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白の章
白二十五話 (1/3)【本編ネタバレ有り】
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西大陸の冬の始まりは来年のチェスの参加国の噂から始まる。参加を希望する国々は早くて夏の間から円卓会議の僧侶や領主に働きかけるが、冬の始まる頃には参加国が固まっていることが多い。それを西大陸の人々は風の噂で耳にし、井戸端会議で囁きあう。
「そろそろこの城に塔の町の司書が訪ねてくる頃ですね」
夕方の窓辺でスターチス王は外を眺めながらエーデルに言った。今日は大掃除の日だった。西大陸の多くの町では十一月の初めに大掃除をする。冬の支度を整え、長い夜に備える。
城では魔術で灯りを灯し、清潔にしている。王城守護魔術師は大掃除の日にその城を保全する魔術に不備はないか点検する。他の者達は自分の普段生活している場所を掃除し、それは王も同じだった。魔法を使える者は、その魔法で窓を拭き、隅の埃を払う。王も女王も魔法を使い、自室の掃除をした。
エーデルは掃除が終わり、スターチス王の部屋でお茶を飲んでいた。
「異界の旅人ですよね? 塔の町の司書とは。確か毎回チェスに参加するという方ですよね。リン・アーデンの魔術の師匠で、ずっとかの魔術師を探しているという」
「ええ、そうです。何年に一回かこの城に顔を見せます。いつも冬の頃に足を寄せます。書庫の本のデータを複製するのはいつも冬にいっぺんにこなすそうなので、その都合でシエララントにも寄るそうです」
「毎回チェスに参加するのですから、お強いのでしょうか?」
「ご本人の話では、戦いは得意ではないと言っていました。一緒にゲームに何度か参加したブリックリヒトとブラッカリヒトの話では、魔術の勝負には強いとのことです。異界の者なので魔力が高く、よくデンファーレの国のルークと戦って勝ちを得ているそうです」
「それは頼もしいですね」
「私がリアに初めて会ったのは、まだ子どもの頃でした。父から紹介され、“白の国”にとって大切な人だと教わりました。夕食までの間、少しその話でもしましょうか」
スターチス王は長い話を始めた。
今日はシエララントの城には客人が多かった。客人たちは西大陸の中央から来た王家の貴族達で、今話題の七才で戴冠したデンファーレ王の話をスターチス王と語っていた。スターチス王家のアーサ王子は、食事の時、客人たちの話を聞きながら、少し退屈していた。大広間に門番が現れ、王の耳元で新たな客人を囁いた。アーサ王子はその場を去る口実に、門番と一緒に新客を出迎えるよう席を立った。
城の門へ行った。入城を待っていたのは、背の高い少年だった。緑の三角帽子に緑のケープ、樫の木の杖を手にした、貴族とは違う種類の旅人だった。多分冒険者だろう。アーサ王子は丁寧にお辞儀をした。
「父王の代わりに迎えに来ました、スターチス王家の王子アーサです。ようこそ。どうぞ、王のいる大広間へ案内します」
旅人はにっこり笑った。
「初めまして。お迎えありがとうございます。僕はいつもスターチス王にはお世話になっているリア・クレメンスと言います。異界にある塔の町から来た司書です。今回も少しの間、書庫で仕事をさせて下さい」
アーサ王子は旅人の自己紹介に少し驚いた。塔の町の司書を迎えたのは初めてだった。異界の者ということは、この旅人は見た目と年齢が違うのかも知れないと了解した。
リアを王の前に連れて行き、王との挨拶を交わした後、その足でアーサ王子はリアを客室に案内した。リアは城の中は慣れている様子で、その客室もいつも泊まる場所のようだった。
リアは案内してくれた王子に言葉をかけた。
「チェスはお得意ですか?」
王子は答えた。それは楽しい話題だった。
「ええ、そうですね。強い方のようです」
「“チェス”に参加される王は皆チェスがお強いですよね。僕は苦手で試合を眺め続けることもできないのですが、アルビノの魔術師がもしいたら、試合をしてみたいですか?」
アーサ王子は不思議な質問をすると思った。
「私にも負けることはあります。でもそれが出来たら楽しそうですね」
「そうですか。“チェス”の間“旅”をすれば、アルビノの魔術師との試合にも立ち会うと思います」
旅人は予言の言葉を贈った。
「そろそろこの城に塔の町の司書が訪ねてくる頃ですね」
夕方の窓辺でスターチス王は外を眺めながらエーデルに言った。今日は大掃除の日だった。西大陸の多くの町では十一月の初めに大掃除をする。冬の支度を整え、長い夜に備える。
城では魔術で灯りを灯し、清潔にしている。王城守護魔術師は大掃除の日にその城を保全する魔術に不備はないか点検する。他の者達は自分の普段生活している場所を掃除し、それは王も同じだった。魔法を使える者は、その魔法で窓を拭き、隅の埃を払う。王も女王も魔法を使い、自室の掃除をした。
エーデルは掃除が終わり、スターチス王の部屋でお茶を飲んでいた。
「異界の旅人ですよね? 塔の町の司書とは。確か毎回チェスに参加するという方ですよね。リン・アーデンの魔術の師匠で、ずっとかの魔術師を探しているという」
「ええ、そうです。何年に一回かこの城に顔を見せます。いつも冬の頃に足を寄せます。書庫の本のデータを複製するのはいつも冬にいっぺんにこなすそうなので、その都合でシエララントにも寄るそうです」
「毎回チェスに参加するのですから、お強いのでしょうか?」
「ご本人の話では、戦いは得意ではないと言っていました。一緒にゲームに何度か参加したブリックリヒトとブラッカリヒトの話では、魔術の勝負には強いとのことです。異界の者なので魔力が高く、よくデンファーレの国のルークと戦って勝ちを得ているそうです」
「それは頼もしいですね」
「私がリアに初めて会ったのは、まだ子どもの頃でした。父から紹介され、“白の国”にとって大切な人だと教わりました。夕食までの間、少しその話でもしましょうか」
スターチス王は長い話を始めた。
今日はシエララントの城には客人が多かった。客人たちは西大陸の中央から来た王家の貴族達で、今話題の七才で戴冠したデンファーレ王の話をスターチス王と語っていた。スターチス王家のアーサ王子は、食事の時、客人たちの話を聞きながら、少し退屈していた。大広間に門番が現れ、王の耳元で新たな客人を囁いた。アーサ王子はその場を去る口実に、門番と一緒に新客を出迎えるよう席を立った。
城の門へ行った。入城を待っていたのは、背の高い少年だった。緑の三角帽子に緑のケープ、樫の木の杖を手にした、貴族とは違う種類の旅人だった。多分冒険者だろう。アーサ王子は丁寧にお辞儀をした。
「父王の代わりに迎えに来ました、スターチス王家の王子アーサです。ようこそ。どうぞ、王のいる大広間へ案内します」
旅人はにっこり笑った。
「初めまして。お迎えありがとうございます。僕はいつもスターチス王にはお世話になっているリア・クレメンスと言います。異界にある塔の町から来た司書です。今回も少しの間、書庫で仕事をさせて下さい」
アーサ王子は旅人の自己紹介に少し驚いた。塔の町の司書を迎えたのは初めてだった。異界の者ということは、この旅人は見た目と年齢が違うのかも知れないと了解した。
リアを王の前に連れて行き、王との挨拶を交わした後、その足でアーサ王子はリアを客室に案内した。リアは城の中は慣れている様子で、その客室もいつも泊まる場所のようだった。
リアは案内してくれた王子に言葉をかけた。
「チェスはお得意ですか?」
王子は答えた。それは楽しい話題だった。
「ええ、そうですね。強い方のようです」
「“チェス”に参加される王は皆チェスがお強いですよね。僕は苦手で試合を眺め続けることもできないのですが、アルビノの魔術師がもしいたら、試合をしてみたいですか?」
アーサ王子は不思議な質問をすると思った。
「私にも負けることはあります。でもそれが出来たら楽しそうですね」
「そうですか。“チェス”の間“旅”をすれば、アルビノの魔術師との試合にも立ち会うと思います」
旅人は予言の言葉を贈った。
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