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混乱の東京
366 テロリスト ~戦闘の決着~
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ペスカによって人払いが行われた一帯を、歩いている者がいた。一見すると、幼稚園児を連れた男子高校生の様に見える。
しかし、誰も立ち入るはずが無い場所なのだ。そして彼らは顔つきから、彼らが明らかに日本人ではないと言い切れる。
男の子か女の子か判別がつかない、幼稚園児並みの小さな子は、布切れをただ巻いただけの恰好をしている。所々から、日焼けした薄黒い肌が見えている。
そして青年の方は、とても高校生とは思えない、落ち着いた雰囲気を纏っている。ざっくりした無地のズボンとシャツだけなのは、流行りではあるまい。最大の違和感は、腰にぶら下げた剣だろう。
二人は、キョロキョロと辺りを見渡しながら、歩みを進めていた。
「ここが、冬也の故郷なんだな」
「不思議な場所です。街並みは整然としています。首都リューレでも、ここまで整ってはおりません。しかし何処か、妙な矛盾を感じます」
「空気が汚れてるせいなんだな。落ち着かないんだな」
「確かに、ブル様の仰る通りかもしれません」
「ゼル。おでに、様は要らないんだな」
「しかし旧帝国領の方々は、ブル様と」
「あいつらは、言っても聞かないから、しょうがないんだな。でも、友達だから、許してあげるんだな」
「よく意味がわかりませんが。取り敢えず進みましょう。場所はおわかりですか?」
「大丈夫、なんだな。あっちから、ペスカの匂いが、薄っすらとするんだな」
「それと、今回の任務ですが」
「わかってるんだな。ここから、後ろの方とずっと前から、殺気を感じるんだな。後、遠くからも殺気を感じるんだな」
「どうします? 近くの奴らから倒しますか?」
「今、ペスカの匂いがする辺りから、二人の人間が離れていったんだな。たぶん、遠くの殺気に向かっていったんだな」
「では、我々は近くの連中から始末して、その方々の応援に参りましょう」
冬也とペスカが日本に来る直前に、開かれていた武闘大会。その大会一回戦でベヒモスと対戦し、敗れ去った少年剣士ゼル。それから半月も経っていない。
初めて冬也と会った時は、まだ幼さの抜けない少年だった。それが、僅かの期間で戦士になった。そして、今は大人の顔つきに変わっている。
彼が憧憬して止まない天才シグルド。それに追いつこうと日々精進を重ねているのだろう。実力はどれ位上がったのか。それは間も無く明らかになる。
☆ ☆ ☆
襲撃者の内、連絡と監視を行っていた者は、自宅のリビングから二人ほど居なくなった事に気がついた。そして直ぐに、仲間達と連絡を取る。
ただ仲間達は、思いのほか焦れていた。
何発か銃弾を撃ち込んで入り口を破壊し、一気に乗り込み制圧する。そして乗り付けたバンに、全員を乗せて基地に運んで拘束する。
本来であれば、とっくに片付いている任務のはずなのだ。
しかし、銃弾が得体の知れない力で弾かれる。このまま突撃しても、得体の知れない力に阻まれるかもしれない。その為、様子を伺っていた。
正式に軍の派遣が認められた訳ではない。その事前準備として、能力者を確保するだけ。
実際に軍の派遣されれば、それに合わせてテロリストを捕えた事にすればいい。ただし能力者以外の者は、その前に射殺する事になるだろうが。
ただ現状では、事が公になる訳にはいかない。今の段階で、銃を持った外国の兵が、日本にいるのはおかしいのだ。
港区に配置されたロシア特殊部隊の本体が、全滅した知らせを受けている。幸い、警察と拉致した者達以外の目撃者はいない。政治的取引で、まだ何とかなるレベルだろう。ただし、かなりの無茶を聞く必要があるだろうが。
残りの二か所、厚木と此処の両方で失敗をしたら、流石に自分達の帰る国は無い。かなり強引でも、実力行使に出るしかないのだ。
しかし、東郷邸を襲撃する部隊は、アメリカとロシアの混成部隊である。即席の部隊でもリーダーは存在するが、威信に欠ける。
喧々諤々と時間を割いた上で、突撃が意見の多数を占めた。
そして彼らは、二手に分かれて待機していた車両を急発進させる。そして誰も通っていない道を、有り得ない速度で疾走する。
そう、日本で最も人口密度の高い東京である。日中誰も通らない道など、それ程多くは存在はしない。それに気がついていれば、状況は少し変化したかもしれない。
ただしペスカを敵に回したのだ。その時点で、結果は変わらなかっただろう。
☆ ☆ ☆
疾走する車両、目的地まであと少し。そして運転手は、更にアクセルを踏み込む。車内の兵士達は、衝撃に備えて姿勢を低く保つ。
次の瞬間だった。車両の目の前に、小さな子供が飛び出した。
ブレーキを踏む訳にはいかない。猛スピードで走っているのだ、無理にハンドルを切れば横転する。轢き殺すしかない、運転手がそう思った矢先に、ドンという大きな音と共に車両に衝撃が走る。
たかが子供を跳ね飛ばした位で起きる衝撃ではない。大きな壁にぶつかった位の衝撃である。
兵士の一人が運転席を覗くと、おおきな罅が入っているフロントガラスが目に飛び込んで来る。そして、運転席から助手席にかけて、大きくひしゃげてるのが見える。
運転手は生きているのかわからない。
ハンドルが運転手の体にめり込んでいる。そしてエアーバックが運転手の顔面を押さえ、運転手の呼吸を止める形になっている。
運転手を引っ張り出そうとしても、恐らく人力では無理だろう。
何人かの兵士は、体を強くぶつけた様で、痛みを訴えている。しかし問題なのは、目的地前にも関わらず、車両が停まっている事だった。
ただ残念な事に、兵士達には呆然とする暇も、事態を把握する暇も与えられなかった。
ドアが何者かによって、切断される。車両内に若い男が、侵入してくる。ライフルを構える暇は無かった。車両内にいた全員が、殴られただけで昏倒させられた。
☆ ☆ ☆
「殺しちゃ駄目なんだな」
「殺してませんよ。ちゃんと生きています。それより、先頭に乗っていた者は、少し危ないかと」
「大丈夫なんだな、生きているんだな。おでは、ちゃんと力の加減が出来るんだな。日頃の努力なんだな」
「それよりブル様。もう一つ来ますよ!」
「ゼルは修行が足りないんだな。厳しくする様に、トールに言われてるんだな」
「言ってる場合ですか? ブル様、行きますよ!」
小さな体になっても、腕力はそのままである。ブルは片手で軽々と、疾走する二台目の車両を止める。
一台目と同様に、大きな衝撃が車内に走る。その隙に、ゼルがドアをこじ開けて、中にいる兵士達を昏倒させる。
僅か数分で、突撃班は全滅した。それを遠方から覗いていた連絡係は、直ぐに仲間へ状況を知らせようとする。しかし、仲間からの応答がない。
仲間のいる位置を覗き込むと、一か所では炎が上がっている。もう一か所では、鉄パイプが宙に浮き空を飛び回っている。
そして気がついた時には、車をドアをこじ開けた若い男が、スコープを塞いでいた。
☆ ☆ ☆
クラウスに、正確な場所を聞いていた美咲と雄二は、手分けして任務を熟す事にした。協力し合うにも、相手の姿が見えないのだ。意思疎通が図り辛い。
指定された場所へ行き、音を立てない様に近づき、後方から襲う。無線で会話に夢中になっていた時間帯も有り、多少の音を立てても気付かれる事が無かった。
極々簡単な任務と言えよう。
雄二の場合、近づいて触れば終わりだ。
殺すつもりなら、相手の体内を焼く事も出来る。そこまでする必要が無いなら、倒れるまで体温を上げてやればいい。それでも、五十度近い体温になれば、流石に意識は朦朧とするだろう。後は軽く殴るだけで、簡単に失神する。
エリーの場合は、手段が多い。
物を動かす事で、物理的な攻撃も出来る。より隠密性が高いのは、手を使わずに首を絞める方法だろう。かなり高度であり集中力を必要とするが、人体の内部にだって干渉が出来る。心臓を握りつぶそうと思えば、それも可能だ。
相手に見えない状態で、これらの技を使えば、抵抗される事無く意識を奪える。最後に残した連絡係は、知らない外国人の若者に、あっさりと倒されたしまったが。
それでも二人は、ペスカの心配を余所に、見事に任務を達成した。
任務を終えると、二人はそれぞれペスカに連絡を入れる。予想以上の高評価を得ると、二人は満足気に帰途に就く。
東郷邸に辿り着くと玄関先では、小さな子供を抱き抱えるペスカの姿が有った。
しかし、誰も立ち入るはずが無い場所なのだ。そして彼らは顔つきから、彼らが明らかに日本人ではないと言い切れる。
男の子か女の子か判別がつかない、幼稚園児並みの小さな子は、布切れをただ巻いただけの恰好をしている。所々から、日焼けした薄黒い肌が見えている。
そして青年の方は、とても高校生とは思えない、落ち着いた雰囲気を纏っている。ざっくりした無地のズボンとシャツだけなのは、流行りではあるまい。最大の違和感は、腰にぶら下げた剣だろう。
二人は、キョロキョロと辺りを見渡しながら、歩みを進めていた。
「ここが、冬也の故郷なんだな」
「不思議な場所です。街並みは整然としています。首都リューレでも、ここまで整ってはおりません。しかし何処か、妙な矛盾を感じます」
「空気が汚れてるせいなんだな。落ち着かないんだな」
「確かに、ブル様の仰る通りかもしれません」
「ゼル。おでに、様は要らないんだな」
「しかし旧帝国領の方々は、ブル様と」
「あいつらは、言っても聞かないから、しょうがないんだな。でも、友達だから、許してあげるんだな」
「よく意味がわかりませんが。取り敢えず進みましょう。場所はおわかりですか?」
「大丈夫、なんだな。あっちから、ペスカの匂いが、薄っすらとするんだな」
「それと、今回の任務ですが」
「わかってるんだな。ここから、後ろの方とずっと前から、殺気を感じるんだな。後、遠くからも殺気を感じるんだな」
「どうします? 近くの奴らから倒しますか?」
「今、ペスカの匂いがする辺りから、二人の人間が離れていったんだな。たぶん、遠くの殺気に向かっていったんだな」
「では、我々は近くの連中から始末して、その方々の応援に参りましょう」
冬也とペスカが日本に来る直前に、開かれていた武闘大会。その大会一回戦でベヒモスと対戦し、敗れ去った少年剣士ゼル。それから半月も経っていない。
初めて冬也と会った時は、まだ幼さの抜けない少年だった。それが、僅かの期間で戦士になった。そして、今は大人の顔つきに変わっている。
彼が憧憬して止まない天才シグルド。それに追いつこうと日々精進を重ねているのだろう。実力はどれ位上がったのか。それは間も無く明らかになる。
☆ ☆ ☆
襲撃者の内、連絡と監視を行っていた者は、自宅のリビングから二人ほど居なくなった事に気がついた。そして直ぐに、仲間達と連絡を取る。
ただ仲間達は、思いのほか焦れていた。
何発か銃弾を撃ち込んで入り口を破壊し、一気に乗り込み制圧する。そして乗り付けたバンに、全員を乗せて基地に運んで拘束する。
本来であれば、とっくに片付いている任務のはずなのだ。
しかし、銃弾が得体の知れない力で弾かれる。このまま突撃しても、得体の知れない力に阻まれるかもしれない。その為、様子を伺っていた。
正式に軍の派遣が認められた訳ではない。その事前準備として、能力者を確保するだけ。
実際に軍の派遣されれば、それに合わせてテロリストを捕えた事にすればいい。ただし能力者以外の者は、その前に射殺する事になるだろうが。
ただ現状では、事が公になる訳にはいかない。今の段階で、銃を持った外国の兵が、日本にいるのはおかしいのだ。
港区に配置されたロシア特殊部隊の本体が、全滅した知らせを受けている。幸い、警察と拉致した者達以外の目撃者はいない。政治的取引で、まだ何とかなるレベルだろう。ただし、かなりの無茶を聞く必要があるだろうが。
残りの二か所、厚木と此処の両方で失敗をしたら、流石に自分達の帰る国は無い。かなり強引でも、実力行使に出るしかないのだ。
しかし、東郷邸を襲撃する部隊は、アメリカとロシアの混成部隊である。即席の部隊でもリーダーは存在するが、威信に欠ける。
喧々諤々と時間を割いた上で、突撃が意見の多数を占めた。
そして彼らは、二手に分かれて待機していた車両を急発進させる。そして誰も通っていない道を、有り得ない速度で疾走する。
そう、日本で最も人口密度の高い東京である。日中誰も通らない道など、それ程多くは存在はしない。それに気がついていれば、状況は少し変化したかもしれない。
ただしペスカを敵に回したのだ。その時点で、結果は変わらなかっただろう。
☆ ☆ ☆
疾走する車両、目的地まであと少し。そして運転手は、更にアクセルを踏み込む。車内の兵士達は、衝撃に備えて姿勢を低く保つ。
次の瞬間だった。車両の目の前に、小さな子供が飛び出した。
ブレーキを踏む訳にはいかない。猛スピードで走っているのだ、無理にハンドルを切れば横転する。轢き殺すしかない、運転手がそう思った矢先に、ドンという大きな音と共に車両に衝撃が走る。
たかが子供を跳ね飛ばした位で起きる衝撃ではない。大きな壁にぶつかった位の衝撃である。
兵士の一人が運転席を覗くと、おおきな罅が入っているフロントガラスが目に飛び込んで来る。そして、運転席から助手席にかけて、大きくひしゃげてるのが見える。
運転手は生きているのかわからない。
ハンドルが運転手の体にめり込んでいる。そしてエアーバックが運転手の顔面を押さえ、運転手の呼吸を止める形になっている。
運転手を引っ張り出そうとしても、恐らく人力では無理だろう。
何人かの兵士は、体を強くぶつけた様で、痛みを訴えている。しかし問題なのは、目的地前にも関わらず、車両が停まっている事だった。
ただ残念な事に、兵士達には呆然とする暇も、事態を把握する暇も与えられなかった。
ドアが何者かによって、切断される。車両内に若い男が、侵入してくる。ライフルを構える暇は無かった。車両内にいた全員が、殴られただけで昏倒させられた。
☆ ☆ ☆
「殺しちゃ駄目なんだな」
「殺してませんよ。ちゃんと生きています。それより、先頭に乗っていた者は、少し危ないかと」
「大丈夫なんだな、生きているんだな。おでは、ちゃんと力の加減が出来るんだな。日頃の努力なんだな」
「それよりブル様。もう一つ来ますよ!」
「ゼルは修行が足りないんだな。厳しくする様に、トールに言われてるんだな」
「言ってる場合ですか? ブル様、行きますよ!」
小さな体になっても、腕力はそのままである。ブルは片手で軽々と、疾走する二台目の車両を止める。
一台目と同様に、大きな衝撃が車内に走る。その隙に、ゼルがドアをこじ開けて、中にいる兵士達を昏倒させる。
僅か数分で、突撃班は全滅した。それを遠方から覗いていた連絡係は、直ぐに仲間へ状況を知らせようとする。しかし、仲間からの応答がない。
仲間のいる位置を覗き込むと、一か所では炎が上がっている。もう一か所では、鉄パイプが宙に浮き空を飛び回っている。
そして気がついた時には、車をドアをこじ開けた若い男が、スコープを塞いでいた。
☆ ☆ ☆
クラウスに、正確な場所を聞いていた美咲と雄二は、手分けして任務を熟す事にした。協力し合うにも、相手の姿が見えないのだ。意思疎通が図り辛い。
指定された場所へ行き、音を立てない様に近づき、後方から襲う。無線で会話に夢中になっていた時間帯も有り、多少の音を立てても気付かれる事が無かった。
極々簡単な任務と言えよう。
雄二の場合、近づいて触れば終わりだ。
殺すつもりなら、相手の体内を焼く事も出来る。そこまでする必要が無いなら、倒れるまで体温を上げてやればいい。それでも、五十度近い体温になれば、流石に意識は朦朧とするだろう。後は軽く殴るだけで、簡単に失神する。
エリーの場合は、手段が多い。
物を動かす事で、物理的な攻撃も出来る。より隠密性が高いのは、手を使わずに首を絞める方法だろう。かなり高度であり集中力を必要とするが、人体の内部にだって干渉が出来る。心臓を握りつぶそうと思えば、それも可能だ。
相手に見えない状態で、これらの技を使えば、抵抗される事無く意識を奪える。最後に残した連絡係は、知らない外国人の若者に、あっさりと倒されたしまったが。
それでも二人は、ペスカの心配を余所に、見事に任務を達成した。
任務を終えると、二人はそれぞれペスカに連絡を入れる。予想以上の高評価を得ると、二人は満足気に帰途に就く。
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