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神竜家
弱気な俺はもういない
しおりを挟む✡貴史視点
これからどうするか?
もし外に出れば、またモンスターに遭遇するかもしれない。かといって、このままこの家で助けが来るのを待つというのはどうだろう?
── こんな状況を警察や日本UAFが知らん顔なんてしないよな。そうだよ、災害と同じなんだから、きっと救助に来てくれる筈だ。
そう思うと少し落ち着いてきた。
警察や日本UAFが助けに来てくれるのをここで待った方がいいか? でも外にいた方が、救助に来てくれた時にこっちも向こうも相手を見つけやすいんじゃないか……。
「強くならないと……昨日よりもその気持が強くなってる。──よし、磯良支部に向かって行けるとこまで行ってみるか。この町に来るにはその道しかないから、助けに来た警察か日本UAFの隊員と会えるかもしれない。人がいないかどうかを見ながら……どこかで寝泊まり出来る所もあればいいな。色々と探しながら自転車に乗って足腰を鍛えるのも有りだし。でも誰にも会えなかったら……もしモンスターが出てきたら……。いやいや、強気でいこう。どう転んでも強くならないといけないのは変わらないんだ」
父が負ける程のモンスターがいる。そんなモンスターに今の俺が勝てる訳がない。
外に出て、モンスターに遭遇したとして、勝機があるとすればこの家宝の刀を振るうこと。どういう訳か、俺はこの刀を持っていても体力を奪われることはない。
投げやりになったわけではないが、強くなる為には躊躇していられない。
家の中までモンスターが襲ってきたんだから、もはや家でも外でも危険なのは変わらないんだ。
昨日の一件で、死ぬ程の攻撃を受けたのに死ななかった事も強気になれる一つの要因になっているのは違いない。
本当に何をされても死なないのかは分からないし、試したくもないけど……。
俺の中に10歳以前の、弱気な俺はもういない。
「どうせここで何もしなければ、いずれ食料が無くなって死ぬんだ。それに、この家にはもう居られない。──強くなることを望むのに、自分のステータスのことを気にしてもしょうがない。だいたい価値が0円でもこうやって生きてるんだし。──とにかく強くなればいいんだ。鍛えまくってモンスターを倒しまくる! って、職業が『神』になって、この刀……いや、最強の矛を手にしてから俺って強気だよな……。でも一応モンスター図鑑は持っていこうっと」
── 俺には最強の矛がある。これは俺の生きる希望だ。どうせ強くなるなら頂点を目指すくらいじゃないとな……って、これはさすがに言い過ぎかな?
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─ 黒い目の人らしからぬ人 ──
「アルティナ様、有難う御座います……」
膝を付き深々と頭を下げるニックの父親。
「──礼などいらぬ。元は妾のわがままのせいでこうなってしまった……。すまぬ」
「何を仰っしゃられますか! アルティナ様は何も悪くはありません! 私共の注意不足から起きた事故……いや、事件です。それなのに、アルティナ様の心を傷めてしまったことお詫び申し上げます」
先程と同じく深々と頭をさげるニックの父親。
「目には目を歯には歯を、だ。同じ思いをさせなければ何も分かるまい。人とは強欲で愚かな生き物だからな……」
「私もそう思います」
そう言ってニックの父親が部屋を出て行った。
「──ふぅ~、これで良かったのか……。ここに座るということは皆を守る義務がある。そして、皆を愛さねばならぬ。──とは言っても、今回の判断は辛かった……。死を以って償わせるのは本望ではない。──ふっ、そんな甘いことを言っていては、一族の者に示しがつかんな。──話は変わるが、佐山から10歳の誕生日に職業が『神』になっていたが、価値は0円のままだったという報告があった。もしも、生き残っていればまだ可能性はある、とも言っておったな。佐山はあの子供に情が移っておる。──まぁ、妾も、生き残っていれば……という佐山の言葉を信じたいのだが……」
アルティナの側近の一人が片膝を付き言葉する。
「アルティナ様のお気持ち、お察し致しま──アルティナ様の判断は間違っておりません。同族の死が絡んでおります故、致し方無かった事かと……。死を以って償わさせなければ、分からぬ相手かと存じますので。──しかし、私的には町が壊滅させられても分かっているかどうか怪しいと思います。神竜巌上が、地底で殺めた子の事を黙っている可能性もありますので。──それともう一つの話ですが、出来るだけそうなるように手は打ってきた、とも言っておりました。あの子供の運に賭けたのでしょうが、私も佐山があの子供に愛情があると踏んでおります」
「ふっ、お前に慰められるとはな」
「アルティナ様を慰めるなど! め、滅相も御座いません! ご勘弁を……」
アルティナは笑う。
もう一人の側近が。
「アルティナ様。お願いがございます」
「なんだ?」
「私は、アルティナ様のお話をまだ信じきれておりませんが、気になる話ではあります。ですので、私を行かせてはもらえませんでしょうか?」
大きな椅子の肘置きに肘を付き、脚を組んでいるアルティナ。
「お前は何かと荒いからな……。まぁよかろう。ラックラッキーよ、妾は期待しておる。その事を忘れるなよ」
ラックラッキーが口角を上げた。
「有難き幸せ。──今からする話は私の感でありますので、ご容赦願います。──アルティナ様のお話から察するに、その者が生きている可能性が高いこと。そして2つ目、私の攻撃でも死なないであろうことです。1つ目が当たっていれば、2つ目は間違いないかと……。ただ、まがい物の可能性も否定出来ませんので、きちんと見定めて参ります。──アルティナ様のご期待に添えるかは、あの子供次第ですが……」
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━ 後書き ━━
第20話まで読んで頂き有難う御座います!
次話から新章『出会い』へ突入です!
応援ありがとうございます!
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