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白の章
白一話
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晴れた日だった。婚礼の儀は王城の外を会場とした。
女王の控室で、エーデルは白いドレスに白い毛皮のガウンを羽織り、婚礼の支度を整えた。
「まぁ、すっかり女王様なこと!」
エーデルは姿見に女性が映り、後ろを振り向いた。姉のエーデルワイス王だった。
「冷やかしに来たわけではないでしょう?」
エーデルは客人の到来を喜んだ。エーデルワイス女王はふふと笑った。
「今日はお招き頂きありがとう。末永くお幸せにね」
「ありがとう、姉上」
エーデルは祝いの言葉を素直に受け止めた。
それからエーデルはスターチス王の控室へ行った。王はいつもより重々しく着飾っていた。
「ご立派なお姿ですね」
エーデルは改めて王に嫁すことを思った。
「今日は儀式ですからね」
王はにこりと笑った。少し照れが現れていた。
「素敵ですね、エーデル」
「まぁ、ありがとうございます。さぁ、お時間ですよ」
婚礼の儀は城の外で行われた。会場には騎士や僧侶など城の中で働く者達、スターチス王家に近しい近隣の領主、その他スターチスとエーデルワイス両王家の親族が集まっていた。
儀式は夫婦の宣誓、花の交換、女王の戴冠とつつがなく進んだ。儀式が終わると、来客たちは食事をし、チェルロットから訪れた楽団の音楽を背景に、久しぶりに顔を合わせた者同士や初めての者同士で挨拶をしたり雑談をしたりした。
スターチス王はエーデルと一緒に来客に挨拶をして回った。
「インガルス公もいらしたのですね。今日は宴を楽しんでいって下さい」
スターチス王は賑やかに踊り出した客人達からそっと離れ、城の陰へエーデルを連れてきた。遠い喧騒を背景にスターチス王はエーデルに言った。
「今日はありがとうございます、エーデル。これからの城での暮らしに不安があったら、いつでも言って下さい。私が気付けなくても、我慢しないで下さい」
エーデルは王の言葉を心に置いた。
エーデルは迷った。婚礼の儀が終わった夜のことである。今日は疲れたのでそのまま寝ても良かったが、何か王に挨拶しないと申し訳ない気がした。王のことだから、いきなり枕を共にするとは思わなかったが、このまま明日になっては愛想がないように思った。何となく独身気分が抜けていないのだとエーデルは自嘲した。こういう時、一般の人々はどうしているのだろう、と疑問に思った。
しばらく悩んでいると、部屋に召使の少年が訪れた。少年は王からの伝言を携えてきた。
「もしお疲れでなければ、私の部屋で星を見ませんか、とのことです」
エーデルは気の利いた招待を受け入れた。
「分かりました。これから行きます」
エーデルは少年と一緒に王の部屋へ行った。
スターチス王は窓辺に座っていた。少年は王の部屋に着くと、王に一礼して去って行った。
「お疲れではありませんでしたか?」
スターチス王はにこやかにエーデルに尋ねた。エーデルは悪戯っぽく微笑んだ。
「どうしようか迷っていた所でした」
「無理に引き止めませんので、休みたい時には部屋に戻って下さい」
エーデルは窓辺に行き、スターチス王の向かいに立って、窓の外を見た。今日は月がなく、星が満天に広がっていた。スターチス王は言った。
「今日は青年王アーサ様も祝福なさっているように見えます」
「それは嬉しいことですね。ご先祖様が見守っているという信仰は羨ましいと思います。私の生まれた国は小国なので、魔女の館と契約を交わすことがないので、大国はいいなと思います」
「たぶん、大国の王は変わり者なのでしょう」
スターチス王が笑った。エーデルもつられて微笑んだ。エーデルは窓の中の椅子に座った。
「青年王の血筋はスターチス王家だけではありませんが、アーサ様の国に一番近いのはシエララントを治めるスターチス王の国です。青年王の血筋の方々は今日の婚礼の儀でも出席して頂きました。末裔はあまり多くはないですが、親戚付き合いをしています」
「そうだったのですね。顔を覚えて頂けたかしら」
「ええ、大丈夫ですよ」
スターチス王は言った。
「今日のエーデルはきれいで、神々しかったと思います」
「ありがとうございます」
エーデルは素直に言葉を受け止めた。王の優しい言葉に慣れてきた、とエーデルは思った。そして、その言葉を愛おしく感じた。このように、少しづつ夫婦になっていくのかと心の隅で思った。
エーデルはもっといたい、と思った。しかし、もっとゆっくり時間をかけて愉しみたい、とも思った。心が温かかった。何か自分の中で大事な物が一つでき、それを直視すると恥ずかしさを感じた。エーデルはゆっくりと立ち上がった。
「今日はこれで休みます」
「また明日も宜しくお願いします」
スターチス王も立ち上がり、エーデルの部屋の外まで送った。
女王の控室で、エーデルは白いドレスに白い毛皮のガウンを羽織り、婚礼の支度を整えた。
「まぁ、すっかり女王様なこと!」
エーデルは姿見に女性が映り、後ろを振り向いた。姉のエーデルワイス王だった。
「冷やかしに来たわけではないでしょう?」
エーデルは客人の到来を喜んだ。エーデルワイス女王はふふと笑った。
「今日はお招き頂きありがとう。末永くお幸せにね」
「ありがとう、姉上」
エーデルは祝いの言葉を素直に受け止めた。
それからエーデルはスターチス王の控室へ行った。王はいつもより重々しく着飾っていた。
「ご立派なお姿ですね」
エーデルは改めて王に嫁すことを思った。
「今日は儀式ですからね」
王はにこりと笑った。少し照れが現れていた。
「素敵ですね、エーデル」
「まぁ、ありがとうございます。さぁ、お時間ですよ」
婚礼の儀は城の外で行われた。会場には騎士や僧侶など城の中で働く者達、スターチス王家に近しい近隣の領主、その他スターチスとエーデルワイス両王家の親族が集まっていた。
儀式は夫婦の宣誓、花の交換、女王の戴冠とつつがなく進んだ。儀式が終わると、来客たちは食事をし、チェルロットから訪れた楽団の音楽を背景に、久しぶりに顔を合わせた者同士や初めての者同士で挨拶をしたり雑談をしたりした。
スターチス王はエーデルと一緒に来客に挨拶をして回った。
「インガルス公もいらしたのですね。今日は宴を楽しんでいって下さい」
スターチス王は賑やかに踊り出した客人達からそっと離れ、城の陰へエーデルを連れてきた。遠い喧騒を背景にスターチス王はエーデルに言った。
「今日はありがとうございます、エーデル。これからの城での暮らしに不安があったら、いつでも言って下さい。私が気付けなくても、我慢しないで下さい」
エーデルは王の言葉を心に置いた。
エーデルは迷った。婚礼の儀が終わった夜のことである。今日は疲れたのでそのまま寝ても良かったが、何か王に挨拶しないと申し訳ない気がした。王のことだから、いきなり枕を共にするとは思わなかったが、このまま明日になっては愛想がないように思った。何となく独身気分が抜けていないのだとエーデルは自嘲した。こういう時、一般の人々はどうしているのだろう、と疑問に思った。
しばらく悩んでいると、部屋に召使の少年が訪れた。少年は王からの伝言を携えてきた。
「もしお疲れでなければ、私の部屋で星を見ませんか、とのことです」
エーデルは気の利いた招待を受け入れた。
「分かりました。これから行きます」
エーデルは少年と一緒に王の部屋へ行った。
スターチス王は窓辺に座っていた。少年は王の部屋に着くと、王に一礼して去って行った。
「お疲れではありませんでしたか?」
スターチス王はにこやかにエーデルに尋ねた。エーデルは悪戯っぽく微笑んだ。
「どうしようか迷っていた所でした」
「無理に引き止めませんので、休みたい時には部屋に戻って下さい」
エーデルは窓辺に行き、スターチス王の向かいに立って、窓の外を見た。今日は月がなく、星が満天に広がっていた。スターチス王は言った。
「今日は青年王アーサ様も祝福なさっているように見えます」
「それは嬉しいことですね。ご先祖様が見守っているという信仰は羨ましいと思います。私の生まれた国は小国なので、魔女の館と契約を交わすことがないので、大国はいいなと思います」
「たぶん、大国の王は変わり者なのでしょう」
スターチス王が笑った。エーデルもつられて微笑んだ。エーデルは窓の中の椅子に座った。
「青年王の血筋はスターチス王家だけではありませんが、アーサ様の国に一番近いのはシエララントを治めるスターチス王の国です。青年王の血筋の方々は今日の婚礼の儀でも出席して頂きました。末裔はあまり多くはないですが、親戚付き合いをしています」
「そうだったのですね。顔を覚えて頂けたかしら」
「ええ、大丈夫ですよ」
スターチス王は言った。
「今日のエーデルはきれいで、神々しかったと思います」
「ありがとうございます」
エーデルは素直に言葉を受け止めた。王の優しい言葉に慣れてきた、とエーデルは思った。そして、その言葉を愛おしく感じた。このように、少しづつ夫婦になっていくのかと心の隅で思った。
エーデルはもっといたい、と思った。しかし、もっとゆっくり時間をかけて愉しみたい、とも思った。心が温かかった。何か自分の中で大事な物が一つでき、それを直視すると恥ずかしさを感じた。エーデルはゆっくりと立ち上がった。
「今日はこれで休みます」
「また明日も宜しくお願いします」
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