27 / 39
妖精さんと怖い話
しおりを挟む
ある熱い夏の夜でした。とても寝苦しく、日が暮れてもじっとりと汗をかくほどでした。
真夜中に私は目を覚ましました。物音ひとつしないワンルームに、ヒタリ、ヒタリと足音が聞こえます。
少し怖くなった私は、肌掛け布団を頭から被りました。段々と音は近づいてきます。
ヒタリ、ヒタリ。
音はすぐそこまで、来ていました。私の背にはスーっと凍るような寒さを感じます。全身が粟立ってました。
恐怖で震える私に、足音は迫ります。ヒタリ、ヒタリ、ヒタリ。
枕元まで足音が近づいた時に、ぴたりと音は止みました。まるで何事もなかったかの様に、部屋は静まり返ります。私は、布団から顔を出します。
するとそこには!
「お前が居たのだ~!」
私のがなり声と共に、妖精さん達がはしゃぎだしました。
はい。とりあえず状況から説明しましょう。
たまには、妖精さん達とレクレーションをしようって事になったんです。なんやかんや、すったもんだした挙句に、怪談をしようって事になったんですよ。
いや、わかってますって。私には、ホラー話をする才能なんて無いんですよ。その証拠に、妖精さんがはしゃいでます。キャーキャー言って、走り回ってます。
せっかく電気を消して雰囲気を出したのに、グスン。
ちなみに、さっき話したのは、最近起きた実話だったりします。ほんとに怖かったんですよ。
最近、急に気温が上がったのも、あったんでしょうね。たまたま私は、真夜中に目が覚めたんです。珍しくお掃除の妖精さんも眠っていました。
ビックリするくらい凄く静かな部屋で、ピチョン、ピチョンという水の滴る音と、ヒタリという足音が聞こえてきました。
私は急に怖くなったんです。
いつもなら、夜中でも妖精さんが動き回っているので、不安に感じる事は無いんです。でもその日だけは、妖精さんがみんな寝静まってました。
怖くて布団を被った私ですが、足音は少しずつ近づいてきます。急に足音が止まったので、不思議に思った私が布団から顔を出すと、デロンって溶けた何かが目の前に現れました。
「ぎゃあ~!」
びっくりして私は大声を上げます。その正体は、半分溶けた氷の妖精さんでした。私の叫び声に驚いた氷の妖精さんは、布団の上で気を失います。
私の叫び声で、次々に妖精さん達が目を覚まします。ペチやモグにミィも、目を覚ましてニャーニャー泣いて、走り回り出しました。
あっと言う間に、私の部屋は騒がしくなります。私は、直ぐにベッドから降りて、電気を点けました。
そして、かなり溶けている氷の妖精さんを、慌てて冷凍庫に放り込みました。
「ふぅ~」
氷の妖精さんが溶けきらずに済んで良かった。ってよりも、何で氷の妖精さんは冷凍庫から出てきてしまったんでしょう。そんな事を考えるよりまず先に、ペチ達を静かにさせないと。
私は飼育の妖精さんに子猫達の事をお願いした後に、音楽の妖精さんに子守唄をお願いしました。流石はプロフェッショナルですね。あっと言う間に、ペチ達を静かに寝かしつけました。
もともと猫は夜行性なんですよ。それが、プロフェッショナル達のおかげで、すやすや寝息を立て始めました。
目を覚ましたお掃除の妖精さんが、濡れた床を拭いています。結局のところ何が原因だったのか、いまいちわかりませんけど。もしかしたら、冷凍庫が少し空いてたんじゃ? まぁ、取り敢えずは静かになったので、良いってことにしましょう。
でもね、ほっとしたのも束の間です。本当のホラーはここから始まったんです。
突然ガタンガタンと、玄関のドアが激しく揺れます。ドアノブがガチャガチャと音を立てて、動いています。
誰がドアを開けようとしてるの? 夜中に誰かが来ることなんて無いです。そんな予定があるはずも無いです。
私はサーっと血の気が引いていくのがわかりました。
ガタンガタンと、玄関のドアとノブは激しい音を立ててます。思わず私は妖精さん達を見渡しました。うん、全員いるね。妖精さん達の仕業って事じゃなさそう。
怖がる私は、すがるような目で妖精さん達を見ました。そして妖精さん達は、そろって首を傾げてつぶらな瞳を輝かせていました。
何だか怖がっているのが私だけみたいで、少し不満です。いや、面白がってないで助けようよ、私をさぁ。
ドアスコープを覗く気にすらなりませんよ。なんか居たら怖いじゃないですか! 玄関にすら近寄りたくないです。
少しすると、静かになります。収まったのかとほっとするのも束の間、ガチャリと玄関の鍵が開く音が聞こえます。
玄関のドアがゆっくりと静かに開いていくじゃないですか。怖いです、チョー怖いです。
心臓がバクバクしてます。助けを求める様に妖精さん達を見ても、助けてくれる気配がありません。
私は少し腰が抜けて、床に座り込んでしまいました。ドアが開いていくのと同時に、私は両手を使ってジタバタと後ずさりします。やがて、ドアが全開になります。
「うるさいのよ! 何時だと思ってんの!」
玄関には、鬼の形相をした裕子ちゃんが立ってました。
「びっくりさせないでよ、裕子ちゃん!」
「びっくりしたのは私よ。あんたこんな夜中に何て声だしてんのよ!」
「だってぇ」
「だってじゃないわよ、この馬鹿!」
そこからは、朝まで裕子ちゃんのお説教が続きました。碌に睡眠も取れないまま、翌朝から大学に行って、バイトに行きました。講義の最中に何度も睡魔が私を襲いました。
ある意味、本当にホラーでしたね。『幽霊の正体見たり裕子ちゃん』でしたけどね。
それよりも、妖精さん達ですよ。私が裕子ちゃんにお説教されている間中、ず~っと爆笑していたんですから。ドッキリにひっかかったタレントを見ている、視聴者の様です。
実はそれが悔しかったので、怪談話しで妖精さん達を驚かそうと思ったんですが、駄目だったようですね。仕方ないです。次の手を考えるとしましょう。
私の復讐はまだ始まったばかりなのだよ、はっはっは~! 妖精さん達よ、油断していると良いさ。いつかビックリさせてあげるんだから~!
真夜中に私は目を覚ましました。物音ひとつしないワンルームに、ヒタリ、ヒタリと足音が聞こえます。
少し怖くなった私は、肌掛け布団を頭から被りました。段々と音は近づいてきます。
ヒタリ、ヒタリ。
音はすぐそこまで、来ていました。私の背にはスーっと凍るような寒さを感じます。全身が粟立ってました。
恐怖で震える私に、足音は迫ります。ヒタリ、ヒタリ、ヒタリ。
枕元まで足音が近づいた時に、ぴたりと音は止みました。まるで何事もなかったかの様に、部屋は静まり返ります。私は、布団から顔を出します。
するとそこには!
「お前が居たのだ~!」
私のがなり声と共に、妖精さん達がはしゃぎだしました。
はい。とりあえず状況から説明しましょう。
たまには、妖精さん達とレクレーションをしようって事になったんです。なんやかんや、すったもんだした挙句に、怪談をしようって事になったんですよ。
いや、わかってますって。私には、ホラー話をする才能なんて無いんですよ。その証拠に、妖精さんがはしゃいでます。キャーキャー言って、走り回ってます。
せっかく電気を消して雰囲気を出したのに、グスン。
ちなみに、さっき話したのは、最近起きた実話だったりします。ほんとに怖かったんですよ。
最近、急に気温が上がったのも、あったんでしょうね。たまたま私は、真夜中に目が覚めたんです。珍しくお掃除の妖精さんも眠っていました。
ビックリするくらい凄く静かな部屋で、ピチョン、ピチョンという水の滴る音と、ヒタリという足音が聞こえてきました。
私は急に怖くなったんです。
いつもなら、夜中でも妖精さんが動き回っているので、不安に感じる事は無いんです。でもその日だけは、妖精さんがみんな寝静まってました。
怖くて布団を被った私ですが、足音は少しずつ近づいてきます。急に足音が止まったので、不思議に思った私が布団から顔を出すと、デロンって溶けた何かが目の前に現れました。
「ぎゃあ~!」
びっくりして私は大声を上げます。その正体は、半分溶けた氷の妖精さんでした。私の叫び声に驚いた氷の妖精さんは、布団の上で気を失います。
私の叫び声で、次々に妖精さん達が目を覚まします。ペチやモグにミィも、目を覚ましてニャーニャー泣いて、走り回り出しました。
あっと言う間に、私の部屋は騒がしくなります。私は、直ぐにベッドから降りて、電気を点けました。
そして、かなり溶けている氷の妖精さんを、慌てて冷凍庫に放り込みました。
「ふぅ~」
