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白の章
白十話
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夜、王の部屋でエーデルは王に尋ねた。
「スターチス王家の王ならば、青年王のように西大陸の盟主になりたいと思ったことはありますか?」
エーデルの問いにスターチス王は穏やかに答えた。
「今はそれぞれの国や町が力を付けて均衡を保っています。小さな小競り合いはあっても、皆がその均衡を変えたくないと大事にしています。昔とは時代が違います。昔は相手の国を大切にしなかったのでしょう。今はそれぞれの国や町の産業をお互い尊重する気風ができているようです。
直轄領も独立した町と契約を結んで会計を国でやっているだけです。だから町の人が大国と結び付きたいと思ったら、契約で直轄領になることも自由にできます。デンファーレがやっているのは、お金を使って町の人たちに直轄領になったり同盟都市になったりすることを有利なことだと勧めているのです。
でも直轄領が増えた所で国が大きくなるとは限りません。それぞれの国は独立しているので、奴隷が増えるわけではありません。デンファーレがやりたいことは、多分、広い範囲の経済圏を持ちたいのだと思っています。商業に敏感で、お金を増やすことに長けている王だと思います」
「隣国として嫌ではないのですか?」
エーデルはスターチス王とデンファーレ王の不思議な関係を理解しようとした。スターチス王は真面目に答えた。
「デンファーレは他の国を吸収合併するような野心は持っていないでしょう。私は町のことは町の人が決めることだと思っています。それに国が大きくなり過ぎると、結局町が独立していくというのが西大陸の歴史です」
王の視点は穏やかだった。しかし楽観ではなく注意深く隣国を見ている様子が窺えた。王は珍しく悪戯っぽく笑った。
「今、デンファーレ王は王女アキレスとお付き合いしているでしょう。彼女は硬骨の人だという話です。とても相性がいいのでしょうね」
「そういうものなのですか?」
エーデルはその話は知っていた。とても意外であった。王は頷いた。
「そういうものですよ、エーデル」
「スターチス王家の王ならば、青年王のように西大陸の盟主になりたいと思ったことはありますか?」
エーデルの問いにスターチス王は穏やかに答えた。
「今はそれぞれの国や町が力を付けて均衡を保っています。小さな小競り合いはあっても、皆がその均衡を変えたくないと大事にしています。昔とは時代が違います。昔は相手の国を大切にしなかったのでしょう。今はそれぞれの国や町の産業をお互い尊重する気風ができているようです。
直轄領も独立した町と契約を結んで会計を国でやっているだけです。だから町の人が大国と結び付きたいと思ったら、契約で直轄領になることも自由にできます。デンファーレがやっているのは、お金を使って町の人たちに直轄領になったり同盟都市になったりすることを有利なことだと勧めているのです。
でも直轄領が増えた所で国が大きくなるとは限りません。それぞれの国は独立しているので、奴隷が増えるわけではありません。デンファーレがやりたいことは、多分、広い範囲の経済圏を持ちたいのだと思っています。商業に敏感で、お金を増やすことに長けている王だと思います」
「隣国として嫌ではないのですか?」
エーデルはスターチス王とデンファーレ王の不思議な関係を理解しようとした。スターチス王は真面目に答えた。
「デンファーレは他の国を吸収合併するような野心は持っていないでしょう。私は町のことは町の人が決めることだと思っています。それに国が大きくなり過ぎると、結局町が独立していくというのが西大陸の歴史です」
王の視点は穏やかだった。しかし楽観ではなく注意深く隣国を見ている様子が窺えた。王は珍しく悪戯っぽく笑った。
「今、デンファーレ王は王女アキレスとお付き合いしているでしょう。彼女は硬骨の人だという話です。とても相性がいいのでしょうね」
「そういうものなのですか?」
エーデルはその話は知っていた。とても意外であった。王は頷いた。
「そういうものですよ、エーデル」
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