373 / 415
混乱の東京
370 第三次世界大戦 ~東郷遼太郎~
しおりを挟む
遼太郎は、父の存在を知らない。母の温もりを知らない。
何故なら、神格を宿す魂魄を受胎する事。それは、人間が耐え得るものではないからだ。
普通に生まれて来る事は、皆無である。大体の場合が、子宮に宿る神気に耐えきれず、母体は死を迎える。そして、自らの力で子宮を破り、赤子は生まれる。例え未熟児であろうとも、必ず成長する。何故なら、神気を宿しているから。
記憶を持たなくても、本能的に生きる術を知っている。そんな赤子を気味が悪いと思わない父は存在しなかった。
遼太郎は、何度転生しようとも、両親の愛を受けて生まれては来なかった。
だが遼太郎の魂魄。いや、ミスラの魂魄は、それを是とした。どれだけ母体を厳選しようとも、こればかりは仕方がない事なのだ。
重要なのは、己の神格を渡すべき存在を、生ませる事。そして、暴走した戦いの神を止められる程に、成長させる事なのだ。
ただし、自らが生まれる事自体が、母体に多大な影響を与える。ましてや、己の神格を渡すべき存在を、受胎出来る人間がいるだろうか。それは途方もない事だと言えよう。それ故に、何度も転生を余儀なくされた。
そして、出産とも呼べない異例の事象は、ミストルティンに目をつけられた。
腹が大きくなるにつれて、弱っていく母親。既に中絶するには遅く、父親は見守るしかない。まだ出産予定日まで時期が有るにも関わらず、母親は倒れて病院へ搬送される。
父親が病院に駆けつけた時には、母親は既に意識不明の重体。そして、父親は選択を迫られる。母親の命か、子供の命か。
父親は、母親の命を選択する、しかし時は既に遅く、母親は息を引き取る。息を引き取った後、母親の子宮から眩い光が放たれる。そして未熟児であろう赤子は、母親の母体から這い上がって来た。
医師を始め、看護師や父親も、その事態に声も出なかった。
当然であろう。ホラーやSF映画では有るまいし、そんな奇妙な出来事が目の前で起こるとは思うまい。
長らく産婦人科で腕を振るっていた担当医師は、ショックで何日か寝込んだ後、医師で有る事を辞めた。看護師の中にも、病院を辞めていった者がいる。
そして父親は、愛する妻を失った時の衝撃がいつまで目に焼きつき、遂には病を患い入院を余儀なくされた。
では生まれて来た赤子はどうなったのか。
中学生位の少年が、引き取っていった。そして、その後の様子を知る者は、病院の中には誰もいない。
そして、その中学生位の少年こそが、体を乗り換えたばかりの三島である。
三島はベビーシッターを雇い、自らの屋敷で遼太郎を育てた。
遼太郎は、手がかからなかった。夜泣きをする訳でも無く、食事が欲しいと泣く訳でも無い。決まった時間に食事を与え、おむつを交換すれば事足りる。
遼太郎の魂に眠るミスラの神気に、三島は気がついていない。しかし、成長するにつれて、運動能力が並外れている事がわかった。
その時の三島は、遼太郎を兵士として育てるつもりは無かった。ただ、欲は生まれる。
立って歩ける位になった頃、空手の師範代を呼んで、型を習わせた事が有る。遼太郎は直ぐに型を覚えた。しかし、ここからが格闘の神ミスラの本領発揮である。
歩けるようになったばかりの幼子が、大人を倒すなんて誰が考えるだろうか。しかも相手は、全日本の空手大会で優勝した経験がある、優秀な空手家だ。
まだ歩くのがやっと、それは子供と言うより、赤ん坊であろう。そして、よたよたと歩きながらも、的確に急所を突いてダメージを与える姿は、異様でしかない。それでも、赤子の放つ拳など大してダメージも与えられないだろう、普通ならば。
だが、赤子の拳には神気が宿っている。当った衝撃は、普通の赤ん坊と変わらない。しかし、拳を通して神気が急所を貫けば、相応のダメージになる。
寧ろ、そんなダメージを一度でも受けて、立っていられるのが普通ではない。流石に元全日本大会の優勝者といった所だろう。
ただ、決着がつくのは、あっという間だった。
遼太郎は、幼少期からストイックだった。それは、己が人の命を犠牲にして生まれて来た、呵責があるのだろう。
それ以上に、魂へ刻まれた宿命が、遼太郎の歩みを止めさせなかった。まるで導かれる様に、様々な体術を体得していく。
義務教育を卒業する年齢になる頃には、武器を持たずに戦場を駆け回れるほどに成長していた。
三島は、遼太郎に正体を隠して接していた。あくまでも、優しい兄貴分として。そして何かを隠している事を察しながらも、幼い遼太郎は弟分の役割を果たした。
歪な関係であろう。だが、それで充分なのだ。どの道、赤の他人である。何処かで線を引き、何らかの役割を演じなければ、共同生活など成り立つまい。
そして三島は、遼太郎が二十歳を超える頃、あらゆる紛争地帯に送り込んだ。そして数年の後、宮内庁特別怨霊対策局を作り上げて、遼太郎を職員とした。
既にこの頃、三島と遼太郎の関係は、扶養者と被扶養者ではなく、上司と部下の関係になっていた。
育った環境が性格を決めるという考え方が有る。遼太郎の場合は、転生を重ねる毎に、経験を魂魄に焼きつけてきた。
言うなれば、生まれた瞬間から、遼太郎であったのだ。
傍若無人の戦闘狂、仲間以外に価値を示さない。その代わり、仲間の為なら存在そのものを賭ける。当時のミスラであれば、人間には興味を持たなかっただろう。しかしミスラの魂魄は、人間を知り、愛を知った。それが、東郷遼太郎という人物を形作る。
ミスラが当時のままであれば、己の定めた使命の為に、手段を選ばなかった。受胎した為に命を落とした母親に対して、何の感慨も覚えなかった。それに養父に近い三島に対しても、恩義を感じなかった。
遼太郎が三島の命令に従い、戦場を渡って来たのは、恩を感じていたからに他ならない。三島の正体を知っても尚、部下として働いてきたのも、同じ理由だ。
しかし、人間の愛を知ったからこそ、過ちを見過ごす訳にはいかない。
この世界は、東郷遼太郎にとって故郷で有る。この世界こそが、東郷遼太郎の生きる世界である。だから、守らなくてはならない。
例え、大恩のある三島を相手にしても。
「私をここで倒したとして、この流れは止められないよ」
「これ以上、余計な事をされるよりはましだ」
「せっかくここまで導いてやったというのに、君という男は」
「わりぃな、健兄さん。俺は、人間であると同時に、格闘の神ミスラでもあるからな。あんた等が歪なのは、よくわかるぜ。管理と言えば聞こえはいいさ。でもそれは、好き勝手にしていい理由にはならねぇ。それにあんたは、人間そのものを見ていない。可能性を信じてない」
「信じているさ。だから、淘汰が必要なんだ」
「そりゃ詭弁だ。人間の命、その重さを知ってりゃ、そんな台詞は吐けやしねぇよ」
「これ以上、話しをしても無駄のようだね」
「あぁ。だから、拳で決着をつけようぜ、健兄さん。知ってるよな、俺の拳は重いぜ。あんたが絶対正義なら、ここで俺を殺して先に進めよ」
「仕方がない。本意ではないがね、そうさせて貰おう」
その言葉を最後に、三島は口を閉ざす。そして、遼太郎を見据えて、構えを取った。
三島は長い時を生き長らえて来た。管理者として君臨するならば、それなりの強さが必要になる。それこそ、ただの人間とはかけ離れた力が。
ただ、それが本当の神に通用するとは限らない。
構えてから、三島の動きは速かった。
目に留まらぬ速さで、遼太郎との間合いを詰めると、右の拳を振り抜く。しかし、その動きを捉えられない遼太郎ではない。
簡単に往なすと、掌底を三島の鳩尾に叩きこむ。瞬時に三島は後方に飛び、ダメージを軽減した。そして遼太郎は、三島に痛みを堪えさせる余裕を与えない。
直ぐに遼太郎は、三島の顔面に向けて蹴りを放つ。咄嗟に両腕でガードするも、三島は後方へ飛ばされる。
戦いは一方的になった。確かに三島の動きは、人間を遥かに超えている。だが、無手での戦いにおいて、遼太郎を超えるのは、冬也とアルキエルの二名しか存在しない。
後方へ飛ばされた三島は、直ぐに態勢を立て直すと、懐に手を入れる。そして、拳銃を取り出すと、遼太郎に向かって引鉄を引いた。
銃弾が性格に遼太郎へ向かう。しかし銃弾では、遼太郎を足止めする事が出きない。
三島は残弾を打ち尽くすまで、撃ち続ける。そして遼太郎は銃弾を避けながら、三島との距離を縮める。
