は構いませんが」
「ウィルさんまで!」
「まあいざという時は守ってくださいよ」
相手はただの変なおっさんっぽいけど。
するとルミナスが何やら円陣を組もうとしていた。
「よーし、これから我々は4人のチームとなって……って、待ちたまえ!ホワイトナイトくん!」
「馴れ合いをする気はない」
「こういうのは団結力がだね──」
ホワイトナイトを先頭に、他のふたりが続いていく。
さて、見極めさせてもらおうじゃないか。
────────。
「一人で歩けるか?よし。あそこに消防吏員が見えるだろう、あの人の指示に従って──」
4人で行動を始めてから、活動はよりスムーズになった。
単純な力仕事はもちろんのこと、ホワイトナイトはケガ人に対する処置も適切だった。
彼がどれほど活動してきたのかは知らないが、一朝一夕で身に着くものではないだろう。
「ホワイトナイトくんのおかげでこの区域もずいぶんスムーズに避難が進められてるね!」
「さっさと次に行くぞ」
「君もちゃんと申請すればすぐにヒーローになれるだろうに」
「そんな時間があれば人を助ける」
「おい、お前さっきから聞いてれば先輩に失礼じゃないか?」
「……なに?」
ライトピラーが食って掛かり、ホワイトナイトは彼を睨んで応じる。
「まあまあ、ライトピラーくん。落ち着いて」
「でもこいつが救助活動出来るのは先輩がいるお陰なのに!なのにずっと偉そうな態度じゃないですか!」
「私はお前たちが居なくても活動できる。先輩が居ないと何もできないお前と違ってな」
「……っ!」
「ダメだよ、ライトピラーくん」
明らかに苛立ってる彼をルミナスが制止する。
不意に、空からゴロゴロと音が鳴り響く。気付けば分厚い雲が空を覆っていた。これは一雨降りそうだ。
視線を空から地上へ戻すと、ホワイトナイトが俺の方を向いていた。
「お前もヒーローを目指しているのか?」
「俺?あいにくヒーローって柄じゃないね」
「賢明な判断だ。政府や市民に媚を売るやつらにはなるもんじゃない」
「お前……!」
「まあまあ、ふたりとも落ち着いて」
ルミナスがなだめているが、険悪な雰囲気が続く。
正式な手段でヒーローになろうとしている男と、自分の力で正義を執行している男。まさに水と油だ。
「誰かーーー!助けてくれーーー!」
「!!!」
叫び声が聞こえると同時にルミナスとホワイトナイトが即座に向かう。遅れて俺とライトピラーも後を追いかけた。
「……これは」
「助けてくれ!弟が!ボクの弟なんだ!」
燃え上がり、倒壊した家。その側に居たのは子供の兄弟。
兄の方は軽い切り傷で済んでいるが、弟の方はひどい火傷だ。煙を吸ってしまったのか、意識も朦朧としている。
「すぐに助ける」
「オレも手伝います!」
「待て、ライトピラーくん!君はお兄さんの方を手当しろ!」
「え、でも先輩!」
「その子はもうダメだ!見れば分かるだろう!」
「……え?」
ライトピラーが目を丸くする。ホワイトナイトは気にせず手当を始めた。
「せ、先輩?何言ってるんすか」
「君もだ、ホワイトナイトくん!その手当が無駄だということくらい分かるだろう!」
ルミナスの言葉を無視して、彼は手当を続けている。
「おい、無駄だってどういうことだよ!弟はまだ生きてるだろ!」
「聞くんだ、少年。君はまだ若い、きっと辛い日々が続くだろう。だがいつか、それを乗り越えられる日が必ず来る」
「だから!弟が死ぬみたいなことを言うなよ!」
子供がルミナスに食って掛かる。
しかし彼はそれを軽くあしらった。
「そうですよ先輩、まだ死ぬと決まったわけじゃ──」
「君もヒーローを目指すなら覚悟を決めろ。すべての命が助けられるわけじゃない。そして今こうしている間にも、助けを求めてる声があるんだ。我々はそれに応じなければならない!」
「……そんな」
立ち尽くすライトピラー。彼は行動できないと判断したのか、ルミナスが俺の方を向く。
「ウィルくん、お兄さんの方を頼んでいいかい?手当と、それから避難所まで付き添いを」
「ふざけんな!ボクは弟から離れないぞ!」
「君のためなんだ!辛いのは分かるが──」
「お前なんかに分かるもんか!」
「ルミナス、耳を貸せ」
このままでは埒が明かない。
