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3章 森の中の家

31 家族になろう

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「家族に、ですか?僕たちとあなたたちと?」
「そう。私と、ウィトと、ラウル君と、リナリサちゃんで四人家族ね。そうだ、私は八歳よ。春になったら九歳になるわ。ウィトも成獣してないのよね。年齢的には年下になるのかな?ね、ラウル君とリナリサちゃんは何歳?」
「え、ええと、僕は七歳、です。冬の寒い日に生まれたって聞いたのでもうすぐ八歳ですが。リサは五歳になったばかりで……」

 ふむふむ。ラウル君は私よりも小さいからもっと年下かと思ったんだけど、まあ、子供の頃は女の子の方が成長が早いものね。リサちゃんは五歳か!獣人の女の子の姿もかわいいんだろうなぁ。

「じゃあ私がお姉さんね!ウィトがお兄ちゃんかな?だからラウル君もリナリサちゃんのお兄ちゃんだけど、私達には弟だから、私達には甘えてもいいのよ?ね?」

 うふふふ。兄姉にも憧れていたけど、弟妹もいいよね!絶対かわいがってうざがられるまでが定番よね!昔近所の茜ちゃんは弟より犬の方がかわいい!なんて言ってたけど、弟の健斗君に「ねえちゃんうざい!もうかまってくんなよ!」ってよく怒鳴られていたし。ずっと実はうらやましかったんだよね……。

「お、お姉さん?……え、ええと、本当に僕たちが家族になって、いいんですか?これから一緒にここで暮らして……」
「勿論よ!ここはウィトと一緒に岩山を切って造った家なんだけど、まだ最近完成したばかりで色々足りないから、一緒に暮らしやすいようにしてくれるとうれしいわ。それに家族だから、もっと大きくなって、国に帰ろうと思ったらちゃんと送り出すから心配しないでね?……皆で寄り添って暮らせば、寂しくなんてならないわ」

 両親が亡くなって、リナリサちゃんと身を寄せた孤児が集まった集落でも見捨てられたって言ってたから、もしかしたらこういう寄り集まりだと不安に思うかもしれないけど。でも、だからこそ私は他人同士ではなく、家族として寄り添いたいのだ。
 勿論ラウル君とリナリサちゃんの為ではなく、この申し出は自分がここでウィトと二人ではやっぱり寂しかったからだ。私の為に、家族になってくれたらうれしい。そう想いを込めてラウル君を見つめ、微笑むと。

「本当に……本当に、家族に。……っ。あ、ありがとう、ございます。僕も、僕もリサが居てくれたけど、でも、僕のことを見てくれる人が欲しかった、んです。だから」

 僕も、家族が欲しいです。

 そう言ったラウル君の瞳からは、虚空を覗き込んでいるような暗さは影を潜め、年相応の輝きを少し取り戻しているように見えた。
 その瞳から、ポロリと涙が静かに零れ落ちたのを笑顔のまま見守る。

 ラウル君は、守るべき妹のリナリサちゃんがいたから、お父さんが亡くなってからずっと泣けなかったのかもしれない。大声でずっと泣き叫んでいた自分とは違って、自分だけではなく、守らなきゃならない存在が傍にいたから。

「キュウ……?クウ、クウーン」
「あらリナリサちゃん、起きたのね。……あのね。今お兄ちゃんにも言ったんだけどね。リナリサちゃん、これから私とウィトと一緒に家族になって、ここで一緒に暮らしましょう?リナリサちゃんのお姉ちゃんになれたら、私はとってもうれしいわ」

 お兄ちゃんの様子を察して起きたのか、ラウル君の膝の上で寝ていたリナリサちゃんが顔を上げ、涙を流すお兄ちゃんを心配そうに見上げていた。
 そんなリナリサちゃんに気づき、慌てて涙をぬぐうラウル君の膝の上からリナリサちゃんをそっと抱き上げ、視線を合わせながら問いかけると。

「……キャウゥ?……キャンッ!キャンッ、キャンッ!!」

 目を丸くし、小首を傾げて考えていたリナリサちゃんが、私の言った意味が分かったのか、尻尾をブンブン振り、耳をピンと立てて目を輝かせながらうれしそうに鳴いた。
 その様子だけで喜んでくれたのが分かり、思わずチュッと鼻先にキスをしてしまった。すると一瞬目をまん丸にしたリナリサちゃんは、更に尻尾をブンブン振り回しながらうれしそうに私の顔をペロペロと小さな舌で舐めてくれた。