間合いを詰めた遼太郎は、スピードに乗った正拳突きを放つ。避けられる者は、遼太郎の知る限り、ほんの僅かである。
流石に自らを管理者と呼ぶだけは有る。三島は遼太郎の正拳突きを避けると、大きく跳躍しながら後方へ回り込む。そして、懐からもう一つ拳銃を取り出すと、死角から撃ちまくった。
アルキエルと違い、遼太郎は神格を宿した人間である。銃弾を受ければ、致命傷を負う。当たり所が悪ければ、即死である。そして三島は、拳銃の扱いに慣れ、命中精度はかなり高い。例え激しく動きながらでも、行動を予測して正確に的を射る。
この瞬間、三島は勝利を意識した。しかしそれはミスラという、本物の神を甘く見過ぎた事に他ならない。
銃弾は、遼太郎の背後から正確に、心臓と頭部を撃ち抜くはずだった。しかし、銃弾が放たれた時には、遼太郎はそこにいない。
銃を撃った瞬間に、遼太郎は三島の眼前に迫っていた。
宙を飛ぶ三島は、身動きが取れない。そして、遼太郎の拳が三島の顔面を捉える。三島の顔が大きくひしゃげ、吹き飛ばされる。
流石の三島も、これ以上は立つ事が出来なかった。
三島が気絶した事を確認すると、遼太郎は三島の懐を弄る。
そして、三島のスマートフォンを取り出すと、アドレス帳を開いて電話をかけた。貴重な連絡先が入っているなら、セキュリティをかけているはず。普通ならそうするだろう。しかし、スマートフォンを奪われない自信があったから、三島は敢えてセキュリティをかけなかった。
それは最大の誤算だったのかもしれない。
「おい、てめぇはミストルティンの奴だよな。いいか、三島は俺がぶちのめした。こいつの命が惜しければ、今すぐ戦争を回避させろ。これは交渉じゃねぇ、命令だ!」
何故なら、神格を宿す魂魄を受胎する事。それは、人間が耐え得るものではないからだ。
普通に生まれて来る事は、皆無である。大体の場合が、子宮に宿る神気に耐えきれず、母体は死を迎える。そして、自らの力で子宮を破り、赤子は生まれる。例え未熟児であろうとも、必ず成長する。何故なら、神気を宿しているから。
記憶を持たなくても、本能的に生きる術を知っている。そんな赤子を気味が悪いと思わない父は存在しなかった。
遼太郎は、何度転生しようとも、両親の愛を受けて生まれては来なかった。
だが遼太郎の魂魄。いや、ミスラの魂魄は、それを是とした。どれだけ母体を厳選しようとも、こればかりは仕方がない事なのだ。
重要なのは、己の神格を渡すべき存在を、生ませる事。そして、暴走した戦いの神を止められる程に、成長させる事なのだ。
ただし、自らが生まれる事自体が、母体に多大な影響を与える。ましてや、己の神格を渡すべき存在を、受胎出来る人間がいるだろうか。それは途方もない事だと言えよう。それ故に、何度も転生を余儀なくされた。
そして、出産とも呼べない異例の事象は、ミストルティンに目をつけられた。
腹が大きくなるにつれて、弱っていく母親。既に中絶するには遅く、父親は見守るしかない。まだ出産予定日まで時期が有るにも関わらず、母親は倒れて病院へ搬送される。
父親が病院に駆けつけた時には、母親は既に意識不明の重体。そして、父親は選択を迫られる。母親の命か、子供の命か。
父親は、母親の命を選択する、しかし時は既に遅く、母親は息を引き取る。息を引き取った後、母親の子宮から眩い光が放たれる。そして未熟児であろう赤子は、母親の母体から這い上がって来た。
医師を始め、看護師や父親も、その事態に声も出なかった。
当然であろう。ホラーやSF映画では有るまいし、そんな奇妙な出来事が目の前で起こるとは思うまい。
長らく産婦人科で腕を振るっていた担当医師は、ショックで何日か寝込んだ後、医師で有る事を辞めた。看護師の中にも、病院を辞めていった者がいる。
そして父親は、愛する妻を失った時の衝撃がいつまで目に焼きつき、遂には病を患い入院を余儀なくされた。
では生まれて来た赤子はどうなったのか。
中学生位の少年が、引き取っていった。そして、その後の様子を知る者は、病院の中には誰もいない。
そして、その中学生位の少年こそが、体を乗り換えたばかりの三島である。