彼を手招きして、耳元で小声で話しかける。
「今は無理やり引きはがす方が危険だ。この子は俺が責任をもって守る、それでいいか?」
「……はぁ。分かった、君の判断に任せる」
しぶしぶといった様子で承諾される。
「行くぞ、ライトピラーくん。オレ達は次の区域に向かおう」
「でも……」
「しっかりしろ!まったく、なぜ誰も最善の行動を取らないのか……」
ライトピラーの手を無理やり引っ張り、ルミナスが立ち去っていく。
俺は子供の兄の手当を始めた。
「沁みるが我慢しろ」
「痛っ!……ねえ、弟は大丈夫だよね?助かるよね?」
「……まずはきみが助かることを考えるんだ」
子供は不安そうな顔から変化しない。あいにく俺にはこの子を笑顔にできる手段を持ち合わせていない。
だから俺はヒーローなんて柄じゃない。
手当を終え、弟の元に向かう。
「ホワイトナイト、そっちはどうだ」
「……」
どうやら処置は終わったようだった。だが彼は顔を俯いて動かさない。
「にい……ちゃん」
「りつ!」
弟がか細い声を発し、兄がすぐ側に駆け寄る。
「あつい……あついよ……」
「大丈夫だ、りつ!兄ちゃんが居るからな!ここに居るからな!」
「兄ちゃん……」
弟の目が閉じていく。
雨が降って来た。
「おい、目を開けろって。りつ、聞こえてるか?なあって!」
「あつい……」
「いやだ、いやだいやだ!」
土砂降りだ。
雨の音以外、何も聞こえない。
ホワイトナイトが、ふたりの子供を雨から守っていた。
────────。
「ホワイトナイトくんじゃないか。あの兄弟は助けられたかい」
「先輩、そんな言い方……」
兄弟を避難所に送り届けた後、俺たちの前に現れたのはルミナスとライトピラーだった。とはいえ、ライトピラーの方はかなり気まずそうにしているが。
ルミナスは何事もなかったかのような表情で言葉を続ける。
「だから言っただろう、もう助からないと。そんなことは君も分かっていた筈だ。君が無駄にした時間で、オレ達が何人の命を救ったと思う?」
ホワイトナイトが拳を強く握りしめたのが見えた。
「現実が受け入れられなかった?それとも、人の死に立ち会うのは初めてだったのかな?良かったじゃないか、それなら今回はいい経験になっただろう」
「貴様ァ!」
声を荒げながらホワイトナイトがルミナスの顔面を殴り飛ばす。そのまま胸ぐらをつかみ詰め寄った。
「子供が死んでいるのに、よくもそんなことを言えるな!それでもヒーローか!」
「そうさ、オレこそがヒーローだ!君じゃなくて、ね!」
「ぐあっ!」
ルミナスが頭突きをし、ホワイトナイトが怯む。そのまま立て続けに体当たりをブチかました。
「君はヒーローが何たるかを分かっていない!多くの命を助けるために、命を見捨てる決断をしなければならない時がある!それが出来ないのは、君の考えが甘いからだ!」
「助けを求めている子供の声を聞かない者の、どこがヒーローだというんだ!」
再びホワイトナイトが殴りかかる。ルミナスも今度は避けて反撃に出るが、彼もそれに応じる。激しい攻防戦が始まった。
「おー、あのおっさんやるねえ。ただのコスプレ男じゃないんだ」
「感心してる場合じゃないですよ!早く止めなきゃ!」
「いや、俺たちが下手に介入したらケガじゃ済まないぞ。それよりも避難した人たちが巻き込まれないように誘導しよう。俺はこっちを担当するから、ライトピラーくんは向こうを頼む」
「わ、分かりました!」
若干パニックになっているのか、指示をするとライトピラーはあっさり素直に従って行動する。
都合がいい。俺は二人の戦いを見物させてもらうとしよう。
視線を戻すと、ルミナスがホワイトナイトの胸を肘で打ったところだった。
「がはっ!」
「はぁ、はぁ、はぁ……。ずいぶん鍛えてるんだね、でもその思考じゃヒーローにはなれない。時には必要な犠牲ってものがあるということを、認められないならさ」
「必要な犠牲という言葉は、ヒーローが使うものではない……」
「……まるで夢想家だね。君みたいなやつには付き合ってられない、なあ!」
ルミナスが殴り飛ばし、ホワイトナイトの身体が地面に倒れる。
「ごほ……っ、貴様のようなやつは、ヒーローではない……」
「まだ立ち上がるの?君ってホントにタフだね」
