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揺れる王国
29 ペスカと王立魔法研究所
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ドラゴンを一掃し鬱憤を晴らしたペスカと冬也。二人が戦車から顔を出すと、二人が操作した兵器について問いただそうと、王族や重鎮達がペスカに慌てて群がって来た。
「ペスカ殿、その兵器はいったい?」
それもそうだろう。大陸中が戦争に状態に陥ろうとしている。国内ではモンスター騒動が起ころうとしている。迫りくる危機に対して、ただ頭を悩ませていた所に、振ってきた超兵器なのだ。指をくわえて見ていられるはずがない。
沈んだ表情の謁見とは打って変わって、目をギラつかせながら迫って来る大人達は、ペスカからすればさぞかし気持ち悪かったに違いない。
「後ほど王立魔法研究所から、報告をさせるますので」
説明を面倒がったと言うより、怖かったのだろう。ペスカは逃げる様に戦車に乗りこんだ。そして慌てて引き留める重鎮達を尻目に、ペスカ達はその場から逃げるように王城から去った。
「ペスカ、一応聞くけど魔攻砲はこの世界で普及してるんだよな」
「うん。生前の私が開発した物だからね」
「じゃあ、この戦車は?」
「うふ。こんな現代兵器が、この世界に有るわけ無いでしょ」
「完全にオーバーテクノロジーじゃねぇか! お偉いさんが慌てる訳だよ」
「今更なに言ってんの。シグルドだってスルーしたのに。それに役に立ったでしょ」
「これ、どう説明するんだよ」
「王立魔法研究所には、生前の知り合いが居るから上手い事やるよ」
冬也が頭を抱えて座り込む中、ペスカは颯爽と戦車を動かし、先の言葉の中にあった王立魔法研究所へ向かう。
王立魔法研究所とは、生前のペスカが職員として従事していた場所である。魔法及び、魔法工学の研究を行っている。生前のペスカは、この研究所で多くの発明品を生み出した。ペスカの発明を元に、多くの生活用品や兵器が作られていった。尚、邪神ロメリアに操られたドルクが従事していたのも、この研究所である。言わば、ペスカの同僚にあたる。
王立魔法研究所は、北の工業区域内でも王城に寄り添う様に存在する。そして、実験用の広大な敷地を持ち、高い壁に周囲を覆われている。
工業区域には、生活用魔法道具工場と魔攻兵器工場の二種類が稼働しており、多くの王都住民が働いている。民営の生活用魔法道具に対し、魔攻兵器工場は国営で、王が指定した貴族達の管理下に有る。
だが、王立魔法研究所は貴族の管理で無く、直接王族が管理する秘匿施設である。警備等は近衛隊が行っており、研究者を始め職員全てに厳しい試験と調査を義務付けられていた。その為、例え国の重職に就いていようと、王の許可無く入る事は出来ない施設であった。
研究所の正門に辿り着いたペスカ達は、戦車を降りて警備の近衛兵に話しかける。
「陛下から許可が出てると思うけど、ペスカだよ」
ペスカの言葉に、近衛兵は急ぎ王城へ連絡を取る。だが、許可が出るのには、そう時間はかからなかった。そしてペスカは、近衛兵に所長を呼び出す様に指示をする。門の中に入ると、研究所の入り口近くに戦車を止めた。
古巣が懐かしかったのか、ペスカは戦車を勢いよく降りる。対して冬也は、荷物を抱えてゆっくりと戦車から降りた。
二人が戦車から降りると、研究所から出て来る集団が見えた。ほとんどの者はボサボサの髪によれた服の薄汚れた風体だったが、一人だけ身なりの整った白髪で豊かな髭を蓄えた老年の男性がいる。ペスカは集団に向かい、大きく手を振りながら声をかけた。
「お~い! 所長~! 元気~?」
飛び跳ねながら、集団に呼びかけるペスカ。相反する様に、集団はゆっくりと近づいて来る。そして老紳士は、ペスカを見定める様にじっと見つめていた。手が届くほど近づいた頃、老紳士はペスカに話しかけた。
