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第3章
第30話
しおりを挟むそれからの数日はええ。
そりゃあもう。天宮蓮社長による
スパルタダイエット指導が
始まりましたとも。
朝気持ちよーく寝ているところに
いきなりバン!と扉を開けられ
寝ぼけ目のままジャージに
着替えさせられたかと思うと
あれよという間に1時間も
ランニングをさせられて。
元々生活レベルがレベル1の私は
5分間すら走れる体じゃないのに
スパルタ鬼コーチこと、
天宮社長はチンタラと走ることさえ
許してくれなかった。
いや死ぬ。ほんと死ぬから。
…ただまぁ達成し終えたときに
「音羽よくやったな。えらいぞ」
と汗でキラキラ光る髪を
なびかせながら
極上のシトラス香るスマイルを
拝めたことだけは
………幸せでした。えへ。
そしてお昼は菊子さん
特製メニューをいただいて
午後からこれまた
スーパーミラクル鬼コーチの
天宮蓮社長による
地獄のダイエットメニューをこなす。
はい。ここでも達成したら
あの極上のスマイルで
出迎えてくれます。
もうそれのみを求めて
頑張りました。
そんな過酷なダイエットを1週間
続けたのがいけなかったのか。
はい。無理もないというか
案の定というか…風邪をひきました。
生活レベル1の私が突然
朝から晩まで運動しまくり、
食事は栄養価の高いものの
いつもより量が少なければ
もちろん免疫力は落ちるわけで。
ダイエット7日目の夕方に
なんだか寒気がするなーって
思ったら晩ご飯を食べた後に
一気に熱が上がった。
「ご馳走様です。」
夕方から少し寒気がしてきているのに
なぜか顔だけがぼぅと熱いし
食欲もなかった私は3分の1だけ
食べてお箸を置いた。
残すのは本当に菊子さんに
申し訳ないのだけど…。
「あら、音羽様。今日のお食事はお口にあいませんでしたか??」
「いえとっても美味しかったです。
でもなんだか食欲がなくて…。」
申し訳なくて少しだけ目線を下げると
前に座っていた社長が突然立ち上がって
こちらにやってきた。
「音羽。顔が赤い。」
そういうと社長の少しひんやりとした
手が私の額に当てられる。
(冷たくて気持ちいいかも。)
「ッ!菊子!今すぐ医者を呼んでくれ!
熱がある!」
社長が私の額に触れて数秒後
慌てて菊子さんに指示を出す。
慌てだす社長を下から
ぼんやりとみていた。
なんだか思考もうまく働いてくれなくて。
すぐに社長は私に向き直ってから
心配そうにその場にしゃがみこんで
椅子に座ってる私と目線を合わせてくれる。
「どうしてこんなになるまで
何も言わなかったんだ。」
頬にひんやりとした手が添えられて
ほっと安心する。
(あ、私熱があるんだ。)
その時自分が風邪をひいたことを
自覚した。
社長は座っている私を器用に
抱えるとお姫様抱っこで
私の部屋まで運んでくれる。
私がお気に入りの異世界漫画や小説が
どっさりと何個も積み上がっているものをみた社長は
しばらく呆然としたあと踵を返した。
コツコツ、コツコツためた
趣味たちは今や部屋中に散乱してます。
…ゴミ屋敷じゃないよ?
なんて変な思考でいたら
すぐに奥の部屋の中に入った。
この部屋はきっと社長の寝室だ。
初めて入る。
契約したときこの部屋は
入ってはいけないって言われてたから。
頭が働かないので
部屋をじっくり観察できないけど
黒を基調とした大人の男性の部屋だ。
熱さえなければきっと
ものすごくドキドキしたのだけど
今はそれどころじゃない。
寒いのに熱い。
熱くて苦しい。
熱があるって自覚した途端
しんどさが増すのはどうしてだろう。
社長はそっとふかふかのベッドに
私をおろしてくれる。
「すぐに俺のかかりつけの医者がくるから待ってろ。」
そう言いながら私の頭を優しく撫でてくれる。
「坊ちゃま。冷たいタオルを持ってきましたわ。」
「ああ。ありがとう。」
社長は菊子さんからタオルを
受け取るとすぐに私の額に乗せる。
「音羽様に無理をさせすぎです。ダイエットは自分に合った方法でないと体を壊すんですよ?」
「…そうだな。少し無理をさせすぎた。」
「わたくしもニコニコと元気に笑っているのをみて大丈夫だと思ったので
注意しませんでした。音羽様ごめんなさいね。」
菊子さんがベッドの側まできてくれて
私の頬を撫でながら謝る。
「音羽すまない。」
社長も悲しそうに謝る。
「だ…いじょうぶ。…ありがとう」
二人が悲痛な面持ちになるのが
いやでなけなしの笑顔でいうと
尚更二人は眉を寄せた。
「とりあえず、医者が来るまで寝てろ。」
そう言って社長は私の目元に手を置くと
優しく瞼を閉じさせた。
そうしてそのまますぐに
眠気が襲ってきて
私はしんどいからか
眠りに落ちた。
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