僕の秘密 彼女の不思議

三五八11

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流れる時、流される人、流れを作る影

対面

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「やっぱり」
思わず口からこぼれた。
にしては大きな声だったから
カンナと葉月が振り向いた。
表情と感情は全く違う
葉月は「なにが?」
と疑問と驚き、そして
「やっぱり」が続けてでてきた。
カンナは
「自責」「苦悶」と開き直りの
引きつった笑い。
「ゴメン、中々いえなかった」
「いいよ、入ろう」
とオクトが言うと
納得した顔の葉月が
「時間通りだ、入ろう」
と言ってから
「3名入ります」とドアを開ける。
いつもなら暗い長官室が明るい。
「今日はカンナの母だからな」
と、声の主は
カンナそっくりな
中学生くらいの女の子だった。
「やはりそんなに驚かないか。」

オクトの今の表情にもし
タイトルをつけるなら
「納得と意外のど真ん中」
機関の長官は
やはりカンナの母親だった。
そして、これもやはり『同じ病』
しかし、この2つ分の驚きが
『見た目』
中学生くらいにみえる母親
と言う事実を受け入れている自分を
どうしたらいいのか悩んでいると
カンナの母親、長官が話始めた。
「ふざけた言い方に
 聞こえるかもしれないが
 童顔なんだ。
 実際に発症したのは17歳のときだ。
 だから子供を産むこともできたし
 法律上も問題は無さそうな
 雰囲気で生活はできた。
 陰口とかはあったがな。」
苦悶?嫌、思い出、を
自らで馬鹿にしているよう
そんな口調と表情。
「結果的には
 《年下にみえる母親》に
 なってしまったよ」
と、さらに自分を蔑むような笑い
オクトはなぜか自分の母親と
比べてみていた。
『俺の母親の方が
 かまってくれてる愛があるかも?』
と考える自分に何も疑問もない。
カンナの母親は、オクトが
そんな事を考えているなど
思うはずもなく話を続ける。
「カンナは、母親から見ると
 かなりワガママだ。
 気まぐれというと、優しく感じるくらい」
「なにがわかるんだよ」
とギリギリ聞こえるような声で
カンナが割り込む
「なにか母親らしい事をしたのか?
 親子らしい思い出なんかないぞ!」
「確かにそうだな。
 私が、発症した時は
 まだこの機関がなくて
 それでもなぜか発症する人が
 毎年数人現れた。
 この機関を作るとなった時
 なぜか私が長官に選ばれた。
 それからカンナとの時間は
 全くなかった。
 言い訳にはならないけどな。」
「当たり前だ!」
溜めていた何かが弾けたような
カンナの大きな声。
今までもカンナとケンカして
怒鳴りあったこともあったが
くらべようのない大きな声だった。

「そして、カンナも発症した。」
カンナの声を無視して
淡々と話をすすめていく。
「絶望感と共になぜか
 高揚感と安心感を感じ
 そして、野心もでてきた。
 この病気についての
 保護と研究の機関を
 国に作られせて
 自分がトップになる
 と言う野心が。」
カンナ 表情、目、オーラ?
いたるものから、憎しみ、憎悪
が手に取るようにわかる
人間の感情の中で
一番醜い感情であるからか
カンナの事を見にくい。
長官は話を続ける。
「その時は勢いがあったのか
 私の思い通りに国に機関をつくらせ
 私が現在の地位についた。
 カンナには、両親と言える人は
 全くいなかったと言えるだろう
 寂しい思いをさせたと
 少し後悔もあるが
 私がこの機関の長官であるがゆえ
 カンナはこの病気であるにもかかわらず
 一般的な仕事をしている。
 それがせめてもの償いになれば
 と思っていたが
 仕事を定期的に変わるなど
 ツラい思いもある
 と知ったのは先日の事で
 その時、オクトくん
 君の事も知ったんだ」
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