「まさか、ペスカなのか? いや、そのマナの感じ、ペスカに間違い無い。あぁ、久しぶりだ。また君に会う事が出来るとは」
「流石所長! 良く判ったね。久しぶり」
「ペスカ、その人は?」
「ごめん、お兄ちゃん。この人はマルスさん。この研究所の所長で、名誉侯爵。所長、この人は私のお兄ちゃん」
紹介を受け、冬也とマルスは挨拶を交わす。だがマルスの視線は、直ぐに戦車へと移る。やや険しい表情で戦車を見ると、ペスカに向かい声をかけた。
「ドラゴンを撃墜させたのは、この兵器だな? 君がどの様な事になっているのか、詳しく聞かせて貰おう。無論、この兵器の事もな」
マルスに先導されて、研究員達が研究所へ戻る。ペスカは荷物を冬也に任せ、マルスの後へ続いた。
研究所には研究員と職員合わせて約百名ほどが働いており、全ての人が研究所に隣接された宿舎で寝泊まりをしている。
五階建てで建てられた研究所は、一階を除き各階毎に専門分野の研究がなされている。一階に事務関連室に会議室・休憩所や所長室、二階は魔法研究室、三階は魔法道具研究室、四階は魔攻兵器開発室、五階は兵器実験室。屋外の敷地も兵器実験に使用されている。
四階以上は、研究所内でも限られた人材しか入出の許可を出されない区域である。そして、四階に生前のペスカが使っていた研究室があった。
マルスに案内されて、所長室に通される。マルスは人払いをした後、テーブルを挟みペスカ達と向かい合う様にソファーに座ると、会話を始めた。
「遺言通り、君の研究室はそのまま残してある」
「さっすが所長! ありがと~」
「それにしても、君は生まれ変わっても相変わらずなのだな。もう淑女と言って良い年だろう。もう少し言動に気を付けられないのかね」
「はっはっは~。仕方ないよ。人がそんなに変わるもんかね~」
眉をひそめてペスカを見るマルスに対し、ペスカはあっけらかんと答える。ペスカに軽い拳骨を落とし、冬也はマルクに質問した。
「所長さん、この馬鹿は何者だったんですか?」
「うむ。この子は私の教え子だったんだよ。数多い教え子達の中でも、飛び抜けて優秀でね。今この研究所で行われている研究は、この子の研究が元になっている物が多い」
従来、王立魔法研究所は魔法研究室として王城内に有り、新しい魔法やマナの効率化、マナを補充するポーション等の直接魔法に関係した研究を行っていた。
魔法研究室の室長を務めていたマルクが、たまたまメイザー領を訪れた際に、若くして魔法の扱いに長けていたペスカを見つけ勧誘し、魔法研究室の研究員とした。マルク指導の下、ペスカは次々と生活に役立つ魔法道具を開発し、魔法道具は爆発的に広がって行った。
それに伴い、スラム街であった北地区を区画整理し、多くの工場を建て魔法道具の生産を行った。
ペスカが開発した魔法道具は、貧困層の労働環境を改善しただけで無く、王国の経済を著しく上昇させた。その状況に気を良くした当時の王族は、ペスカに兵器開発を命ずると共に、魔法研究室を王立魔法研究所と改め、広大な敷地を持つ五階建ての研究所を建設した。
尚、研究所でペスカが開発した魔攻砲と呼ばれる兵器は工場で大量生産され、二十年前の悪夢と呼ばれる事件の際、モンスター討伐やロメリア教徒の掃討に活躍した。
マルクの説明が終わると、冬也は息を深く吐く様に呟いた。
「はぁ。そうですか」
「いやいや、お兄ちゃん。そこは私を褒め称えて、撫で撫でする所でしょ」
「しねぇ~よ、馬鹿」
「ふむ。冬也君だったね。君のマナ保有量も相当な物だな。まぁ敢えて出自は問わぬ事にしよう。それでペスカ、今度は君が説明する番だよ」
冬也を見定める様に見つめた後、マルクはペスカに問いかける。ペスカは、メイザー領の状況や邪神ロメリアの関与等をマルクに説明すると共に、日本の現代科学の説明を行った。
マルクは始めこそ、訝しげな表情でペスカの説明を聞いていたが、数時間前に起きた黒竜の襲撃と謎の爆発による黒竜の消滅、そしてペスカの乗り付けた戦車を目の当たりにし、ペスカの話しが現実なのだと理解した。
