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嫌われたあの日
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第2記録
ガチャガチャ。鍵を開けるような音が聞こえた。
お母さんが帰ってきたんだ。
「お母さん。おかえり。ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
私がそう言うとお母さんは睨むような顔をした。
「なに…。疲れてるからまたにしてくれない?…!」
お母さんは私の持っている写真を見て顔を真っ青にしながら写真を奪い取った。
「なんでこれ持ってるの?!あんた勝手に押入れの中探ったんでしょ!」
「そんな…。お父さんのものとか久しぶりに見たかっただけで…。でも、その女の人誰なの?私そんな人知らない。なんで家族写真に写っているの?」
「そ。それは、、近所のお姉ちゃんだよ。」
「え?」
「もう引っ越しちゃったけどあんたが小さい頃何かと良くしてくれたんだよ。ほら、もうこれでいいでしょ?早く寝てよ!」
「…はい。お母さん。」
私は部屋に戻るために階段を上がりだした。
なんで…そんなに私を拒絶するのか理解できなかった。ベッドに入ってもなかなか寝付けない。
あの日。私は突然お母さんから暴言を初めて聞いたんだ。
ー5年前
私が10歳の頃。学校から家に帰ってからだった。朝は楽しい顔をしながら料理をしていた母とは180度性格の違う母が家にいた。
『ただいま~!ママー。』
私がいつもの通り元気良く家に帰ると、冷たい顔をしたお母さんが編み物をしていた。
いつもだったら言ってくれる『おかえり』も言ってはくれなかった。私は何か怒らせたのかと不安になった。
『ママ?何か、怒ってる?』
そう聞くと、
『あなたの存在がイラつくの。もう部屋に戻ってくれないかしら。』
そう言われた。怖かった。今日の朝もいつもと変わらず、
『おはよう。京ちゃん。よく眠れた?さぁ朝ごはん食べよう。気をつけて行ってくるのよ。ママがクッキー焼いといてあげるからね。』
そう言ってくれた。
朝自分が何かをしたのだろうかと不安になって思い出した『クッキー』という単語。
『ママ、クッキー焼いてくれたんだよね。食べていい?』
『そんなのないよ。あんたのために作るクッキーなんてない。』
怖くて怖くてたまらなかった。
お母さんは私の顔を少しも見ない。編み物をする糸だけを見ている。不思議に思ったのは帰ってからすぐの事。お母さんは編み物が大嫌いと言っていたのになんで今やってるのか理解に苦しんだ。でも、お母さんが私のこと嫌いになったんだと確信した時にはもう涙が溢れていて10歳の小学校4年生の私には辛くて苦しくて生きているのをやめたかった。昔に比べてお母さんはどちらかというと柔らかくなった方。お小遣いもくれるしご飯もくれる。叩かなくなったし。でも、それは、私の体がお母さんより大きくなったことが原因だと思う。お母さんが私を叩いても今はさほど痛くないだろう。反抗もできるし喧嘩をしたら勝ってしまうくらいの勢いもある。ご飯もお小遣いも全部私を反抗させないためなのかもしれない。昔の私はもっと明るかったんだ。今はもう、明るいとは言えない。どちらかというと静かな性格になった。積極的に人に話しかけもしない。裏切られるのが怖いから。お母さんがいい手本だ。いつもなら言ってくれる『京ちゃん』という呼び名もあの日を境に『京香』か『あんた』になった。
もう私のことを微笑んでは呼ばない。
私ももうママとは呼ばなくなった。
昔の母ではないから…。
あの日から私は母のことをお母さんと呼ぶようになった。そして、家では笑わなくなった。
昔のように一緒に夕飯を作りたいのに、一緒にお出かけしたいのに、一緒に笑い合いたいのに。それさえもかなわない。お父さん。貴方がいればこんな風にはならなかったのでしょうか。私が忘れている記憶はどんなものなんでしょうか。お母さんが私を嫌うようになったことに関係があるんですか。なら、思い出したい。全部思い出して、お母さんといや、ママと一緒にやりたいこと全部したい。できるなら、未来の時計を巻き戻して幸せな頃がずっと続くようにしたい。叶わない願いは増えていくばかりです。
私は小鳥の声で目が覚めた。
昨日いつの間にか寝てしまったようだ。
お母さんは料理をしているのだろうか。
あ、そういえば読者さん気になると思うんで言っておきますが、私のお小遣いは月に1万円です。きっと多いと思いますよね。でも、この一万円で服や文房具を買わなきゃいけませんし、お昼ご飯代もここからです。毎日使っているのでやっぱり少なく感じます。夜ご飯だけは、代わりのお金をいつもくれるのでいいのですが、やっぱり昔のママと一緒に料理をしたりすることが夢ですね…。本編に戻りますね。
「行ってきます。」
私は家を出た。
今日もコンビニに寄る。
パンを一つレジに持っていく。
「150円になります。」
私はきっかし150円払う。
「あ!ちょっと待って!」
「え?」
コンビニを出たその瞬間呼び止められた。
自転車で学校に行こうとしている男子高校生だ。
「なにか?」
私が聞くと、その人は少し下を見てまた私の方を見ていった。
「俺と一緒に学校行きませんか?」
「え?」
「あ、俺、早坂高校の3年なんだ。方面一緒だから一緒に行かない?」
「え。」
「君、花園女子でしょ?私立花園女子中学校。」
「はぁ。いいですよ。」
私は成り行きで一緒に学校に行くことにした。
早坂高校は花園の近くにある男子校でイケメンが多くて頭がいいことで有名。
うちのクラスの子たちもみんなキャーキャー言ってるけど私にはどうでもいい。
「あ、俺、森藤 龍樹。龍樹って呼んで。君は?」
「高橋 京香。花園中の3年生です。」
私はそっぽを向きながら言う。
「へぇ。京香ちゃんっていうんだ。かわいい名前だね!」
うわ。女たらし?それともただのナンパ男?と思った。
「べつに。」
私はそういった。
こんな奴に関わるとろくなことにならない気がする。
「俺、京香ちゃんのことよく見るんだ。コンビニで。」
「…」
「いつも朝寄ってくでしょ。いつも髪の毛が静かに揺れてて目も綺麗だし、肌も綺麗で細いから存在が綺麗だし、まつ毛が長くて綺麗だし、綺麗だなって思ってた。性格もクールみたいだし。俺の思ってた通り!」
綺麗しか言ってないし。
明るい笑顔を見せたその人に向かって私は言った。
「私は、貴方の思っているような人間ではありません。友達が待っているので失礼します。」
私はそういって一人で歩き出した。
その後ろからその人は追いかけてくる。
「あ、待ってよ。俺、君がいつもパンを買っていくとき寂しそうな君のことが忘れられないんだ!」
私はピタリと歩く足を止めた。
私は振り向いてその人を見る。
「寂しい?」
「ああ。君はいつも寂しそうだ。君はいつも早く家を出てる。君は家での居場所がないの?」
私は頭の中で何かが切れた。
こんな初対面のへんなナンパ男になんでそこまで言われなくちゃならない?
私はもう一度しっかりとその人の目を見る。
「あなた。初対面の人に向かってどうしてそんなに遠慮のないことが言えるんですか?私はそういう人の気持ちを察しない人が一番嫌いです。二度と話しかけないで下さい。さようなら。」
私はそのまま歩き出した。
こんな人と少しでも学校一緒に行こうと思った自分がバカらしい!
「京ちゃん??」
私がイライラしていることに気づいた歌音は少し下を向きながら私の名前を呼ぶ。
「歌音。おはよう。」
「どうしたの?京ちゃん。すごいイライラしてる。」
「あ、ごめん。そんなに、外に出てる?気にしないで。」
はぁっ。ため息をつく。
歌音にまで心配かけてる。
「お母さんのこと?もしかして昨日何かあったの?」
「…いろいろあってね。」
「いろいろ?」
「昨日、押入れ見てたらねな写真が出てきたの。」
「写真?」
「うん。その写真には私の知らない女の人が一緒に写ってた…。誰か知らない人が。お母さんは知ってたようだし私は何かを忘れてるのよ。きっと…大事なことなのに。思い出せない。」
私は頭を抱えた。
あの写真はお父さんが生きているときだから、すごい昔。少なくとも、私が9歳のときまでの写真。
一体誰なんだろう。
「綺麗な人?」
歌音がニコニコしながら聞いてきた。
「え?あ、うん。美人。黒髪で半袖のひまわりの絵があるワンピースを着てた。若い人だったけど私よりは年上。20代前半くらい。おとなしそうな美人系で。目も大きくて本当に綺麗な黒髪だった。」
「へぇ。京ちゃん相当その人のこと気に入っているみたい。」
「え?そうかな。でも、これまで生きてきた中でいちばんの美人だったと思う。お母さんが言うにはね、近所のお姉さんだったらしいんだけど、もう引っ越しちゃったって。でも、、私にはどうしても、どうしても、他人には思えない。」
「え?」
「他人だとどうしても、思えないのよ…。」
私は一体何を忘れてしまったんだろう。
私は何も思い出せない。
あの日、お母さんが私を嫌ったあの日の朝、何かを忘れたんだ。あの日の朝、何か私の人生に大きく関わることを心の記憶から消去したんだ。あの日の朝、お母さんはいきなり変わった。お母さんにとっても私に取っても忘れてはいけない朝だったんだ。思い出したい。どうしても、何としても。
「お母さんにもっと嫌われてもいい?」
「え?どういう意味?」
「京ちゃんは、お母さんにもっと嫌われてもいい?そのことを思い出すことができるのなら。」
普通ならそんなの御免だ。
お母さんと仲良くしたい気持ちはとても大きいのに、今の心は思い出したい記憶で埋まっている。思い出せるのなら、思い出せたら、お母さんとの関係がどうしてこうなったかもわかる気がする。なら、私は。
「嫌われてもいい。思い出せるのであれば。」
私は、歌音にそう告げた。
「よし!なら、私も協力するよ。京ちゃんが、まずは、嫌われてもいいって覚悟がなくちゃならなかったからね。よかった。」
「歌音…。」
「もう後戻りはできないよ。調べられるまで調べ尽くそう!」
「うん!」
こうして、私の無くなった記憶を歌音と一緒に見つけ出すことになった。
ガチャガチャ。鍵を開けるような音が聞こえた。
お母さんが帰ってきたんだ。
「お母さん。おかえり。ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
私がそう言うとお母さんは睨むような顔をした。
「なに…。疲れてるからまたにしてくれない?…!」
お母さんは私の持っている写真を見て顔を真っ青にしながら写真を奪い取った。
「なんでこれ持ってるの?!あんた勝手に押入れの中探ったんでしょ!」
「そんな…。お父さんのものとか久しぶりに見たかっただけで…。でも、その女の人誰なの?私そんな人知らない。なんで家族写真に写っているの?」
「そ。それは、、近所のお姉ちゃんだよ。」
「え?」
「もう引っ越しちゃったけどあんたが小さい頃何かと良くしてくれたんだよ。ほら、もうこれでいいでしょ?早く寝てよ!」
「…はい。お母さん。」
私は部屋に戻るために階段を上がりだした。
なんで…そんなに私を拒絶するのか理解できなかった。ベッドに入ってもなかなか寝付けない。
あの日。私は突然お母さんから暴言を初めて聞いたんだ。
ー5年前
私が10歳の頃。学校から家に帰ってからだった。朝は楽しい顔をしながら料理をしていた母とは180度性格の違う母が家にいた。
『ただいま~!ママー。』
私がいつもの通り元気良く家に帰ると、冷たい顔をしたお母さんが編み物をしていた。
いつもだったら言ってくれる『おかえり』も言ってはくれなかった。私は何か怒らせたのかと不安になった。
『ママ?何か、怒ってる?』
そう聞くと、
『あなたの存在がイラつくの。もう部屋に戻ってくれないかしら。』
そう言われた。怖かった。今日の朝もいつもと変わらず、
『おはよう。京ちゃん。よく眠れた?さぁ朝ごはん食べよう。気をつけて行ってくるのよ。ママがクッキー焼いといてあげるからね。』
そう言ってくれた。
朝自分が何かをしたのだろうかと不安になって思い出した『クッキー』という単語。
『ママ、クッキー焼いてくれたんだよね。食べていい?』
『そんなのないよ。あんたのために作るクッキーなんてない。』
怖くて怖くてたまらなかった。
お母さんは私の顔を少しも見ない。編み物をする糸だけを見ている。不思議に思ったのは帰ってからすぐの事。お母さんは編み物が大嫌いと言っていたのになんで今やってるのか理解に苦しんだ。でも、お母さんが私のこと嫌いになったんだと確信した時にはもう涙が溢れていて10歳の小学校4年生の私には辛くて苦しくて生きているのをやめたかった。昔に比べてお母さんはどちらかというと柔らかくなった方。お小遣いもくれるしご飯もくれる。叩かなくなったし。でも、それは、私の体がお母さんより大きくなったことが原因だと思う。お母さんが私を叩いても今はさほど痛くないだろう。反抗もできるし喧嘩をしたら勝ってしまうくらいの勢いもある。ご飯もお小遣いも全部私を反抗させないためなのかもしれない。昔の私はもっと明るかったんだ。今はもう、明るいとは言えない。どちらかというと静かな性格になった。積極的に人に話しかけもしない。裏切られるのが怖いから。お母さんがいい手本だ。いつもなら言ってくれる『京ちゃん』という呼び名もあの日を境に『京香』か『あんた』になった。
もう私のことを微笑んでは呼ばない。
私ももうママとは呼ばなくなった。
昔の母ではないから…。
あの日から私は母のことをお母さんと呼ぶようになった。そして、家では笑わなくなった。
昔のように一緒に夕飯を作りたいのに、一緒にお出かけしたいのに、一緒に笑い合いたいのに。それさえもかなわない。お父さん。貴方がいればこんな風にはならなかったのでしょうか。私が忘れている記憶はどんなものなんでしょうか。お母さんが私を嫌うようになったことに関係があるんですか。なら、思い出したい。全部思い出して、お母さんといや、ママと一緒にやりたいこと全部したい。できるなら、未来の時計を巻き戻して幸せな頃がずっと続くようにしたい。叶わない願いは増えていくばかりです。
私は小鳥の声で目が覚めた。
昨日いつの間にか寝てしまったようだ。
お母さんは料理をしているのだろうか。
あ、そういえば読者さん気になると思うんで言っておきますが、私のお小遣いは月に1万円です。きっと多いと思いますよね。でも、この一万円で服や文房具を買わなきゃいけませんし、お昼ご飯代もここからです。毎日使っているのでやっぱり少なく感じます。夜ご飯だけは、代わりのお金をいつもくれるのでいいのですが、やっぱり昔のママと一緒に料理をしたりすることが夢ですね…。本編に戻りますね。
「行ってきます。」
私は家を出た。
今日もコンビニに寄る。
パンを一つレジに持っていく。
「150円になります。」
私はきっかし150円払う。
「あ!ちょっと待って!」
「え?」
コンビニを出たその瞬間呼び止められた。
自転車で学校に行こうとしている男子高校生だ。
「なにか?」
私が聞くと、その人は少し下を見てまた私の方を見ていった。
「俺と一緒に学校行きませんか?」
「え?」
「あ、俺、早坂高校の3年なんだ。方面一緒だから一緒に行かない?」
「え。」
「君、花園女子でしょ?私立花園女子中学校。」
「はぁ。いいですよ。」
私は成り行きで一緒に学校に行くことにした。
早坂高校は花園の近くにある男子校でイケメンが多くて頭がいいことで有名。
うちのクラスの子たちもみんなキャーキャー言ってるけど私にはどうでもいい。
「あ、俺、森藤 龍樹。龍樹って呼んで。君は?」
「高橋 京香。花園中の3年生です。」
私はそっぽを向きながら言う。
「へぇ。京香ちゃんっていうんだ。かわいい名前だね!」
うわ。女たらし?それともただのナンパ男?と思った。
「べつに。」
私はそういった。
こんな奴に関わるとろくなことにならない気がする。
「俺、京香ちゃんのことよく見るんだ。コンビニで。」
「…」
「いつも朝寄ってくでしょ。いつも髪の毛が静かに揺れてて目も綺麗だし、肌も綺麗で細いから存在が綺麗だし、まつ毛が長くて綺麗だし、綺麗だなって思ってた。性格もクールみたいだし。俺の思ってた通り!」
綺麗しか言ってないし。
明るい笑顔を見せたその人に向かって私は言った。
「私は、貴方の思っているような人間ではありません。友達が待っているので失礼します。」
私はそういって一人で歩き出した。
その後ろからその人は追いかけてくる。
「あ、待ってよ。俺、君がいつもパンを買っていくとき寂しそうな君のことが忘れられないんだ!」
私はピタリと歩く足を止めた。
私は振り向いてその人を見る。
「寂しい?」
「ああ。君はいつも寂しそうだ。君はいつも早く家を出てる。君は家での居場所がないの?」
私は頭の中で何かが切れた。
こんな初対面のへんなナンパ男になんでそこまで言われなくちゃならない?
私はもう一度しっかりとその人の目を見る。
「あなた。初対面の人に向かってどうしてそんなに遠慮のないことが言えるんですか?私はそういう人の気持ちを察しない人が一番嫌いです。二度と話しかけないで下さい。さようなら。」
私はそのまま歩き出した。
こんな人と少しでも学校一緒に行こうと思った自分がバカらしい!
「京ちゃん??」
私がイライラしていることに気づいた歌音は少し下を向きながら私の名前を呼ぶ。
「歌音。おはよう。」
「どうしたの?京ちゃん。すごいイライラしてる。」
「あ、ごめん。そんなに、外に出てる?気にしないで。」
はぁっ。ため息をつく。
歌音にまで心配かけてる。
「お母さんのこと?もしかして昨日何かあったの?」
「…いろいろあってね。」
「いろいろ?」
「昨日、押入れ見てたらねな写真が出てきたの。」
「写真?」
「うん。その写真には私の知らない女の人が一緒に写ってた…。誰か知らない人が。お母さんは知ってたようだし私は何かを忘れてるのよ。きっと…大事なことなのに。思い出せない。」
私は頭を抱えた。
あの写真はお父さんが生きているときだから、すごい昔。少なくとも、私が9歳のときまでの写真。
一体誰なんだろう。
「綺麗な人?」
歌音がニコニコしながら聞いてきた。
「え?あ、うん。美人。黒髪で半袖のひまわりの絵があるワンピースを着てた。若い人だったけど私よりは年上。20代前半くらい。おとなしそうな美人系で。目も大きくて本当に綺麗な黒髪だった。」
「へぇ。京ちゃん相当その人のこと気に入っているみたい。」
「え?そうかな。でも、これまで生きてきた中でいちばんの美人だったと思う。お母さんが言うにはね、近所のお姉さんだったらしいんだけど、もう引っ越しちゃったって。でも、、私にはどうしても、どうしても、他人には思えない。」
「え?」
「他人だとどうしても、思えないのよ…。」
私は一体何を忘れてしまったんだろう。
私は何も思い出せない。
あの日、お母さんが私を嫌ったあの日の朝、何かを忘れたんだ。あの日の朝、何か私の人生に大きく関わることを心の記憶から消去したんだ。あの日の朝、お母さんはいきなり変わった。お母さんにとっても私に取っても忘れてはいけない朝だったんだ。思い出したい。どうしても、何としても。
「お母さんにもっと嫌われてもいい?」
「え?どういう意味?」
「京ちゃんは、お母さんにもっと嫌われてもいい?そのことを思い出すことができるのなら。」
普通ならそんなの御免だ。
お母さんと仲良くしたい気持ちはとても大きいのに、今の心は思い出したい記憶で埋まっている。思い出せるのなら、思い出せたら、お母さんとの関係がどうしてこうなったかもわかる気がする。なら、私は。
「嫌われてもいい。思い出せるのであれば。」
私は、歌音にそう告げた。
「よし!なら、私も協力するよ。京ちゃんが、まずは、嫌われてもいいって覚悟がなくちゃならなかったからね。よかった。」
「歌音…。」
「もう後戻りはできないよ。調べられるまで調べ尽くそう!」
「うん!」
こうして、私の無くなった記憶を歌音と一緒に見つけ出すことになった。
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