上 下
11 / 22

兄同士の対面~ルカside~

しおりを挟む

「ルー兄さん、仕事に行ってくるね。」

「おう、いってらっしゃい。」

「……。」

ん?どうしたその不満気な顔は……
ああ!そうか、

「……ごめんごめん。」

ポンポンと頭を撫でるとフロウは嬉しそうに目を細めた。
そういえばしてやる約束だったな。

「ふふふ、ありがと。あ、明日どんな所に行きたいか考えといてね。あと買う物も。」

「わかった!」

明日はロウが休みだ。

ロウが部屋を出た後、俺はロウが用意してくれた紙とペンを持ってソファーに移動した。

昨日、何も無い俺の為にロウは紙とペンと読めそうな本をどこからか用意してくれた。
相変わらず鍵は貰えていない為外には出られないが、今日は時間を潰す用意があるから問題ない。

「さて、さっそく買い物リストでも作るか~。」



ーーーポーン

ん?何の音だ?

ーーーポーン…ポーン…ポーン

え?え?どこから鳴ってるんだこれ。
キョロキョロ見回すが音の出所がわからない。

ーーーポーン……ポポポポポポポーーン!

「怖い怖い怖い!」

すごい鳴ってる!!なんだ!?警報か!?

ーーポーン………

「あ、止まった?」

ーーードンドンドンドンドン!!

「ヒェ……。」

ドア、ドアがめちゃくちゃ叩かれてる!

恐る恐る玄関に行き、ドアに空いている小さい穴を覗き込んでみた。

真っ暗だ。何も見えない。

ーーーーードンドンドンドンドン!

「ヒェ……。」

相変わらず真っ暗だ……。


とりあえず、埒があかないので少しだけドアを開けてみよう!ヤバかったら閉めよう!

慎重に少しずつドアを開け、隙間から確認しようとしたその時、

ーーガッッ!
「あああああああ!!!」

その隙間に足を入れられた。

「痛い痛い痛い痛い!!」

ビックリして無理やり閉めようとしたら痛がられた為思わず手を離してしまった。

あ、ヤバい。

案の定手を離してしまった事で足の主はヌルッと部屋に入ってきてしまった。

ヤバいヤバいどうしたら……ん?


「あれ……あんた……。」

「はじめまして、フロウの兄上殿。私はウリエル=ディートリッヒ。昨日は弟が世話になったね。」

「……あんたもしかして、ミカの兄貴か!」

髪色とオッドアイの左右の色が違うが顔が似ている!!

「イエ~ス!いや~驚かせてしまってすまない。何度もインターホンを鳴らしたのに何の反応も無かったからドアを叩いてしまったよ。でも出てきてくれて良かった。危なくもう少しで無理やりドアをぶち破る所だったよ。あはっ!」

インターホン?あの音の事か?

ってぶち破る!?

ミカと対照的によく喋るし……物騒だし……怖っ……。

「ふぇ…」

「そんな怯えないでくれ!まるで幼獣の様だな君は!ミカ坊が言っていた通りとても愛らしい!」

「愛らしい……。」

う、嬉しくない……。

「あは!そんな身構えないでくれよ!取って食いやしないさ!今日は君と話がしたくて来たんだ!さぁ、行こう!」

「え、行くってどこに……。俺鍵持ってない…。」

オロオロしてる内に腕を捕まれた……ビクともしない……何だこの力の強さ……。

「大丈夫さ!フロウには伝言を頼んだから!さぁさぁさぁ!」

強い強い強い!!

「ああああああぁぁ!!」

誰か助けてぇぇぇぇ!!


ーーーーガチャン。






ーーーーフロウ執務室ーーー

ーーコンコン

「どうぞ。」

「失礼致します。フロウ=ファルメール上級魔術師殿、ウリエル=ディートリッヒ交渉官殿からご伝言を承って参りました、只今お時間宜しいでしょうか?」

「ウリエルさんから?すごく嫌な予感がしますね……どうぞ、お願い致します。」

「畏まりました。では、交渉官殿のお言葉をそのままお伝え致します。……ゴホン。『お仕事お疲れ様だねフロウ!私はやっと仕事が一段落して昨日帰ってきたんだ!そしたら君の兄上殿が来ていると言うじゃないか!これは挨拶しないわけにはいかないだろう?……と、言うわけだから今日1日兄上殿を借りるぞ!!』」

「はっ!?」

「わっ!!」

「……すみません、続けて下さい。」

「は、はい。『安心してくれ!君が仕事が終わる頃には送り届けるよ。もし、君が帰ってきていない時は一緒に部屋の前で待つようにするさ!大丈夫、兄上殿の安全は私が保証しよう!それではまた後程!がんばって仕事に励んでくれ!』……以上です。……大丈夫ですか?フロウ上級魔術師殿。」

「はい……大丈夫です……少し胃が痛むだけです……伝言ありがとうございました。」

「はっ!では、失礼致します!」


ーーバタン。




防音の部屋から微かに叫び声が聞こえた気がした。(伝言係談)




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いろいろ疲れちゃった高校生の話

こじらせた処女
BL
父親が逮捕されて親が居なくなった高校生がとあるゲイカップルの養子に入るけれど、複雑な感情が渦巻いて、うまくできない話

【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】

彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。 「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」

家の中で空気扱いされて、メンタルボロボロな男の子

こじらせた処女
BL
学歴主義の家庭で育った周音(あまね)は、両親の期待に応えられず、受験に失敗してしまう。試験そのものがトラウマになってしまった周音の成績は右肩下がりに落ちていき、いつしか両親は彼を居ないものとして扱う様になる。  そんな彼とは裏腹に、弟の亜季は優秀で、両親はますます周音への態度が冷たくなっていき、彼は家に居るのが辛くなり、毎週末、いとこの慶の家にご飯を食べに行く様になる。  慶の家に行くことがストレスの捌け口になっていた周音であるが、どんどん精神的に参ってしまい、夜尿をしてしまうほどに追い詰められてしまう。ストレス発散のために慶の財布からお金を盗むようになるが、それもバレてしまい…?

(…二度と浮気なんてさせない)

らぷた
BL
「もういい、浮気してやる!!」 愛されてる自信がない受けと、秘密を抱えた攻めのお話。 美形クール攻め×天然受け。 隙間時間にどうぞ!

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

涙の悪役令息〜君の涙の理由が知りたい〜

ミクリ21
BL
悪役令息のルミナス・アルベラ。 彼は酷い言葉と行動で、皆を困らせていた。 誰もが嫌う悪役令息………しかし、主人公タナトス・リエリルは思う。 君は、どうしていつも泣いているのと………。 ルミナスは、悪行をする時に笑顔なのに涙を流す。 表情は楽しそうなのに、流れ続ける涙。 タナトスは、ルミナスのことが気になって仕方なかった。 そして………タナトスはみてしまった。 自殺をしようとするルミナスの姿を………。

嫌われものと爽やか君

黒猫鈴
BL
みんなに好かれた転校生をいじめたら、自分が嫌われていた。 よくある王道学園の親衛隊長のお話です。 別サイトから移動してきてます。

処理中です...