最後は、ペスカの論理立てた説明に、感嘆の声さえ上げていた。
「ふむ。理解が及ばない物もあるが、素晴らしいな! で、君は一体我々に何をさせようと言うのだね」
マルクの問いにペスカは即座に反応する。荷物を取り出すと、中身をテーブルにぶちまけた。だがテーブルに撒かれた品々を見て、マルクは目を剥いた。
ペスカが持ち込んだ物は、アサルトライフルにロケットランチャー、各種弾丸、手榴弾、それと各種設計図だった。
「お前、なんて物を持ち込んでんだよ!」
これには流石の冬也も、びっくりして声を上げる。
冬也とて実物は映像で見た事が有っても、完成図が無ければ、それがいったい何なのかはわからない。そもそもいつの間に、こんな設計図を作っていたのか。王都までは、ずっと一緒にいたのだ。こんな設計をする時間は、邪神戦の数日間しかあるまい。
この世界には魔攻砲なんて、とんでもない代物があっても、肉弾戦と魔法が主流である。兵器の進化を何段階も飛ばす事を覚悟の上で、これらを設計したのなら、ペスカはどれだけの事を想定しているのだろうか。
冬也の驚いた顔を見ると、ペスカは少しはしゃいだ様な声で、マルクに説明し始めた。
「アサルトライフルとロケットランチャーは百丁、弾丸はそれぞれ一万、手榴弾は千個用意して。弾丸に込める魔法の術式は、設計図に書いてあるからその通り作って。期限は一週間!」
「これが、先ほど話してくれた兵器か? 凄いな! しかし、期限が一週間とは...。 いや面白い!」
「研究所も工場も一旦作業を中止して、生産に取り組んでね」
「あぁ。君が言うのだ、任せたまえ。工場の管理している貴族達には、私から話を通しておく」
「話が早いね所長。ついでに戦車の報告を陛下によろしくね」
「戦車とは、君が乗って来た兵器の事だね。後で見せてもらった上で報告しておこう」
マルクの対応の良さに、圧倒された様に固まる冬也だったが、訝しげな表情でペスカに問いかけた。
「お前、何を企んでるんだ?」
「私の予想が正しければ、これからの戦いはこれで勝つる!」
笑顔で高笑いをするペスカ。未知の兵器作成に意欲を燃やすマルク。 そんな二人の姿を、不安にかられる様に冬也は見つめていた。
「ペスカ殿、その兵器はいったい?」
それもそうだろう。大陸中が戦争に状態に陥ろうとしている。国内ではモンスター騒動が起ころうとしている。迫りくる危機に対して、ただ頭を悩ませていた所に、振ってきた超兵器なのだ。指をくわえて見ていられるはずがない。
沈んだ表情の謁見とは打って変わって、目をギラつかせながら迫って来る大人達は、ペスカからすればさぞかし気持ち悪かったに違いない。
「後ほど王立魔法研究所から、報告をさせるますので」
説明を面倒がったと言うより、怖かったのだろう。ペスカは逃げる様に戦車に乗りこんだ。そして慌てて引き留める重鎮達を尻目に、ペスカ達はその場から逃げるように王城から去った。
「ペスカ、一応聞くけど魔攻砲はこの世界で普及してるんだよな」
「うん。生前の私が開発した物だからね」
「じゃあ、この戦車は?」
「うふ。こんな現代兵器が、この世界に有るわけ無いでしょ」
「完全にオーバーテクノロジーじゃねぇか! お偉いさんが慌てる訳だよ」
「今更なに言ってんの。シグルドだってスルーしたのに。それに役に立ったでしょ」
「これ、どう説明するんだよ」
「王立魔法研究所には、生前の知り合いが居るから上手い事やるよ」
冬也が頭を抱えて座り込む中、ペスカは颯爽と戦車を動かし、先の言葉の中にあった王立魔法研究所へ向かう。
王立魔法研究所とは、生前のペスカが職員として従事していた場所である。魔法及び、魔法工学の研究を行っている。生前のペスカは、この研究所で多くの発明品を生み出した。ペスカの発明を元に、多くの生活用品や兵器が作られていった。尚、邪神ロメリアに操られたドルクが従事していたのも、この研究所である。言わば、ペスカの同僚にあたる。
王立魔法研究所は、北の工業区域内でも王城に寄り添う様に存在する。そして、実験用の広大な敷地を持ち、高い壁に周囲を覆われている。
工業区域には、生活用魔法道具工場と魔攻兵器工場の二種類が稼働しており、多くの王都住民が働いている。民営の生活用魔法道具に対し、魔攻兵器工場は国営で、王が指定した貴族達の管理下に有る。
だが、王立魔法研究所は貴族の管理で無く、直接王族が管理する秘匿施設である。警備等は近衛隊が行っており、研究者を始め職員全てに厳しい試験と調査を義務付けられていた。その為、例え国の重職に就いていようと、王の許可無く入る事は出来ない施設であった。
研究所の正門に辿り着いたペスカ達は、戦車を降りて警備の近衛兵に話しかける。
「陛下から許可が出てると思うけど、ペスカだよ」
ペスカの言葉に、近衛兵は急ぎ王城へ連絡を取る。だが、許可が出るのには、そう時間はかからなかった。そしてペスカは、近衛兵に所長を呼び出す様に指示をする。門の中に入ると、研究所の入り口近くに戦車を止めた。
古巣が懐かしかったのか、ペスカは戦車を勢いよく降りる。対して冬也は、荷物を抱えてゆっくりと戦車から降りた。
二人が戦車から降りると、研究所から出て来る集団が見えた。ほとんどの者はボサボサの髪によれた服の薄汚れた風体だったが、一人だけ身なりの整った白髪で豊かな髭を蓄えた老年の男性がいる。ペスカは集団に向かい、大きく手を振りながら声をかけた。
「お~い! 所長~! 元気~?」
飛び跳ねながら、集団に呼びかけるペスカ。相反する様に、集団はゆっくりと近づいて来る。そして老紳士は、ペスカを見定める様にじっと見つめていた。手が届くほど近づいた頃、老紳士はペスカに話しかけた。
「まさか、ペスカなのか? いや、そのマナの感じ、ペスカに間違い無い。あぁ、久しぶりだ。また君に会う事が出来るとは」
「流石所長! 良く判ったね。久しぶり」
「ペスカ、その人は?」
「ごめん、お兄ちゃん。この人はマルスさん。この研究所の所長で、名誉侯爵。所長、この人は私のお兄ちゃん」
紹介を受け、冬也とマルスは挨拶を交わす。だがマルスの視線は、直ぐに戦車へと移る。やや険しい表情で戦車を見ると、ペスカに向かい声をかけた。
「ドラゴンを撃墜させたのは、この兵器だな? 君がどの様な事になっているのか、詳しく聞かせて貰おう。無論、この兵器の事もな」
マルスに先導されて、研究員達が研究所へ戻る。ペスカは荷物を冬也に任せ、マルスの後へ続いた。
研究所には研究員と職員合わせて約百名ほどが働いており、全ての人が研究所に隣接された宿舎で寝泊まりをしている。
五階建てで建てられた研究所は、一階を除き各階毎に専門分野の研究がなされている。一階に事務関連室に会議室・休憩所や所長室、二階は魔法研究室、三階は魔法道具研究室、四階は魔攻兵器開発室、五階は兵器実験室。屋外の敷地も兵器実験に使用されている。
四階以上は、研究所内でも限られた人材しか入出の許可を出されない区域である。そして、四階に生前のペスカが使っていた研究室があった。
マルスに案内されて、所長室に通される。マルスは人払いをした後、テーブルを挟みペスカ達と向かい合う様にソファーに座ると、会話を始めた。
「遺言通り、君の研究室はそのまま残してある」
「さっすが所長! ありがと~」
「それにしても、君は生まれ変わっても相変わらずなのだな。もう淑女と言って良い年だろう。もう少し言動に気を付けられないのかね」
「はっはっは~。仕方ないよ。人がそんなに変わるもんかね~」
眉をひそめてペスカを見るマルスに対し、ペスカはあっけらかんと答える。ペスカに軽い拳骨を落とし、冬也はマルクに質問した。
「所長さん、この馬鹿は何者だったんですか?」
「うむ。この子は私の教え子だったんだよ。数多い教え子達の中でも、飛び抜けて優秀でね。今この研究所で行われている研究は、この子の研究が元になっている物が多い」
従来、王立魔法研究所は魔法研究室として王城内に有り、新しい魔法やマナの効率化、マナを補充するポーション等の直接魔法に関係した研究を行っていた。
魔法研究室の室長を務めていたマルクが、たまたまメイザー領を訪れた際に、若くして魔法の扱いに長けていたペスカを見つけ勧誘し、魔法研究室の研究員とした。マルク指導の下、ペスカは次々と生活に役立つ魔法道具を開発し、魔法道具は爆発的に広がって行った。
それに伴い、スラム街であった北地区を区画整理し、多くの工場を建て魔法道具の生産を行った。
ペスカが開発した魔法道具は、貧困層の労働環境を改善しただけで無く、王国の経済を著しく上昇させた。その状況に気を良くした当時の王族は、ペスカに兵器開発を命ずると共に、魔法研究室を王立魔法研究所と改め、広大な敷地を持つ五階建ての研究所を建設した。
尚、研究所でペスカが開発した魔攻砲と呼ばれる兵器は工場で大量生産され、二十年前の悪夢と呼ばれる事件の際、モンスター討伐やロメリア教徒の掃討に活躍した。
マルクの説明が終わると、冬也は息を深く吐く様に呟いた。
「はぁ。そうですか」
「いやいや、お兄ちゃん。そこは私を褒め称えて、撫で撫でする所でしょ」
「しねぇ~よ、馬鹿」
「ふむ。冬也君だったね。君のマナ保有量も相当な物だな。まぁ敢えて出自は問わぬ事にしよう。それでペスカ、今度は君が説明する番だよ」
冬也を見定める様に見つめた後、マルクはペスカに問いかける。ペスカは、メイザー領の状況や邪神ロメリアの関与等をマルクに説明すると共に、日本の現代科学の説明を行った。
マルクは始めこそ、訝しげな表情でペスカの説明を聞いていたが、数時間前に起きた黒竜の襲撃と謎の爆発による黒竜の消滅、そしてペスカの乗り付けた戦車を目の当たりにし、ペスカの話しが現実なのだと理解した。
最後は、ペスカの論理立てた説明に、感嘆の声さえ上げていた。
「ふむ。理解が及ばない物もあるが、素晴らしいな! で、君は一体我々に何をさせようと言うのだね」
マルクの問いにペスカは即座に反応する。荷物を取り出すと、中身をテーブルにぶちまけた。だがテーブルに撒かれた品々を見て、マルクは目を剥いた。
ペスカが持ち込んだ物は、アサルトライフルにロケットランチャー、各種弾丸、手榴弾、それと各種設計図だった。
「お前、なんて物を持ち込んでんだよ!」
これには流石の冬也も、びっくりして声を上げる。
冬也とて実物は映像で見た事が有っても、完成図が無ければ、それがいったい何なのかはわからない。そもそもいつの間に、こんな設計図を作っていたのか。王都までは、ずっと一緒にいたのだ。こんな設計をする時間は、邪神戦の数日間しかあるまい。
この世界には魔攻砲なんて、とんでもない代物があっても、肉弾戦と魔法が主流である。兵器の進化を何段階も飛ばす事を覚悟の上で、これらを設計したのなら、ペスカはどれだけの事を想定しているのだろうか。
冬也の驚いた顔を見ると、ペスカは少しはしゃいだ様な声で、マルクに説明し始めた。
「アサルトライフルとロケットランチャーは百丁、弾丸はそれぞれ一万、手榴弾は千個用意して。弾丸に込める魔法の術式は、設計図に書いてあるからその通り作って。期限は一週間!」
「これが、先ほど話してくれた兵器か? 凄いな! しかし、期限が一週間とは...。 いや面白い!」
「研究所も工場も一旦作業を中止して、生産に取り組んでね」
「あぁ。君が言うのだ、任せたまえ。工場の管理している貴族達には、私から話を通しておく」
「話が早いね所長。ついでに戦車の報告を陛下によろしくね」
「戦車とは、君が乗って来た兵器の事だね。後で見せてもらった上で報告しておこう」
マルクの対応の良さに、圧倒された様に固まる冬也だったが、訝しげな表情でペスカに問いかけた。
「お前、何を企んでるんだ?」
「私の予想が正しければ、これからの戦いはこれで勝つる!」
笑顔で高笑いをするペスカ。未知の兵器作成に意欲を燃やすマルク。 そんな二人の姿を、不安にかられる様に冬也は見つめていた。
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