もふもふと異世界でスローライフを目指します!

カナデ

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番外編

SS ~スノーの初めての雪~

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『ねえ、アリトー。アリトがつけてくれた名前のスノーティアのスノーって雪って意味だっていってたよね?』

「うん、そうだよ、スノー」
『雪、ってなぁに?ふわふわってアリト言ってたよね?』

 それはスノーと契約して鍛錬の日々を送っていた日のこと。
 時期はオースト師匠が教えてくれたこちらの暦でも新年を迎える前の時期。

 ここ『死の森』は南に火山があって竜が棲んでいるいる関係か、寒くても雪が降ることはなかった。スノーはオースト師匠がここに家を構えてから産まれたから、外の世界も雪も知らないのだろう。

「うーん。そうだなー。雨が降るだろう?」
『うん、雨は濡れちゃうから好きじゃないの。だから風をまとって濡れないようにしてるの!』
「ああ、そういえばスノーも皆も濡れてないよな…。俺も覚えれば濡れないで済むか。頑張ろう」
『?アリトは雨の日用って、ぬめぬめした魔物の皮で作ったよね?』
「そうだな。傘を作っても邪魔だからカッパを作ったな。ちょうど撥水性のある皮があったし」
 あれは薬草を採りにオースト師匠が遠出してカエルっぽい魔物を狩って来たんだよな。

『はっすいせい?んん?でも雨に濡れないならそれでいいよね』
「まあ、そうだな。でもスノー達の使う魔法は色々参考になるから、出来るようになるよう頑張るよ」
『風だからアディー?』
「…そうだなー。教えて貰おうかな」

『あ!それで雪は?アリト』
「そうだった、雪はな。その雨がもっと冷えて雪になるんだよ」
『??雨ってお水だよ?お水が冷えると氷になるんだよ?アリトが暑い時にそう言ってたよ!』

 そう、あまりに蒸し暑い日が続いた時があって。あの時は氷が欲しくて色々出来ないかやってたことがあったな。あれは結局フェリルに温度を冷やして貰ったんだったよな。

「そうだな。うーんと空気中、あの空の雲が凄く冷えると雪が降るんだよ」
『ふわふわなのはあのお空の雲だからなの?!すっごーい!』

「アハハハハ。でもそんな感じかもなー。溶けてすぐなくなっちゃうけどな」
『すぐなくなっちゃうの?うーん。でもスノー、見てみたいなー』

 ふむ、雪、か。ちょっと考えてみるかな。

「そうだな。降るといいな」
『うん!』



 そしてもう少しで今年も終わり、という夜。格段に冷え込んでいた。
 これなら成功するかな?時期的にはクリスマスってとこだけどな。

 ふと全然のクリスマスに雪が降るとホワイトクリスマスだと言って会社の女子が喜んでいたのを思い出した。
 ただ当時自分はクリスマスなんでキリスト教を信じてもいないのに、何が関係あるんだか。なんて思ってただ雪だと寒いじゃないかと思っていただけだったが。
 でも今は。

 喜んでくれたらいいけど、な。

 雪なんて寒いだけだと思っていたけれど、こんなことを思うようになるなんて。不思議だ。

『アリトー?呼んだー?』
「うん、呼んだよ、スノー。いいか、今から俺が魔法を使うから、スノーもあの温度が下がるヤツをやってくれるか?範囲は出来るだけ上の方に向けて広くなんだけれど、出来るか?」
『うん!スノー、出来るよ!やってみるね!』
「よし、頼んだぞ。じゃあ準備するな」

 ゆっくりと魔力を練り上げて、空気中の水分と足元に用意した桶の水を意識する。そして水の魔法を使う。
「今だ、スノー」
『うん、やるね!』

 霧吹きを意識して一気に空気中の水分濃度を上げる。そして元々の冷えた外気がスノーの魔法で更に冷やされる。吐く息が白くなり、そして…。

 ふわり、と舞い降りてくるもの。

「ほら、見てごらん、スノー。これが雪だよ」
『ふおお?これ?これが雪なの?』
「そうだよ、スノー。これが雪、だよ」

 ふんわりふんわり舞い散る雪。まあ無理やりだから雪の結晶って感じだけどな。

『うわーーーっ!これ、キレイね!あっ、溶けたっ!』
「ふふふ。すぐ溶けちゃうって言っただろ?」
『うふふふふ、でもキレー、キレーだね!アリト!』

 真っ暗闇の夜に、キンと冷え切った空気の中にふんわり舞い散る雪の中、白銀の美しいフェンリルがうれしそうに飛び跳ねる。

「うん、キレイだ」

『これが、雪!スノーの雪!』


 いつかこんな偽物の雪じゃなくて、本物の白銀の雪の中を跳ねまわるスノーの姿が見たいな、と思った。
 クリスマスなんて俺には関係ないと思っていたけれど。こんなクリスマスなら悪くない。そう初めて思ったのだった。


 
** フィクションです。 魔法で雪を降らしたのだと思って下さい!  **
ちょっとだけクリスマスSSでした。…寂しいクリスマスだからじゃないですよ?
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1巻から5巻(完結)発売中です。文庫化も始まりました!3巻3/8日発売です!無事に完結巻を刊行できたこと、お礼申し上げます。ありがとうございました!また寺田イサザ先生による、コミカライズ版の3巻まで好評発売中です!どうぞよろしくお願いいたします。
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