「貴様とはもう、話したくもない」
「奇遇だね、オレもだよ」
ホワイトナイトが背中の剣を取り出す。
その瞬間にルミナスが距離を詰め、腕を狙って蹴り上げた。
剣が宙を舞い、俺の近くの岩に突き刺さる。
「武器を使うタイプの相手は、こうやってすぐに無力化するのが──」
「ぬおおおおあああああ!」
「おわっ!?」
渾身の体当たりをして、ホワイトナイトがルミナスの上に馬乗りになった。
そのまま拳を振りかざし、ルミナスの顔面に打ち付ける。
「がっ!」
何度も何度も。
「ぐっ!ぎゃっ!」
何度も何度も。
「ぐあ……っ!」
ホワイトナイトが攻撃の手を止める。よく見ると、彼の太ももに光のトゲのようなものが突き刺さっている。
あれがルミナスの能力か。
「調子に乗るなよ、このクソ野郎が……!」
「ふぅー、ふぅー……」
「こんなことをして許されると思ってるのか?オレは政府公認のヒーローだぞ!そしてそのオレに手を上げた君はただの犯罪者、ヴィランだ!」
彼はルミナスの言葉を無視して自身に突き刺さった光のトゲを抜き、そのトゲを振り上げる。
そしてそれをルミナスに目掛けて──。
「おい待て、待て!本気か!?イカれてるのか!?」
「うおおおおおおおおお!」
「ひっ!」
ルミナスが両手で目を覆う。
「ごふ……っ!」
「……!?」
ホワイトナイトが吹き飛び、岩に叩きつけられた。
俺が蹴り飛ばしたからだ。
「……」
「な、なんだ、なにがおきた?」
「……」
「ウ、ウィルくんか?た、助かったよ。あのイカれ野郎、マジでふざけやが──」
「助かったと思うか?」
「は……?」
ルミナスの首を、剣で叩き切る。
それは勢いよく吹き飛び、転がっていった。
「……ひいっ!?」
「あ、ライトピラーくん。戻ってたんだね。ごめんごめん、そっちに汚いもの飛ばしちゃって」
「う、うわああああああ!?」
彼は悲鳴を上げながら、すごい速さで走り去ってしまう。
「あらら、悪いことしちゃったかなあ」
「……お前、ヴィランだったのか」
声が聞こえた方向を見れば、岩に寄り掛かりながらホワイトナイトがこちらを見ていた。
「わ、すごい。まだ意識あるんだ。あとヴィランじゃなくて悪の組織。ほら見て、このイヤリング」
「騙したな……」
「良いやつの振りが出来ない悪いやつは居ないんだぜ?」
力なく地面に座り込んでいるホワイトナイトの側に寄り、救急箱を置く。
俺を掴もうとしてきたので軽くあしらう。
「意識あるなら、手当は自分でしてね。どうせ心得てるでしょ」
「……何のつもりだ」
「俺は快楽殺人犯じゃないからね、無差別に殺したりはしない」
「何にせよお前は人殺し、私の敵だ……」
「じゃあ戦うかい?俺は元気いっぱいだから構わないけど」
「……」
俺の言葉を無視して手当を始めたので、彼に戦う意思はないと判断する。
「あ、この剣勝手に借りといてなんだけど貰っていい?ハニー達……仲間の中に、こういうの好きな子がいてさ」
「好きにしろ、人殺し」
「サンキュー。んじゃ、用はそれだけ。お大事に」
「おい、ウィルといったか」
「そうだよ、なに?」
背中を向けようとしたところを彼に呼び止められる。
気付けばいつの間にか、雨は止んでいた。
「お前の顔は覚えた。必ず捕まえる」
「……今のきみに出来るのは、気に食わないやつを殺すことだけだ。さっき未遂に終わったようにね」
「人殺しが説教か」
「きみがそう思うならそうなんじゃない、俺にはどうでもいいことだけど」
手当を終えた彼は両手を放り出して、岩に寄り掛かっている。死にはしないだろう。
「私は間違っているとでも?」
「知らないよ、その答えはきみの中にあるんだから」
「……」
「不服そうだね。じゃあヒントを上げよう。俺は悪いことをしている、だが間違ったことをしているとは思ってない」
「どういう意味だ」
「今日会ったばかりのきみにそこまで教える義理はないね」
ホワイトナイトの表情は覆面で見えない。ただ黙ってこっちを向いている。
「それじゃ今度こそ帰るわ。ばいばい」
「……」
雲が割れる。夕日が彼を照らしていた。
<了>
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