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一に体力、二に体力!三四も体力、五も体力!
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この『闇の乙女と七人の求婚者』、略して『闇乙』の世界観は中世ヨーロッパと古代ギリシャやローマが混ざり合った魔法ありのファンタジー乙女ゲームだ。
ヴェルトラウムと呼ばれる創世神と同じ名を持つ世界は王制で、主に七つの王国と大小様々な島々があり、主人公が何処の王国の出身になるかでストーリーは変わってくる。
しかも、王女、貴族令嬢、平民と身分の設定が出来て、それによって起こるイベントが違ってきたりして、やり応えありだった。
私の推し、ナハト様の姿を拝むために何度も何度もプレイして、自分だけのナハト様写真集を作りあげた時は、流石の姉も若干引いていたわ。
あまりにも私のナハト様愛が深いので、姉が原作者特権でナハト様の絵姿を神絵師様に描いて貰い、それをプレゼントして貰った事があったのだけど、あの時は血圧上がり過ぎて病室に担当医が駆け込んできたなぁ…。
私は現在、大国ゾンネ王国のシルフィード公爵家に嫁いでおり、嫁いびりも、使用人からの苛めも無く、それは大切に手中の珠の如く護られて生活している。
そう、何故なら、シルフィード公爵家にはナハト様しかいないからだ。
ナハト様がヤンデレキャラになったのは、中々にディープな設定があるからだ。
代々ゾンネ王国財務大臣職を担っていたシルフィード公爵家だが、ある日ナハト様の父とされているジルバーン・シルフィード財務大臣が正妻と離婚して、自国の王女と再婚する。
一夫多妻制度のあるゾンネ王国であるにも拘わらず長男もいる正妻とわざわざ離婚してまで王女を正妻にしたのは、王女が王女だったからだと云われていた。大人の事情って事ね。
ジルバーン・シルフィード公爵が再婚して五ヶ月後にはナハト様が誕生。その一年後には産後の肥立ちが悪くて、元王女は他界した。
その後、別れた元正妻と再再婚したジルバーン・シルフィード公爵だが、ナハト様が五歳の時に他界してしまう。
勘の良い方なら直ぐに分かる事で、ナハト様はジルバーン・シルフィード公爵の実子では無く、道ならぬ恋の末にナハト様を身籠った元王女をシルフィード公爵が王命で娶ったと云うのが真相なわけです。
けれど、ゲーム内には出て来ないけど、シルフィード公爵はナハト様のお母様を愛していたのではないかと私は推察しております。
だって、じゃなければ、一夫多妻制度があるのに、子供もいる離婚した元正妻を第二夫人として娶り直す事もしなかった。元王女が一番大切だったから、正妻として娶り、存命中は彼女以外の女性を傍に置かなかった。
多分、だからこそ、ナハト様の継母となった正妻はナハト様を憎んだのかもしれない。
まさに継子いじめ此処に有り、と云うようなナハト様の幼少時代が、ナハト様の人格形成に影響を及ぼし、ヤンデレキャラとなったと思われます。
……しかし、継母、許せん!私の大事な大事なナハト様を苦しめおって!いくら事情があったにしろ、大人の事情は子供には関係無いし、ナハト様を憎むのは筋違いだわ。
去年、シルフィード公爵を継いだ長男と共に継母が事故で亡くなるまで、ナハト様はこのシルフィード公爵邸に居場所は無かった。
ジルバーン・シルフィード公爵はナハト様に幾つかある爵位のうちの一つであるシュテアネ侯爵の名とその領地を、ナハト様が誕生して直ぐに正式な手続きを経て生前譲渡していたために、ナハト様は路頭に迷う事は無かったし、医師を目指して勉学に励み、十八歳で王宮医師になる事も出来た。