氷の妖精さんが溶けきらずに済んで良かった。ってよりも、何で氷の妖精さんは冷凍庫から出てきてしまったんでしょう。そんな事を考えるよりまず先に、ペチ達を静かにさせないと。
私は飼育の妖精さんに子猫達の事をお願いした後に、音楽の妖精さんに子守唄をお願いしました。流石はプロフェッショナルですね。あっと言う間に、ペチ達を静かに寝かしつけました。
もともと猫は夜行性なんですよ。それが、プロフェッショナル達のおかげで、すやすや寝息を立て始めました。
目を覚ましたお掃除の妖精さんが、濡れた床を拭いています。結局のところ何が原因だったのか、いまいちわかりませんけど。もしかしたら、冷凍庫が少し空いてたんじゃ? まぁ、取り敢えずは静かになったので、良いってことにしましょう。
でもね、ほっとしたのも束の間です。本当のホラーはここから始まったんです。
突然ガタンガタンと、玄関のドアが激しく揺れます。ドアノブがガチャガチャと音を立てて、動いています。
誰がドアを開けようとしてるの? 夜中に誰かが来ることなんて無いです。そんな予定があるはずも無いです。
私はサーっと血の気が引いていくのがわかりました。
ガタンガタンと、玄関のドアとノブは激しい音を立ててます。思わず私は妖精さん達を見渡しました。うん、全員いるね。妖精さん達の仕業って事じゃなさそう。
怖がる私は、すがるような目で妖精さん達を見ました。そして妖精さん達は、そろって首を傾げてつぶらな瞳を輝かせていました。
何だか怖がっているのが私だけみたいで、少し不満です。いや、面白がってないで助けようよ、私をさぁ。
ドアスコープを覗く気にすらなりませんよ。なんか居たら怖いじゃないですか! 玄関にすら近寄りたくないです。
少しすると、静かになります。収まったのかとほっとするのも束の間、ガチャリと玄関の鍵が開く音が聞こえます。
玄関のドアがゆっくりと静かに開いていくじゃないですか。怖いです、チョー怖いです。
心臓がバクバクしてます。助けを求める様に妖精さん達を見ても、助けてくれる気配がありません。
私は少し腰が抜けて、床に座り込んでしまいました。ドアが開いていくのと同時に、私は両手を使ってジタバタと後ずさりします。やがて、ドアが全開になります。
「うるさいのよ! 何時だと思ってんの!」
玄関には、鬼の形相をした裕子ちゃんが立ってました。
「びっくりさせないでよ、裕子ちゃん!」
「びっくりしたのは私よ。あんたこんな夜中に何て声だしてんのよ!」
「だってぇ」
「だってじゃないわよ、この馬鹿!」
そこからは、朝まで裕子ちゃんのお説教が続きました。碌に睡眠も取れないまま、翌朝から大学に行って、バイトに行きました。講義の最中に何度も睡魔が私を襲いました。
ある意味、本当にホラーでしたね。『幽霊の正体見たり裕子ちゃん』でしたけどね。
それよりも、妖精さん達ですよ。私が裕子ちゃんにお説教されている間中、ず~っと爆笑していたんですから。ドッキリにひっかかったタレントを見ている、視聴者の様です。
実はそれが悔しかったので、怪談話しで妖精さん達を驚かそうと思ったんですが、駄目だったようですね。仕方ないです。次の手を考えるとしましょう。
私の復讐はまだ始まったばかりなのだよ、はっはっは~! 妖精さん達よ、油断していると良いさ。いつかビックリさせてあげるんだから~!
1
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。
黒地蔵
紫音
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。

こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
【完】ノラ・ジョイ シリーズ
丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴*
▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー
▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?
✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる