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肉の日は肉パーティー
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二月九日は、何の日ですか?
福の日、服の日、風の日。他にも漫画の日、ふくの日。因みに『ふく』とは、下関で言われる『ふぐ』の事みたいです。
ふぐと言ったら裕子ちゃんが、乗り込んできそう?
確かに去年は、高級ふぐセットのお取り寄せが自宅に届き、裕子ちゃんと一緒に、お料理の妖精さん謹製のふぐ鍋を頂きました。それはもう、頬っぺたが落ちる美味しさでした。
美味しい物を食べると、人は静かになります。黙々と二人でふぐ鍋を食べました。ふふ、思いだしても涎が出そう。
そしてなんと、今年はふぐじゃ無くてお肉が届きました。松坂牛のすき焼き用極上リブロースです。
裕子ちゃんは、なんて物を送り付けて来るんでしょう。って、いったい幾らしたんでしょう?
それだけでは有りませんでした。A5飛騨牛のステーキ用ミスジ、ホルモンやら、牛タンやらが続々と。
裕子ちゃんは、どれだけ食べる気なんだろう。ご相伴には預かる予定ですけど、私が食べる量なんてたかが知れてます。
お肉が届くとお料理の妖精さんは、大喜びで跳ね回ります。とっても嬉しそうです。この間築地で買った昆布を片手に、「やったるぜ~」みたいな顔つきで、鼻息を荒くしています。
お料理の妖精さんは、割下作りやホルモンの下ごしらえを要領よく行います。料理の準備が着々と進む中、すき焼きをするなら、野菜が無いと駄目じゃ無い? そんな事を考えてたら、裕子ちゃんが野菜と豆腐を持って現れました。
「さぁ、食べるわよ~!」
「もう、食べる気? 準備は?」
私がお料理の妖精さんを見やると、良い笑顔でサムズアップしてました。もう準備出来たの? そうか君達は既にやる気満々だったね……。
肉だらけ、実に重そうです。
最初はステーキです。何故フライパンで出来たのかわかりませんが、最高の焼き加減です。『噛まなくっていい』ってやつです、とろけます。
塩と胡椒が肉の味を引き立てます。余計な味付けは要らない、肉本来の味を堪能せよとばかりに、肉汁が口一杯に広がります。
牛肉ってこんなに美味しかったっけ? そう思わせる逸品です。
「流石A5は違うわね!」
「くぉ~! 美味しすぎる!」
「シンプルな味付けが、肉の味を引き立てているわね。流石私の見込んだシェフだわ」
一品目から意味のわからない、裕子ちゃんのコメントです。でも、気持ちはわかります。それ位美味しいステーキでした。
まだまだ、肉のアタックは続きます。続くのはホルモンです。
ネギと一緒に焼かれて、甘辛く醤油で味付けされたホルモンは、コリコリと歯ごたえが良く、濃厚な味つけが舌を喜ばせます。
「ヤバいわね、ホルモン。やるわね、ホルモン。ホルモン狂になりそうだわ」
「意味がわからないけど、美味しいのは確かだね」
裕子ちゃんのコメントは、最早意味不明です。美味し過ぎる肉達のせいで、少々ハイになってます。
まだまだ牛肉の攻撃は続きます。もう既に私は、ノックアウト寸前です。裕子ちゃんは、まだまだ戦う気ですね。流石は食欲魔人!
お料理の妖精さんは、代わる代わる次々と料理を作り上げていきます。
「もっと、もっと、かかっておいで」
「ねぇ、もう充分じゃない?」
「馬鹿じゃないの! 肉パーティーはこれからよ!」
満を持して、牛タンの登場です。シンプルに焼かれた牛タンです、やはり食感が最高ですね。だけど、今回はそれに留まりません。牛テールスープと茹でタンのコラボアタックが一緒にやって来ました。
箸でほぐれるトロトロの食感は、焼いた牛タンとはまた別の味わい深さが有ります。牛テールのホロホロ感もたまりません。スープはくどさが無く、ガツンと濃厚な味わいが舌を刺激します。
「おいすぅい~! ヒャッハー!」
「いや、もう駄目な感じがするよ、裕子ちゃん!」
もう、私のHPは残り僅か。牛肉の攻撃に耐えられそうも有りません。裕子ちゃんもそろそろヤバそうです。顔がとろけてます。
最後はすき焼きです。すき焼き鍋に牛脂を馴染ませると、お料理の妖精さんは徐に牛肉を焼き初めました。
味付けは特製割下です。最初に肉を食べた後、鍋に残った肉のエキスを吸わせる様に、豆腐や野菜を投入し出汁で煮込みます。
豆腐と野菜を食べ終わると、再び肉を鍋で焼きます。肉と野菜達の波状攻撃に私のHPは尽きました。
「うま死……」
「同じく……」
私は既にギブアップです。しかし、裕子ちゃんはシメのおじやも軽く平らげ、満足気な笑みを浮かべています。あれは、戦い終えた戦士の表情です。
恐るべし、裕子ちゃん!
恐るべし、肉の軍団!
恐るべし、お料理の妖精さん!
最高の食材と最高の料理人。いやまぁ、作ったのは妖精さんですが。このコンビで人は沈んでいきます、食の水底へと。私は暫く浮き上がれません。
意識を取り戻すのに数時間を要した私が見た物は、壮絶な戦いの後でした。
裕子ちゃんは、尚も食べ続けたそうです。確かに裕子ちゃんが送って来たのは、牛肉だけでは無かった。地鶏や黒豚、馬刺し等、妖精さん謹製の肉料理を余す事無く堪能し、裕子ちゃんは去って行きました。
裕子ちゃんは『食欲魔人』じゃ足りない、『食欲魔王』と名付けよう。私は強く感じました。本気を出して食べまくる裕子ちゃんは、何物をも凌駕する。
美味しい物を食べられて幸せなんですが、食事は戦いではありません。もう少しじっくりと味わいたいものです。
福の日、服の日、風の日。他にも漫画の日、ふくの日。因みに『ふく』とは、下関で言われる『ふぐ』の事みたいです。
ふぐと言ったら裕子ちゃんが、乗り込んできそう?
確かに去年は、高級ふぐセットのお取り寄せが自宅に届き、裕子ちゃんと一緒に、お料理の妖精さん謹製のふぐ鍋を頂きました。それはもう、頬っぺたが落ちる美味しさでした。
美味しい物を食べると、人は静かになります。黙々と二人でふぐ鍋を食べました。ふふ、思いだしても涎が出そう。
そしてなんと、今年はふぐじゃ無くてお肉が届きました。松坂牛のすき焼き用極上リブロースです。
裕子ちゃんは、なんて物を送り付けて来るんでしょう。って、いったい幾らしたんでしょう?
それだけでは有りませんでした。A5飛騨牛のステーキ用ミスジ、ホルモンやら、牛タンやらが続々と。
裕子ちゃんは、どれだけ食べる気なんだろう。ご相伴には預かる予定ですけど、私が食べる量なんてたかが知れてます。
お肉が届くとお料理の妖精さんは、大喜びで跳ね回ります。とっても嬉しそうです。この間築地で買った昆布を片手に、「やったるぜ~」みたいな顔つきで、鼻息を荒くしています。
お料理の妖精さんは、割下作りやホルモンの下ごしらえを要領よく行います。料理の準備が着々と進む中、すき焼きをするなら、野菜が無いと駄目じゃ無い? そんな事を考えてたら、裕子ちゃんが野菜と豆腐を持って現れました。
「さぁ、食べるわよ~!」
「もう、食べる気? 準備は?」
私がお料理の妖精さんを見やると、良い笑顔でサムズアップしてました。もう準備出来たの? そうか君達は既にやる気満々だったね……。
肉だらけ、実に重そうです。
最初はステーキです。何故フライパンで出来たのかわかりませんが、最高の焼き加減です。『噛まなくっていい』ってやつです、とろけます。
塩と胡椒が肉の味を引き立てます。余計な味付けは要らない、肉本来の味を堪能せよとばかりに、肉汁が口一杯に広がります。
牛肉ってこんなに美味しかったっけ? そう思わせる逸品です。
「流石A5は違うわね!」
「くぉ~! 美味しすぎる!」
「シンプルな味付けが、肉の味を引き立てているわね。流石私の見込んだシェフだわ」
一品目から意味のわからない、裕子ちゃんのコメントです。でも、気持ちはわかります。それ位美味しいステーキでした。
まだまだ、肉のアタックは続きます。続くのはホルモンです。
ネギと一緒に焼かれて、甘辛く醤油で味付けされたホルモンは、コリコリと歯ごたえが良く、濃厚な味つけが舌を喜ばせます。
「ヤバいわね、ホルモン。やるわね、ホルモン。ホルモン狂になりそうだわ」
「意味がわからないけど、美味しいのは確かだね」
裕子ちゃんのコメントは、最早意味不明です。美味し過ぎる肉達のせいで、少々ハイになってます。
まだまだ牛肉の攻撃は続きます。もう既に私は、ノックアウト寸前です。裕子ちゃんは、まだまだ戦う気ですね。流石は食欲魔人!
お料理の妖精さんは、代わる代わる次々と料理を作り上げていきます。
「もっと、もっと、かかっておいで」
「ねぇ、もう充分じゃない?」
「馬鹿じゃないの! 肉パーティーはこれからよ!」
満を持して、牛タンの登場です。シンプルに焼かれた牛タンです、やはり食感が最高ですね。だけど、今回はそれに留まりません。牛テールスープと茹でタンのコラボアタックが一緒にやって来ました。
箸でほぐれるトロトロの食感は、焼いた牛タンとはまた別の味わい深さが有ります。牛テールのホロホロ感もたまりません。スープはくどさが無く、ガツンと濃厚な味わいが舌を刺激します。
「おいすぅい~! ヒャッハー!」
「いや、もう駄目な感じがするよ、裕子ちゃん!」
もう、私のHPは残り僅か。牛肉の攻撃に耐えられそうも有りません。裕子ちゃんもそろそろヤバそうです。顔がとろけてます。
最後はすき焼きです。すき焼き鍋に牛脂を馴染ませると、お料理の妖精さんは徐に牛肉を焼き初めました。
味付けは特製割下です。最初に肉を食べた後、鍋に残った肉のエキスを吸わせる様に、豆腐や野菜を投入し出汁で煮込みます。
豆腐と野菜を食べ終わると、再び肉を鍋で焼きます。肉と野菜達の波状攻撃に私のHPは尽きました。
「うま死……」
「同じく……」
私は既にギブアップです。しかし、裕子ちゃんはシメのおじやも軽く平らげ、満足気な笑みを浮かべています。あれは、戦い終えた戦士の表情です。
恐るべし、裕子ちゃん!
恐るべし、肉の軍団!
恐るべし、お料理の妖精さん!
最高の食材と最高の料理人。いやまぁ、作ったのは妖精さんですが。このコンビで人は沈んでいきます、食の水底へと。私は暫く浮き上がれません。
意識を取り戻すのに数時間を要した私が見た物は、壮絶な戦いの後でした。
裕子ちゃんは、尚も食べ続けたそうです。確かに裕子ちゃんが送って来たのは、牛肉だけでは無かった。地鶏や黒豚、馬刺し等、妖精さん謹製の肉料理を余す事無く堪能し、裕子ちゃんは去って行きました。
裕子ちゃんは『食欲魔人』じゃ足りない、『食欲魔王』と名付けよう。私は強く感じました。本気を出して食べまくる裕子ちゃんは、何物をも凌駕する。
美味しい物を食べられて幸せなんですが、食事は戦いではありません。もう少しじっくりと味わいたいものです。
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