三島はベビーシッターを雇い、自らの屋敷で遼太郎を育てた。
遼太郎は、手がかからなかった。夜泣きをする訳でも無く、食事が欲しいと泣く訳でも無い。決まった時間に食事を与え、おむつを交換すれば事足りる。
遼太郎の魂に眠るミスラの神気に、三島は気がついていない。しかし、成長するにつれて、運動能力が並外れている事がわかった。
その時の三島は、遼太郎を兵士として育てるつもりは無かった。ただ、欲は生まれる。
立って歩ける位になった頃、空手の師範代を呼んで、型を習わせた事が有る。遼太郎は直ぐに型を覚えた。しかし、ここからが格闘の神ミスラの本領発揮である。
歩けるようになったばかりの幼子が、大人を倒すなんて誰が考えるだろうか。しかも相手は、全日本の空手大会で優勝した経験がある、優秀な空手家だ。
まだ歩くのがやっと、それは子供と言うより、赤ん坊であろう。そして、よたよたと歩きながらも、的確に急所を突いてダメージを与える姿は、異様でしかない。それでも、赤子の放つ拳など大してダメージも与えられないだろう、普通ならば。
だが、赤子の拳には神気が宿っている。当った衝撃は、普通の赤ん坊と変わらない。しかし、拳を通して神気が急所を貫けば、相応のダメージになる。
寧ろ、そんなダメージを一度でも受けて、立っていられるのが普通ではない。流石に元全日本大会の優勝者といった所だろう。
ただ、決着がつくのは、あっという間だった。
遼太郎は、幼少期からストイックだった。それは、己が人の命を犠牲にして生まれて来た、呵責があるのだろう。
それ以上に、魂へ刻まれた宿命が、遼太郎の歩みを止めさせなかった。まるで導かれる様に、様々な体術を体得していく。
義務教育を卒業する年齢になる頃には、武器を持たずに戦場を駆け回れるほどに成長していた。
三島は、遼太郎に正体を隠して接していた。あくまでも、優しい兄貴分として。そして何かを隠している事を察しながらも、幼い遼太郎は弟分の役割を果たした。
歪な関係であろう。だが、それで充分なのだ。どの道、赤の他人である。何処かで線を引き、何らかの役割を演じなければ、共同生活など成り立つまい。
そして三島は、遼太郎が二十歳を超える頃、あらゆる紛争地帯に送り込んだ。そして数年の後、宮内庁特別怨霊対策局を作り上げて、遼太郎を職員とした。
既にこの頃、三島と遼太郎の関係は、扶養者と被扶養者ではなく、上司と部下の関係になっていた。
育った環境が性格を決めるという考え方が有る。遼太郎の場合は、転生を重ねる毎に、経験を魂魄に焼きつけてきた。
言うなれば、生まれた瞬間から、遼太郎であったのだ。
傍若無人の戦闘狂、仲間以外に価値を示さない。その代わり、仲間の為なら存在そのものを賭ける。当時のミスラであれば、人間には興味を持たなかっただろう。しかしミスラの魂魄は、人間を知り、愛を知った。それが、東郷遼太郎という人物を形作る。
ミスラが当時のままであれば、己の定めた使命の為に、手段を選ばなかった。受胎した為に命を落とした母親に対して、何の感慨も覚えなかった。それに養父に近い三島に対しても、恩義を感じなかった。
遼太郎が三島の命令に従い、戦場を渡って来たのは、恩を感じていたからに他ならない。三島の正体を知っても尚、部下として働いてきたのも、同じ理由だ。
しかし、人間の愛を知ったからこそ、過ちを見過ごす訳にはいかない。
この世界は、東郷遼太郎にとって故郷で有る。この世界こそが、東郷遼太郎の生きる世界である。だから、守らなくてはならない。
例え、大恩のある三島を相手にしても。
「私をここで倒したとして、この流れは止められないよ」
「これ以上、余計な事をされるよりはましだ」
「せっかくここまで導いてやったというのに、君という男は」
「わりぃな、健兄さん。俺は、人間であると同時に、格闘の神ミスラでもあるからな。あんた等が歪なのは、よくわかるぜ。管理と言えば聞こえはいいさ。でもそれは、好き勝手にしていい理由にはならねぇ。それにあんたは、人間そのものを見ていない。可能性を信じてない」
「信じているさ。だから、淘汰が必要なんだ」
