3 / 22
3
しおりを挟む
フローが風呂から上がると、厨房でクオのワインをグラスに注ぎ、一口飲んだ。そのままグラスを持ってクオとガーラとディアドラのいる居間へ来た。居間では、ディアドラが琵琶のような弦楽器で音楽を演奏し、ガーラがゆったりと聴き入っていた。音楽は、中央大陸の夜を思わせる独特な曲だった。クオは魔術の厚い本を読んでいた。
フローもガーラのそばで音楽を聴いた。
「ガーラって、いつか中央大陸に戻るの?」
フローは故郷の曲を懐かしむガーラに尋ねた。ガーラは明るく答えた。
「そうね。戻るというより、いつか王宮に顔を見せに行きたいわね。だとしたら、フローとクオもできたら一緒に来てくれたら嬉しいんだけど」
フローは明るく即答した。
「オレはいいぜ。中央大陸ではどんな冒険ができるか興味あるし。クオもだよね~?」
クオはコホンと咳をした。
「ガーラが良ければ、俺も中央大陸を旅して知見を広めたい」
ガーラはにっこり笑った。
「ありがとう、二人とも。二人とも両親に紹介したかったから、良かったわ。王宮ではもてなすわね」
「オレがお宝を盗むかもよ?」
フローが軽口を叩いた。
「お宝ならお土産にたくさん渡すわ」
ガーラは富豪の余裕を見せた。
「ガーラらしいな」
クオがふっと小さく笑った。
「でもまだ、西大陸を色々回りたいから、先の話ね」
ガーラは話を引き取った。ディアドラは一曲弾き終わって、手を止めた。部屋が静かになった所で、ガーラがフローを見た。
「良かったら、また西大陸の歌を歌ってくれるかしら?」
フローは風呂上がりの上機嫌で肯った。
「いいぜ。ディアドラ、伴奏宜しく~」
ディアドラは静かに頷くと、旅の中でフローから教えてもらった曲を弾き出した。フローは一口ワインを喉に流した後、レパートリーの一つを歌い始めた。ガーラは耳を澄ませ、クオは本の手を止めた。
歌は恋愛歌だった。王となった青年が、好きな男性に好意を伝えるもどかしさを歌った歌だった。それが終わると、続けて二曲目を語るように歌った。冒険でパーティを組んだ仲間が淡い恋仲になる、多幸感に満ちた曲だった。
フローの歌声は蜂蜜のように甘く、聴く者の心に心地良い温泉のように、ずっとたゆたっていたく思わせた。
クオは心のそばにそっと幸福感が寄せてきたことに気付いた。そしてそれを受け入れた。
フローの伸びやかなテナーの歌声は、クオの心を恍惚とさせた。幸せな歌も悲恋の歌も、フローは軽やかに歌い流した。しかし丁寧に節を付け、盛り上がりをよく響かせ、上手に歌を紡いでいた。
クオはフローと旅をして、そばで歌が聴ける距離感に心は喜んでいた。緩やかな温かい感情の中で、クオはフローの歌声が好きだと認めていた。
クオもガーラも、フローの軽やかに歌う歌に、フローが心を乗せていることに気付いていた。三人の淡い恋心に繋がれた緩やかな空気は、それぞれの心を高揚感で満たした。
いくつか歌を歌った後、フローは終わりを告げた。
「今日はここまで」
温かな空気の中、ガーラは賛辞を送った。
「フローって歌声キレイよね」
フローは機嫌良く礼を言った。
「サンキュー、ガーラ」
「魅了するのよね。ねぇ、クオ?」
クオは話を振られて、我に返って短く肯った。
「……ああ、そうだな」
フローもガーラのそばで音楽を聴いた。
「ガーラって、いつか中央大陸に戻るの?」
フローは故郷の曲を懐かしむガーラに尋ねた。ガーラは明るく答えた。
「そうね。戻るというより、いつか王宮に顔を見せに行きたいわね。だとしたら、フローとクオもできたら一緒に来てくれたら嬉しいんだけど」
フローは明るく即答した。
「オレはいいぜ。中央大陸ではどんな冒険ができるか興味あるし。クオもだよね~?」
クオはコホンと咳をした。
「ガーラが良ければ、俺も中央大陸を旅して知見を広めたい」
ガーラはにっこり笑った。
「ありがとう、二人とも。二人とも両親に紹介したかったから、良かったわ。王宮ではもてなすわね」
「オレがお宝を盗むかもよ?」
フローが軽口を叩いた。
「お宝ならお土産にたくさん渡すわ」
ガーラは富豪の余裕を見せた。
「ガーラらしいな」
クオがふっと小さく笑った。
「でもまだ、西大陸を色々回りたいから、先の話ね」
ガーラは話を引き取った。ディアドラは一曲弾き終わって、手を止めた。部屋が静かになった所で、ガーラがフローを見た。
「良かったら、また西大陸の歌を歌ってくれるかしら?」
フローは風呂上がりの上機嫌で肯った。
「いいぜ。ディアドラ、伴奏宜しく~」
ディアドラは静かに頷くと、旅の中でフローから教えてもらった曲を弾き出した。フローは一口ワインを喉に流した後、レパートリーの一つを歌い始めた。ガーラは耳を澄ませ、クオは本の手を止めた。
歌は恋愛歌だった。王となった青年が、好きな男性に好意を伝えるもどかしさを歌った歌だった。それが終わると、続けて二曲目を語るように歌った。冒険でパーティを組んだ仲間が淡い恋仲になる、多幸感に満ちた曲だった。
フローの歌声は蜂蜜のように甘く、聴く者の心に心地良い温泉のように、ずっとたゆたっていたく思わせた。
クオは心のそばにそっと幸福感が寄せてきたことに気付いた。そしてそれを受け入れた。
フローの伸びやかなテナーの歌声は、クオの心を恍惚とさせた。幸せな歌も悲恋の歌も、フローは軽やかに歌い流した。しかし丁寧に節を付け、盛り上がりをよく響かせ、上手に歌を紡いでいた。
クオはフローと旅をして、そばで歌が聴ける距離感に心は喜んでいた。緩やかな温かい感情の中で、クオはフローの歌声が好きだと認めていた。
クオもガーラも、フローの軽やかに歌う歌に、フローが心を乗せていることに気付いていた。三人の淡い恋心に繋がれた緩やかな空気は、それぞれの心を高揚感で満たした。
いくつか歌を歌った後、フローは終わりを告げた。
「今日はここまで」
温かな空気の中、ガーラは賛辞を送った。
「フローって歌声キレイよね」
フローは機嫌良く礼を言った。
「サンキュー、ガーラ」
「魅了するのよね。ねぇ、クオ?」
クオは話を振られて、我に返って短く肯った。
「……ああ、そうだな」
1
あなたにおすすめの小説
婚約破棄から50年後
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる