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CAPÍTULO3

Episodio1. 宴会

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 クラシカルな城館———風格のある石造りの柱と細工の美しい木造天井の会場で、左腕を白い包帯で吊っている姿は酷く浮いていることだろう。しかし、俺は白ワイン片手に立食形式のつまみを選ぶことに忙しい。
 牡蠣のアヒージョ。
 エンパナーダ(貝入りパイ)。
 アルバリニョ風味の舌平目。
 海産物が豊かなこの地方ならではの料理が並んでいる。
 さあ、どれから手を付けるべきか。悩む俺の優れた耳に、この場にそぐわない物騒な名前が聞こえて来たのはその時だ。

「サウロス公子がお見えじゃないか」
「こんな懇親会に顔を出すとは珍しい事があるものだ」

 ひそひそと躱される会話にぎくりと体を強張らせる。
 取り巻きの中心にいるのは、この腕の怪我の原因を作った張本人だった。
 この公子に俺の守護鳥が撃たれたのは先日の事。守護鳥クチャラが傷を負ったことにより、俺もその影響を受けた。人と守護鳥は同体である、という事を実証してしまったのだ。
 俺は、花飾りに隠れて公子の様子を伺う。
 祝賀会だというのに、公子は紫の軍服を着込んで、肩には守護鳥のジュウニセンフウチョウを連れていた。周りへの威圧感が半端ない。しかし、迷惑な客人は直ぐに会場を後にした。その口角は一度も上がることがなかったが。
 ほっとする俺の耳には、また陰口が届き始める。

「第三公子がガルシア領に肩入れしているというのは本当かね?」
「武骨なおもちゃがお気に入りなんでしょう」
「全く、軍事費ばかりつぎ込む厄介者だ。ああいうお方はいつか大変なことをしでかすぞ」
「その通りですな。そのうちお遊びの演習ではもの足りなくなって戦争を始めるのは第三公子かもしれません。」

 どうやらサウロス公子はここでは歓迎されていないようだ。
 まあ、これらも会話に違いないが。

「もうろくした爺達だ」

 案の定、横からキンギイが低い声で言った。
 何時の間にか隣にやって来た彼に、苦笑を向ける。

「まあそう言うな。皇太子には第一公子がなると誰もが思っているから、第一公子に少しでも取り入りたいのさ」
「サウロス公子を貶めることででか?あれでは言い寄られる第一公子が気の毒だ。あの爺ども、軍事費を外す為に躍起になっていやがるんだぜ。三十年前の海戦を経験したはずだろうになあ。川を渡れば聖人を忘れるというやつか。いや、本当に忘れたのか?」

 今晩のキンギイはどうも攻撃的だ。
 男のマリッジブルーか?

「再び川を渡る時が来れば、涙目になるのは奴らなのにな」

 構わずキンギイが続ける。
 俺も一介の軍人ではあるから、キンギイの言う事はもっともだと思う。しかし、会場には議員や商工会員、有力貴族等、防衛の意義を説いても響かない人種も多い。

 ———皆、思惑の中で生きている。

 俺はちっとも和やかでない宴会の中で、ぽっかりと空いた暗い穴を視ていた。
 あそこに、深く冷たい闇が広がっているのを知っている。
 俺は、キンギイを正面から見据えた。

「目に見えて分かる敵は怖くない。覚えておいて、キンギイ」
「?。まあそうか。この伏魔殿で味方のふりをした悪魔の方がよっぽど悪質かな」

 キンギイは一瞬、不思議そうな顔で俺を見返した。しかし、すぐに言葉の真意に触れたというように朗らかに笑う。
 そして、本日一番物騒な話題を口にした。

「なあ、セレノ。新月までまだ日があるだろう?
 もう一仕事しないか?」
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