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1巻
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私の前世はとても幸せだった。両親と楽しく毎日を過ごしていた。
だけど多感な年頃に同級生からのいじめの標的になってから、ずっと自分の部屋に閉じこもりきりになった。
悲しくて毎日泣いてこの世から消えたい。そう思っていた。
心配する両親をよそに、何度消えようとしたかは思い出せない。
ある日泣いたところを見たことがない父が、大粒の涙をこぼしながら私に言った。学校に行かなくていい、私達の前から消えようとしないで、と。父が肩を震わせながら私を抱きしめてくれた時、両親の心の痛みが伝わってきた。
自分一人だけが痛みと闘っていたのではないのだ。
私はそれから部屋の外に少しずつ出られるようになった。
学校には行けなかったけれど、以前の楽しい生活に戻ることができた。心の底から、消えなくて良かったと思えたのは、諦めずに私に向き合ってくれた両親のおかげだった。
それなのに私は今ここにいる。
なぜ死んだのか、どうして悪役令嬢に転生してしまったのかは全くわからない。けれど、両親のために生きたいと死ぬ間際にした後悔は今世にも引き継がれている。
私はミレイナとして生きているけど絶対に自分から死を選ばない。
いじめられた側の気持ちが痛いほどわかるから、ミレイナのしたことを私自身が許せない。
「ミレイナ、あんたはここで償うのよ。いじめた人数分、ここで」
ギュッと鉄格子を一度強く握ってから窓を閉めて振り返り、キャリアに微笑んだ。
「ごめんなさい。私お茶の淹れ方も知らなくて……教えてくださらない?」
ここで前世の両親に約束したように頑張って生き抜く。そして今世でいじめてきた数多の令嬢達に償っていく。
そしていつかお金を全額返した暁にはルーティアス家に帰って思い切りお父様やお母様を抱きしめてもいいよね?
そのために私はここで頑張るわ!
キャリアは私の言動に驚いたように目を見開き、その後花が綻ぶように笑った。
「はい! ミレイナ様! お茶は私がお淹れします!」
こうして私は娼館ルージュの娼婦としてやっていくことが決まった。
そして、その初仕事は早々に訪れる。
それも私を先陣切って断罪したイリアス・ストロサンドによる指名で。
キャリアと少し談笑しながら寛いでいると、トントンと扉がたたかれる。
扉に目を向ければ、返事を待たずにライラ夫人が入ってきた。
「ミレイナ。来た早々悪いけど、さっそく仕事をしてもらうよ。キャリア、ミレイナを早く風呂に連れていきな」
来たばかりでいきなり仕事とは思っていなかった。こんなことは初めてだと言うキャリアも驚いていたが、ライラ夫人に急かされ慌てて部屋に備えられている浴室に向かった。
まさか説明も何も聞かないまま、指名されるなんて。
今まで体や髪は侍女達に洗ってもらっていたため、どうすればいいかわからない。キャリアに申し訳ない気持ちになりながら一緒に洗ってほしいと頼んだ。
前世の一部の記憶を取り戻しても、全て思い出したわけではない。
十七年間ミレイナ・ルーティアスとして生きてきた日常生活の方が身にしみついている。私は自分で体を洗ったことがない生粋の令嬢なのだ。
だけどそれはここでは通用しない。キャリアに頼むのは今日で最後と決意して、自分一人でも洗えるようにキャリアと一緒にお風呂に入った。
キャリアの手つきを眺めながら、必死で覚える。
「こんなことは初めてです。ミレイナ様のお披露目もまだですから、ここにミレイナ様がいることは誰も知らないはずなのに」
キャリアはそう言ったけれど、私には思い当たる節があった。
先程ベリー城の舞踏室でイリアスが、高らかに私を娼館に送ると宣言していたわよね?
もしかして先ほどの宣言を聞いていた誰かが、私を追いかけてきたのでは? というか、ほぼそれしかないだろう。
自慢じゃないけど、私は傲慢で高飛車なぼっち令嬢だ。近寄る連中みんなに噛み付いたから、その中に私に恨みを持った者はたくさんいるはず。
もしかしたら想像以上にひどい目に遭わされるのかもしれない。
途端にカタカタと震えが止まらなくなった。
娼婦は男性と寝る仕事。
考えないようにしていたけれど、気持ちの準備もできないうちに、今日この後私は純潔を失う。
イリアス様に捧げるって誓った私のバージン。
震える私にキャリアは優しく小さな手で背中を摩ってくれる。
「ミレイナ様。後で美味しい紅茶を持っていきますね。一緒に飲んで夜更かししましょう。キャリアはいつまでも起きていますので」
私よりも少し小さいキャリアの手から温かさが伝わってくる。
考えるのはやめよう。
キャリアの手に自分の手を重ねてニコリと笑い、楽しみにしているわと言った。
ここで震えても仕方ない。バージンなんてどうでもいいじゃない。
「よし! サクッと終わらしてくるわ!」
私は勢いよく湯を頭からかぶる。
「ミレイナ様! お髪を濡らさないでくださいませ! 私は髪を巻けませんよ!」
「え⁉ そうなの!? そうか! 髪を巻くのも自分でしないといけないのね! どうしましょう! 私も巻けないわ!」
どうしようとおろおろしながら、犬のようにフルフルと水気を飛ばす。
私の令嬢らしからぬ行動にキャリアは呆気にとられて笑い出した。私も釣られて笑う。
キャリアのおかげでひとときでも緊張が和らいだ。私は彼女に心から感謝した。
「うわ! えっち! ひらひら! スケスケ!」
キャリアに渡されたランジェリーは、いつも着ている下着とは比べ物にならないくらい薄い生地で、大事な部分にだけ厚手の布がついているだけだった。ちょっと動いただけでそこから大事な部分がポロリとはみ出て当然のドエロイものだ。
これしかないのだとキャリアが申し訳なさそうにするので、意を決してその下着を着た。
バスローブは着てもいいと言ってくれたので、下着の上からバスローブを羽織ってお臍部分で紐をキツく結ぶ。
浴室の扉から出るとそこにはライラ夫人と背の高い男の人がこちらを背にして立っていた。
誰、なんて考えるまでもなく、後ろ姿だけで彼が誰かわかった。
「……でん……か」
私の声にぴくりと反応して、男性がゆっくりと振り返る。さっきまで私を断罪していた張本人のイリアス・ストロサンドだった。
「ふ。無様な姿だな、ミレイナ・ルーティアス。いや、ミレイナ」
彼はふんと鼻で馬鹿にしたように笑う。私よりも眩いプラチナブロンドの髪と金色の瞳が輝く。
先ほどの誕生祭からそのまま来たのか、彼は夜会服のままだ。
「ライラ夫人、すまないがミレイナと二人にしてくれ」
「ほほ。気が利かなくて申し訳ないわ。キャリア行くわよ。では旦那様、ごゆるりと」
固まったままの私はイリアスを凝視していた。
彼は二人が出ていったことを確認してから、ズンズンと私に近寄ってあっという間に目の前に立った。
イリアスは私の着ているバスローブ姿を見てわずかにしかめっ面になる。
「……どうだ。これからここがお前の家だ。その髪も自分で巻かないといかんな」
そう言って私の少しだけ乾ききっていない、真っ直ぐな髪を掬いながら笑う。
「少しは反省したか?」
イリアスの行動に気を取られ、彼の言葉にハッとする。
視線をイリアスから背けてそっと頷いた。
「そうか。ならもうティアラや他の令嬢を虐げたりはしないな?」
そうだ、あのストロベリーブロンドの女の名前はティアラだ。やっと思い出した。
彼の言葉にもコクンと頷く。
素直に頷く私に、彼はなぜかホッと息をついた。
「よし、じゃあミレイナ、このまま帰――」
「私はここで働いてあなたから頂いたお金を頑張って返済していくわ」
イリアスの手が髪から上に移動しようとした手が止まる。
「は?」
私の言葉にイリアスが動揺する。
「だからイリアス様はどうかこのままお帰りください。私は自分の罪を償うため、ここで生きてまいります」
頭を下げてからゆっくりと顔を上げ、強い瞳でイリアスを見上げる。
「ここがどこだかわかっているのか!?」
しばらくの沈黙の後、イリアスが焦った様子で私に詰め寄る。
いきなりのイリアスにわずかに慄くもはっきり頷いた。
「ここは娼館だぞ!? 男の相手をする場所だ! お前に、ミレイナにできるわけがないだろ!?」
イリアスは私の両肩に手を置き、目を見て必死に訴えてくる。
私はそんな彼の言動がおかしくて仕方なかった。
そんな場所に私を送ったのはあなたなのに。
しかもミレイナにできるわけがない?
「私にできないですって?」
私は、元々傲慢で高飛車でわがまま。おまけに負けず嫌いだ。
イリアスの私には絶対無理! という上から目線は、私の闘争心に火を点けた。
キッと下からイリアスを睨みながら告げる。
「イリアス様、この世に私にできないことなんて何ひとつありませんわ。たかが男相手に、この私ができないですって? 私を誰だとお思いですの? 私はミレイナ・ルーティアス。立派に娼婦をやりきって見せますわ」
イリアスは私を見て押し黙り、両肩を掴む手に一層力を入れて俯いた。
「……やはりお前はここまで来ても、俺の言うことは聞かないのか」
ボソリと何か呟く。
至近距離なのにその声はあまりにも小さくて聞き取れなかった。
「なんですの? 何か言いま、キャッ!」
聞き返そうとした途端、イリアスに強く押されて横にあったベッドに思い切り倒れた。
「ちょっ、痛いじゃない! 何するのよ!」
フカフカのベッドだが、勢いよく押されればいくら柔らかくても多少は体が痛い。
イリアスに怒鳴り、起き上がろうとするが目の前に影が落ちる。
「え? イリアスさ、ま? ……え?」
そっと上を見上げれば、逆光でよく顔は見えないがイリアスが私の上に馬乗りになった。
「お前が娼婦になるなら、相手をしてくれるのだろう?」
そう言った彼の表情を窺う間もなく、顎を掬い上げられて彼の柔らかい唇が私の唇に押し当てられた。
「ん!」
突然のイリアスの行動に目を開けたままキスを受けた。
驚き慌ててイリアスを押し退けようと彼の胸を押せば、手を握られてベッドに縫い付けられる。
食むようなキスの攻撃がはじまりだんだんと息が苦しくなってくる。
「んんー! んー! んんん!」
息苦しくなって思わず口を少し開けると、それを見計らったようにイリアスの熱い舌が口内に侵入した。
私が引っ込めた舌を容易く絡めとり、濃厚なキスの嵐をぶつけてくる。
「ふぁ、ん、ンンン、ん」
声が漏れてしまう。
お互いの唾液が口元からこぼれ落ちてもイリアスのキスは止まらなかった。
初めてのキスは怒涛のように押し寄せ、濃厚でどこかじわりと甘い。
自然と頭がフワフワとしてくる。
抵抗が緩んだ隙に、イリアスは私のお臍にキツく巻かれたバスローブの紐をいとも簡単に解いた。
「お前は本気で娼婦になるつもりなんだな」
いつのまにキスの嵐が止んだのか、ぼぅとしてた私の耳にイリアスの低い声が届く。
そして彼の視線の先を追って驚愕する。
彼が見ていたのは紐の解かれたバスローブから覗く私の扇情的な下着姿だった。
私は慌ててバスローブを手繰り寄せて下着姿を隠そうとしたが、それよりも先にイリアスがバスローブを奪い取った。
私は恥ずかしさのあまり、自分の細い腕で胸と下を隠そうとした。
羞恥に顔を赤く染めて隠そうとモジモジするその姿に、男が何よりもそそられると私は知らなかった。
イリアスの目が情欲に染まった瞬間だった。
「こんな姿で他の男の前に立つつもりなのか」
イリアスはまたボソリと呟いたかと思うと、私の腕を掴んでベッドに押し付け、首元に顔をうずめてくる。
「イリアス様! お願い! やめて! いやよ! あなたとこんなことできないわ!」
私のバージンはイリアスにもらってもらうつもりだった。
こんないかがわしい場所ではなく、彼の私室でロマンチックな夜を過ごしたかった。
それなのにこんな形で彼に抱いてもらいたくない。
ここで彼に抱かれなくても、そう遠くない未来に他の誰かに奪われるのはわかっている。
それでもここで、こんなふうに、愛のない彼に――
「イリアス様に抱かれたくない!」
目を固く閉じ、大声で叫ぶ。
その一言を聞いてもイリアスは無言で行為を進めようとする。
「イリアス様! おねがっン!」
止めようと必死に叫ぶ口を塞ぐように私の唇を覆う。
激しく口内を蹂躙されて、イリアスの舌がいとも簡単に私の舌を絡めとってしまう。
必死で逃げようとするもイリアスの舌が追いかけてくる。イヤラシク絡みつき、どこか甘さを含んで私は抗えなくなった。
唇が離れると二人の口に銀色の糸が伝う。
イリアスの手が私の下着を脱がした。
「い、や……いや……イリアス……さ、ま」
震える唇で彼の名前を呼ぶ。
私の弱々しい声を聞いて彼は少しだけ冷静になったようだ。
「ふっン、ン」
先ほどまで荒々しい口づけだったのがいきなり優しいキスに変わり、少しだけ気持ちが落ち着く。
彼は顕わになった私の胸をそっと下から掬い上げるようにして触れる。
その感触にぴくりと震える。
唇をそっと離してイリアスが告げる。
「娼婦にでもなんでもなるがいい。だがミレイナの初めては俺がもらう」
そっと私の頬を撫でる。
影でよく見えないイリアスの顔をマジマジと見つめた。
聞きづらいけれど、イリアスもまたなぜか私のように泣きそうな声だった。
どうしてあなたがそんなふうに泣きそうなの?
私はひとつ大きく息をついて体の強張りを解いた。
どうせ好きな人に捧げるつもりだったバージンを、理想とは違うけれど彼がもらってくれるなら。
イリアスに最初に抱かれるなら場所も雰囲気も……私だけが好きな気持ちも全部諦める。
これがおそらく最初で最後の彼に触れられる機会。
それならこのひとときを大事にしなくちゃ。
私はそっと上体を起こして彼の頬に手を添え、躊躇いがちにキスをする。
「私の初めてをイリアス様に差し上げるわ」
唇を離してから唇が触れるほどの距離で呟いた。
イリアスは私を強く強く、身体が軋むほど抱きしめた。それから彼の唇を私の唇に押し当て深いキスで応えた。
長い時間キスを堪能したのち、イリアスはゆっくりと私をベッドに横たわらせた。
中途半端だった下着もバスローブも脱がされたけれど、もう抵抗しない。
イリアスは膝立ちになると、纏っていた夜会服を脱いでいく。トラウザーズを残して全て脱ぎ終えると再び私の唇にキスを落とす。
そしてまた私の胸に手を添えてやわやわと優しく揉み始めた。
初めての感覚に背中がぞくぞくする感覚を覚える。
普段自分で触ってもなにも感じないのに、イリアスが触れると突然官能的になる。思わず両足をすり合わせていた。
ぷくりと立ち上がった胸の頂にイリアスの長い指が一瞬触れる。
「アッ」
触れた先からピリリと電気が走ったように、びくりと私の身体が震えた。
イリアスの舌が私の頬から鎖骨にかけてゆっくりと這う。
その刺激にもゾクゾクして、つい声が漏れそうになる。
そして先ほど一瞬触れられた胸の頂を今度はしっかりと意志を持って触れられる。
またピリリと体に電気が走る。
親指の腹で捏ねくり回されるとアソコが疼くような気がしてくる。さらに足をすり合わせた。
「気持ちいいか?」
イリアスはそんな私を見て微笑む。
いつになく優しいイリアスに胸が高鳴り、コクリと素直に頷いた。
「フッ……可愛いな」
イリアスがまた笑ってそう呟く。
イリアスの言葉に私は目を見開く。
聞き間違い?
いつも鬱陶しそうに私を睨んでいたイリアスが、私を可愛いなんて言うはずがない。
「私が可愛いんですの?」
思わず聞き返していた。
イリアスは、口から思わず出てしまったと言うように私の問いには答えず、代わりに激しいキスを送ってきた。
「ン、フッンン」
激しいキスに応えるように、角度を変えて何度も絡み合う舌。
止まっていたイリアスの手が、再び胸の頂をクリクリと捏ねたり摘んだり弾いたりする。
そのたびにキスの間から自分の声かと思うくらいの甘い声が漏れていく。
イリアスは唇を離してそのまま首から鎖骨へと舌を這わせていく。そしてそのまま触れているほうとは反対の胸の頂を口に含んだ。
「ん、やぁあ」
口に含んだ途端胸の先端に熱くてぬるついた舌で舐められる。
「あ、アァ、あ、やぁ」
甘い声は止まらなかった。
イリアスが胸から口を離して再び膝立ちになるとベルトを解き、トラウザーズのボタンを外して緩める。
すでにそこは大きく膨らんでいる。彼も興奮していることが嬉しい。
好きでもない女にもこうやって反応してくれるのね。
均整のとれたイリアスの体躯に目が釘付けになる。
イリアスの手は私の足に触れるか触れないかほどの感覚で、足首から順に上へと上っていく。
私の太腿にイリアスの手がかかる。
温かくて硬い指先から熱が伝わってくる。
そのまま手はどんどん上に上っていき、ついに終着点へと辿り着く。
足と足の付け根部分はまだ触れられていないのに、すでに熱気を帯びていた。
そろりとイリアスが割れ目をなぞるとビクン!と身体がのけ反った。
人差し指が差し入れられ、すでに湿っているそこからクチュリと音がする。
「ミレイナ。ここがすごいことになってる」
割れ目から手を引いて、私の目の前で人差し指と親指を擦り合わせて離す。指の間には私の愛液が糸を引いて滴り落ちた。羞恥に顔が熱くなる。
「や、やだわ! 見せないでくださいっンな! あぁッ」
恥ずかしくて首まで火照り、目尻には涙が溜まる。
イリアスは獣のように荒々しくまた私の唇を奪った。
「ン、んあ、ン」
イリアスがキス魔だったなんて知らなかった。
行為が始まってからどれだけ彼とキスをしたのかわからない。
一生分のキスを味わっているみたい。
イリアスの指が再び私の割れ目を上下になぞる。
「やあぁ、あぁ。あぁ……んン」
クチュクチュとイヤラシイ音が聞こえてくる。
その音が、自分から出ているのだと思うとさらに愛液が溢れ出る。
イリアスの指が割れ目の上の突起に触れた。
途端一際嬌声をあげてしまう。
「ひぃやあ! あ、あぁ! ダメ! そこ、アッ」
先ほどと比べ物にならないくらい、背中にビリビリ、ビリビリと電気が走りわたる。
ダメだと言っているのにイリアスの手は止まらなかった。
「あぁあ、アッダメ! あぁ! あああ」
たっぷりと愛液を纏わりつかせて一番感じる粒を摩られると我慢ができない。
最初は優しく摩っていた指がだんだんと早くなっていく。
そのたびにどんどん何かが迫り上がってくる。
「あぁあ! アァッ! ダメ! ダメッ! あぁん! やあぁー」
甲高い声をあげて初めて絶頂に達した。
ビクビクと勝手に体が震えて全身から力が抜けていく。
イリアスは放心状態になった私の頬にキスを落とす。
そして頭を撫でた後、私の温かな場所の奥へゆっくりと指を入れていく。
濡れすぎたそこは簡単にイリアスの指を咥え込んだ。
「すごいな。俺の指を持っていきそうだ」
イッたばかりのそこはキュウキュウとイリアスの指を締め付ける。
ゆっくりと出し入れが繰り返された。
最初は異物感しか覚えなかったのに、だんだんと官能に塗り替えられていく。
「アッ、イリアスッさ、まぁ」
ギュッとイリアスの手首を掴み、彼の瞳を霞む視界で見つめる。
「そんな顔、他の男にも見せるなんて本当にお前は最悪な女だな」
抜き差しする指が二本に増えたが、すでに官能の扉が開いた私にイリアスの言葉は届かなかった。
「あぁ、ダメ! あぁ、ッン、ンあ」
激しく繰り返される指の抽送は再び私を絶頂へと導いていく。
「初めてなのに何故こんなに敏感なんだ? 最初からここで感じてイクなんてお前は淫乱にもほどがあるな」
「いやぁ、言わなッあっんんんー、あぁあー」
イリアスの指は三本に増え、躊躇なく激しく抽送される。私は再びあえなく達してしまう。
目尻に涙が溜まり顔はこれ以上ないほど熱い。体は力が抜けてぴくりとも動かない。
その間に、イリアスは素早くトラウザーズを脱ぎ去り、私の蜜口へ剛力をあてがう。
「いいか、ミレイナ。お前の初めてはこの俺だ。しっかり焼き付けろ」
そう言うと私の上に覆いかぶさった。
イリアスの熱い熱杭が私の中にゆっくり、ゆっくりと入っていく。私は痛みに必死に耐える。
この痛みは生涯忘れることはない。
この痛みこそが私の幸せであり、償いへの第一歩なのだから。
これが最初で最後のイリアスとの熱い情事なのだ。
ストロベリーブロンドの女を思い出した。
このままシナリオが進めば、彼はあの義妹と恋に落ちる。
私はゲームの世界では登場しない。
登場するのは最初のプロローグだけ。
それがあの断罪シーン。
婚約者を自ら失ったイリアスはミレイナと過ごした幼き日々を思い出し、心を痛める。
その痛みから救ったのが、他でもない義妹、ティアラだ。
天真爛漫だが思いやり溢れる義妹は、イリアスの心を簡単に射止める。
そうしてイリアスは禁断の恋に溺れていく。だが類い稀なる才能を生かし、その後の国を平和に築いていく。
これがゲームのイリアスルートのシナリオだ。
バッドエンドはなく、ハッピーエンド一択。
攻略度によって結末の内容が少し変わるだけだ。
断罪されたミレイナがその後どうなったかはわからない。けれど、アーレイのルートではミレイナが遠い公爵領で相変わらず癇癪を起こしているという表現がチラリとされていた。
ミレイナに死のルートはないのだろう。そして娼館行きもない。
そんなシナリオはどのルートにもなかったのだ。
おそらくゲームの中では父に泣きついたおかげで娼館に勤めることはなかった。
だとすれば、今こうしてイリアスを最初に受け入れるのは幸運だったかもしれない。
ずっと好きだった彼にこうやって抱かれるのだ。理由なんて要らない。
今この時だけは、イリアスは私を見てくれるのだから。
だけど多感な年頃に同級生からのいじめの標的になってから、ずっと自分の部屋に閉じこもりきりになった。
悲しくて毎日泣いてこの世から消えたい。そう思っていた。
心配する両親をよそに、何度消えようとしたかは思い出せない。
ある日泣いたところを見たことがない父が、大粒の涙をこぼしながら私に言った。学校に行かなくていい、私達の前から消えようとしないで、と。父が肩を震わせながら私を抱きしめてくれた時、両親の心の痛みが伝わってきた。
自分一人だけが痛みと闘っていたのではないのだ。
私はそれから部屋の外に少しずつ出られるようになった。
学校には行けなかったけれど、以前の楽しい生活に戻ることができた。心の底から、消えなくて良かったと思えたのは、諦めずに私に向き合ってくれた両親のおかげだった。
それなのに私は今ここにいる。
なぜ死んだのか、どうして悪役令嬢に転生してしまったのかは全くわからない。けれど、両親のために生きたいと死ぬ間際にした後悔は今世にも引き継がれている。
私はミレイナとして生きているけど絶対に自分から死を選ばない。
いじめられた側の気持ちが痛いほどわかるから、ミレイナのしたことを私自身が許せない。
「ミレイナ、あんたはここで償うのよ。いじめた人数分、ここで」
ギュッと鉄格子を一度強く握ってから窓を閉めて振り返り、キャリアに微笑んだ。
「ごめんなさい。私お茶の淹れ方も知らなくて……教えてくださらない?」
ここで前世の両親に約束したように頑張って生き抜く。そして今世でいじめてきた数多の令嬢達に償っていく。
そしていつかお金を全額返した暁にはルーティアス家に帰って思い切りお父様やお母様を抱きしめてもいいよね?
そのために私はここで頑張るわ!
キャリアは私の言動に驚いたように目を見開き、その後花が綻ぶように笑った。
「はい! ミレイナ様! お茶は私がお淹れします!」
こうして私は娼館ルージュの娼婦としてやっていくことが決まった。
そして、その初仕事は早々に訪れる。
それも私を先陣切って断罪したイリアス・ストロサンドによる指名で。
キャリアと少し談笑しながら寛いでいると、トントンと扉がたたかれる。
扉に目を向ければ、返事を待たずにライラ夫人が入ってきた。
「ミレイナ。来た早々悪いけど、さっそく仕事をしてもらうよ。キャリア、ミレイナを早く風呂に連れていきな」
来たばかりでいきなり仕事とは思っていなかった。こんなことは初めてだと言うキャリアも驚いていたが、ライラ夫人に急かされ慌てて部屋に備えられている浴室に向かった。
まさか説明も何も聞かないまま、指名されるなんて。
今まで体や髪は侍女達に洗ってもらっていたため、どうすればいいかわからない。キャリアに申し訳ない気持ちになりながら一緒に洗ってほしいと頼んだ。
前世の一部の記憶を取り戻しても、全て思い出したわけではない。
十七年間ミレイナ・ルーティアスとして生きてきた日常生活の方が身にしみついている。私は自分で体を洗ったことがない生粋の令嬢なのだ。
だけどそれはここでは通用しない。キャリアに頼むのは今日で最後と決意して、自分一人でも洗えるようにキャリアと一緒にお風呂に入った。
キャリアの手つきを眺めながら、必死で覚える。
「こんなことは初めてです。ミレイナ様のお披露目もまだですから、ここにミレイナ様がいることは誰も知らないはずなのに」
キャリアはそう言ったけれど、私には思い当たる節があった。
先程ベリー城の舞踏室でイリアスが、高らかに私を娼館に送ると宣言していたわよね?
もしかして先ほどの宣言を聞いていた誰かが、私を追いかけてきたのでは? というか、ほぼそれしかないだろう。
自慢じゃないけど、私は傲慢で高飛車なぼっち令嬢だ。近寄る連中みんなに噛み付いたから、その中に私に恨みを持った者はたくさんいるはず。
もしかしたら想像以上にひどい目に遭わされるのかもしれない。
途端にカタカタと震えが止まらなくなった。
娼婦は男性と寝る仕事。
考えないようにしていたけれど、気持ちの準備もできないうちに、今日この後私は純潔を失う。
イリアス様に捧げるって誓った私のバージン。
震える私にキャリアは優しく小さな手で背中を摩ってくれる。
「ミレイナ様。後で美味しい紅茶を持っていきますね。一緒に飲んで夜更かししましょう。キャリアはいつまでも起きていますので」
私よりも少し小さいキャリアの手から温かさが伝わってくる。
考えるのはやめよう。
キャリアの手に自分の手を重ねてニコリと笑い、楽しみにしているわと言った。
ここで震えても仕方ない。バージンなんてどうでもいいじゃない。
「よし! サクッと終わらしてくるわ!」
私は勢いよく湯を頭からかぶる。
「ミレイナ様! お髪を濡らさないでくださいませ! 私は髪を巻けませんよ!」
「え⁉ そうなの!? そうか! 髪を巻くのも自分でしないといけないのね! どうしましょう! 私も巻けないわ!」
どうしようとおろおろしながら、犬のようにフルフルと水気を飛ばす。
私の令嬢らしからぬ行動にキャリアは呆気にとられて笑い出した。私も釣られて笑う。
キャリアのおかげでひとときでも緊張が和らいだ。私は彼女に心から感謝した。
「うわ! えっち! ひらひら! スケスケ!」
キャリアに渡されたランジェリーは、いつも着ている下着とは比べ物にならないくらい薄い生地で、大事な部分にだけ厚手の布がついているだけだった。ちょっと動いただけでそこから大事な部分がポロリとはみ出て当然のドエロイものだ。
これしかないのだとキャリアが申し訳なさそうにするので、意を決してその下着を着た。
バスローブは着てもいいと言ってくれたので、下着の上からバスローブを羽織ってお臍部分で紐をキツく結ぶ。
浴室の扉から出るとそこにはライラ夫人と背の高い男の人がこちらを背にして立っていた。
誰、なんて考えるまでもなく、後ろ姿だけで彼が誰かわかった。
「……でん……か」
私の声にぴくりと反応して、男性がゆっくりと振り返る。さっきまで私を断罪していた張本人のイリアス・ストロサンドだった。
「ふ。無様な姿だな、ミレイナ・ルーティアス。いや、ミレイナ」
彼はふんと鼻で馬鹿にしたように笑う。私よりも眩いプラチナブロンドの髪と金色の瞳が輝く。
先ほどの誕生祭からそのまま来たのか、彼は夜会服のままだ。
「ライラ夫人、すまないがミレイナと二人にしてくれ」
「ほほ。気が利かなくて申し訳ないわ。キャリア行くわよ。では旦那様、ごゆるりと」
固まったままの私はイリアスを凝視していた。
彼は二人が出ていったことを確認してから、ズンズンと私に近寄ってあっという間に目の前に立った。
イリアスは私の着ているバスローブ姿を見てわずかにしかめっ面になる。
「……どうだ。これからここがお前の家だ。その髪も自分で巻かないといかんな」
そう言って私の少しだけ乾ききっていない、真っ直ぐな髪を掬いながら笑う。
「少しは反省したか?」
イリアスの行動に気を取られ、彼の言葉にハッとする。
視線をイリアスから背けてそっと頷いた。
「そうか。ならもうティアラや他の令嬢を虐げたりはしないな?」
そうだ、あのストロベリーブロンドの女の名前はティアラだ。やっと思い出した。
彼の言葉にもコクンと頷く。
素直に頷く私に、彼はなぜかホッと息をついた。
「よし、じゃあミレイナ、このまま帰――」
「私はここで働いてあなたから頂いたお金を頑張って返済していくわ」
イリアスの手が髪から上に移動しようとした手が止まる。
「は?」
私の言葉にイリアスが動揺する。
「だからイリアス様はどうかこのままお帰りください。私は自分の罪を償うため、ここで生きてまいります」
頭を下げてからゆっくりと顔を上げ、強い瞳でイリアスを見上げる。
「ここがどこだかわかっているのか!?」
しばらくの沈黙の後、イリアスが焦った様子で私に詰め寄る。
いきなりのイリアスにわずかに慄くもはっきり頷いた。
「ここは娼館だぞ!? 男の相手をする場所だ! お前に、ミレイナにできるわけがないだろ!?」
イリアスは私の両肩に手を置き、目を見て必死に訴えてくる。
私はそんな彼の言動がおかしくて仕方なかった。
そんな場所に私を送ったのはあなたなのに。
しかもミレイナにできるわけがない?
「私にできないですって?」
私は、元々傲慢で高飛車でわがまま。おまけに負けず嫌いだ。
イリアスの私には絶対無理! という上から目線は、私の闘争心に火を点けた。
キッと下からイリアスを睨みながら告げる。
「イリアス様、この世に私にできないことなんて何ひとつありませんわ。たかが男相手に、この私ができないですって? 私を誰だとお思いですの? 私はミレイナ・ルーティアス。立派に娼婦をやりきって見せますわ」
イリアスは私を見て押し黙り、両肩を掴む手に一層力を入れて俯いた。
「……やはりお前はここまで来ても、俺の言うことは聞かないのか」
ボソリと何か呟く。
至近距離なのにその声はあまりにも小さくて聞き取れなかった。
「なんですの? 何か言いま、キャッ!」
聞き返そうとした途端、イリアスに強く押されて横にあったベッドに思い切り倒れた。
「ちょっ、痛いじゃない! 何するのよ!」
フカフカのベッドだが、勢いよく押されればいくら柔らかくても多少は体が痛い。
イリアスに怒鳴り、起き上がろうとするが目の前に影が落ちる。
「え? イリアスさ、ま? ……え?」
そっと上を見上げれば、逆光でよく顔は見えないがイリアスが私の上に馬乗りになった。
「お前が娼婦になるなら、相手をしてくれるのだろう?」
そう言った彼の表情を窺う間もなく、顎を掬い上げられて彼の柔らかい唇が私の唇に押し当てられた。
「ん!」
突然のイリアスの行動に目を開けたままキスを受けた。
驚き慌ててイリアスを押し退けようと彼の胸を押せば、手を握られてベッドに縫い付けられる。
食むようなキスの攻撃がはじまりだんだんと息が苦しくなってくる。
「んんー! んー! んんん!」
息苦しくなって思わず口を少し開けると、それを見計らったようにイリアスの熱い舌が口内に侵入した。
私が引っ込めた舌を容易く絡めとり、濃厚なキスの嵐をぶつけてくる。
「ふぁ、ん、ンンン、ん」
声が漏れてしまう。
お互いの唾液が口元からこぼれ落ちてもイリアスのキスは止まらなかった。
初めてのキスは怒涛のように押し寄せ、濃厚でどこかじわりと甘い。
自然と頭がフワフワとしてくる。
抵抗が緩んだ隙に、イリアスは私のお臍にキツく巻かれたバスローブの紐をいとも簡単に解いた。
「お前は本気で娼婦になるつもりなんだな」
いつのまにキスの嵐が止んだのか、ぼぅとしてた私の耳にイリアスの低い声が届く。
そして彼の視線の先を追って驚愕する。
彼が見ていたのは紐の解かれたバスローブから覗く私の扇情的な下着姿だった。
私は慌ててバスローブを手繰り寄せて下着姿を隠そうとしたが、それよりも先にイリアスがバスローブを奪い取った。
私は恥ずかしさのあまり、自分の細い腕で胸と下を隠そうとした。
羞恥に顔を赤く染めて隠そうとモジモジするその姿に、男が何よりもそそられると私は知らなかった。
イリアスの目が情欲に染まった瞬間だった。
「こんな姿で他の男の前に立つつもりなのか」
イリアスはまたボソリと呟いたかと思うと、私の腕を掴んでベッドに押し付け、首元に顔をうずめてくる。
「イリアス様! お願い! やめて! いやよ! あなたとこんなことできないわ!」
私のバージンはイリアスにもらってもらうつもりだった。
こんないかがわしい場所ではなく、彼の私室でロマンチックな夜を過ごしたかった。
それなのにこんな形で彼に抱いてもらいたくない。
ここで彼に抱かれなくても、そう遠くない未来に他の誰かに奪われるのはわかっている。
それでもここで、こんなふうに、愛のない彼に――
「イリアス様に抱かれたくない!」
目を固く閉じ、大声で叫ぶ。
その一言を聞いてもイリアスは無言で行為を進めようとする。
「イリアス様! おねがっン!」
止めようと必死に叫ぶ口を塞ぐように私の唇を覆う。
激しく口内を蹂躙されて、イリアスの舌がいとも簡単に私の舌を絡めとってしまう。
必死で逃げようとするもイリアスの舌が追いかけてくる。イヤラシク絡みつき、どこか甘さを含んで私は抗えなくなった。
唇が離れると二人の口に銀色の糸が伝う。
イリアスの手が私の下着を脱がした。
「い、や……いや……イリアス……さ、ま」
震える唇で彼の名前を呼ぶ。
私の弱々しい声を聞いて彼は少しだけ冷静になったようだ。
「ふっン、ン」
先ほどまで荒々しい口づけだったのがいきなり優しいキスに変わり、少しだけ気持ちが落ち着く。
彼は顕わになった私の胸をそっと下から掬い上げるようにして触れる。
その感触にぴくりと震える。
唇をそっと離してイリアスが告げる。
「娼婦にでもなんでもなるがいい。だがミレイナの初めては俺がもらう」
そっと私の頬を撫でる。
影でよく見えないイリアスの顔をマジマジと見つめた。
聞きづらいけれど、イリアスもまたなぜか私のように泣きそうな声だった。
どうしてあなたがそんなふうに泣きそうなの?
私はひとつ大きく息をついて体の強張りを解いた。
どうせ好きな人に捧げるつもりだったバージンを、理想とは違うけれど彼がもらってくれるなら。
イリアスに最初に抱かれるなら場所も雰囲気も……私だけが好きな気持ちも全部諦める。
これがおそらく最初で最後の彼に触れられる機会。
それならこのひとときを大事にしなくちゃ。
私はそっと上体を起こして彼の頬に手を添え、躊躇いがちにキスをする。
「私の初めてをイリアス様に差し上げるわ」
唇を離してから唇が触れるほどの距離で呟いた。
イリアスは私を強く強く、身体が軋むほど抱きしめた。それから彼の唇を私の唇に押し当て深いキスで応えた。
長い時間キスを堪能したのち、イリアスはゆっくりと私をベッドに横たわらせた。
中途半端だった下着もバスローブも脱がされたけれど、もう抵抗しない。
イリアスは膝立ちになると、纏っていた夜会服を脱いでいく。トラウザーズを残して全て脱ぎ終えると再び私の唇にキスを落とす。
そしてまた私の胸に手を添えてやわやわと優しく揉み始めた。
初めての感覚に背中がぞくぞくする感覚を覚える。
普段自分で触ってもなにも感じないのに、イリアスが触れると突然官能的になる。思わず両足をすり合わせていた。
ぷくりと立ち上がった胸の頂にイリアスの長い指が一瞬触れる。
「アッ」
触れた先からピリリと電気が走ったように、びくりと私の身体が震えた。
イリアスの舌が私の頬から鎖骨にかけてゆっくりと這う。
その刺激にもゾクゾクして、つい声が漏れそうになる。
そして先ほど一瞬触れられた胸の頂を今度はしっかりと意志を持って触れられる。
またピリリと体に電気が走る。
親指の腹で捏ねくり回されるとアソコが疼くような気がしてくる。さらに足をすり合わせた。
「気持ちいいか?」
イリアスはそんな私を見て微笑む。
いつになく優しいイリアスに胸が高鳴り、コクリと素直に頷いた。
「フッ……可愛いな」
イリアスがまた笑ってそう呟く。
イリアスの言葉に私は目を見開く。
聞き間違い?
いつも鬱陶しそうに私を睨んでいたイリアスが、私を可愛いなんて言うはずがない。
「私が可愛いんですの?」
思わず聞き返していた。
イリアスは、口から思わず出てしまったと言うように私の問いには答えず、代わりに激しいキスを送ってきた。
「ン、フッンン」
激しいキスに応えるように、角度を変えて何度も絡み合う舌。
止まっていたイリアスの手が、再び胸の頂をクリクリと捏ねたり摘んだり弾いたりする。
そのたびにキスの間から自分の声かと思うくらいの甘い声が漏れていく。
イリアスは唇を離してそのまま首から鎖骨へと舌を這わせていく。そしてそのまま触れているほうとは反対の胸の頂を口に含んだ。
「ん、やぁあ」
口に含んだ途端胸の先端に熱くてぬるついた舌で舐められる。
「あ、アァ、あ、やぁ」
甘い声は止まらなかった。
イリアスが胸から口を離して再び膝立ちになるとベルトを解き、トラウザーズのボタンを外して緩める。
すでにそこは大きく膨らんでいる。彼も興奮していることが嬉しい。
好きでもない女にもこうやって反応してくれるのね。
均整のとれたイリアスの体躯に目が釘付けになる。
イリアスの手は私の足に触れるか触れないかほどの感覚で、足首から順に上へと上っていく。
私の太腿にイリアスの手がかかる。
温かくて硬い指先から熱が伝わってくる。
そのまま手はどんどん上に上っていき、ついに終着点へと辿り着く。
足と足の付け根部分はまだ触れられていないのに、すでに熱気を帯びていた。
そろりとイリアスが割れ目をなぞるとビクン!と身体がのけ反った。
人差し指が差し入れられ、すでに湿っているそこからクチュリと音がする。
「ミレイナ。ここがすごいことになってる」
割れ目から手を引いて、私の目の前で人差し指と親指を擦り合わせて離す。指の間には私の愛液が糸を引いて滴り落ちた。羞恥に顔が熱くなる。
「や、やだわ! 見せないでくださいっンな! あぁッ」
恥ずかしくて首まで火照り、目尻には涙が溜まる。
イリアスは獣のように荒々しくまた私の唇を奪った。
「ン、んあ、ン」
イリアスがキス魔だったなんて知らなかった。
行為が始まってからどれだけ彼とキスをしたのかわからない。
一生分のキスを味わっているみたい。
イリアスの指が再び私の割れ目を上下になぞる。
「やあぁ、あぁ。あぁ……んン」
クチュクチュとイヤラシイ音が聞こえてくる。
その音が、自分から出ているのだと思うとさらに愛液が溢れ出る。
イリアスの指が割れ目の上の突起に触れた。
途端一際嬌声をあげてしまう。
「ひぃやあ! あ、あぁ! ダメ! そこ、アッ」
先ほどと比べ物にならないくらい、背中にビリビリ、ビリビリと電気が走りわたる。
ダメだと言っているのにイリアスの手は止まらなかった。
「あぁあ、アッダメ! あぁ! あああ」
たっぷりと愛液を纏わりつかせて一番感じる粒を摩られると我慢ができない。
最初は優しく摩っていた指がだんだんと早くなっていく。
そのたびにどんどん何かが迫り上がってくる。
「あぁあ! アァッ! ダメ! ダメッ! あぁん! やあぁー」
甲高い声をあげて初めて絶頂に達した。
ビクビクと勝手に体が震えて全身から力が抜けていく。
イリアスは放心状態になった私の頬にキスを落とす。
そして頭を撫でた後、私の温かな場所の奥へゆっくりと指を入れていく。
濡れすぎたそこは簡単にイリアスの指を咥え込んだ。
「すごいな。俺の指を持っていきそうだ」
イッたばかりのそこはキュウキュウとイリアスの指を締め付ける。
ゆっくりと出し入れが繰り返された。
最初は異物感しか覚えなかったのに、だんだんと官能に塗り替えられていく。
「アッ、イリアスッさ、まぁ」
ギュッとイリアスの手首を掴み、彼の瞳を霞む視界で見つめる。
「そんな顔、他の男にも見せるなんて本当にお前は最悪な女だな」
抜き差しする指が二本に増えたが、すでに官能の扉が開いた私にイリアスの言葉は届かなかった。
「あぁ、ダメ! あぁ、ッン、ンあ」
激しく繰り返される指の抽送は再び私を絶頂へと導いていく。
「初めてなのに何故こんなに敏感なんだ? 最初からここで感じてイクなんてお前は淫乱にもほどがあるな」
「いやぁ、言わなッあっんんんー、あぁあー」
イリアスの指は三本に増え、躊躇なく激しく抽送される。私は再びあえなく達してしまう。
目尻に涙が溜まり顔はこれ以上ないほど熱い。体は力が抜けてぴくりとも動かない。
その間に、イリアスは素早くトラウザーズを脱ぎ去り、私の蜜口へ剛力をあてがう。
「いいか、ミレイナ。お前の初めてはこの俺だ。しっかり焼き付けろ」
そう言うと私の上に覆いかぶさった。
イリアスの熱い熱杭が私の中にゆっくり、ゆっくりと入っていく。私は痛みに必死に耐える。
この痛みは生涯忘れることはない。
この痛みこそが私の幸せであり、償いへの第一歩なのだから。
これが最初で最後のイリアスとの熱い情事なのだ。
ストロベリーブロンドの女を思い出した。
このままシナリオが進めば、彼はあの義妹と恋に落ちる。
私はゲームの世界では登場しない。
登場するのは最初のプロローグだけ。
それがあの断罪シーン。
婚約者を自ら失ったイリアスはミレイナと過ごした幼き日々を思い出し、心を痛める。
その痛みから救ったのが、他でもない義妹、ティアラだ。
天真爛漫だが思いやり溢れる義妹は、イリアスの心を簡単に射止める。
そうしてイリアスは禁断の恋に溺れていく。だが類い稀なる才能を生かし、その後の国を平和に築いていく。
これがゲームのイリアスルートのシナリオだ。
バッドエンドはなく、ハッピーエンド一択。
攻略度によって結末の内容が少し変わるだけだ。
断罪されたミレイナがその後どうなったかはわからない。けれど、アーレイのルートではミレイナが遠い公爵領で相変わらず癇癪を起こしているという表現がチラリとされていた。
ミレイナに死のルートはないのだろう。そして娼館行きもない。
そんなシナリオはどのルートにもなかったのだ。
おそらくゲームの中では父に泣きついたおかげで娼館に勤めることはなかった。
だとすれば、今こうしてイリアスを最初に受け入れるのは幸運だったかもしれない。
ずっと好きだった彼にこうやって抱かれるのだ。理由なんて要らない。
今この時だけは、イリアスは私を見てくれるのだから。
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