チョロい兄は腹黒な弟に完全に包囲されている。

岡ぱんだ

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兄は歓迎される~ルカside~

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「ウィル、こちらへ。ぼくが抱っこしてあげますよ。」

「はい、にいさま!」

俺が抱っこしてたのに、ロウに呼ばれたウィル君は俺の膝から隣のロウの膝にあっさりと移ってしまった。

残念、もう少しウィル君を堪能したかったのに。


ロウがこのくらいの時も可愛かった。その頃は俺も同じくらいの大きさだったから抱っこなんてできなくて、ロウがよく抱きついてきていたなぁ。

ああ、ウィル君抱っこしたい。。
可愛い、天使。

「ルカにいさま!」

「!?」

俺がもんもんと考えながらウィル君に熱視線を送っているとロウの膝の上でニコニコ笑っていたウィル君が急にこちらを向き俺の名を呼んだ。

俺、もしかして声に出てた?



「ウィルとよんでください!」

「え?」


「ルカにいさまも、ウィルってよんでください!」

何かと思えば……呼び捨てにしろって事か?

うーーん、いいのかな。兄宣言はしたが……あ、ギルベルトさんがめちゃくちゃ頷いている。これは呼んでいいということか。そういうことなら……。

「ウ、ウィル?」

「はい!ルカにいさま!」

キラッキラの笑顔が……

「うっ……可愛すぎる……。」


「……ルー兄さん、僕は?」

「は?」

ウィルの笑顔にクラっとしているとドスの効いた声がした。

「僕は可愛くないの?昔はあんなに可愛いって言ってくれたのに。」

ロウ、笑顔が怖ぇよ…。
俺がウィルを褒めたから拗ねたのか?
まったくロウはいつまでたっても子供だな。世話の焼ける弟だ。


「ロウはもう「可愛い」じゃなくて「格好いい」だろ。格好いいよ、ロウ。」

俺が拗ねるロウの頭をポンポンと撫でながら『格好いいは嫌か?』と続けるとロウは目を見開いて固まった。直後顔が真っ赤になる。

あ、やべ、子供扱いし過ぎたか。
はは、可愛い奴め。


「格好いいでいい……です。」
真っ赤になった顔を両手で隠したロウは小さな声で言った。

なぜ敬語。

「にいさま、おかおがまっかです!」

「うるさいですよ、ウィル。」

ウィルは赤くなっているロウの顔を見て楽しそうにキャッキャッしている。
ロウは顔を見られたくなくて、手をどけようとしてくるウィルに必死に抵抗している。


何この光景……萌え……。


カシャカシャカシャカシャ……

「え…。」

すぐ近くから聞こえたカシャカシャ音に驚いてそちらを向くとシンシアさんが何か・・を真剣な表情で構えている。カシャカシャ音はその何か・・から出ている様だ。

「シンシアさん、何してるんですか?」

「撮影しているのですわ。ルカさんはスフィアを見るのは初めてかしら?」

撮影?スフィア?

「このスフィアという物は大変便利で、離れている相手と連絡を取り合うことも出来ますし、この様に映像を残す事もできるのです。」

シンシアさんはそういうと俺にスフィアを近づけた。片手に収まるサイズのそれはツルッとしていて表面に様々な絵が写っている。
俺が覗き込んだのを確認したシンシアさんはスフィアの表面を指で触れ、慣れた手つきでポチポチと表面を押していく。
ボタンの様に浮き出て無いのに、触れるたびに表面の絵が変わっていく。
不思議だ……都会すげぇ。

「これが先程わたくしが撮影したものですわ。」

シンシアが最後にポチと触れると表面にさっきの二人の様子が写った。

「おぉ……。」

すげぇ、さっきの二人のそのままだ。

「ふふ、いずれルカさんにも差し上げますね。使い方はその時にフロウが教えてくれますわ。」

え、こんなすごい物くれるのか!?
絶対高いだろ、これ。

「いや、こんな高価そうなものもらえないです!」

「ふふふ、ウィルの件のお礼ですわ。あなたが何と言おうと勝手に用意させて頂きますわよ?これからもわたくし達と仲良くしてくださいませね。」

うっ……有無を言わさぬこの笑顔……

「…はい、ありがとうございます。これからも、宜しくお願いします。」

押しに負けてしまった。でも、正直嬉しい。
あんなすごい物貰えるなんて……何度も考えちゃうけど、絶対高いよな……。

「母上、兄さんと何の話をしていたんですか?余計な事しないで下さいよ?」

いつの間にか普通に戻ったロウが訝しげな顔でこちらを見ていた。膝の上のウィル君もキョトンとした顔でこちらを見ている。

「ふふふ、わたくしはルカさんにスフィアを差し上げる話をしていただけですわ。」

シンシアさんがニコリとそう言うと、ロウは「えっ」と驚いた顔をした。

「独り占めはよくないですわよ?スフィアがあればわたくしたちと連絡が取り合えますわ。フロウが何と言おうとルカさんにスフィアをお渡ししますからね。お渡ししたら使い方を教えて差し上げて下さいね。あ、嫌ならわたくしがお「わかりました。僕が教えます。」」

「ふふふ、宜しくお願いしますね。」

話からするにロウは俺にスフィアを持ってほしくなかったのか?
なんか不機嫌そうな顔してるし。

「ロウ、大丈夫か?なんか、ごめんな。」

「あ、ううん、ルー兄さんは悪くないだ。僕が狭量なだけだよ。」

「そうですわ。本当にフロウはルカさんの事になr「母上!」」

おおう、どうしたどうした。
シンシアさんはニコニコしているがロウが急に大きな声出すから膝の上のウィルがめちゃくちゃ驚いた顔してるぞ。

「…にいさま?」

「あ、すみませんウィル。母上、余計な事は言わないで下さい。」

「ふふふ、善処しますわ。」



「コホン……、フロウ、今日は泊まっていくのか?それなら二人の夕食も用意させるが。」

今まで蚊帳の外気味だったギルベルトさんが、会話が切れたのを見計らって声をかけてきた。

今まで放置しててすいません。

「いえ、僕は明日も仕事があるのでそろそろセントラルに帰ります。」

もうそんな時間か、あっという間だったな。

「そうか、残念だ。次は夕食を共にしよう。ルカ君も次来る時はウィルとたくさん遊んでやってくれ。」

「はい!いくらでも遊びます。あと次お邪魔する時は庭を見せてほしいです。」

畑があるかどうかも見たいしな。

「庭を?もちろんだ。それまでに少し手入れしておくよ。最近あまり気を遣っていなかったからね。」

ギルベルトさんがそう笑顔で言った瞬間ロウとシンシアさんの体がビクッと跳ねた。

「……父上、ほどほど・・・・にお願いします……ね?」

「あなた、ほどほど・・・・に……ですわよ?」

「なんだ二人して。私が何をしたというんだ。」

「……。」

「……。」

え、何この沈黙。怖いんですけど。顔も怖いんですけど。


「……わたくしが気をつけておきますわ。ウィルさん、必ずまたいらして下さいね。」

「は、はい。」

とりあえず返事するしかない。

「母上、くれぐれも宜しくお願いします。」

「ええ、必ず。」

ねぇ、何があったの?


「さあ、ルー兄さん帰ろうか。」

俺が不安気にしていると気持ちを切り替えたらしいロウが俺の方を向いて言った。

「え!にいさまたちかえってしまうんですか!?」

帰るという言葉に反応したウィルがロウの服をギュッと掴みながらロウを見上げた。
わぁ、それ、俺もされたい。

「ウィル、またすぐに会いに来ますから。………。」

あ、最後口パクで『たぶん』って言った。
ひどい奴め。

「ウィル、またすぐロウと会いにくるから、な?」

「ほんとうに?」

「ああ、絶対だ。」

ロウをチラッと見ながら『絶対』を強調した。


「わかりました。ぼく、まってます!」

「よし、いい子だ。ロウも約束守るよな?」

「……はい。」



ウィルはニッコニコでロウの膝から降りた。
なんて聞き分けのいい子なんだ……。
絶対会いに来るからな。ロウを引きずってでも!





その後ギルベルトさん達は見送りに玄関まで一緒に来てくれた。

「今日はありがとうございました。お菓子も紅茶も美味しかったし、楽しかったです。」

「いや、お礼を言うのはこちらの方だよ。ウィルの事もそうだし、私達も楽しい時間を過ごす事ができた。本当にありがとう。」

「ルカさん、ここを自分の家だと思っていつでも帰ってらしてね。」

「にいさま!ルカにいさま!ぼくいいこにしてるので、はやくきてくださいね!」

はぁ……天使。


「はい、お邪魔しました。」

「父上、母上、ウィル、また来ます。」


別れの挨拶をして、俺達は馬車に乗り込んだ。3人は玄関から門をくぐり見えなくなるまで馬車を見送ってくれた。

「本当にいい家族だな。」

「うん、ありがとう。僕もそう思うよ。」

ロウは嬉しそうに笑った。

近い内にまた来られるといいな。





※スフィアはスマホみたいな見た目を想像して下さい。



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