「そりゃ詭弁だ。人間の命、その重さを知ってりゃ、そんな台詞は吐けやしねぇよ」
「これ以上、話しをしても無駄のようだね」
「あぁ。だから、拳で決着をつけようぜ、健兄さん。知ってるよな、俺の拳は重いぜ。あんたが絶対正義なら、ここで俺を殺して先に進めよ」
「仕方がない。本意ではないがね、そうさせて貰おう」
その言葉を最後に、三島は口を閉ざす。そして、遼太郎を見据えて、構えを取った。
三島は長い時を生き長らえて来た。管理者として君臨するならば、それなりの強さが必要になる。それこそ、ただの人間とはかけ離れた力が。
ただ、それが本当の神に通用するとは限らない。
構えてから、三島の動きは速かった。
目に留まらぬ速さで、遼太郎との間合いを詰めると、右の拳を振り抜く。しかし、その動きを捉えられない遼太郎ではない。
簡単に往なすと、掌底を三島の鳩尾に叩きこむ。瞬時に三島は後方に飛び、ダメージを軽減した。そして遼太郎は、三島に痛みを堪えさせる余裕を与えない。
直ぐに遼太郎は、三島の顔面に向けて蹴りを放つ。咄嗟に両腕でガードするも、三島は後方へ飛ばされる。
戦いは一方的になった。確かに三島の動きは、人間を遥かに超えている。だが、無手での戦いにおいて、遼太郎を超えるのは、冬也とアルキエルの二名しか存在しない。
後方へ飛ばされた三島は、直ぐに態勢を立て直すと、懐に手を入れる。そして、拳銃を取り出すと、遼太郎に向かって引鉄を引いた。
銃弾が性格に遼太郎へ向かう。しかし銃弾では、遼太郎を足止めする事が出きない。
三島は残弾を打ち尽くすまで、撃ち続ける。そして遼太郎は銃弾を避けながら、三島との距離を縮める。
間合いを詰めた遼太郎は、スピードに乗った正拳突きを放つ。避けられる者は、遼太郎の知る限り、ほんの僅かである。
流石に自らを管理者と呼ぶだけは有る。三島は遼太郎の正拳突きを避けると、大きく跳躍しながら後方へ回り込む。そして、懐からもう一つ拳銃を取り出すと、死角から撃ちまくった。
アルキエルと違い、遼太郎は神格を宿した人間である。銃弾を受ければ、致命傷を負う。当たり所が悪ければ、即死である。そして三島は、拳銃の扱いに慣れ、命中精度はかなり高い。例え激しく動きながらでも、行動を予測して正確に的を射る。
この瞬間、三島は勝利を意識した。しかしそれはミスラという、本物の神を甘く見過ぎた事に他ならない。
銃弾は、遼太郎の背後から正確に、心臓と頭部を撃ち抜くはずだった。しかし、銃弾が放たれた時には、遼太郎はそこにいない。
銃を撃った瞬間に、遼太郎は三島の眼前に迫っていた。
宙を飛ぶ三島は、身動きが取れない。そして、遼太郎の拳が三島の顔面を捉える。三島の顔が大きくひしゃげ、吹き飛ばされる。
流石の三島も、これ以上は立つ事が出来なかった。
三島が気絶した事を確認すると、遼太郎は三島の懐を弄る。
そして、三島のスマートフォンを取り出すと、アドレス帳を開いて電話をかけた。貴重な連絡先が入っているなら、セキュリティをかけているはず。普通ならそうするだろう。しかし、スマートフォンを奪われない自信があったから、三島は敢えてセキュリティをかけなかった。
それは最大の誤算だったのかもしれない。
「おい、てめぇはミストルティンの奴だよな。いいか、三島は俺がぶちのめした。こいつの命が惜しければ、今すぐ戦争を回避させろ。これは交渉じゃねぇ、命令だ!」
0
お気に入りに追加
391
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

異世界転生 剣と魔術の世界
小沢アキラ
ファンタジー
普通の高校生《水樹和也》は、登山の最中に起きた不慮の事故に巻き込まれてしまい、崖から転落してしまった。
目を覚ますと、そこは自分がいた世界とは全く異なる世界だった。
人間と獣人族が暮らす世界《人界》へ降り立ってしまった和也は、元の世界に帰るために、人界の創造主とされる《創世神》が眠る中都へ旅立つ決意をする。
全三部構成の長編異世界転生物語。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる