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混乱の東京
359 テロリスト ~ミストルティン~
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高級と言われる焼き肉料理店。その中でも牛一頭を仕入れて、希少部位を食べさせるのが有名な店で、三島とアルキエルは食事をしていた。
早朝から店が開いているのか、そんな事は愚門であろう。開けさせたのだ、三島が。中年の三島には、朝から肉を頬張るのは辛いだろう。しかし、アルキエルには関係ない。
そんな時である、遼太郎から電話がかかってきたのは。そして三島が電話を切るなり、アルキエルは箸を止めて話しかけた。
「猫を被るのを止めたのか、ガキ」
「君にならわかると思うけどね、アルキエル君。君はこっち側なんだろ?」
「馬鹿かてめぇは! セリュシオネみてぇな奴と一緒にすんじゃねぇ! 俺は戦いの神だぞ。相手は敬意を籠めてぶち殺す、それだけだ」
「物騒だね。本当に恐ろしいよ」
「思ってもねぇ事を言うんじゃねぇ! 理も知らねぇ人間如きが、支配者面するんじゃねぇよ」
「辛辣だね。それより、理というのは何かな?」
「別に教えてやる義理はねぇが、この焼肉とやらに免じて教えてやる」
不敵な笑みを浮かべる三島を、アルキエルは見ようとしない。
全くと言っていい程にアルキエルは、三島に興味を持っていない。視線を合わせる事すら、拒んでいる風にも見える。その価値が無いと言わんばかりに。
そうは言っても神である。供物を捧げれば、多少は饒舌にもなるだろう。
「いいか。どの世界にも星の記憶ってのがある。星が誕生してから、四十五億くらいは経っているんだろ? この星は、それまでの全てを記憶している」
「凄い事じゃないか! 科学者が知ったら、目を輝かせるだろうね」
「馬鹿か、てめぇは。人間のちっぽけな魂魄じゃ、記憶の欠片にだって触れやしねぇよ」
「うぅん? 君の説明はわかり辛いな」
「当たりめぇだ。てめぇは人間の中でも、糞ド滓の部類だろ! いいか、星の記憶に出会うのは、死んだ後だ。だが人間は、星の記憶を持って生まれ変われねぇ。何故だかわかるか?」
「魂の容量が問題だと言いたいのかな?」
「先に正解を教えたんだ、答えられて当然だな。生きて星の記憶を持っているのは、聖人と呼ばれる存在だけだ。それこそ、歴史上で語られる様な奴らだ。それが理を知る存在なんだ。神以外にそんな奴は、滅多に現われねぇ。現れたとして、支配なんぞしねぇ」
「その理由を教えて貰っても?」
「簡単な事だ。人間は転生を繰り返して、己の魂魄を磨くんだ。宗教でいう所の、徳を積むって行為だ。地道にコツコツと、魂魄を磨いて大きくしていく。神に匹敵するほど魂魄がでかくなったら、やっと星の記憶に触れる事が出来る。内容が理解出来るし、覚えていられるって事だ」
「ほぅ、非常に興味深いね」
「てめぇの頭でも、理解出来る様に説明してやる。いいか、俺みてぇな神は、思念の集合体が核となり、意志を持った存在だ。ロメリアみてぇなのも同じだ。言い換えればド滓のだろうと、星の記憶に触れる事が出来る様になるんだ。精々、励むんだな」
三島は真剣な表情で、アルキエルの話しに耳を傾けていた。しかし供物が無くなると、教示の時間は終わりを告げる。
「そもそも、てめぇは一番の標的じゃねぇのか? それともてめぇは、狙う価値もねぇ程の役立たずか?」
「面白くなるのはこれからだよ、アルキエル君」
「仕方ねぇ。もう少しだけ、お前のお守りをしてやる。だがな、覚えておけよ! てめぇが俺の親友を売るってんなら、命を代償にしやがれ。俺が直々に、てめぇの魂魄を握りつぶしてやる!」
語気を強めて語るアルキエルに対し、三島は恐れる様子はなく平然としている。そんな三島に違和感を感じつつも、アルキエルは些細な事として頭の片隅に追いやった。
☆ ☆ ☆
三島には舞台から降りて貰う。そんなペスカの呟きを、聞き逃さなかった者がいた。
そして何かと感が良い彼女は、これまでの経緯からある事を推測する。
「ねぇペスカちゃん。三島さんって、何者なの? だって普通の人が、総理大臣を挿げ替える事なんて出来ないよ。元総理大臣とか、かなり影響力がある人でも、難しいんじゃないかな。その上、アメリカとロシアに対して、政治的取引をするって言うんだよ。本当に出来るの? 出来たとしても、返って怖いんだけど」
「あぁ、それなら俺から説明してやる」
ペスカへの問いかけに、遼太郎が反応をした。
そして遼太郎は、全員に三島の正体と組織について、搔い摘んだ説明を行う。全てを話せば日が暮れる。しかし概要だけでも、その恐ろしさは充分に伝わった。
世界を支配する者達がいる。都市伝説で語られる秘密組織も、彼らの下部組織に過ぎない。
彼らは、戦争を引き起こす。飢餓や貧困でさえも、思い通りに作り出す。全てが彼らの掌の上で踊っているだけ。
それが恐怖と言わずになんと言うのだ。
人の命に、価値を見出していない。約七十六億の人間は、彼らにとっては全て部品でしかない。それなら人間は、生かされているだけではないのか。
それを悪夢と感じない者はいまい。
神を殺した武器の名を冠するのは、神の代行者を示しているのか。それとも、トリックスターに倣って、盲目の神を騙す事が目的であるのか。
ミストルティンという名は、傲慢そのものであろう。
そんな組織を潰そうというなら、それは歴史上最大の革命になるだろう。言い換えれば、その革命を阻む方が悪ではないのか。
疑念が浮かぶのは、当然の事であろう。
「先輩。まさか特霊局も、ミストルティンとやらの下部組織って事ですか?」
「正確には違う。特霊局は文字通り、宮内庁の組織だ。三島さんが俺の為に作った組織だ。三島さんは、特霊局を隠れ蓑にして、活動していただけだ」
「だから深山殿が、我々を標的にしていた訳ですな。やっと合点がいきましたぞ」
「能力者を捕まえるって事は、間接的に手伝っていた事になんねぇか? なあ、翔一」
「そうとも言い切れないよ、雄二。でも、これまでの事を考えれば、確かに合点がいく」
「リョータロー。私達は正義の味方です! そのつもりでいました。信じて良いんですよね?」
「エリーさん、私はまだ新人です。でも、冬也さんを始め、特霊局の皆さんが私を助けてくれた。それには変わりが有りません!」
「美咲の言う通りだ!」
再び騒然とするリビング内に、遼太郎の怒声が響く。そして遼太郎は、一人一人の顔を見つめて、言葉を続けた。
「安西、リンリン、エリー、雄二、翔一、それに美咲。俺達がやって来た事を疑うな! 俺達は、日本の為に体を張って来たんだ。何て言われようが、それは間違いねぇ! 自分を信じろ! 仲間を信じろ! 俺達は何も間違えてねぇ!」
遼太郎の言葉で、下がりかけた士気が再び高まっていく。そんな時、ペスカが徐に口を開いた。
「全員が大事な事を忘れてるよ」
「ペスカちゃん、どういう事?」
「空ちゃんと翔一君なら、多分わかると思うよ。一連の件が、どうして起きたのか? 考えてみて?」
ペスカの言葉で、一同が思いを巡らせる。直ぐに勘付いたのは、空であった。何故なら空は、当事者であったから。そして、その結末を異世界で見て来たのだから。
「邪神ロメリア・・・」
「ご名答。その通りだよ、空ちゃん。このまま、深山って人の思い通りになれば、邪神ロメリアは復活するよ。これは予言とか、そういうんじゃないよ。確実に起きるんだから」
「まぁ、その為に俺達が来たんだけどな。あの糞野郎を蘇らせる位なら、その前に対処してぇ。それが俺達の本音だ。その方が楽だからな」
「お兄ちゃんの言う通りだよ。元を正せば、この世界に存在しない能力なんてのが、未だに有る方が不味いんだよ。そんな能力者を利用しようなんて、論外だね。ミストルティンとやらも、深山って人も誰もが、根本的な事を間違えてるんだ」
静かに語るとペスカは一呼吸置き、林に視線を送る。
「リンリン。ウィルスの駆除はどうなってる?」
「アプリも合わせて、除去率は四割って所でしょうな」
「そっか。流石に間に合わなかったか。でも、四割は上々だね」
大きなため息を吐くと、ペスカは再び全員を見渡す。
「あのさ。深山って人がネットワークを通じて、プロパガンダを行ったら、それは終わりだと思って欲しい」
深山は人間である。神の力、その一端を利用すれば、耐えきれずに暴走する。なぜ暴走が起きるのか、そしてなぜ深山が暴走する事が、終わりの合図なのか。
それは、深山が人の精神をコントロールするからである。
人間一人辺りの悪意なんて、たかが知れている。それは、他者を害する事がある。そして波及していく事もある。それに自身を壊す事もある。しかし、それだけなのだ。あくまでも小規模なのだ。
数千、数万の人間から悪意を引き寄せれば、深山の能力を媒介にして邪神は蘇る。それは、世界の終わりを意味しているのだ。
革命などと、尤もらしい理屈を唱えている場合ではない。能力者を利用して、支配力を高めようなんて企む組織は、害悪でしかない。
確かに深山の行動は、崇高なものかもしれない。だがそれは能力という、曖昧な力を頼りに行うものではない。ましてや、多くの犠牲を良しとしてはならない。
もし地球という星が、人間を害と認識したら、それは人間社会の終焉となるであろう。それを自らの手で起こすなど、言語道断なのだ。
彼らは道を間違えたのだ。手段を間違えたのだ。だから、世界が敵に回ろうとも、己の正義を信じればいい。堂々と突き進めばいい。
その先には、必ず未来が待っている。
「さて、救出作戦といきますか! パパリンが豪語したんだから、実現させないとね」
早朝から店が開いているのか、そんな事は愚門であろう。開けさせたのだ、三島が。中年の三島には、朝から肉を頬張るのは辛いだろう。しかし、アルキエルには関係ない。
そんな時である、遼太郎から電話がかかってきたのは。そして三島が電話を切るなり、アルキエルは箸を止めて話しかけた。
「猫を被るのを止めたのか、ガキ」
「君にならわかると思うけどね、アルキエル君。君はこっち側なんだろ?」
「馬鹿かてめぇは! セリュシオネみてぇな奴と一緒にすんじゃねぇ! 俺は戦いの神だぞ。相手は敬意を籠めてぶち殺す、それだけだ」
「物騒だね。本当に恐ろしいよ」
「思ってもねぇ事を言うんじゃねぇ! 理も知らねぇ人間如きが、支配者面するんじゃねぇよ」
「辛辣だね。それより、理というのは何かな?」
「別に教えてやる義理はねぇが、この焼肉とやらに免じて教えてやる」
不敵な笑みを浮かべる三島を、アルキエルは見ようとしない。
全くと言っていい程にアルキエルは、三島に興味を持っていない。視線を合わせる事すら、拒んでいる風にも見える。その価値が無いと言わんばかりに。
そうは言っても神である。供物を捧げれば、多少は饒舌にもなるだろう。
「いいか。どの世界にも星の記憶ってのがある。星が誕生してから、四十五億くらいは経っているんだろ? この星は、それまでの全てを記憶している」
「凄い事じゃないか! 科学者が知ったら、目を輝かせるだろうね」
「馬鹿か、てめぇは。人間のちっぽけな魂魄じゃ、記憶の欠片にだって触れやしねぇよ」
「うぅん? 君の説明はわかり辛いな」
「当たりめぇだ。てめぇは人間の中でも、糞ド滓の部類だろ! いいか、星の記憶に出会うのは、死んだ後だ。だが人間は、星の記憶を持って生まれ変われねぇ。何故だかわかるか?」
「魂の容量が問題だと言いたいのかな?」
「先に正解を教えたんだ、答えられて当然だな。生きて星の記憶を持っているのは、聖人と呼ばれる存在だけだ。それこそ、歴史上で語られる様な奴らだ。それが理を知る存在なんだ。神以外にそんな奴は、滅多に現われねぇ。現れたとして、支配なんぞしねぇ」
「その理由を教えて貰っても?」
「簡単な事だ。人間は転生を繰り返して、己の魂魄を磨くんだ。宗教でいう所の、徳を積むって行為だ。地道にコツコツと、魂魄を磨いて大きくしていく。神に匹敵するほど魂魄がでかくなったら、やっと星の記憶に触れる事が出来る。内容が理解出来るし、覚えていられるって事だ」
「ほぅ、非常に興味深いね」
「てめぇの頭でも、理解出来る様に説明してやる。いいか、俺みてぇな神は、思念の集合体が核となり、意志を持った存在だ。ロメリアみてぇなのも同じだ。言い換えればド滓のだろうと、星の記憶に触れる事が出来る様になるんだ。精々、励むんだな」
三島は真剣な表情で、アルキエルの話しに耳を傾けていた。しかし供物が無くなると、教示の時間は終わりを告げる。
「そもそも、てめぇは一番の標的じゃねぇのか? それともてめぇは、狙う価値もねぇ程の役立たずか?」
「面白くなるのはこれからだよ、アルキエル君」
「仕方ねぇ。もう少しだけ、お前のお守りをしてやる。だがな、覚えておけよ! てめぇが俺の親友を売るってんなら、命を代償にしやがれ。俺が直々に、てめぇの魂魄を握りつぶしてやる!」
語気を強めて語るアルキエルに対し、三島は恐れる様子はなく平然としている。そんな三島に違和感を感じつつも、アルキエルは些細な事として頭の片隅に追いやった。
☆ ☆ ☆
三島には舞台から降りて貰う。そんなペスカの呟きを、聞き逃さなかった者がいた。
そして何かと感が良い彼女は、これまでの経緯からある事を推測する。
「ねぇペスカちゃん。三島さんって、何者なの? だって普通の人が、総理大臣を挿げ替える事なんて出来ないよ。元総理大臣とか、かなり影響力がある人でも、難しいんじゃないかな。その上、アメリカとロシアに対して、政治的取引をするって言うんだよ。本当に出来るの? 出来たとしても、返って怖いんだけど」
「あぁ、それなら俺から説明してやる」
ペスカへの問いかけに、遼太郎が反応をした。
そして遼太郎は、全員に三島の正体と組織について、搔い摘んだ説明を行う。全てを話せば日が暮れる。しかし概要だけでも、その恐ろしさは充分に伝わった。
世界を支配する者達がいる。都市伝説で語られる秘密組織も、彼らの下部組織に過ぎない。
彼らは、戦争を引き起こす。飢餓や貧困でさえも、思い通りに作り出す。全てが彼らの掌の上で踊っているだけ。
それが恐怖と言わずになんと言うのだ。
人の命に、価値を見出していない。約七十六億の人間は、彼らにとっては全て部品でしかない。それなら人間は、生かされているだけではないのか。
それを悪夢と感じない者はいまい。
神を殺した武器の名を冠するのは、神の代行者を示しているのか。それとも、トリックスターに倣って、盲目の神を騙す事が目的であるのか。
ミストルティンという名は、傲慢そのものであろう。
そんな組織を潰そうというなら、それは歴史上最大の革命になるだろう。言い換えれば、その革命を阻む方が悪ではないのか。
疑念が浮かぶのは、当然の事であろう。
「先輩。まさか特霊局も、ミストルティンとやらの下部組織って事ですか?」
「正確には違う。特霊局は文字通り、宮内庁の組織だ。三島さんが俺の為に作った組織だ。三島さんは、特霊局を隠れ蓑にして、活動していただけだ」
「だから深山殿が、我々を標的にしていた訳ですな。やっと合点がいきましたぞ」
「能力者を捕まえるって事は、間接的に手伝っていた事になんねぇか? なあ、翔一」
「そうとも言い切れないよ、雄二。でも、これまでの事を考えれば、確かに合点がいく」
「リョータロー。私達は正義の味方です! そのつもりでいました。信じて良いんですよね?」
「エリーさん、私はまだ新人です。でも、冬也さんを始め、特霊局の皆さんが私を助けてくれた。それには変わりが有りません!」
「美咲の言う通りだ!」
再び騒然とするリビング内に、遼太郎の怒声が響く。そして遼太郎は、一人一人の顔を見つめて、言葉を続けた。
「安西、リンリン、エリー、雄二、翔一、それに美咲。俺達がやって来た事を疑うな! 俺達は、日本の為に体を張って来たんだ。何て言われようが、それは間違いねぇ! 自分を信じろ! 仲間を信じろ! 俺達は何も間違えてねぇ!」
遼太郎の言葉で、下がりかけた士気が再び高まっていく。そんな時、ペスカが徐に口を開いた。
「全員が大事な事を忘れてるよ」
「ペスカちゃん、どういう事?」
「空ちゃんと翔一君なら、多分わかると思うよ。一連の件が、どうして起きたのか? 考えてみて?」
ペスカの言葉で、一同が思いを巡らせる。直ぐに勘付いたのは、空であった。何故なら空は、当事者であったから。そして、その結末を異世界で見て来たのだから。
「邪神ロメリア・・・」
「ご名答。その通りだよ、空ちゃん。このまま、深山って人の思い通りになれば、邪神ロメリアは復活するよ。これは予言とか、そういうんじゃないよ。確実に起きるんだから」
「まぁ、その為に俺達が来たんだけどな。あの糞野郎を蘇らせる位なら、その前に対処してぇ。それが俺達の本音だ。その方が楽だからな」
「お兄ちゃんの言う通りだよ。元を正せば、この世界に存在しない能力なんてのが、未だに有る方が不味いんだよ。そんな能力者を利用しようなんて、論外だね。ミストルティンとやらも、深山って人も誰もが、根本的な事を間違えてるんだ」
静かに語るとペスカは一呼吸置き、林に視線を送る。
「リンリン。ウィルスの駆除はどうなってる?」
「アプリも合わせて、除去率は四割って所でしょうな」
「そっか。流石に間に合わなかったか。でも、四割は上々だね」
大きなため息を吐くと、ペスカは再び全員を見渡す。
「あのさ。深山って人がネットワークを通じて、プロパガンダを行ったら、それは終わりだと思って欲しい」
深山は人間である。神の力、その一端を利用すれば、耐えきれずに暴走する。なぜ暴走が起きるのか、そしてなぜ深山が暴走する事が、終わりの合図なのか。
それは、深山が人の精神をコントロールするからである。
人間一人辺りの悪意なんて、たかが知れている。それは、他者を害する事がある。そして波及していく事もある。それに自身を壊す事もある。しかし、それだけなのだ。あくまでも小規模なのだ。
数千、数万の人間から悪意を引き寄せれば、深山の能力を媒介にして邪神は蘇る。それは、世界の終わりを意味しているのだ。
革命などと、尤もらしい理屈を唱えている場合ではない。能力者を利用して、支配力を高めようなんて企む組織は、害悪でしかない。
確かに深山の行動は、崇高なものかもしれない。だがそれは能力という、曖昧な力を頼りに行うものではない。ましてや、多くの犠牲を良しとしてはならない。
もし地球という星が、人間を害と認識したら、それは人間社会の終焉となるであろう。それを自らの手で起こすなど、言語道断なのだ。
彼らは道を間違えたのだ。手段を間違えたのだ。だから、世界が敵に回ろうとも、己の正義を信じればいい。堂々と突き進めばいい。
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