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一章 辺境の森の中の小さな集落
11話
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本日も晴天なり。そう腰に手を当てて思ってしまう程に、初めて集落に外の人が訪れた翌日は朝からいい天気だった。
旅立つには雨よりも天気の方が気分がいいよね。まあ旅立ちといっても、エーデルドさんが里へ戻るだけなんだけど。
「これ、お昼に食べて下さい。あまり日持ちはしませんが、お昼に食べれば、悪くならないと思いますから」
「わざわざありがとう。ありがたくお昼に食べさせて貰うよ」
昨日の夜、久しぶりの一人じゃない食卓に、張り切って多めにパンを焼いた。少し前まではいつものことだったのだと思うと、少しだけ不思議な感じがした。
そのパンに、燻製にしておいたイノシシ肉とハーブを挟んでサンドイッチをお弁当に作ってみたのだ。あとはエーデルドさんの里はここから真っすぐ目指してもおよそ十日以上かかるというので、暑い夏でも日持ちするように乾パンと干し肉も渡した。
黒パンは、作り方を教わる前に、余りの硬さに私が果物で酵母を早々に作って、柔らかいパンを焼いたので作れなかったりする。エリザナおばあちゃん達も、柔らかいパンは歓迎だったのか、いきなり子供が柔らかいパンを焼いたのにそのまま受け入れてくれたのだ。
保存食、という点ではそれからはフランスパンを焼いていたが、昨夜の食事も全てが初めての料理にエーデルドさんが目を白黒させていたので、大麦を使って思い出しながら固めの乾パンを焼いた。
エーデルドさんが持っていた食料は、少しの干し肉に果物を干した物のみだったのだ。それでまた十日も森を歩くなんて、私には耐えられない。
「では。申訳ないが、返事をしに戻って来れるのは、早くても一月後くらいになると思うのだが……」
「いいですよ。くれぐれも道中気を付けて下さい。それに返事は急がないでいいですから。もし反対の方がいて、こちらに移住しない、となった場合はわざわざ返事をしに来られなくても、三か月を過ぎればこちらも無かったことと思いますし」
この世界でも月単位があった。一月は二十五日で一年が十三月である。月の呼び方はそれぞれ三か月まとめて光、土、火、水、最後の一月だけは闇の月だ。光の一の月、光の二の月、光の三の月、土の一の月、土の二の月、土の三の月、となる。
一日は十二刻で、一刻が約二時間なので向こうと一日の時間が一緒だったのは、異世界にいることを自覚してから幸運だと思ったことの一つだ。
「……多分そのようなことにはならないとは思うんだけど、ね。こちらからの申し出なのにすまない」
「いえいえ。自分の住む場所ですから。みんなが納得して決めた方がいいですよ。もし見学したい方がいれば、それはそれで約束を守ってくれるなら受け入れますので」
エーデルドさんの里を受け入れよう、と決心したのは、エーデルドさん達が人と関わりを持っていなかったからだ。エーデルドさんがたまたまこの集落へたどり着いた村の人だったら、恐らく私は決して受け入れなかっただろう。
そう、確かに獣人にはつられたし、一人の寂しさを思い出したけどそれだけで受け入れを決めた訳では無かった。
「本当にありがとう。とりあえず一番大事なのは、ここのことを確実にみんなに知らせることだから、帰り着くことを第一に旅をするよ。そして君に誓ったことを最初に長老だけに伝えて検討してから、皆にはこの場所のことは知らせるから」
だから昨夜、きちんとエーデルドさんと話合って、お互いの譲れない一線を決めた。それを守るのが無理だというのなら、この話は無かったことになる。
そしてその私が望んだ一線を守ることを、エーデルドさんは誓ってくれたのだ。
「はい。無事に帰り着くことを祈っていますね。どうかご無事で」
「ありがとう。シルバーさんも今回はありがとうございました。では。またお会いしましょう」
集落と森の境目から、手を振って旅立つエーデルドさんを見送ると、また不思議な気分になった。
昨日の今頃はいつもと同じシルバーと二人きりだったのに、こうやってまた二人になるとちょっと寂しい気がしてしまう。
ここで一人、シルバーとピュラ達と生きて行くつもりだったのに、ね。一度贅沢を覚えると、戻れないってこういうことかな。
「グルゥ。ガウっ」
「うん、シルバー、ありがとう。シルバーはずっと一緒にいてくれるものね。よし!さあ、シルバー、今日も頑張るわよ!」
「バウッ!」
まだエーデルドさん達が移住して来るかは分からないけれど、とりあえずやれることはやっておこう!
私の目標は、前世の記憶を使った内政チートな生活。何も不自由しない、のびのびと暮らせる生活なのだ。だから、当面は水路とお風呂を目標に、今日も頑張ろう!
「ピュラー、本当にいいの?この木切っちゃって」
「いいのよ。どうせあのハーフエルフの里が引っ越して来たら、ここら辺は切り拓くことになるだろうし」
建材の調達の為に、放置していた森との境目の木をピュラに聞きながら伐採していく。
伐った木はすぐには材木として使えないので、一番最初に取り掛かった。
エーデルドさんとの話し合いで、もし全員で移住して来た時の受け入れる大人と子供の人数、必要な住居の件数を聞いたので建設予定地の検討を始めた。
使っていない家は三十件あるが、中にはもう傷んで住めない家もある。とりあえずそういう家を一軒一軒まわって取り壊す家を決めている最中だ。
家を解体しても、建材として使える材木は使い、更地にした場所に新しい家を建てるつもりだ。
里に住んでいるのは百人ちょっとだったが、聞くところによると小さな子供が多かったのだ。その子達が大きくなり、その子供が生まれることも考慮して、集落を少しだけ広げようと決意した。
子供が生まれても、ここから出て行く人はいないだろうからね。
将来的なことも含めて、伐り拓く場所を精霊たちと相談している最中だ。
「本当に良かったの?受け入れるって返答しちゃって」
「いいわよ。私は森の精霊だけど、森を伐り拓いたら絶対ダメ、なんて意識は別にないわよ?森があって、生きる生き物がいる。それが世界だわ。むやみに森を伐り拓こうとするのなら当然敵対するけれど、ここではそんなことはしないでしょう?」
「勿論よ!この森で暮らさせて貰っているのは、私達の方だもの。出来る限り生態系を崩すつもりはないわ。それをきちんとエーデルドさんとは誓約して貰ったし」
現代日本知識チートで内政をしよう!と思ったり、エーデルドさん達を受け入れようと思ったりしても、ここの森をむやみに開拓しようとは全く考えてはいない。
今回切った木も、建材と建築に向かない材質の木は家具などに使うつもりでいる。それに無理でも、薪としてならいくらでも必要になる。
ピュラは森の精霊なのだ。そんなピュラとずっと付き合って来たのだから、絶対に木を無駄にはしたくない。
「グァウ……グルゥ」
「シルバーってば、やっぱり気乗りしないの?誰が来たって私の家族はシルバーだけだし、一番もシルバーよ?……普通の人間なら、多分この集落へ迎え入れようとは思わなかったけど、エーデルドさん達なら、この森でずっと暮らしていた人たちなら、一緒に暮らせしていけるかも?って思ったのよ。……ねえ、シルバーは反対なの?」
エーデルドさん達が転居場所に困っている元々の原因も、森の中から出る選択をしないが為なのだから。
外の世界へ出たくない私と、同じ気持ちで暮らして行けるだろうと思ったのだ。私が大切に思っていることを、大切にしてくれるだろうと。
でも、シルバーが本当に嫌だというのなら、エーデルドさん達の移住を断って、今まで通りに二人きりでこの集落で暮らしてもいい。
「……シルバーと二人っきりでもいいって思っていたけど、でもやっぱりここでまた笑い声を聞きたいと思ったのよ。ここは私にとっても、エリザナおばあちゃん達みんなにとっても、決して寂しい場所じゃないから。同じ森で暮らしていた人たちなら、ここが前と同じように楽しい場所になるんじゃないかって」
エーデルドさんの話を聞いて、そう思ってしまった。だからつい、シルバーが気乗りしていないことに気づいていたのに、いいと言ってしまった。
シルバーなら、私の我儘を受け入れてくれるだろうと思って。
「リザ……」
「……グルゥ。ガウ、ガウっ」
ほら。シルバーは、仕方ない、いいよ、って言ってくれる。それが心からでないことに気づいても、それでも今回はとことん甘えたいと思ってしまう。
「ありがとう、シルバー。ピュラもありがとう。ピュラもスヴィーもドォルも、他の精霊さんもいるのに、寂しく思ってごめんね」
「ううん、それは当然のことよ。逆に寂しくない、って言われたら、そっちの方が心配になるわよ」
寂しいと思ってはいても、心配してくれるピュラ達がいるからそれで幸せだと思っているのも私の本心だ。だから、本当に里が移住してくることになって、もしシルバーやピュラ達が居心地が悪くなったのなら、私が責任をもってエーデルドさん達にはこの集落からまた移住してもらう覚悟はある。
「本当にありがとう、ピュラ。エーデルドさんとの里の人たちには、きちんと誓約して貰うからね」
「まったく、リザったら。誓約なんていい、って言ったのに」
「ダメよ。そこはちゃんとするわ。エーデルドさんも納得して、それを込みでここに移住するか決めると言っていたでしょう?」
エーデルドさんに突きつけた質問と約束を、エーデルドさんは命に掛けて誓うと言ってくれた。だから『誓約』で縛らせて貰うことにしたのだ。
『誓約』とはエリザナおばあちゃんから教わった『呪術』の中にある術の一つだ。
『誓約』の効果はその名の通り、誓約の術は自分自身の魔力で宣誓した内容は絶対に違えることは出来なくなる、というもの。己の体内の魔力でもって強制的に禁止する、ということは、その誓約を違えた時、その人の精神に多大な負担がかかることになる。もしそんなことになった場合、最悪死に至る。
だからよほどの時以外はこの術は使ってはならない、とエリザナおばあちゃんから教わった時に厳しく戒められていた。でも、だからこそ今回は使おうと思う。
エーデルドさん個人なら別に誓約まで求めずとも良かったけれど、人数が増えれば色んな人が増えることを警戒しなければならない。村でのこともいい教訓になっているしね。
だから、向こうが求めて来るなら受け入れることには決めたけれど、どうしても譲れない点だけは全員に誓約を求めることを条件としたのだった。
旅立つには雨よりも天気の方が気分がいいよね。まあ旅立ちといっても、エーデルドさんが里へ戻るだけなんだけど。
「これ、お昼に食べて下さい。あまり日持ちはしませんが、お昼に食べれば、悪くならないと思いますから」
「わざわざありがとう。ありがたくお昼に食べさせて貰うよ」
昨日の夜、久しぶりの一人じゃない食卓に、張り切って多めにパンを焼いた。少し前まではいつものことだったのだと思うと、少しだけ不思議な感じがした。
そのパンに、燻製にしておいたイノシシ肉とハーブを挟んでサンドイッチをお弁当に作ってみたのだ。あとはエーデルドさんの里はここから真っすぐ目指してもおよそ十日以上かかるというので、暑い夏でも日持ちするように乾パンと干し肉も渡した。
黒パンは、作り方を教わる前に、余りの硬さに私が果物で酵母を早々に作って、柔らかいパンを焼いたので作れなかったりする。エリザナおばあちゃん達も、柔らかいパンは歓迎だったのか、いきなり子供が柔らかいパンを焼いたのにそのまま受け入れてくれたのだ。
保存食、という点ではそれからはフランスパンを焼いていたが、昨夜の食事も全てが初めての料理にエーデルドさんが目を白黒させていたので、大麦を使って思い出しながら固めの乾パンを焼いた。
エーデルドさんが持っていた食料は、少しの干し肉に果物を干した物のみだったのだ。それでまた十日も森を歩くなんて、私には耐えられない。
「では。申訳ないが、返事をしに戻って来れるのは、早くても一月後くらいになると思うのだが……」
「いいですよ。くれぐれも道中気を付けて下さい。それに返事は急がないでいいですから。もし反対の方がいて、こちらに移住しない、となった場合はわざわざ返事をしに来られなくても、三か月を過ぎればこちらも無かったことと思いますし」
この世界でも月単位があった。一月は二十五日で一年が十三月である。月の呼び方はそれぞれ三か月まとめて光、土、火、水、最後の一月だけは闇の月だ。光の一の月、光の二の月、光の三の月、土の一の月、土の二の月、土の三の月、となる。
一日は十二刻で、一刻が約二時間なので向こうと一日の時間が一緒だったのは、異世界にいることを自覚してから幸運だと思ったことの一つだ。
「……多分そのようなことにはならないとは思うんだけど、ね。こちらからの申し出なのにすまない」
「いえいえ。自分の住む場所ですから。みんなが納得して決めた方がいいですよ。もし見学したい方がいれば、それはそれで約束を守ってくれるなら受け入れますので」
エーデルドさんの里を受け入れよう、と決心したのは、エーデルドさん達が人と関わりを持っていなかったからだ。エーデルドさんがたまたまこの集落へたどり着いた村の人だったら、恐らく私は決して受け入れなかっただろう。
そう、確かに獣人にはつられたし、一人の寂しさを思い出したけどそれだけで受け入れを決めた訳では無かった。
「本当にありがとう。とりあえず一番大事なのは、ここのことを確実にみんなに知らせることだから、帰り着くことを第一に旅をするよ。そして君に誓ったことを最初に長老だけに伝えて検討してから、皆にはこの場所のことは知らせるから」
だから昨夜、きちんとエーデルドさんと話合って、お互いの譲れない一線を決めた。それを守るのが無理だというのなら、この話は無かったことになる。
そしてその私が望んだ一線を守ることを、エーデルドさんは誓ってくれたのだ。
「はい。無事に帰り着くことを祈っていますね。どうかご無事で」
「ありがとう。シルバーさんも今回はありがとうございました。では。またお会いしましょう」
集落と森の境目から、手を振って旅立つエーデルドさんを見送ると、また不思議な気分になった。
昨日の今頃はいつもと同じシルバーと二人きりだったのに、こうやってまた二人になるとちょっと寂しい気がしてしまう。
ここで一人、シルバーとピュラ達と生きて行くつもりだったのに、ね。一度贅沢を覚えると、戻れないってこういうことかな。
「グルゥ。ガウっ」
「うん、シルバー、ありがとう。シルバーはずっと一緒にいてくれるものね。よし!さあ、シルバー、今日も頑張るわよ!」
「バウッ!」
まだエーデルドさん達が移住して来るかは分からないけれど、とりあえずやれることはやっておこう!
私の目標は、前世の記憶を使った内政チートな生活。何も不自由しない、のびのびと暮らせる生活なのだ。だから、当面は水路とお風呂を目標に、今日も頑張ろう!
「ピュラー、本当にいいの?この木切っちゃって」
「いいのよ。どうせあのハーフエルフの里が引っ越して来たら、ここら辺は切り拓くことになるだろうし」
建材の調達の為に、放置していた森との境目の木をピュラに聞きながら伐採していく。
伐った木はすぐには材木として使えないので、一番最初に取り掛かった。
エーデルドさんとの話し合いで、もし全員で移住して来た時の受け入れる大人と子供の人数、必要な住居の件数を聞いたので建設予定地の検討を始めた。
使っていない家は三十件あるが、中にはもう傷んで住めない家もある。とりあえずそういう家を一軒一軒まわって取り壊す家を決めている最中だ。
家を解体しても、建材として使える材木は使い、更地にした場所に新しい家を建てるつもりだ。
里に住んでいるのは百人ちょっとだったが、聞くところによると小さな子供が多かったのだ。その子達が大きくなり、その子供が生まれることも考慮して、集落を少しだけ広げようと決意した。
子供が生まれても、ここから出て行く人はいないだろうからね。
将来的なことも含めて、伐り拓く場所を精霊たちと相談している最中だ。
「本当に良かったの?受け入れるって返答しちゃって」
「いいわよ。私は森の精霊だけど、森を伐り拓いたら絶対ダメ、なんて意識は別にないわよ?森があって、生きる生き物がいる。それが世界だわ。むやみに森を伐り拓こうとするのなら当然敵対するけれど、ここではそんなことはしないでしょう?」
「勿論よ!この森で暮らさせて貰っているのは、私達の方だもの。出来る限り生態系を崩すつもりはないわ。それをきちんとエーデルドさんとは誓約して貰ったし」
現代日本知識チートで内政をしよう!と思ったり、エーデルドさん達を受け入れようと思ったりしても、ここの森をむやみに開拓しようとは全く考えてはいない。
今回切った木も、建材と建築に向かない材質の木は家具などに使うつもりでいる。それに無理でも、薪としてならいくらでも必要になる。
ピュラは森の精霊なのだ。そんなピュラとずっと付き合って来たのだから、絶対に木を無駄にはしたくない。
「グァウ……グルゥ」
「シルバーってば、やっぱり気乗りしないの?誰が来たって私の家族はシルバーだけだし、一番もシルバーよ?……普通の人間なら、多分この集落へ迎え入れようとは思わなかったけど、エーデルドさん達なら、この森でずっと暮らしていた人たちなら、一緒に暮らせしていけるかも?って思ったのよ。……ねえ、シルバーは反対なの?」
エーデルドさん達が転居場所に困っている元々の原因も、森の中から出る選択をしないが為なのだから。
外の世界へ出たくない私と、同じ気持ちで暮らして行けるだろうと思ったのだ。私が大切に思っていることを、大切にしてくれるだろうと。
でも、シルバーが本当に嫌だというのなら、エーデルドさん達の移住を断って、今まで通りに二人きりでこの集落で暮らしてもいい。
「……シルバーと二人っきりでもいいって思っていたけど、でもやっぱりここでまた笑い声を聞きたいと思ったのよ。ここは私にとっても、エリザナおばあちゃん達みんなにとっても、決して寂しい場所じゃないから。同じ森で暮らしていた人たちなら、ここが前と同じように楽しい場所になるんじゃないかって」
エーデルドさんの話を聞いて、そう思ってしまった。だからつい、シルバーが気乗りしていないことに気づいていたのに、いいと言ってしまった。
シルバーなら、私の我儘を受け入れてくれるだろうと思って。
「リザ……」
「……グルゥ。ガウ、ガウっ」
ほら。シルバーは、仕方ない、いいよ、って言ってくれる。それが心からでないことに気づいても、それでも今回はとことん甘えたいと思ってしまう。
「ありがとう、シルバー。ピュラもありがとう。ピュラもスヴィーもドォルも、他の精霊さんもいるのに、寂しく思ってごめんね」
「ううん、それは当然のことよ。逆に寂しくない、って言われたら、そっちの方が心配になるわよ」
寂しいと思ってはいても、心配してくれるピュラ達がいるからそれで幸せだと思っているのも私の本心だ。だから、本当に里が移住してくることになって、もしシルバーやピュラ達が居心地が悪くなったのなら、私が責任をもってエーデルドさん達にはこの集落からまた移住してもらう覚悟はある。
「本当にありがとう、ピュラ。エーデルドさんとの里の人たちには、きちんと誓約して貰うからね」
「まったく、リザったら。誓約なんていい、って言ったのに」
「ダメよ。そこはちゃんとするわ。エーデルドさんも納得して、それを込みでここに移住するか決めると言っていたでしょう?」
エーデルドさんに突きつけた質問と約束を、エーデルドさんは命に掛けて誓うと言ってくれた。だから『誓約』で縛らせて貰うことにしたのだ。
『誓約』とはエリザナおばあちゃんから教わった『呪術』の中にある術の一つだ。
『誓約』の効果はその名の通り、誓約の術は自分自身の魔力で宣誓した内容は絶対に違えることは出来なくなる、というもの。己の体内の魔力でもって強制的に禁止する、ということは、その誓約を違えた時、その人の精神に多大な負担がかかることになる。もしそんなことになった場合、最悪死に至る。
だからよほどの時以外はこの術は使ってはならない、とエリザナおばあちゃんから教わった時に厳しく戒められていた。でも、だからこそ今回は使おうと思う。
エーデルドさん個人なら別に誓約まで求めずとも良かったけれど、人数が増えれば色んな人が増えることを警戒しなければならない。村でのこともいい教訓になっているしね。
だから、向こうが求めて来るなら受け入れることには決めたけれど、どうしても譲れない点だけは全員に誓約を求めることを条件としたのだった。
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