妖精さん達と暮らそう 改訂版

東郷 珠

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妖精さん達のひな祭り

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 三月三日と言えばなんでしょう? 耳の日? いや、まぁそれも有りちゃ、有りなんでしょうけどね。 ひな祭りですよ。暇なツリーじゃないですよ。そんな事を言う人は、それこそ耳鼻科に行った方が、良いんじゃないですか。

 ひな祭りと言えば何を想像しますか? 雛あられとか、菱餅とか、ちらし寿司とかですか? もう、やめて下さいよ。食べ物の事ばっかり話してると、裕子ちゃんが襲ってきますよ。

 ひな祭りと言えば、お雛様じゃないですか? そんな事を言っても、お雛様なんて持ってないですけどね。
 でも、居るじゃないですか。何がとか言わないで下さいよ。今まで散々、紹介したじゃないですか。妖精さんですよ、妖精さん。
 
 あの子達に、お雛様をやって貰おうと、思ってるんですよ。
 想像して下さい、いかがですか? 可愛いでしょ? ときめくでしょ? 鼻血ものですよ!

 そんな事をぽろっと話したら、妖精さん達がノリノリになりました。誰が何の役をするかの、擦った揉んだになりました。やはり一番の人気は、お内裏さまとお雛様のようです。

「みんなの気持ちは、よ~くわかったよ。ここはジャンケンで、勝負をしようね」
 
 私の言葉で妖精さん達が集合して、輪になりました。いつもイベント系に参加しないお掃除の妖精さん達が、珍しくやる気みたいです。いつも口をモグモグさせてるだけの、予防医療の妖精さんも輪の中に入ってます。
 四大元素の妖精さん達に、お花の妖精さん、お仕事の妖精さん、お勉強の妖精さん、ってこれほとんど集合してますね。おぅ、すごい人数になっちゃった。


 音楽の妖精さんは、ひな祭りの歌を奏でてくれてます。お料理の妖精さん達からは、なにやら合図が。
 あ~、はいはい。ちらし寿司の材料を買いに行きたいのね。後で連れてってあげるから、待っててね。
 
 ついでに、ミィも輪の中に加わってました。君はジャンケン出来ないでしょ。ミャって鳴いても、知らんべさ。

 ペチは日向ぼっこしてます。飼育の妖精さんは、モグに追いかけられてます。

 そんなこんなで、妖精さん達のじゃんけん大会が始まりました。
 小さい手を振り上げてジャンケンする妖精さん達の姿は、とっても癒されます。ミィが一緒になって、ちっちゃい前足をちょこちょこと動かしてます。うん、可愛いよミィ。

 ジャンケンに盛り上がってる妖精さん達を、のんびりと眺めていると、スマホがぶるぶると震えます。危険予測の妖精さんが、コクコクと頷いてます。
 あ~、そっか。そういう事ね。電話の相手は裕子ちゃんでした。

「材料を持ってくからさ、ちらし寿司作ってよ。美夏も一緒だからね」

 何となく予感は有りましたけど、やはりこうなったかって感じです。お料理の妖精さんをチラッと見ると、いい笑顔でサムズアップしてます。そっか、あなた達がやる気なら私はかまわないよ。

 おっと、そろそろジャンケンが終わった様です。役割も決まった様ですね。
 それでは発表しましょう、ジャーン!

 お内裏様は、火の妖精さんです。続いてお雛様は、お花の妖精さんです。それでもって、三人官女は水の妖精さん、風の妖精さん、お勉強の妖精さんに決まりました。
 最後の五人囃子は、土の妖精さん、お仕事の妖精さん、お掃除の妖精さんが二人、予防医療の妖精さんになりました。

 ひな壇はどうするって? そんな事くらい、考えてますって。 本で段を作る様に重ねて大きめの布をかければ、ひな壇の完成です。妖精さん達に並んでもらえば、妖精さん版のひな飾りが出来上がり。因みに五人囃子が持つ楽器は、音楽の妖精さんから借りました。

 妖精さん達は、ちょっとなりきってます。配役が良かったのかも知れません。
 元々おしとやかな雰囲気が有るお花の妖精さんは、お雛様にぴったりだし。ちょっとやんちゃな火の妖精さんは、お内裏様らしく立派な感じで、今日は炎を抑え目で運行中です。
 三人官女のメンバー達は、今回ばかりはしゃなりとしてます。五人囃子のメンバー達は、借りた楽器を抱えて少し畏まってます。

 ミィがはしゃいで、妖精さん達の周りを飛び跳ねてます。日向でお昼寝していた、ペチも起きてはしゃぎ始めました。まぁ、モグは相変わらず飼育の妖精さんを追いかけてますが。どうしよう。予想以上の可愛さになってしまいました。

 この可愛さを写真に残せたら。残念で仕方ありませんね。

 そんな私の癒しをぶち壊す呼び鈴が鳴ると、勝手にドアを開けて、裕子ちゃんが入って来ます。あの子には、人の家って自覚が無いんでしょうか?
 
「来たわよ~。ってあんた何してんの?」
「うわぁ~。雛飾りかな? 可愛いね。妖精のお雛様?」

 これ、誰が言ったかわかりますよね。最初が裕子ちゃんで、次が美夏ちゃんですよ。フフフ、妖精さんが見えない裕子ちゃんには、この可愛さがわかるまい。ビバ美夏ちゃん!

 まぁそこからは、いつもの暴食タイムです。裕子ちゃんのターンです。美夏ちゃんも負けじと食べます。五人前位あったちらし寿司を、ほとんど二人で食べてました。
 それからも、裕子ちゃんが持ち込んだ材料を使った、妖精さんの特製料理を何時間も食べ続けてました。凄いというか、なんというか。野生児の美夏ちゃんはともかく、裕子ちゃんはそのうち太るんじゃないですか。

 妖精さん達は、満腹の裕子ちゃん達が帰るまで、ずうっとお雛様ごっこをしてました。とってもいい笑顔です。楽しんで貰えたなら良かったよ。わたしも、目の保養になったしね。

 何だかんだで、楽しいひな祭りになりました。妖精さん達に感謝して、一日が終わります。妖精さん達、ありがとう。
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