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第1話 鞠とリッド
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私はもうあの頃には戻れない…
しなきゃよかった…
恋なんて。
「今日からですね。補習は。」
今日の授業は終わった。
授業と言っても、学校の授業ではない。塾だ。
私の名前は、池本 鞠。中学校2年生だ。
私は中学受験をして、県内トップの私立中学であるル・ジャルダン・デ・フルール女学園に進学した。花園 という意味が込められている。全国からも人気の高いこの学園に入れる女の子は、ル・スリー 微笑みの女学生と呼ばれる。街でも、制服を着て歩いているのは鼻が高い。憧れの的なのだ。だが、私はその花園で、少々、いや、かなり、行き詰っていた。入れたのはいいけれど、勉強に追いつくことがどうしてもできないのだ。やっとできるようになっても授業はとっくの先に進み終わっていて、私は、肩身がせまいのだ。ということもあって、中学受験の時もお世話になったここ、ル・トゥルノソルという、フランス語でひまわりという意味のフルール学園の専属の塾で勉強を教えてもらうことにした。幸運なことに、先生は中学受験の時と同じ、リッド先生 フランス人で、さざなみっていう意味なんだ。21歳っていう若さだけれど、優しくて、教え方もとても上手で頭もいい。それに、金髪で白色のスーツの似合う周りの目を引きつけるような格好の良さを持っていた。
「リッド先生。ごめんなさい。学校の授業だけならいざ知らず、塾の授業でさえも追いつけなくて…個人授業なんて残業になるってことですよね…本当に迷惑かけてすみません。」
授業後、1時間の個人授業を取らせてもらうことになったのだ。数学や、英語が全く追いついていないことからまずはそこからだ。
「いいんですよ。鞠。君の授業の後はもう授業もないですし、時間はたっぷりあります。君のわからないところをわかるまで教えるのが私の務めです。だから、君が私に気にかける必要なんて全くないのです。」
「…ありがとうございます。」
母国のフランス語だけでなく、英語も、中国語も、スペイン語もイタリア語も、日本語までもを完璧にするリッド先生。私は、一体そんなにたくさんの外国語をどこでいつ勉強したのか気になってならない。
「中学一年生からの復習ですからね。基礎が大事ですよ。頑張りましょう。」
優しい声…これを世間ではイケボ?というのだな。
「鞠?」
「へ、あ、すみません。ぼーっとしてました…。」
「もう、8時ですからね。お腹も減ってきたでしょう。」
「へ?」
「8時半までやることになってましたが、少し休憩しましょう。休憩しなくては効率が悪いですからね。ちょっと待っててくださいね。」
「は、はい…?」
リッド先生は、椅子から立ち上がって、厨房に入っていった。ここの塾は少し特殊だ。お昼も夜も残って自習していく人のため、厨房が管理されている。昼ごはんを作って食べたり、自分で材料を持ってきて、スイーツを作って勉強の合間に食べたり、塾の隣には、カフェもあるから、お昼や夜はそこで食べる人が多い。
リッド先生はしばらくしてから、何かを持って部屋に戻ってきた。
「それは?」
私が聞くと、優しく微笑んだ。
「私の作ったスイーツです。勉強をしていると甘いものが欲しくなるでしょう。さぁ、遠慮なく食べなさい。」
「え、せ、先生が作ったんですか?」
「ええ。もちろんですよ。これでも、フランスに住んでいた頃は、スイーツ作りばかりしていましたから。パティシエになろうと思ったほどです。」
スイーツ作りばかりしていたくせになぜ勉強ができるんだ…この男は…と少々気になる点も多いけれど、そこは置いておこう。
「パティシエ…先生だったらパティシエの制服もきっと似合うんでしょうね。」
「え…いや、似合わないよ。」
「似合いますって。先生清潔な白色が似合いますし。先生かっこいいですもん。みーんな憧れているんですよ。男の子も女の子もそれくらいリッド先生っていう存在はみんなの中で大きいんですね。」
「…いや、私なんてまだまだですよ。さぁ、お食べ。」
「はい!これって、いちごムースですよね!こんなおしゃれないちごムース作れる人間近で初めて見ました!高級なお店で売っているもの見たい!」
「いや、、まだまだなんですよ。」
私は体を先生に向けて一言言った。
「先生。」
「はい?」
「さっきから先生、いや、まだまだだ。ってそればっかりです。何かあったんですか?なんでも出来る天才なリッド先生がそんなに心を曇らせるなんて。」
「…鞠。なんでもないですよ。君は優しいですね。」
「優しい?私がですか?」
「はい。」
私は、リッド先生がそういうことを言ってくれて、心の底では少し嬉しかった。
「鞠。おかえりなさい。今日は少し遅かったのね。何かあったの?」
9時10分少し過ぎた時、私は家に着いた。
お母さんが夜ご飯を作って待っていてくれた。
「別に、なんでもないよ。だって、今日はほら、補修が始まる日だったんだもの。いつもよりは、遅くなっちゃうわ。」
「そう?9時なんて遅い時間だから、本当は迎えに行きたいんだけれど…ごめんね。」
「ううん。いいのよ。お父さんが、単身赴任中の間は仕方ないわ。」
「…鞠…お父さんは単身赴任じゃ…」
お母さん…わかってる。わかってるからその先は言わないで。とでも言うように私はお母さんの目を見つめた。
「ごめんね。」
お父さんが単身赴任ではないことを知ったのは、1年も前のこと。受験の時、ピリピリしているからだろうか。6年生だったあの頃、受験のストレスやらなんやらで神経質になっていた。だから、なんとなく、感づいた。お父さんは、新しい家族を作るのだと。お父さんは、私とお母さんを捨てたのだと。
養育費は払ってくれてるし、家のローンも全部お父さんがやっている。お母さんのいない間に、書類を全部見た。6年生だった私にはまだよくわからない言葉ばかりだったが、大きくなるうちにつれてなんとなく勘が働くものであるといやでも知った。
ローンもあっち持ちなのだから、そんなに仕事をしなくてもいいのにお母さんは、昔からやっている公務員をやめようとはしない。お母さんは頼ることに慣れていないようだ。
こんな家、でていきたい。そう思う時もよくある、、
でも、もしかしたら、いつかお父さんが帰ってくるかもと期待を捨てずにはいられない。
お父さんは、どうして、私達を捨てたのか…
これは、どんなに大きくなってもわからないだろうな。
「…来ないでくれ…お願いだ。奪わないでくれ。」
先生は寂しい声で言った。
私が家に帰ってからも、リッド先生は塾にいた。
「おはよう。」
私がそう言って、学園について友達に挨拶した。
「御機嫌よう。」
そう返ってきた。
お嬢様言葉で返してきたのは、龍翔 麗華。
同じクラスのいつメン。私と二人で行動することが多い。
お嬢様だけど、人を馬鹿にしたりはせず、優しい心を持つ綺麗な子だった。
「眠そうね。鞠。」
私が大きくあくびをすると、麗華が言った。
「うん。私頭悪いから昨日8時30分過ぎまでトゥールで個別で教えてもらっていたの。」
トゥール。それは、ル・トゥルノソルの略の呼び方。生徒が独自に話し出したことから広まった。
「トゥールで?」
「うん。麗華は頭良いしお金持ちだから、トゥールにはいかないよね。おうちに家庭教師が来るんでしょ?」
「ええ。でも、頭良くないわ。いつもお父様たちに叱られてばかり。」
「麗華は頭良いから期待が大きいのね。私は馬鹿だから、期待なんて全然されないわ。期待される気分も味わってみたい。」
「ふふ。そう?そういえば、トゥールにはとても美しい顔をした男性がいらっしゃると皆様が噂してらしたわ。その方には会ったことはおあり?」
「え?リッド先生のことかな。」
「確かそんな名前でしたわ。そんなに格好の良い方なの?」
「ええ。もちろん。みんなが噂する理由は見ればわかるよ。また今度写真を撮って見せてあげる。」
「ありがとう。でも、いいわ。そういうことって知らない方がミステリアスで素敵じゃない?」
なんだか、こういうところ、やっぱりお嬢様なのだと気づかされる。考え方がお嬢様だ…。
「トゥールでは、一体どんなことを勉強なさるの?」
「私は、数学とか英語だけれど、他にも、習い事と称して、お琴や、ヴァイオリンとか、スイーツ作りとか習う人もいるのよ。よく授業を受けている時、楽しそうな声や、ヴァイオリンの音が聞こえるの。トゥールは、小学生の受験生もいるからなんだか、賑やかなのよ。それに、建物もフランスの建物みたいにアンティークでとても大きいの。麗華もトゥールの写真くらいは見たことあるでしょう?」
「そうね…。この学園も日本校があるだけで、フランスが本校ですものね。フランス語の多い建物ばかり。この学園の名前の長さは外国でも有名ですもの。」
「フランスにこだわるのは創立者がフランス人だったからかしらね。」
「ええ。きっとそうだわ。」
麗華は本当に可愛らしい笑顔で笑う。
庶民の私にとってできない笑い方だ。
トゥールに通うのは、お嬢様方じゃなくて、普通の家庭の子の方が多いのよね。この学園はお嬢様学園だからクラスにはお嬢様方が多い。だから、みんなもお嬢様方と同じ趣味を持ってお話に花を咲かせたいのね。勉強ができない私とはまるで始めた理由が違うんだから。
「どうしました?鞠。浮かない顔をして…。」
わたしは、トゥールでの団体授業の時間より早く着いてしまったから、先生に質問しに行っていたのだ。
なのに、私は手が動かなかった。目も真っ暗。
「へ?あ、なんでもないです。私馬鹿だから考える間手が全く動かなくて…」
「誰も手が動いていないとは言っていませんよ。」
「あ…」
「やはり、何かあったのですね…。なんでも話してみてください。私は、トゥールでの鞠の担任なのですから。」
べつに、何かあったってわけじゃない。
ただ、少し疑問に思った。ただそれだけ。
「………ここは…私の居場所なんでしょうか…」
「え?」
「…ここは、私のいていい場所なのでしょうか…」
「いったいどうしたのですか?いつも明るい鞠が。そんな苦しそうな顔をして。」
「私は、勉強ができません…。運動も得意ではないです。いつも通りの人生を送って、なんか、なんとなくの生活。楽しいとか、思う時もあるけれど、なんか、心が休まる時は1日に何回あるのかっていうくらい少ないです…。これは、私のただの思い上がりなのかもしれません…私は馬鹿だから。被害妄想かもしれません…。」
先生は私の座っている真ん前の床に跪いて私の顔を覗き込んだ。
「顔をあげなさい。鞠。」
「…」
「これ以上自分を馬鹿だと決めつけることも今日からはやめなさい。君は馬鹿じゃない。優しい心を持った素敵なお嬢様ですよ。」
「え…?」
「君が受験を始めた頃からの担任なのですよ。君のちょっとの変化も見逃しません。だから、隠しても無駄なのです。だから、いつでも相談しなさい。時間のある時ならいつでも話を聞きますから。」
「……ありがとうございます。」
「あなたの思い上がりか、どうかは学園の講師ではない私にとってわかりませんが、ですが、1つ言えることは、あなたの被害妄想ではないということですよ。鞠の性格からして、人を責めるのを得意としない君です。被害妄想をする必要ないじゃないですか。君は、中学受験生の時も誰よりも勉強してきたんです。担任をしてきた私にとって鞠は自慢の生徒なんですよ。どうか、自分を責めるのはやめなさい。辛い時はいつでも力になりますから。」
「リッド先生…」
「…そうですね。鞠がそんなに心苦しい思いをしているのなら、私もフルール学園で、鞠の力になりましょう。鞠。私はフルール学園の講師になります。もちろんトゥールでの担任も続けます。」
「え?せ、先生?」
「トゥールで働いている講師をしている人間は、フルールの講師にもなりやすい。だから、何も心配することはないのです。私立の中学ですからね、掛け持ちでトゥールでの講師を続けることもできます。」
「そんな、それって、先生の休む時間減るじゃないですか…」
「私を気遣う必要はないと、前言ったばかりでしょう?私は大丈夫ですよ。」
そうだ。先生は、中学受験生だった時から全然変わってない。
生徒の為なら、自分を犠牲にする とても優しい先生だ。
でも、いつか先生が疲れ切って倒れてしまうんじゃないか…私は気が気でなかった。リッド先生は、優しすぎる。私はそんな先生の優しさが大好きで、先生を担任に選んだ。でも、学園の講師になったらもっと人気が出て、もっと遠い存在になっちゃうのかな。そう思うとなんとなく寂しかった。
「鞠?」
「へ?あ、で、でも、先生倒れちゃいます。」
「なぜ?」
「先生かっこいいから、学園でも人気出てまた無理するでしょう。先生優しいから…。」
「心配してくれてありがとう。でも、人気なんて出ませんよ。大丈夫です。君は本当によく人を気遣えますね。ですが、まずは、自分を気遣うことを覚えなさい。」
そう言うと先生は私の頭を撫でた。
…1度だけ、先生が生徒に怒っているところを見たことがある。罵声を浴びせたり、暴力を振るったりしたわけじゃない。言葉使いも荒くないし、しゃべり方はいつもの先生だったけれど、この上なく怖かった。
『君には失望しましたよ。』
この言葉が今でも心の中にある。
私が怒られたわけじゃないのに、先生がそんな怖い言い方するなんて…鳥肌がたった。
その日の授業では、怖かった先生が頭から離れなくて、授業をまともに聞いてなくて、先生に呼び出された。先生は優しく何かあったのか、寝てないのか、そんなことを聞いたけれど、私はその時、何も言わず立ち尽くしていた。
この時、お父さんと、リッド先生を重ねていた気がする。
お父さんとお母さんは喧嘩をした。
歴代最高の喧嘩だったと思う。
怖くて怖くてたまらなかったけど、朝起きたらいつものお父さんとお母さんがいて、少しうろたえたけれど、安心した。なのに、お父さんは出て行った。その日、お父さんは帰ってこなかった。単身赴任だと聞いたけど、嘘だってすぐにわかった。馬鹿にしないでほしい。
「鞠。御機嫌よう。」
「おはよう。麗華。」
鞠は、私の隣の席に座った。
この学園はクラス内であればどこに座るか自由なのだ。
麗華は真っ先に私の隣に座ってくれる。必要とされているのだろうと嬉しく思う。
「鞠。知ってらして?」
「何を?」
「昨日話していたリッド先生、この学園の講師になるんですって。」
「……え?!」
講師?本当にたった一人の私のために学園に来てくれるというの?どうして…リッド先生。お願いだから無理はやめて。リッド先生…
「鞠?どうなさったの?リッド先生がいらっしゃるのに嬉しくないの?」
「…嬉しいけれど…リッド先生、私のために無理してる。」
「どういうこと?」
私はこれまでの話を全て打ち明けた。
麗華は何も言わずに聞いてくれた。
「…そんなことがあったのね。リッド先生本当にお優しいのね。」
「うん。優しいからいつも無理する…。」
「鞠、リッド先生に恋しているのね。」
「えぇ?!」
「リッド先生の話をしている時の鞠の目はとても優しくて恋をする乙女の瞳よ。」
「ち、違うって!」
「恋には素直になった方がいいのよ。リッド先生は、21歳。私たちは、14歳。年の差は7歳もあるけれどまだまだ圏内に入ると思うわ。」
「だから違うって~。」
「何が違うんですか?」
そう言って私の肩をポンっと叩いた。
この声…
「リッド先生!!」
「一体何の話をしていたんですか?楽しそうでしたね。」
「あ、い、いえ、何でもないです。」
リッド先生は、横目で私の顔を覗き込んだがそれからは何も聞かなかった。
「ど、どうしてここに?」
「理事長に話があるので。」
「理事長…?そうなんですか。」
「明日から、学園の講師になるのでそのつもりでいて下さい。なるべく、鞠のクラスになるよう努力します。」
「あ、いや、別に私にこだわらなくても…」
私の話を遮るようにリッド先生は笑った。
「こだわっているのではなく気になっているのですよ。鞠の苦しみが取れるまで私が面倒見ます。家庭でのことも。」
「何で…そのこと。」
何で家庭のことまでリッド先生は知っているの?
リッド先生は少し俯いてから理事長室に向かった。
麗華は不思議そうな顔をしてため息をついた。
「どうしたの?麗華。ため息なんてつくと幸せ逃げてしまうよ。」
「そうよね…。はぁ。」
「本当にどうしたの?」
「リッド先生の顔、もちろん美形で美しい方でしたわ。ですが、ミステリアスだった夢が潰えてしまったわ…」
「え、なんだ。そんなこと?あははっ」
「そんなことって、私にとっては重大なのよっ。いつも、お父様たちのいいなりで、退屈だったんだもの。一時の夢を見ていたかったわ。」
「ってことは、リッド先生の顔は期待はずれ?想像と違った?」
「いいえ、想像と同じよ。フランス人で、金髪で、瞳が青色。背も高くて。でも、少しは、想像と違う部分も欲しかったなんて…贅沢よね。」
「…ふふ。贅沢なんかじゃないわよ。麗華はこれまでたっくさん親の言いなりだったんでしょ?なら、少しは贅沢言いなよ。誰も、止めやしないわ。」
「…そう?なら、1つだけ。」
「うん。なに?」
「私と親友になってくださらない?」
「ええ?」
「私、幼稚園から付属でこの学園なの。男の方とはもちろんのこと、教師である方々としかお話ししたことないわ。執事や運転手の方とか。そして、この学園は女の花園。なのに、幼稚園からずっとここにいるのに、これからも一緒にいたいと思った子はいなかった。貴女だけよ。親友になりたいって思ったのは。鞠。貴女だけ。嫌かしら?」
そう思われてたのね。私必要とされていたのね。
「いいえ!嬉しい!ありがとう!親友だよ!永遠の!」
「ありがとう。これからも仲良くしてね。」
「もちろんだよ!」
「本当によろしいんですか。」
理事長は、敬うような言葉でリッドを見る。
「勿論です。私は祖父を超えてみせます。」
「優しい心を持つことがすべてはないのですよ。貴方の祖父であるマティス様は、素晴らしい方でした。その孫である貴方には敬意を表すほかありませんが…。リッド様がこの学園で働いてくれるなんて嬉しい気持ちでたくさんなのですが…いきなりなぜ…?」
「祖父を超えたい気持ちもありますし、なにより、守りたいものができたのです。」
この会話は、もちろん鞠は知らない。
しなきゃよかった…
恋なんて。
「今日からですね。補習は。」
今日の授業は終わった。
授業と言っても、学校の授業ではない。塾だ。
私の名前は、池本 鞠。中学校2年生だ。
私は中学受験をして、県内トップの私立中学であるル・ジャルダン・デ・フルール女学園に進学した。花園 という意味が込められている。全国からも人気の高いこの学園に入れる女の子は、ル・スリー 微笑みの女学生と呼ばれる。街でも、制服を着て歩いているのは鼻が高い。憧れの的なのだ。だが、私はその花園で、少々、いや、かなり、行き詰っていた。入れたのはいいけれど、勉強に追いつくことがどうしてもできないのだ。やっとできるようになっても授業はとっくの先に進み終わっていて、私は、肩身がせまいのだ。ということもあって、中学受験の時もお世話になったここ、ル・トゥルノソルという、フランス語でひまわりという意味のフルール学園の専属の塾で勉強を教えてもらうことにした。幸運なことに、先生は中学受験の時と同じ、リッド先生 フランス人で、さざなみっていう意味なんだ。21歳っていう若さだけれど、優しくて、教え方もとても上手で頭もいい。それに、金髪で白色のスーツの似合う周りの目を引きつけるような格好の良さを持っていた。
「リッド先生。ごめんなさい。学校の授業だけならいざ知らず、塾の授業でさえも追いつけなくて…個人授業なんて残業になるってことですよね…本当に迷惑かけてすみません。」
授業後、1時間の個人授業を取らせてもらうことになったのだ。数学や、英語が全く追いついていないことからまずはそこからだ。
「いいんですよ。鞠。君の授業の後はもう授業もないですし、時間はたっぷりあります。君のわからないところをわかるまで教えるのが私の務めです。だから、君が私に気にかける必要なんて全くないのです。」
「…ありがとうございます。」
母国のフランス語だけでなく、英語も、中国語も、スペイン語もイタリア語も、日本語までもを完璧にするリッド先生。私は、一体そんなにたくさんの外国語をどこでいつ勉強したのか気になってならない。
「中学一年生からの復習ですからね。基礎が大事ですよ。頑張りましょう。」
優しい声…これを世間ではイケボ?というのだな。
「鞠?」
「へ、あ、すみません。ぼーっとしてました…。」
「もう、8時ですからね。お腹も減ってきたでしょう。」
「へ?」
「8時半までやることになってましたが、少し休憩しましょう。休憩しなくては効率が悪いですからね。ちょっと待っててくださいね。」
「は、はい…?」
リッド先生は、椅子から立ち上がって、厨房に入っていった。ここの塾は少し特殊だ。お昼も夜も残って自習していく人のため、厨房が管理されている。昼ごはんを作って食べたり、自分で材料を持ってきて、スイーツを作って勉強の合間に食べたり、塾の隣には、カフェもあるから、お昼や夜はそこで食べる人が多い。
リッド先生はしばらくしてから、何かを持って部屋に戻ってきた。
「それは?」
私が聞くと、優しく微笑んだ。
「私の作ったスイーツです。勉強をしていると甘いものが欲しくなるでしょう。さぁ、遠慮なく食べなさい。」
「え、せ、先生が作ったんですか?」
「ええ。もちろんですよ。これでも、フランスに住んでいた頃は、スイーツ作りばかりしていましたから。パティシエになろうと思ったほどです。」
スイーツ作りばかりしていたくせになぜ勉強ができるんだ…この男は…と少々気になる点も多いけれど、そこは置いておこう。
「パティシエ…先生だったらパティシエの制服もきっと似合うんでしょうね。」
「え…いや、似合わないよ。」
「似合いますって。先生清潔な白色が似合いますし。先生かっこいいですもん。みーんな憧れているんですよ。男の子も女の子もそれくらいリッド先生っていう存在はみんなの中で大きいんですね。」
「…いや、私なんてまだまだですよ。さぁ、お食べ。」
「はい!これって、いちごムースですよね!こんなおしゃれないちごムース作れる人間近で初めて見ました!高級なお店で売っているもの見たい!」
「いや、、まだまだなんですよ。」
私は体を先生に向けて一言言った。
「先生。」
「はい?」
「さっきから先生、いや、まだまだだ。ってそればっかりです。何かあったんですか?なんでも出来る天才なリッド先生がそんなに心を曇らせるなんて。」
「…鞠。なんでもないですよ。君は優しいですね。」
「優しい?私がですか?」
「はい。」
私は、リッド先生がそういうことを言ってくれて、心の底では少し嬉しかった。
「鞠。おかえりなさい。今日は少し遅かったのね。何かあったの?」
9時10分少し過ぎた時、私は家に着いた。
お母さんが夜ご飯を作って待っていてくれた。
「別に、なんでもないよ。だって、今日はほら、補修が始まる日だったんだもの。いつもよりは、遅くなっちゃうわ。」
「そう?9時なんて遅い時間だから、本当は迎えに行きたいんだけれど…ごめんね。」
「ううん。いいのよ。お父さんが、単身赴任中の間は仕方ないわ。」
「…鞠…お父さんは単身赴任じゃ…」
お母さん…わかってる。わかってるからその先は言わないで。とでも言うように私はお母さんの目を見つめた。
「ごめんね。」
お父さんが単身赴任ではないことを知ったのは、1年も前のこと。受験の時、ピリピリしているからだろうか。6年生だったあの頃、受験のストレスやらなんやらで神経質になっていた。だから、なんとなく、感づいた。お父さんは、新しい家族を作るのだと。お父さんは、私とお母さんを捨てたのだと。
養育費は払ってくれてるし、家のローンも全部お父さんがやっている。お母さんのいない間に、書類を全部見た。6年生だった私にはまだよくわからない言葉ばかりだったが、大きくなるうちにつれてなんとなく勘が働くものであるといやでも知った。
ローンもあっち持ちなのだから、そんなに仕事をしなくてもいいのにお母さんは、昔からやっている公務員をやめようとはしない。お母さんは頼ることに慣れていないようだ。
こんな家、でていきたい。そう思う時もよくある、、
でも、もしかしたら、いつかお父さんが帰ってくるかもと期待を捨てずにはいられない。
お父さんは、どうして、私達を捨てたのか…
これは、どんなに大きくなってもわからないだろうな。
「…来ないでくれ…お願いだ。奪わないでくれ。」
先生は寂しい声で言った。
私が家に帰ってからも、リッド先生は塾にいた。
「おはよう。」
私がそう言って、学園について友達に挨拶した。
「御機嫌よう。」
そう返ってきた。
お嬢様言葉で返してきたのは、龍翔 麗華。
同じクラスのいつメン。私と二人で行動することが多い。
お嬢様だけど、人を馬鹿にしたりはせず、優しい心を持つ綺麗な子だった。
「眠そうね。鞠。」
私が大きくあくびをすると、麗華が言った。
「うん。私頭悪いから昨日8時30分過ぎまでトゥールで個別で教えてもらっていたの。」
トゥール。それは、ル・トゥルノソルの略の呼び方。生徒が独自に話し出したことから広まった。
「トゥールで?」
「うん。麗華は頭良いしお金持ちだから、トゥールにはいかないよね。おうちに家庭教師が来るんでしょ?」
「ええ。でも、頭良くないわ。いつもお父様たちに叱られてばかり。」
「麗華は頭良いから期待が大きいのね。私は馬鹿だから、期待なんて全然されないわ。期待される気分も味わってみたい。」
「ふふ。そう?そういえば、トゥールにはとても美しい顔をした男性がいらっしゃると皆様が噂してらしたわ。その方には会ったことはおあり?」
「え?リッド先生のことかな。」
「確かそんな名前でしたわ。そんなに格好の良い方なの?」
「ええ。もちろん。みんなが噂する理由は見ればわかるよ。また今度写真を撮って見せてあげる。」
「ありがとう。でも、いいわ。そういうことって知らない方がミステリアスで素敵じゃない?」
なんだか、こういうところ、やっぱりお嬢様なのだと気づかされる。考え方がお嬢様だ…。
「トゥールでは、一体どんなことを勉強なさるの?」
「私は、数学とか英語だけれど、他にも、習い事と称して、お琴や、ヴァイオリンとか、スイーツ作りとか習う人もいるのよ。よく授業を受けている時、楽しそうな声や、ヴァイオリンの音が聞こえるの。トゥールは、小学生の受験生もいるからなんだか、賑やかなのよ。それに、建物もフランスの建物みたいにアンティークでとても大きいの。麗華もトゥールの写真くらいは見たことあるでしょう?」
「そうね…。この学園も日本校があるだけで、フランスが本校ですものね。フランス語の多い建物ばかり。この学園の名前の長さは外国でも有名ですもの。」
「フランスにこだわるのは創立者がフランス人だったからかしらね。」
「ええ。きっとそうだわ。」
麗華は本当に可愛らしい笑顔で笑う。
庶民の私にとってできない笑い方だ。
トゥールに通うのは、お嬢様方じゃなくて、普通の家庭の子の方が多いのよね。この学園はお嬢様学園だからクラスにはお嬢様方が多い。だから、みんなもお嬢様方と同じ趣味を持ってお話に花を咲かせたいのね。勉強ができない私とはまるで始めた理由が違うんだから。
「どうしました?鞠。浮かない顔をして…。」
わたしは、トゥールでの団体授業の時間より早く着いてしまったから、先生に質問しに行っていたのだ。
なのに、私は手が動かなかった。目も真っ暗。
「へ?あ、なんでもないです。私馬鹿だから考える間手が全く動かなくて…」
「誰も手が動いていないとは言っていませんよ。」
「あ…」
「やはり、何かあったのですね…。なんでも話してみてください。私は、トゥールでの鞠の担任なのですから。」
べつに、何かあったってわけじゃない。
ただ、少し疑問に思った。ただそれだけ。
「………ここは…私の居場所なんでしょうか…」
「え?」
「…ここは、私のいていい場所なのでしょうか…」
「いったいどうしたのですか?いつも明るい鞠が。そんな苦しそうな顔をして。」
「私は、勉強ができません…。運動も得意ではないです。いつも通りの人生を送って、なんか、なんとなくの生活。楽しいとか、思う時もあるけれど、なんか、心が休まる時は1日に何回あるのかっていうくらい少ないです…。これは、私のただの思い上がりなのかもしれません…私は馬鹿だから。被害妄想かもしれません…。」
先生は私の座っている真ん前の床に跪いて私の顔を覗き込んだ。
「顔をあげなさい。鞠。」
「…」
「これ以上自分を馬鹿だと決めつけることも今日からはやめなさい。君は馬鹿じゃない。優しい心を持った素敵なお嬢様ですよ。」
「え…?」
「君が受験を始めた頃からの担任なのですよ。君のちょっとの変化も見逃しません。だから、隠しても無駄なのです。だから、いつでも相談しなさい。時間のある時ならいつでも話を聞きますから。」
「……ありがとうございます。」
「あなたの思い上がりか、どうかは学園の講師ではない私にとってわかりませんが、ですが、1つ言えることは、あなたの被害妄想ではないということですよ。鞠の性格からして、人を責めるのを得意としない君です。被害妄想をする必要ないじゃないですか。君は、中学受験生の時も誰よりも勉強してきたんです。担任をしてきた私にとって鞠は自慢の生徒なんですよ。どうか、自分を責めるのはやめなさい。辛い時はいつでも力になりますから。」
「リッド先生…」
「…そうですね。鞠がそんなに心苦しい思いをしているのなら、私もフルール学園で、鞠の力になりましょう。鞠。私はフルール学園の講師になります。もちろんトゥールでの担任も続けます。」
「え?せ、先生?」
「トゥールで働いている講師をしている人間は、フルールの講師にもなりやすい。だから、何も心配することはないのです。私立の中学ですからね、掛け持ちでトゥールでの講師を続けることもできます。」
「そんな、それって、先生の休む時間減るじゃないですか…」
「私を気遣う必要はないと、前言ったばかりでしょう?私は大丈夫ですよ。」
そうだ。先生は、中学受験生だった時から全然変わってない。
生徒の為なら、自分を犠牲にする とても優しい先生だ。
でも、いつか先生が疲れ切って倒れてしまうんじゃないか…私は気が気でなかった。リッド先生は、優しすぎる。私はそんな先生の優しさが大好きで、先生を担任に選んだ。でも、学園の講師になったらもっと人気が出て、もっと遠い存在になっちゃうのかな。そう思うとなんとなく寂しかった。
「鞠?」
「へ?あ、で、でも、先生倒れちゃいます。」
「なぜ?」
「先生かっこいいから、学園でも人気出てまた無理するでしょう。先生優しいから…。」
「心配してくれてありがとう。でも、人気なんて出ませんよ。大丈夫です。君は本当によく人を気遣えますね。ですが、まずは、自分を気遣うことを覚えなさい。」
そう言うと先生は私の頭を撫でた。
…1度だけ、先生が生徒に怒っているところを見たことがある。罵声を浴びせたり、暴力を振るったりしたわけじゃない。言葉使いも荒くないし、しゃべり方はいつもの先生だったけれど、この上なく怖かった。
『君には失望しましたよ。』
この言葉が今でも心の中にある。
私が怒られたわけじゃないのに、先生がそんな怖い言い方するなんて…鳥肌がたった。
その日の授業では、怖かった先生が頭から離れなくて、授業をまともに聞いてなくて、先生に呼び出された。先生は優しく何かあったのか、寝てないのか、そんなことを聞いたけれど、私はその時、何も言わず立ち尽くしていた。
この時、お父さんと、リッド先生を重ねていた気がする。
お父さんとお母さんは喧嘩をした。
歴代最高の喧嘩だったと思う。
怖くて怖くてたまらなかったけど、朝起きたらいつものお父さんとお母さんがいて、少しうろたえたけれど、安心した。なのに、お父さんは出て行った。その日、お父さんは帰ってこなかった。単身赴任だと聞いたけど、嘘だってすぐにわかった。馬鹿にしないでほしい。
「鞠。御機嫌よう。」
「おはよう。麗華。」
鞠は、私の隣の席に座った。
この学園はクラス内であればどこに座るか自由なのだ。
麗華は真っ先に私の隣に座ってくれる。必要とされているのだろうと嬉しく思う。
「鞠。知ってらして?」
「何を?」
「昨日話していたリッド先生、この学園の講師になるんですって。」
「……え?!」
講師?本当にたった一人の私のために学園に来てくれるというの?どうして…リッド先生。お願いだから無理はやめて。リッド先生…
「鞠?どうなさったの?リッド先生がいらっしゃるのに嬉しくないの?」
「…嬉しいけれど…リッド先生、私のために無理してる。」
「どういうこと?」
私はこれまでの話を全て打ち明けた。
麗華は何も言わずに聞いてくれた。
「…そんなことがあったのね。リッド先生本当にお優しいのね。」
「うん。優しいからいつも無理する…。」
「鞠、リッド先生に恋しているのね。」
「えぇ?!」
「リッド先生の話をしている時の鞠の目はとても優しくて恋をする乙女の瞳よ。」
「ち、違うって!」
「恋には素直になった方がいいのよ。リッド先生は、21歳。私たちは、14歳。年の差は7歳もあるけれどまだまだ圏内に入ると思うわ。」
「だから違うって~。」
「何が違うんですか?」
そう言って私の肩をポンっと叩いた。
この声…
「リッド先生!!」
「一体何の話をしていたんですか?楽しそうでしたね。」
「あ、い、いえ、何でもないです。」
リッド先生は、横目で私の顔を覗き込んだがそれからは何も聞かなかった。
「ど、どうしてここに?」
「理事長に話があるので。」
「理事長…?そうなんですか。」
「明日から、学園の講師になるのでそのつもりでいて下さい。なるべく、鞠のクラスになるよう努力します。」
「あ、いや、別に私にこだわらなくても…」
私の話を遮るようにリッド先生は笑った。
「こだわっているのではなく気になっているのですよ。鞠の苦しみが取れるまで私が面倒見ます。家庭でのことも。」
「何で…そのこと。」
何で家庭のことまでリッド先生は知っているの?
リッド先生は少し俯いてから理事長室に向かった。
麗華は不思議そうな顔をしてため息をついた。
「どうしたの?麗華。ため息なんてつくと幸せ逃げてしまうよ。」
「そうよね…。はぁ。」
「本当にどうしたの?」
「リッド先生の顔、もちろん美形で美しい方でしたわ。ですが、ミステリアスだった夢が潰えてしまったわ…」
「え、なんだ。そんなこと?あははっ」
「そんなことって、私にとっては重大なのよっ。いつも、お父様たちのいいなりで、退屈だったんだもの。一時の夢を見ていたかったわ。」
「ってことは、リッド先生の顔は期待はずれ?想像と違った?」
「いいえ、想像と同じよ。フランス人で、金髪で、瞳が青色。背も高くて。でも、少しは、想像と違う部分も欲しかったなんて…贅沢よね。」
「…ふふ。贅沢なんかじゃないわよ。麗華はこれまでたっくさん親の言いなりだったんでしょ?なら、少しは贅沢言いなよ。誰も、止めやしないわ。」
「…そう?なら、1つだけ。」
「うん。なに?」
「私と親友になってくださらない?」
「ええ?」
「私、幼稚園から付属でこの学園なの。男の方とはもちろんのこと、教師である方々としかお話ししたことないわ。執事や運転手の方とか。そして、この学園は女の花園。なのに、幼稚園からずっとここにいるのに、これからも一緒にいたいと思った子はいなかった。貴女だけよ。親友になりたいって思ったのは。鞠。貴女だけ。嫌かしら?」
そう思われてたのね。私必要とされていたのね。
「いいえ!嬉しい!ありがとう!親友だよ!永遠の!」
「ありがとう。これからも仲良くしてね。」
「もちろんだよ!」
「本当によろしいんですか。」
理事長は、敬うような言葉でリッドを見る。
「勿論です。私は祖父を超えてみせます。」
「優しい心を持つことがすべてはないのですよ。貴方の祖父であるマティス様は、素晴らしい方でした。その孫である貴方には敬意を表すほかありませんが…。リッド様がこの学園で働いてくれるなんて嬉しい気持ちでたくさんなのですが…いきなりなぜ…?」
「祖父を超えたい気持ちもありますし、なにより、守りたいものができたのです。」
この会話は、もちろん鞠は知らない。
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