「ウウウ……ウォフッ!ウォーーーッ!」

 リナリサちゃんとキャッキャウフフと戯れていたら、今まで静かに話を聞いていたウィトが横から顔を出して大人気なくリナリサちゃんを鼻で押しのけ、私の顔をペロンと舐めた。
 ウィトの鳴き声を聞いてちょっとだけしょんぼりしたリナリサちゃんに、ウィトの頭を頭でこつんとつつき、目を見て語り掛ける。

「こーら、ウィト。ウィトは今日からリナリサちゃんのお兄ちゃんなのよ?だからしっかりと面倒見てあげてね?」

 本当はウィトと言葉が通じるリナリサちゃんがうらやましく思ったが、でもウィトと一番仲がいいのは自分だと、そこはなんとか飲み込んだ。

 ちょっと寂しいけど、通訳して貰えばしっかりとウィトときちんと話が出来るようになった、ってことだもんね。それに家族は助け合うものだって、お父さんが言ってたもの。お母さんがお父さんに、甘やかすだけじゃダメだって言ってたけど。……ふふふ。不思議だ。家族が増えると思ったら、お父さんとお母さんとの楽しかったことを思い出すなんて。

「キャウゥ?キャウッ!キャウ、キャウッ!!」
「……グルゥ。グルルゥ、ウォフッ」

 ついぼんやりと思い出したお父さんとお母さんとのことを考えていると、膝の上で可愛い交流がされていた。
 ウィトの顔にピョンピョン飛び上がりながらじゃれつくのを、ちょっとだけ迷惑そうに、でもうれしそうにペロンとリナリサちゃんのことを舐めたり鼻でつんつんと交流しているのだ。

 ふふふ。これは通訳して貰わなくても分かるわ。お兄ちゃん?お兄ちゃん、お兄ちゃん!!ってじゃれるリナリサちゃんとちょっと照れてるウィトの図よ!もう、本当に萌えるわ!

「ふふふ。リサがうれしそうなのを、久しぶりに見た。……そういえば起きた時からずっと、楽しそうだったな。リサは幸せになって欲しいから僕がしっかりしなきゃって思ってずっと頑張っていたけど、いっつも僕の顔を伺っていたのに」

 顔を上げると、とうとう転がってじゃれ始めたウィトとリナリサちゃんを見つめながら、ちょっとだけ複雑そうな顔をしているラウルの姿に年下の男の子らしい弱さを見て、逆に安心していた。

「ねえ、それでどう?リナリサちゃんは私とウィトと家族になることを喜んでくれたみたいだけど。ラウル君は私たちと家族になってくれる?」

 家族が欲しい、とは言っていたけど、ハッキリとした返事は貰ってなかったと、ちょっとだけ意地悪な気分でニマニマと微笑んで聞いてみると。

「……リサもウィトさんがお兄ちゃんだとうれしいみたいですし。そうですね。僕も、家族になりたいです。家族に、なってくれませんか?」

 ちょっとだけ不貞腐れていたのに、ラウル君はすぐに真面目な顔をして、私を真っすぐに見つめてそう言ってくれた。
 ちょっとだけ照れた様子が出ていたが、そこを出さないように取り繕う様子が男の子という感じで微笑ましい。

「ふふふ。喜んで!じゃあ、ラウル君、いいえ、ラウル。家族なんだから、その敬語を止めてね?あと私のことはちょっとだけお姉ちゃんだけど、ノアと呼び捨てで呼んでいいからね。そうだ、ウィト。ウィトも呼び捨てでいいよね?」
「グルルゥ、ウォフッ!」
「うーん、まあ、いいか!ってところ、ラウル?」
「え?ええ、そう、そんな感じです」

 きょとん、ポカンとした顔も子供らしくていいね!耳はピンと立っているけど、ほら、尻尾はゆらゆらうれしそうに揺れているし!尻尾は嘘つかないって本当なのね。

「ほらその敬語!一緒に暮らすなら堅苦しいのはいらないから!あっ、そうだ。リナリサちゃんもリサちゃんでいい?私のことはそうね。お姉ちゃんって呼んでくれたら、私、もうメロメロになっちゃいそうなんだけど!」
「キャウ!キャウンッ!」
「ね、今リサちゃん、お姉ちゃんって呼んでくれた?お姉ちゃん、とってもうれしいわ!!」

 目をまん丸くして、尻尾をブンブン、ピョンピョン跳ねながらうれしそうにキャウッと鳴くリサちゃんがかわいすぎる!

 そのままラウルのことを巻き込んでウィトと四人で転がってじゃれていたら、ラウルのズボンがずり落ちてしまい、真っ赤になって部屋の片隅で落ち込んでしまったのだった。
 とりあえずの課題は、尻尾穴の開いた服を作る事、だね!


 






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これでやっと正式に人の登場人物が増え、四人暮らしになりました!
会話があると、テンポが上がりますね!( ´艸`)
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