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第二章 俺tueeee!王子と婚約者候補たち編

閑話:レイチェルの場合

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「本当ですの!? お父様」

 第一王子ユーリウス殿下の婚約者候補に選ばれたと伝えられて、思わず椅子から立ち上がってしまった。

 いけないいけない。
 淑女たるもの云々、お母様にお説教されてしまうわ。

「ああ、この度は侯爵家と伯爵家から妃候補を選ぶ事になったんだが、まさかミナが選ばれるとは光栄な事だよ」

 ここ数代、王族であり親族である公爵家から王子・王女の伴侶を得ていたのだけれど、近親婚が続くと弊害が危惧されるそうなの。
 それで貴族家から王子殿下の花嫁を迎える運びとなったそうよ。

「嬉しいですわ! ユーリウス殿下はとっても麗しくって、何でもおできになって、そして誰にでも優しく微笑みかけられるの!」

 貴族学院の同学年、同じクラスの王子様。
 ああ、夢みたいだわ。

 多くのご令嬢たちが、ユーリウス殿下に惹かれている。私もその一人。
 でもこれで、その他大勢から一歩前進出来たのね。
 上位の侯爵家令嬢が二人、候補に名を連ねているのが心配だけれど、私はクラスメイトですもの、他の方々より顔を知られているわ。

 それにお父様は文部大臣。
 筆頭侯爵家や大穀倉地帯の領主にだって引けを取らないはず。

 でも、候補者の顔合わせの為のお茶会が王宮で催されると聞いた時に、候補者が一人増えたとも聞いたの。

 え? 十歳の侯爵令嬢!?
 第二王子殿下の方ではなく?

 嫌だわ。なんでそんな子供が。
 でも、突然の追加という事は、そのご令嬢に特別なものがあるのかもしれないわ。警戒しておくべきね。



 そして当日――

 麗しい殿下。
 優しい殿下。
 ……いつもと違う怖い殿下。

 放出された殿下の巨大な魔力に酔い、気が付いたら医務室のベッドの上だった。

 あんなユーリウス殿下は見たことがなかったわ。
 ちょっと意地の悪そうな、平気で人を見下すような……。

 いいえ!
 私達の適性を試すとおっしゃっていたもの。ただ、行き過ぎただけよ。
 ぞくりと背筋が震えるのも、あの時の怖さを思い出しただけ。

 あの、圧倒的な魔力量。
 殿下は賢者様並みの魔力量をお持ちだと聞いた事があるわ。強い者に対する畏怖なのよ!

 その後、お詫びを兼ねているという、ユーリウス殿下からドレスとアクセサリーの贈り物を頂いて、すっかり有頂天になってしまったわ。
 だって、殿下の瞳のお色のドレスなんだもの!


 ――だけど。


 新年、贈り物のドレスを身に着けて向かった王宮で、舞い上がっていた私は冷水を掛けられた気分に陥ったわ。
 婚約者候補四人ともが同じくサファイアブルーのドレスを着ていたの。
 しかも、それが王妃様発案の元だなんて、正直、とってもがっかりしたわ。

 でもでも!
 お妃教育だってこれからなんだもの。
 淑女として楚々とした振る舞いを、更に心掛けなきゃ。私の見た目が、そうした振る舞いと合うようなのよ。

 本当は、楽しかったら口を開けて笑いたいし、お庭を駆けて行きたい。
 他人の悪口を遠回しに言って口撃したり、揚げ足取って嫌味を言い合うなんて全然楽しくない!

 けれど、そうした事をさらりと出来ないと、社交界ではやっていけないんですって。だから頑張るわ!

 殿下と同い年の私なら、もっとお近づきになれる機会が他の方々よりあるはずよ!
 高等科でもどうか同じクラスになれますよう、お父様にも働きかけて頂きましょう。

 そういえば、リリアーナ様は舞踏会の日、結局倒れられてしまったのね。
 かなり具合が悪そうでしたもの。あの横柄な感じのお父君に、無理やり連れ出されたのかもしれませんわ。お気の毒に。
 私のお父様は優しくって良かったわ。

 ヴァルモア侯爵令嬢の方は、まだ芳しくないという話ね。
 候補を辞退すると申し出てるそうだけれど、何故だか王家側が承諾しないのですって。

 何故かしら……嫌な予感がするわ。



 ※『ミナ』という名は、レイチェルのミドルネームです。





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 <作者より>
 本日も二話投稿予定。
 もう一話も閑話で、21時に投稿します。
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