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白の章
白七話
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「今夜はちょっと出掛けられますか?」
夕方エーデルが部屋にいると、スターチス王が訪ねて一言聞いた。エーデルは何の用か不思議に思った。
「ええ、大丈夫ですよ。何かあるのですか?」
「夜の散歩もいいものですよ」
スターチス王は用を言わずにエーデルをただ誘った。エーデルはいつの間にか王のテンポに慣れていた。王はエーデルを外へ誘う時は、詳しいことは先に言わない。エーデルはそれも楽しかった。エーデルは笑顔で答えた。
「今日は星が見える日ですね。きっと何かあるのですね。ご一緒しましょう」
シエララントの西側には川が流れている。夏の夜空には星が溢れ、黒い川面を飾っていた。スターチス王はエーデルを連れて、人のいない川岸まで馬で来た。
「ここで少し待っていて下さい」
王は馬から降りると、川辺に座った。エーデルも隣に座った。
川上から何か輝く物が流れて来た。魚の群れだった。魚は星の色をまとい銀白色に輝いて、黒い川面を跳ねていた。
「これは……?」
「星魚と呼ばれています。夏の初めの月のない夜にこの川を泳いできます。子どもの頃はよく夜に遊びに来て観察していました。シエララントの隠れた名物です」
小さくささやかな不思議だった。魚の群れは長く、エーデルはしばらく見つめていた。魚は川面を踊っているようだった。
「私はいつもこの星魚が海の入り口ではどうなるか見てみたいと思っていました」
エーデルは話の続きがある様子なので、黙して待った。魚は去ってしまい、川面は静かに夜空を照らしていた。
「ある夜、星魚を追っている旅人に会いました。その人から聞いた話では、星魚は川面に届く星の光を養分にして生きているそうです。人が日の光を浴びるのと同じだそうです。星魚は海へ行っても群れのままで行動し、星の夜だけ海面に姿を見せるそうです。航海をする人達の間には、それを見た船乗りは幸運に恵まれるというジンクスがあるそうです」
「では、幸運をお裾分けしてもらいましたね」
エーデルはにこりと笑った。スターチス王は言った。
「来年も一緒に見ましょう」
夕方エーデルが部屋にいると、スターチス王が訪ねて一言聞いた。エーデルは何の用か不思議に思った。
「ええ、大丈夫ですよ。何かあるのですか?」
「夜の散歩もいいものですよ」
スターチス王は用を言わずにエーデルをただ誘った。エーデルはいつの間にか王のテンポに慣れていた。王はエーデルを外へ誘う時は、詳しいことは先に言わない。エーデルはそれも楽しかった。エーデルは笑顔で答えた。
「今日は星が見える日ですね。きっと何かあるのですね。ご一緒しましょう」
シエララントの西側には川が流れている。夏の夜空には星が溢れ、黒い川面を飾っていた。スターチス王はエーデルを連れて、人のいない川岸まで馬で来た。
「ここで少し待っていて下さい」
王は馬から降りると、川辺に座った。エーデルも隣に座った。
川上から何か輝く物が流れて来た。魚の群れだった。魚は星の色をまとい銀白色に輝いて、黒い川面を跳ねていた。
「これは……?」
「星魚と呼ばれています。夏の初めの月のない夜にこの川を泳いできます。子どもの頃はよく夜に遊びに来て観察していました。シエララントの隠れた名物です」
小さくささやかな不思議だった。魚の群れは長く、エーデルはしばらく見つめていた。魚は川面を踊っているようだった。
「私はいつもこの星魚が海の入り口ではどうなるか見てみたいと思っていました」
エーデルは話の続きがある様子なので、黙して待った。魚は去ってしまい、川面は静かに夜空を照らしていた。
「ある夜、星魚を追っている旅人に会いました。その人から聞いた話では、星魚は川面に届く星の光を養分にして生きているそうです。人が日の光を浴びるのと同じだそうです。星魚は海へ行っても群れのままで行動し、星の夜だけ海面に姿を見せるそうです。航海をする人達の間には、それを見た船乗りは幸運に恵まれるというジンクスがあるそうです」
「では、幸運をお裾分けしてもらいましたね」
エーデルはにこりと笑った。スターチス王は言った。
「来年も一緒に見ましょう」
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