この世界には魔法があり、ポーションやエリクサー等の定番アイテムもあるため、前世の地球とは医師の仕事内容の詳細は違うのだけれど、古今東西、異世界だろうと、医師の役割は怪我や病気を治療する事。
神のごとき美貌に加えて、その美貌以上に秀逸な頭脳を持って生まれたナハト様は、王侯貴族の七歳から十五歳までの子供達が必ず通う事になっている世界の北に位置するガイスト王国に建立された王立魔法学院を主席で卒業した後は、医学の道を志された。
通常は、魔法学院を卒業した子供達は各々の国に帰り、女性は家が決めた相手と結婚、男性は領地経営や王宮に仕官したり騎士や軍に所属して働く。
ナハト様のように専門的な道を選んで、新たに学校に入り直す人は全体の二割くらいで、しかも既に爵位持ちの当主が、領地経営以外にも専門職に就く、二足のわらじ的な事をする人は少数だ。
代々、王宮の役職を担っている高位貴族の当主とは違って、普通の貴族の当主は自身の領地を治めるのが仕事だから。
では、何故、ナハト様が医師を目指したのかと云うと、勿論私の為なわけです。
ええ、はい、私、前世同様に今世でも虚弱体質で生まれました。
本来なら、一部の例外を除いて、魔力持ちの貴族の子供は全員魔法学院に入学する決まりなのですが、私は例外の中に入る人だったわけで、学院に入学せずに十五歳の成人を迎えました。
勿論、家で家庭教師を付けられてしっかり高位貴族の令嬢として恥ずかしくない教養を身に付けているけれど、とにかく病弱過ぎて入学を断念せざるを得なかった。だって、学院は全寮制だったから。
出産予定より二ヶ月も早く生まれた私は、何度も死にかけながら成長した。虚弱体質で魔力保有量が多い私は、自分の力を抱えきれずに死にかけた。
この世界の人間には誰にでも魔力がある。
王侯貴族は平民よりも魔力保有量が多く、だからこそヒエラルキーの上位でいられるわけだけど、私の体はその力に負けてしまう。負けるとどうなるかと云うと、悪い時には心臓が止まります。
魔力を生み出す源は心臓にあると云われていて、私のポンコツ心臓は生み出す魔力の量に負けて目詰まりを起こしてしまうらしい。
しょっちゅう倒れていたから基本的に邸に引きこもる生活を送っていて、基礎体力を上げる事も出来ずにいた。だって、家族も邸の使用人も全員過保護で、私が少しでもふらつくだけで寝台に強制送還されてしまうのだ。これでは体力がつくはずも無い。体を動かさないから空腹を感じる事もなく、元から少食だったのに食事を抜く事も多々有り、体力は益々低下して、益々心臓に負担をかけると云う負のスパイラルが完成して、私はず~っと病弱引きこもり令嬢だったわけです。
はい、そこで、何故こんな私が、ナハト様と結婚できたのでしょうか。
答えは簡単、私の兄とナハト様が親友だったからです。
実家に居場所の無かったナハト様は、兄のグリュンに誘われて学院の長期休暇の度に、隣国モーント王国にある私の実家プランツ侯爵邸に滞在していた。
私達が初めて出逢ったのは、ナハト様が十歳、私が五歳の時。後に知る事になるのだけど、お互いに一目惚れだった。
私はまだ幼かったけれど、彼の類稀な美貌に一目で魂を奪われた。容姿以上に素晴らしかった彼の優しさと賢さに、私の幼い好意はあっという間に深く強い愛情へと変化した。
前世の記憶が無くても、私のナハト様愛は不滅であった事が証明されて、私は自分自身が誇らしい。ああ、ナハト様、昔も今も、私は貴方様の為なら死ねます。
まぁ、そんなわけで、ナハト様からは早々にプロポーズされていたのだけれど、お互いにまだ幼いし、ナハト様の実家での立場もあって、プロポーズから五年間は私を溺愛していた父が婚約を保留にしていたわけです。
ナハト様が十五歳で成人して、後見無しでシュテアネ侯爵領を管理し、学院を卒業して明確な進路を父に提示して、やっと私達の婚約は認められて正式な婚約者となれた次第です。
この世界の貴族令嬢の婚姻は、基本的に家同士で取り決める所謂、政略結婚が主流です。勿論、恋愛結婚も存在するけれど、まぁ、多くは無いです。だから、私達の関係は少数派と云うわけです。
男女共に十五歳で成人し、王立魔法学院の成人披露会や、各王国の王宮で開催される成人披露会に出席する事で対外的に成人した事を認知され、婚約者がいない人々は激しい婚活争いの渦中に身を置く事になるわけです。
婚約者がいても、第二、第三夫人を求めたり、更により良い相手を求めて狩りをする肉食系の子息令嬢も存在するわけで、婚約者がいても安心は出来ないのだけれど、私達に関しては政略が絡んでいない恋愛関係から始まっているので、そう言う場所に行ったとしても、多分、まぁ、問題は無かったはず。
本来なら、私も成人披露会に出席しなければならなかったのだけど、病弱を理由に出席した事は一度も無かった。披露会に出席しないと成人と認められないから結婚出来ないのだけれど、私の実家は王族の降嫁先にもなるモーント王国の名家だし、ナハト様はゾンネ王国財務大臣職を勤めるシルフィード公爵だ。成人披露を兼ねた結婚式をする事で、私の問題も難なくクリアした。まぁ、少々、権力にものを言わせた感はあるけれど。
無事に結婚式を終え、初夜で前世の記憶を取り戻してから、先ず私がやった事は生活習慣の見直しである。
私が早死にする事で、結果的に娘は悪役令嬢になって全員が不幸になるのだから、私が健康になってナハト様のヤンデレ毒親化を未然に防げば、皆が幸せになれるはずだから。
ナハト様への愛を貫く為に、どんなに辛くてもやり遂げてみせるわ!
先ずは早朝散歩からの、朝食完食を目指すわ!
だから、ね、ナハト様、お願いだからもう少し手加減して下さい。
「ナハトさ…まぁ…あ、ああ…っ」
一体何度絶頂に誘われたのか、もう分からない程、私はナハト様の愛撫に溶かされている。
初夜から暫く体調を崩して、夫婦の営みが出来なかったからか、二度目の床入りはそれはもう念入りな前戯から始まって、未だに挿入されずに何度も私だけ絶頂させられていた。
きっと私の体を心配して挿入は控えているのかもしれないけれど、イク回数が多いと体力を奪われます。
あ、それとも、寧ろこれこそが新たな体力強化運動かもしれない。
所謂有酸素運動を、長く行っているわけだし。
「…セラ、何を考えている?」
ナハト様が、私のお股の間から顔を覗かせて問い掛けてきた。
美しいナハト様の口元が、私の恥ずかしい分泌物で濡れているのが分かって羞恥心で頭がどうにかなってしまいそう。
「ナハト様…もう…」
羞恥心を押さえ付けて息も絶え絶えに挿入を懇願する私に、ナハト様は蕩けるように甘い笑みを浮かべた。
「もう…何?」
嫌~!何で言わせようとするの。私はまだ成人したての十五歳なのよ。今回が二度目の床入りなのよ。そんな、官能小説ばりに、挿入を口でお願いするなんて出来るわけがないわ。
大体、ナハト様ってば、何だか閨事に慣れているように感じるのだけど、どういう事?確かに、貴族の子息は閨教育を実践込みで受けるって聞いた事はあるけど、まさかナハト様までそんな事をしていたわけじゃないわよね?
「…もう…駄目…っ」
疑惑に嫉妬で再び頭がぐるぐるし出した私は、行為を続けるのが怖くなってナハト様から離れようと体を捩ろうとした。
「セラ、駄目じゃないよ…」
ナハト様は私の両脚をカエルのように開いて、反り立ったナハト様の熱いナハト様をぐちゃぐちゃに濡れた私の秘密の花園に擦り付けてきた。
「あ、あ、んん~…っ」
それだけで、襞が震えて花園の入り口がクパクパと音を立てて開閉した。
「ね、セラ。言って?これでどうして欲しいの?」
ナハト様は靱やかで逞しい腰を淫靡に揺らして、熱いナハト様自身を私の花園の入り口に何度も擦り付けてくる。
ああ、もう、それだけで気持ちいい。熱くて甘い痺れが入り口の襞から伝染するように流れて、奥の入り口を痙攣させた。
「…ナハト様…ん、ナハトさまぁ…っ」
私は言葉の代わりに両腕をナハト様の逞しい背中に回してしがみついた。体が柔らかくて良かったわ。私がしがみついたから、細くて華奢過ぎる私の体に不似合いな豊満な胸がナハト様の逞しくも硬い胸に擦り合わさった。ついでにクプッと音を立てて私の花園の入り口に浅くナハト様自身の張り出した先端が入ってしまった。
「んふ…っ…んん」
「はっ、あ、セラ…っ…」
どうやらナハト様も限界だったみたい。何とも言えない艶かしい表情で私を見つめながら、そのまま花園の奥へとナハト様の熱い滾りを挿入させた。
「あ、あ、ああ…っ」
「くっ、あ、セラ…っ」
私の花園の奥がナハト様を喜んで迎え入れているのが自分でも分かった。無意識に奥が収斂して、ナハト様に吸い付いているのが分かって恥ずかしいけれど、とても気持ちいい。私の体って、もしかして閨事に才能があるのかしら。初夜こそ痛みを感じたけれど、今は快感しか覚えない。
愛した人との営みがこんなに気持ちが良いなんて、初めて知ったわ。
大きくて豪奢な天蓋付きの寝台なのに、ナハト様の情熱的な動きで軋む音が途切れずに立ち、私達の肌が擦れ合い、ぶつかり合う音や、粘膜同士が擦れ合って立つ粘着質な音が寝室に満ちて、聴覚からも快感を拾ってしまう。
それにしても、ナハト様、持久力も持続力も有り過ぎるような気がするわ。
私は挿入されてから、既に二回は絶頂しているのに、ナハト様はまだ漲ったまま。 私はもう喘ぎ声も出ず、ナハト様の動きによって出る呼気の音が喉から出るだけの状態になっていた。
私の体感的には随分と長い時間ナハト様に愛されていたように感じられたけれど、もしかしたら一時間も経っていなかったのかもしれない。
体力の限界でナハト様がいつ私の中で達してくれたのかも分からない。ああ…、何て事なの。やっぱり切実に体力をつけなければならないわ。こんな体力では、思う存分ナハト様と愛し合えないわ。私に必要なのは一に体力、二に体力、三、四も体力、五も体力だわ!
ナハト様、待ってて下さいね!
ヴェルトラウムと呼ばれる創世神と同じ名を持つ世界は王制で、主に七つの王国と大小様々な島々があり、主人公が何処の王国の出身になるかでストーリーは変わってくる。
しかも、王女、貴族令嬢、平民と身分の設定が出来て、それによって起こるイベントが違ってきたりして、やり応えありだった。
私の推し、ナハト様の姿を拝むために何度も何度もプレイして、自分だけのナハト様写真集を作りあげた時は、流石の姉も若干引いていたわ。
あまりにも私のナハト様愛が深いので、姉が原作者特権でナハト様の絵姿を神絵師様に描いて貰い、それをプレゼントして貰った事があったのだけど、あの時は血圧上がり過ぎて病室に担当医が駆け込んできたなぁ…。
私は現在、大国ゾンネ王国のシルフィード公爵家に嫁いでおり、嫁いびりも、使用人からの苛めも無く、それは大切に手中の珠の如く護られて生活している。
そう、何故なら、シルフィード公爵家にはナハト様しかいないからだ。
ナハト様がヤンデレキャラになったのは、中々にディープな設定があるからだ。
代々ゾンネ王国財務大臣職を担っていたシルフィード公爵家だが、ある日ナハト様の父とされているジルバーン・シルフィード財務大臣が正妻と離婚して、自国の王女と再婚する。
一夫多妻制度のあるゾンネ王国であるにも拘わらず長男もいる正妻とわざわざ離婚してまで王女を正妻にしたのは、王女が王女だったからだと云われていた。大人の事情って事ね。
ジルバーン・シルフィード公爵が再婚して五ヶ月後にはナハト様が誕生。その一年後には産後の肥立ちが悪くて、元王女は他界した。
その後、別れた元正妻と再再婚したジルバーン・シルフィード公爵だが、ナハト様が五歳の時に他界してしまう。
勘の良い方なら直ぐに分かる事で、ナハト様はジルバーン・シルフィード公爵の実子では無く、道ならぬ恋の末にナハト様を身籠った元王女をシルフィード公爵が王命で娶ったと云うのが真相なわけです。
けれど、ゲーム内には出て来ないけど、シルフィード公爵はナハト様のお母様を愛していたのではないかと私は推察しております。
だって、じゃなければ、一夫多妻制度があるのに、子供もいる離婚した元正妻を第二夫人として娶り直す事もしなかった。元王女が一番大切だったから、正妻として娶り、存命中は彼女以外の女性を傍に置かなかった。
多分、だからこそ、ナハト様の継母となった正妻はナハト様を憎んだのかもしれない。
まさに継子いじめ此処に有り、と云うようなナハト様の幼少時代が、ナハト様の人格形成に影響を及ぼし、ヤンデレキャラとなったと思われます。
……しかし、継母、許せん!私の大事な大事なナハト様を苦しめおって!いくら事情があったにしろ、大人の事情は子供には関係無いし、ナハト様を憎むのは筋違いだわ。
去年、シルフィード公爵を継いだ長男と共に継母が事故で亡くなるまで、ナハト様はこのシルフィード公爵邸に居場所は無かった。
ジルバーン・シルフィード公爵はナハト様に幾つかある爵位のうちの一つであるシュテアネ侯爵の名とその領地を、ナハト様が誕生して直ぐに正式な手続きを経て生前譲渡していたために、ナハト様は路頭に迷う事は無かったし、医師を目指して勉学に励み、十八歳で王宮医師になる事も出来た。
この世界には魔法があり、ポーションやエリクサー等の定番アイテムもあるため、前世の地球とは医師の仕事内容の詳細は違うのだけれど、古今東西、異世界だろうと、医師の役割は怪我や病気を治療する事。
神のごとき美貌に加えて、その美貌以上に秀逸な頭脳を持って生まれたナハト様は、王侯貴族の七歳から十五歳までの子供達が必ず通う事になっている世界の北に位置するガイスト王国に建立された王立魔法学院を主席で卒業した後は、医学の道を志された。
通常は、魔法学院を卒業した子供達は各々の国に帰り、女性は家が決めた相手と結婚、男性は領地経営や王宮に仕官したり騎士や軍に所属して働く。
ナハト様のように専門的な道を選んで、新たに学校に入り直す人は全体の二割くらいで、しかも既に爵位持ちの当主が、領地経営以外にも専門職に就く、二足のわらじ的な事をする人は少数だ。
代々、王宮の役職を担っている高位貴族の当主とは違って、普通の貴族の当主は自身の領地を治めるのが仕事だから。
では、何故、ナハト様が医師を目指したのかと云うと、勿論私の為なわけです。
ええ、はい、私、前世同様に今世でも虚弱体質で生まれました。
本来なら、一部の例外を除いて、魔力持ちの貴族の子供は全員魔法学院に入学する決まりなのですが、私は例外の中に入る人だったわけで、学院に入学せずに十五歳の成人を迎えました。
勿論、家で家庭教師を付けられてしっかり高位貴族の令嬢として恥ずかしくない教養を身に付けているけれど、とにかく病弱過ぎて入学を断念せざるを得なかった。だって、学院は全寮制だったから。
出産予定より二ヶ月も早く生まれた私は、何度も死にかけながら成長した。虚弱体質で魔力保有量が多い私は、自分の力を抱えきれずに死にかけた。
この世界の人間には誰にでも魔力がある。
王侯貴族は平民よりも魔力保有量が多く、だからこそヒエラルキーの上位でいられるわけだけど、私の体はその力に負けてしまう。負けるとどうなるかと云うと、悪い時には心臓が止まります。
魔力を生み出す源は心臓にあると云われていて、私のポンコツ心臓は生み出す魔力の量に負けて目詰まりを起こしてしまうらしい。
しょっちゅう倒れていたから基本的に邸に引きこもる生活を送っていて、基礎体力を上げる事も出来ずにいた。だって、家族も邸の使用人も全員過保護で、私が少しでもふらつくだけで寝台に強制送還されてしまうのだ。これでは体力がつくはずも無い。体を動かさないから空腹を感じる事もなく、元から少食だったのに食事を抜く事も多々有り、体力は益々低下して、益々心臓に負担をかけると云う負のスパイラルが完成して、私はず~っと病弱引きこもり令嬢だったわけです。
はい、そこで、何故こんな私が、ナハト様と結婚できたのでしょうか。
答えは簡単、私の兄とナハト様が親友だったからです。
実家に居場所の無かったナハト様は、兄のグリュンに誘われて学院の長期休暇の度に、隣国モーント王国にある私の実家プランツ侯爵邸に滞在していた。
私達が初めて出逢ったのは、ナハト様が十歳、私が五歳の時。後に知る事になるのだけど、お互いに一目惚れだった。
私はまだ幼かったけれど、彼の類稀な美貌に一目で魂を奪われた。容姿以上に素晴らしかった彼の優しさと賢さに、私の幼い好意はあっという間に深く強い愛情へと変化した。
前世の記憶が無くても、私のナハト様愛は不滅であった事が証明されて、私は自分自身が誇らしい。ああ、ナハト様、昔も今も、私は貴方様の為なら死ねます。
まぁ、そんなわけで、ナハト様からは早々にプロポーズされていたのだけれど、お互いにまだ幼いし、ナハト様の実家での立場もあって、プロポーズから五年間は私を溺愛していた父が婚約を保留にしていたわけです。
ナハト様が十五歳で成人して、後見無しでシュテアネ侯爵領を管理し、学院を卒業して明確な進路を父に提示して、やっと私達の婚約は認められて正式な婚約者となれた次第です。
この世界の貴族令嬢の婚姻は、基本的に家同士で取り決める所謂、政略結婚が主流です。勿論、恋愛結婚も存在するけれど、まぁ、多くは無いです。だから、私達の関係は少数派と云うわけです。
男女共に十五歳で成人し、王立魔法学院の成人披露会や、各王国の王宮で開催される成人披露会に出席する事で対外的に成人した事を認知され、婚約者がいない人々は激しい婚活争いの渦中に身を置く事になるわけです。
婚約者がいても、第二、第三夫人を求めたり、更により良い相手を求めて狩りをする肉食系の子息令嬢も存在するわけで、婚約者がいても安心は出来ないのだけれど、私達に関しては政略が絡んでいない恋愛関係から始まっているので、そう言う場所に行ったとしても、多分、まぁ、問題は無かったはず。
本来なら、私も成人披露会に出席しなければならなかったのだけど、病弱を理由に出席した事は一度も無かった。披露会に出席しないと成人と認められないから結婚出来ないのだけれど、私の実家は王族の降嫁先にもなるモーント王国の名家だし、ナハト様はゾンネ王国財務大臣職を勤めるシルフィード公爵だ。成人披露を兼ねた結婚式をする事で、私の問題も難なくクリアした。まぁ、少々、権力にものを言わせた感はあるけれど。
無事に結婚式を終え、初夜で前世の記憶を取り戻してから、先ず私がやった事は生活習慣の見直しである。
私が早死にする事で、結果的に娘は悪役令嬢になって全員が不幸になるのだから、私が健康になってナハト様のヤンデレ毒親化を未然に防げば、皆が幸せになれるはずだから。
ナハト様への愛を貫く為に、どんなに辛くてもやり遂げてみせるわ!
先ずは早朝散歩からの、朝食完食を目指すわ!
だから、ね、ナハト様、お願いだからもう少し手加減して下さい。
「ナハトさ…まぁ…あ、ああ…っ」
一体何度絶頂に誘われたのか、もう分からない程、私はナハト様の愛撫に溶かされている。
初夜から暫く体調を崩して、夫婦の営みが出来なかったからか、二度目の床入りはそれはもう念入りな前戯から始まって、未だに挿入されずに何度も私だけ絶頂させられていた。
きっと私の体を心配して挿入は控えているのかもしれないけれど、イク回数が多いと体力を奪われます。
あ、それとも、寧ろこれこそが新たな体力強化運動かもしれない。
所謂有酸素運動を、長く行っているわけだし。
「…セラ、何を考えている?」
ナハト様が、私のお股の間から顔を覗かせて問い掛けてきた。
美しいナハト様の口元が、私の恥ずかしい分泌物で濡れているのが分かって羞恥心で頭がどうにかなってしまいそう。
「ナハト様…もう…」
羞恥心を押さえ付けて息も絶え絶えに挿入を懇願する私に、ナハト様は蕩けるように甘い笑みを浮かべた。
「もう…何?」
嫌~!何で言わせようとするの。私はまだ成人したての十五歳なのよ。今回が二度目の床入りなのよ。そんな、官能小説ばりに、挿入を口でお願いするなんて出来るわけがないわ。
大体、ナハト様ってば、何だか閨事に慣れているように感じるのだけど、どういう事?確かに、貴族の子息は閨教育を実践込みで受けるって聞いた事はあるけど、まさかナハト様までそんな事をしていたわけじゃないわよね?
「…もう…駄目…っ」
疑惑に嫉妬で再び頭がぐるぐるし出した私は、行為を続けるのが怖くなってナハト様から離れようと体を捩ろうとした。
「セラ、駄目じゃないよ…」
ナハト様は私の両脚をカエルのように開いて、反り立ったナハト様の熱いナハト様をぐちゃぐちゃに濡れた私の秘密の花園に擦り付けてきた。
「あ、あ、んん~…っ」
それだけで、襞が震えて花園の入り口がクパクパと音を立てて開閉した。
「ね、セラ。言って?これでどうして欲しいの?」
ナハト様は靱やかで逞しい腰を淫靡に揺らして、熱いナハト様自身を私の花園の入り口に何度も擦り付けてくる。
ああ、もう、それだけで気持ちいい。熱くて甘い痺れが入り口の襞から伝染するように流れて、奥の入り口を痙攣させた。
「…ナハト様…ん、ナハトさまぁ…っ」
私は言葉の代わりに両腕をナハト様の逞しい背中に回してしがみついた。体が柔らかくて良かったわ。私がしがみついたから、細くて華奢過ぎる私の体に不似合いな豊満な胸がナハト様の逞しくも硬い胸に擦り合わさった。ついでにクプッと音を立てて私の花園の入り口に浅くナハト様自身の張り出した先端が入ってしまった。
「んふ…っ…んん」
「はっ、あ、セラ…っ…」
どうやらナハト様も限界だったみたい。何とも言えない艶かしい表情で私を見つめながら、そのまま花園の奥へとナハト様の熱い滾りを挿入させた。
「あ、あ、ああ…っ」
「くっ、あ、セラ…っ」
私の花園の奥がナハト様を喜んで迎え入れているのが自分でも分かった。無意識に奥が収斂して、ナハト様に吸い付いているのが分かって恥ずかしいけれど、とても気持ちいい。私の体って、もしかして閨事に才能があるのかしら。初夜こそ痛みを感じたけれど、今は快感しか覚えない。
愛した人との営みがこんなに気持ちが良いなんて、初めて知ったわ。
大きくて豪奢な天蓋付きの寝台なのに、ナハト様の情熱的な動きで軋む音が途切れずに立ち、私達の肌が擦れ合い、ぶつかり合う音や、粘膜同士が擦れ合って立つ粘着質な音が寝室に満ちて、聴覚からも快感を拾ってしまう。
それにしても、ナハト様、持久力も持続力も有り過ぎるような気がするわ。
私は挿入されてから、既に二回は絶頂しているのに、ナハト様はまだ漲ったまま。 私はもう喘ぎ声も出ず、ナハト様の動きによって出る呼気の音が喉から出るだけの状態になっていた。
私の体感的には随分と長い時間ナハト様に愛されていたように感じられたけれど、もしかしたら一時間も経っていなかったのかもしれない。
体力の限界でナハト様がいつ私の中で達してくれたのかも分からない。ああ…、何て事なの。やっぱり切実に体力をつけなければならないわ。こんな体力では、思う存分ナハト様と愛し合えないわ。私に必要なのは一に体力、二に体力、三、四も体力、五も体力だわ!
ナハト様、待ってて下さいね!
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